内科
Volume 134, Issue 2, 2024
Volumes & issues:
-
目次
-
-
-
特集【身近に潜む心筋症を診る 進歩する診断と治療】
-
-
- [Chapter 1]心筋症の定義と分類
-
形態と機能による分類
134巻2号(2024);View Description Hide Descriptionわが国では心機能障害を伴う心筋疾患と定義される心筋症であるが,さまざまな歴史的変遷をたどり,現在では肥大型心筋症(HCM),拡張型心筋症(DCM),不整脈原性右室心筋症(ARVC),拘束型心筋症(RCM)に大きく分けられている.心筋症の診断においては,二次性心筋疾患/二次性心筋症を鑑別したうえで確定することが重要である.心筋症の臨床分類に遺伝的な概念が追加されており,病因論的に今後は分類されていくであろう.2023 年の欧州心臓病学会(ESC)ガイドラインではこれまで分類不能であった疾患群として非拡張型左室心筋症(NDLVC)が追加された.形態的な分類は,心筋症を疑って診断していく過程で重要な入り口となる. -
遺伝性と非遺伝性
134巻2号(2024);View Description Hide Description特発性心筋症では,家族歴を認める頻度は疾患ごとに異なり,病原性バリアントが検出される症例は約半数程度に留まる.発症への影響の大きさ(エフェクトサイズ)は遺伝子の種類およびバリアントによってさまざまであり,単一遺伝子変異から遺伝要因と環境要因が複合した病因まで,さまざまな発症病態が混在していると考えられている.肥大型心筋症に対する遺伝学的検査は2022 年に保険収載されたが,まだ診療では普及していない. -
二次性心筋症
134巻2号(2024);View Description Hide Description心筋症のなかには,特定の原因疾患が存在する二次性心筋症が潜んでいることがある.二次性心筋症のなかには,疾患特異的な治療を行うことによって劇的に改善しうるものも存在するため,積極的にスクリ-ニングすべきである.肥大型心筋症様の病態を呈する疾患であっても,時間経過とともに拡張型心筋症様の病態に移行しうる.全身性の病態である場合,必ずしも心臓移植登録の適応にならないことがあり,注意を要する. - [Chapter 2]心筋症の診断に必要な検査
-
初診で行う基本的検査 実地医家の立場から
134巻2号(2024);View Description Hide Description実地医家においても,初診時に適切な診察・検査を行うことによって,心筋症の診断・治療に結び付けることは可能である.心電図は診断への入り口として,X 線検査は病態の全体像把握にも有用である.血液検査でのBNP/NT‒proBNP 測定は,心不全のマ-カ-としてクリニックレベルの診療でも広く普及している.2023 年にステ-トメントが改訂され,基準値が一部変更になっている.心房細動を伴う患者には甲状腺機能測定も忘れずに行う.急激な症状の進行があるなど,危険なサインを伴う心筋症を疑う症例は,躊躇なく専門医療機関の診療につなげる必要がある. -
心エコ-検査
134巻2号(2024);View Description Hide Description心筋症の心エコ-では,従来の指標に加えて,スペックルトラッキング心エコ-によるストレインの評価が疾患の鑑別や治療方針の決定に役立つ.心アミロイド-シスでは,スペックルトラッキング心エコ-でのapical sparing 所見が特徴的である.肥大型心筋症(HCM)の心エコ-では,最大壁厚や左室内圧較差,心室瘤など,疾病管理に必要な情報を漏らさず取得する必要がある. -
心臓MRI検査,心臓CT検査
134巻2号(2024);View Description Hide Description心臓MRI 検査や心臓CT 検査は,心筋症の原因精査を行う際に必須の検査である.そのほか,治療効果判定や予後評価を行う際にも画像検査が重要となる.心臓MRI は,心機能評価を行うシネMRI,心筋性状評価を行うブラックブラッドT1/T2 強調像,遅延造影,T1/T2 マッピングを撮影する.各心筋症の病態や特徴を知ったうえで,画像検査による特徴所見を捉えるとよい.心臓CT は冠動脈病変の検出に関して高い診断精度を有しているため,心筋症の原因として虚血性心筋症の可能性について検索する際に選択する.近年は,CTの撮影機器の進歩に伴い,心臓CT においても心筋性状評価の診断精度が向上しており,MRI 検査が困難な症例ではCT による性状評価を行うとよい. -
核医学検査を用いた心筋症の評価
