内科
Volume 134, Issue 4, 2024
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目次
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特集【広く浅く知る白血病 令和になってこう変わった】
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- [Chapter 1]白血病の診断
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白血病の初期症状から診断への過程
134巻4号(2024);View Description Hide Description急性白血病の初期症状は正常造血抑制に伴う貧血・易感染・出血傾向と,髄外臓器浸潤による症状がある.慢性白血病初期は症状・所見に乏しく,健康診断や血液検査が契機で診断されることが多い.白血病治療は大きく進歩し,高齢者にも治療適応が拡大している.白血病診療は合併症対策を含めて迅速性・専門性が高いため,少しでも白血病が疑われたら,ただちに躊躇なく専門施設にコンサルトする. -
フロ-サイトメトリ-検査
134巻4号(2024);View Description Hide Descriptionフロ-サイトメトリ-(FCM)は白血病細胞の系統や成熟度に基づく病型診断に有用である.FCM は白血病細胞表面や細胞質内の抗原を短時間で定量する検査法であり,次世代FCM では8 種類以上の抗原を同時に解析することが可能である.FCM は白血病細胞での奇異性抗原発現や測定可能残存病変の検出,キメラ抗原受容体遺伝子改変T 細胞(CAR‒T)療法や二重特異性T 細胞誘導抗体などの免疫療法時にも有用である. -
染色体検査・遺伝子検査
134巻4号(2024);View Description Hide Description造血器腫瘍の疾患・病型診断の多くで染色体異常・遺伝子異常が重要な診断項目の一つとなり,これまで補助診断であった染色体検査・遺伝子検査の結果確認が最終診断のために必須となった.近い将来,次世代シ-クエンサ-を用いた造血器腫瘍遺伝子パネル検査が普及し,遺伝子異常がより身近になることが想定される.染色体検査や,FISH 検査・PCR 関連検査・シ-クエンス解析など代表的な遺伝子検査の結果は,その原理や特性を理解したうえで細胞・組織形態検査と合わせて総合的に評価することが肝要である. -
白血病の分類の変遷
134巻4号(2024);View Description Hide Description急性白血病診断の基本は形態的に同定される芽球の増加であるが,世界的に用いられる診断・分類は形態学的分類のみのFAB 分類に始まり,患者既往歴,細胞表面マ-カ-,染色体所見,ゲノム変異を取り込んだWHO 分類へと引き継がれてきた.一部の特徴的