134巻2号(2024);View Description Hide Description心臓核医学検査では,種々のトレ-サ-を使い分けることで,心筋血流のほか,他検査では得られないブドウ糖や脂肪酸の代謝,交感神経機能などの特定機能の情報を非侵襲的・客観的に得ることができる.定量性も高く,重症度評価や治療効果判定に優れている.123I‒MIBG シンチグラフィでは心不全の交感神経活動の評価が可能である.99mTc 標識リン酸化合物を用いたトランスサイレチン型心アミロイド-シスの診断,123I‒BMIPP を用いた中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)の診断,FDG‒PET による心臓サルコイド-シスの診断・活動性評価は,ほかには代えがたい検査となっている.心筋血流PET はとくに心筋血流予備能の測定により,冠動脈疾患だけではなく,微小循環障害の評価も可能である. -
心臓カテ-テル検査
134巻2号(2024);View Description Hide Description心臓カテ-テル検査にはさまざまな種類があり,心臓に関する多くの情報(血管,心筋,構造,電気活動,血行動態など)を得ることができ,心筋症の鑑別・診断の一助となる.心内膜心筋生検は経皮的に心筋組織を採取することができ,心筋の組織学的変化を直接観察することで,二次性心筋症の除外を中心に心筋症の鑑別・診断に重要な役割を果たす.心内膜心筋生検で得られる所見は非特異的であることも多く,心筋症の鑑別・診断にはほかの検査所見と併せた総合的な判断が必要である.心内膜心筋生検を含めて,心臓カテ-テル検査は侵襲的な手技であり合併症のリスクを伴うため,その適応を十分に考慮したうえで実施されるべきである. -
心筋症の診断における病理学的検査の役割
134巻2号(2024);View Description Hide Description心筋症の診断における病理学的検査として,心内膜心筋生検(EMB)が普及している.EMB の病理所見は非特異的所見が多いが,ほかの臓器の生検と同様に患者の治療や予後を左右する所見も含まれており,また合併症は1%前後と低い検査であるが,穿孔など重篤なものがある検査であるため,その所見は十分かつ慎重に評価されるべきである. -
心筋症診療に遺伝子検査を活かす
134巻2号(2024);View Description Hide Description心筋症の診療において,遺伝子検査は患者自身に対する診断精度の向上,病型の分類,予後予測などに役立つ.また,血縁者に関しては,未発症保因者の早期発見と早期治療介入に貢献する.2022 年に肥大型心筋症に対する遺伝子検査(遺伝学的検査)が保険適用となり,また,2024 年3 月に日本循環器学会ほかから「心臓血管疾患における遺伝学的検査と遺伝カウンセリングに関するガイドライン」の改訂版が発行された.医療者は,心筋症診療における遺伝子検査に関して,最新の知識をもつことが望ましい.遺伝子検査の実地診療においては,適格な施設での検査,十分な遺伝カウンセリングの提供が必要であり,適切な専門施設への紹介が望ましい. - [Chapter 3]心筋症各論
-
肥大型心筋症
134巻2号(2024);View Description Hide Description肥大型心筋症(HCM)の病因,臨床病型,予後はきわめて多様である.約半数に家族歴が認められ,サルコメア遺伝子を中心に病的バリアントが同定される.HCM の診断においては,可能な限り二次性心筋症を除外する必要がある.左室流出路閉塞の有無および程度の把握には,安静時だけでなくValsalva 負荷や運動負荷での評価も重要である.生命予後は比較的良好であることが報告されているが,HCM 関連死としては,突然死,心不全死,心房細動に伴う脳塞栓症死があり,若年者の突然死の原因疾患としては最も頻度が高い.突然死予防には植込み型除細動器(ICD)の植込みが有効であるが,一次予防目的の日米欧共通の植込み基準は確立されておらず,「心筋症診療ガイドライン」を参考にしながら患者ごとに検討を行う. -
拡張型心筋症
134巻2号(2024);View Description Hide Description拡張型心筋症(DCM)は左室のびまん性収縮障害と左室拡大を特徴とする.non‒dilated left ventricular cardiomyopathy(NDLVC)は,左室拡大を伴わない非虚血性左室心筋組織障害,あるいは組織障害を伴わない収縮不全と定義される.心筋症診療における心臓MRI の重要性が高まっている.DCM は遺伝要因に,環境要因が加わることで発症することが明らかとなった.遺伝情報が重症度や予後に関連するため,遺伝子異常に基づいた個別化医療・先制医療が進むことが期待される. -
拘束型心筋症
134巻2号(2024);View Description Hide Description拘束型心筋症(RCM)は,拡張障害を基本病態とする心筋症の一つである.原発性RCM と,全身疾患に伴う心臓病変である二次性RCM に大別される.原発性RCM は,主に小児期に重篤な心不全症状を呈することがあるまれな心疾患であり,わが国では厚生労働省により「指定難病」疾患に指定されている. -
不整脈原性右室心筋症
134巻2号(2024);View Description Hide Description不整脈原性右室心筋症(ARVC)は,右室の機能低下と心室性不整脈を特徴とする遺伝性心疾患である.臨床では比較的まれに遭遇するが,その頻度は1,000~5,000 人に1 人と決して低くなく,診断のためにはまず疑うことが重要である.近年,心エコ-のみでは観察不十分であった右室に対する心臓MRI の有用性が確立してきており,診断および病態把握をより正確に行えるようになった.遺伝子変異のタイプを把握することでその患者の表現型および予後を予測することが可能となりつつある.治療には運動制限,不整脈治療,心不全治療をそれぞれの重症度に応じて行う必要がある. -
周産期心筋症
134巻2号(2024);View Description Hide Description周産期心筋症(産褥性心筋症)は,心疾患既往のない妊産婦が原因不明の心機能低下に伴って,心不全を発症する特異な心筋症である.本邦における発症率は約1 人/1.5 万分娩と,日常診療の場で遭遇する頻度は必ずしも多くはないが,主な母体死亡原因の一つであり,早期に診断することが重要である.疾患理解のうえで重要なことは,本疾患は除外診断病名であり,多様な疾患背景を含む疾患群ということである.そのなかで,妊娠高血圧症候群や多胎妊娠,母体高年齢が危険因子として知られ,約6 割の患者はこれらの危険因子を有している.1~2 割の患者において,心筋症関連遺伝子のtruncating variant を認める.心筋症の家族歴をもつ女性の妊娠・出産においても発症に注意が必要である. -
心筋症類縁疾患(たこつぼ症候群,左室緻密化障害)
134巻2号(2024);View Description Hide Description欧州心臓病学会(ESC)心筋症ガイドライン(2023 年版)において,「たこつぼ症候群」および「左室緻密化障害」は心筋症様の表現型を呈する類縁疾患と位置づけられている.たこつぼ症候群は急性冠症候群の重要な鑑別疾患の一つであり,急性期に正しく診断することが重要である.たこつぼ症候群に対する治療法は確立されておらず,個々の症例ごとに血行動態や併存症を考慮して適切に選択する必要がある.左室緻密化障害は,心室壁の過剰な肉柱形成とそれに伴う深い間隙を形態的特徴とする先天性の心筋疾患であるが,心筋リモデリングの過程で類似した所見がみられるとの報告もあり,さらなる病態の解明が期待されている.左室緻密化障害に対して確立された特異的な治療はなく,拡張型心筋症に準じて,不整脈や左室内血栓などの合併症を考慮したマネジメントを行う. - [Chapter 4]全身疾患関連心筋症
-
心アミロイド-シス
134巻2号(2024);View Description Hide Description心アミロイド-シスは,全身性アミロイド-シスにおいて,心臓の間質にアミロイド蛋白が沈着して,形態的・機能的異常をきたす疾患群である.病型により予後,特異的治療薬が異なり,免疫グロブリン軽鎖(AL)心アミロイド-シス(AL‒CM)とトランスサイレチン型心アミロイド-シス(ATTR‒CM)の鑑別が肝要である.左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)の13~14%はATTR ATTR‒CM であることが報告されており,病歴,身体所見(心臓外症状を含む),心エコ-などのスクリ-ニング検査と,心アミロイド-シスの診断に有用な骨シンチグラフィとM蛋白の評価の追加検査を早期に実施する.ATTR‒CM(野生型,遺伝性ともに)に対する疾患修飾療法としては,TTR 四量体安定化薬(内服薬)tafamidis が認可されている.遺伝性ATTR‒CM の神経症状に対しては,tafamidis に加えて,核酸医薬点滴静注製剤patisiran,第二世代皮下注製剤vutrisiran が認可されている.原発性AL アミロイド-シスに対して,ヒト型抗CD38 モノクロ-ナル抗体を含む多剤化学療法が認可されている. -
心サルコイド-シス
134巻2号(2024);View Description Hide Descriptionサルコイド-シスにおける心病変は,サルコイド-シスの予後規定因子となる.他臓器でサルコイド-シスと診断されている患者においては,心病変の有無をスクリ-ニングする.冠動脈の分布に合わない局所壁運動低下,壁菲薄化や心室瘤,比較的若年者の高度房室ブロックなどが心サルコイド-シスを疑うきっかけとなる.心エコ-図,心臓MRI,ガリウムシンチグラフィ/FDG‒PET などを用いて診断指針に従って診断を進める.心サルコイド-シスと診断されれば,基本的には副腎皮質ステロイドを中心とした免疫抑制療法の適応である. -
ライソゾ-ム病における心病変(Pompe病,Danon病,Fabry病)
134巻2号(2024);View Description Hide Descriptionライソゾ-ム(蓄積)病(LSD)とは,細胞内にある小器官であるライソゾ-ム内の酵素活性が低下することで,分解されるべき物質が細胞内に蓄積する先天性代謝異常疾患である.現時点で報告されている60 種類のライソゾ-ム病はいずれも,単一遺伝子疾患であり,難病・稀少疾患である.ライソゾ-ム病による心筋症は,全身疾患の一臓器の症状として認められるが,弁膜症や心電図異常のなかにもライソゾ-ム病が潜んでいる.循環器内科および内科医が遭遇する可能性のあるライソゾ-ム病には,Pompe病,Danon 病,Fabry 病がある.ライソゾ-ム病は全身疾患であるため,内科の各診療科(循環器内科,呼吸器内科,腎臓内科,消化器内科など)だけではなく,小児科,眼科,耳鼻咽喉科,整形外科,臨床遺伝科などとの連携が重要である. -
神経筋疾患関連心筋症
134巻2号(2024);View Description Hide Description心筋と骨格筋には共通の構成成分があり,その構成成分に異常を生じると神経筋疾患関連心筋症になりうる.本症における心臓形態としては,拡張型心筋症,肥大型心筋症,拘束型心筋症のいずれの形態もとりうるうえ,形態変化のない不整脈を発症することもある.遺伝子診断は本症の病型や予後を規定するのにきわめて有用である.とくにラミンA/C 遺伝子異常の拡張型心筋症は治療抵抗性である.旧来の臨床診断は,遺伝子診断と1:1 対応ではない.本症での心不全や不整脈への治療は,一般的治療に留まることが多く,根本的な原因療法が開発されることを期待したい. -
膠原病関連心筋症(心筋炎)
134巻2号(2024);View Description Hide Description好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)における心筋症ではMPO‒ANCA 陽性頻度が低く,心筋間質への好酸球浸潤と冠動脈血管炎がみられる.また,その治療にはグルココルチコイドとcyclophosphamide を使用する.全身性強皮症(SSc)における心筋障害は早期の皮膚硬化が進行する時期に発症して,心筋には線維化がみられる.Ca 拮抗薬が使用されるが,有効な治療法は確立していない.特発性炎症性筋疾患(IIM)における心筋炎には,グルココルチコイドと,methotrexate(MTX)などの免疫抑制薬が使用され,治療抵抗例には免疫グロブリン静注療法も行われる.全身性エリテマト-デス(SLE)における心筋炎に対しても,グルココルチコイドと免疫抑制薬が使用される. -
がん治療関連心機能障害
134巻2号(2024);View Description Hide Description抗がん薬,放射線治療,造血幹細胞移植などのがん治療は,さまざまな心血管イベントと関連する.とくに,抗がん薬によって左室駆出率(LVEF)が10%以上低下し基準値未満に至った状態をがん治療関連心機能障害(CTRCD)とよぶ.CTRCD は,不可逆的なLVEF 低下を示すⅠ型と,減量や休薬によって改善する可能性があるⅡ型に大別されてきたが,この分類にとらわれることなくCTRCDが疑われた時点で速やかに介入することが肝要である.近年急速に普及してきた免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による心筋炎は時に致死的であるため,速やかな循環器専門医へのコンサルトと強力な免疫抑制療法が必要である.CTRCD の鋭敏な検出方法として,経胸壁心臓超音波検査によるグロ-バル長軸方向ストレイン(GLS)が注目されている.CTRCD もほかの一般的な心不全と同様に治療されるが,原因となったがん治療の中断は症例ごとに検討される.心筋症を誘発しうる治療が検討された時点で,循環器専門医との連携が必要である. - [Chapter 5]心筋症の治療管理
-
心不全薬物療法
134巻2号(2024);View Description Hide Description心不全治療薬は左室収縮能によって治療反応性が異なる.左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)では,β遮断薬,レニン‒アンジオテンシン(RA)系阻害薬(アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬/アンジオテンシンⅡ(AⅡ)受容体拮抗薬(ARB)),MR 拮抗薬の3 剤による治療が基本である.最近では基本治療薬に加え,ACE 阻害薬/ARB の代替薬としてのsacubitril valsartan(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)),SGLT2 阻害薬(empagliflozin,dapagliflozin)が心不全の予後改善効果を示す薬剤として登場した.β遮断薬,SGLT2 阻害薬,ARNI,MR 拮抗薬の4 剤はFantastic Four とよばれ,HFrEF における新規基本治療薬と位置づけられるようになってきており,早期からの導入が推奨され始めている. -
心筋症に合併した致死性不整脈に対する最新の治療戦略
134巻2号(2024);View Description Hide Description心筋症の予後を規定する一つの因子として,致死性不整脈(心室頻拍,心室細動)の出現があり,そのリスク評価および管理は非常に重要である.また,心筋症のタイプによっても,リスクは異なる.致死性不整脈に対する治療としては,抗不整脈薬による薬物治療,植込み型除細動器(ICD)治療,カテ-テルアブレ-ション治療などがある.突然死予防の観点からは,ICD が最も優れた治療法と位置づけられている. -
生活指導
134巻2号(2024);View Description Hide Description心筋症患者は虚血性心疾患患者と比較して,医療者からの生活指導が確立されていないのが現状である.生活指導には,運動・食事・禁煙,疾患教育,服薬管理,心理カウンセリングに加えて,近年は口腔ケア,睡眠の確保,両立支援(就労支援)も含む.心筋症といっても,心不全の重症度,致死性不整脈の有無といったそれぞれの特徴があるため,個別対応が原則ではあるが,運動が禁忌になることはまれであり,可能な限り運動耐容能を確認し,運動処方箋を作成するべきである.疾患再発予防には生活指導が必須であり,医療者は適切にそれを行う必要がある.さらに就労支援は循環器専門医の専門知識が必要なことも多く,勤務情報提供書に基づく適切な指示が必要である.心筋症の妊娠管理では,循環血漿量増加と出産時の心負荷を考慮する必要がある. -
機械的循環補助
134巻2号(2024);View Description Hide Description心原性ショックの治療として,近年は低灌流所見を見逃さずに早期に対応することの重要性が提唱されている.心原性ショックに対する機械的循環補助は,近年さまざまなデバイスが登場し,病態や重症度,目的によって使い分けることが必要である.循環補助用心内留置型ポンプカテ-テル(IMPELLA)は心原性ショックに対する経皮的治療デバイスとして近年使用が増加しており,有効性に関するエビデンスも蓄積されている.植込み型左室補助人工心臓(LVAD)は心筋症に伴う重症心不全の予後と生活の質を改善する治療である.わが国でも長期在宅治療が開始され,LVAD 治療の適応となる患者の幅が広がっている.今後はLVAD 患者の遠隔期や終末期を支える社会体制の構築が必要である. -
心臓移植の適応判断と実際
134巻2号(2024);View Description Hide Descriptionわが国の心臓移植後の予後は,5 年生存率92.9%,10 年生存率88.8%ときわめて良好だが,深刻なドナ-不足から待機期間が約5 年ときわめて長いのが問題である.しかし,心臓移植実施件数は2023 年には115 例まで増加し,増加の一途をたどっていた待機患者数は減少に転じている.わが国で心臓移植を受ける患者は,特別な事情がない限り植込み型補助人工心臓(VAD)を装着された状態で心臓移植を受けることになるため,心臓移植を考慮するべき重症心不全患者を診療する際には,移植実施施設もしくは植込み型補助人工心臓(VAD)実施施設に早めにコンサルトする必要がある.
-
-
連載
-
- 内科医のための睡眠外来入門
-
- ほんとに意味あるの? その感染対策・感染症治療
-
第7回 うがいの効果
134巻2号(2024);View Description Hide Descriptionこれまで本連載では,マスクの着用は新型コロナウイルス感染症の予防に本当に意味があるのか,また三密の回避はどれくらい必要か,経口コロナウイルス薬はどのくらい効果があるのか,視点を変えて抜歯や歯科治療の際の経口抗菌薬や手術室のスクラブへの着替え,手術時に投与する抗菌薬の効果について解説した.今回は「うがい」の効果について考えてみようと思う.もともと日本では伝統的に「外に出かけて家に帰ったらうがい」という文化がある.学校の水道にうがいの仕方のポスタ-が貼ってあったことを思い出す.また最近ではコロナ対策として「手洗い,マスク,うがい」と啓発された.一般製品の販売広告にも「風邪の予防にはうがい」と記載されているものが多いし,製品ごとの殺菌力を菌が破壊される画像で示すものもみられる.では「うがい」の効果,特に感染性疾患の予防効果に関するデ-タはどれくらいあるのだろうか. - イメ-ジで捉える呼吸器疾患
-
第20回 肺がんに伴う傍腫瘍症候群(Cushing症候群)「全身がむくみっぽく下肢の脱力感がときどきあります」
134巻2号(2024);View Description Hide Description - Focus On
-
日常診療で体重をフォロ-することの重要性
134巻2号(2024);View Description Hide Description体重測定は単純な手技であるが,体重の変化はさまざまな病態を覚知するきっかけとなる重要な指標である.体重減少はそれだけで死亡率の増加と関連していることが知られているうえ,慢性疾患ではobesity paradox とよばれる,BMI が高いほうが予後がよいという現象も知られており,高齢者の体重減少にはとくに注意して対応する必要がある.骨格筋は除脂肪体重の半分以上を占め,体重減少の主たる要因になりえる.精査しても原因疾患が見つからない場合は,サルコペニアが重要な鑑別の一つであり,介護とも連携した適切な介入が求められる.体重増加の場合も,常に体液量の変化を念頭に置いて診察・検査を進める必要がある.多忙な外来で体重を測定するには工夫が必要だが,「意図しない体重減少」を覚知するために,少なくとも3 ヵ月に一度程度は測定を試みてほしい.地域ICT などを活用して,体重やその変化に対する解釈を多職種と共有することも重要である.
-
投稿
-
- 症例
-
2度の急性症状を発症した複数抗原の関与が疑われる非線維性過敏性肺炎の症例
134巻2号(2024);View Description Hide Description過敏性肺炎(hypersensitivitypneumonitis:HP)は,「肺実質と細気管支における炎症性および/または線維性疾患であり,典型的には感受性のある個体において明らかなあるいは潜在的な抗原吸入により惹起される免疫反応に起因する」と定義される1).HP を疑った場合,原因抗原および原因環境の特定のために住居や職場の環境,ペット飼育歴,羽毛製品の使用など生活歴の詳細な問診が重要となり2),診断においては,普段の生活場所である自宅以外の環境が原因となっている可能性も考慮して生活歴の詳細な問診を行うことが重要である3).今回,当初は加湿器肺と診断し,環境整備のうえで退院としたが,症状が再燃したため再入院とし,詳細な問診により羽毛布団肺が疑われたHP の1例を経験したので報告する.
-
その他
-
-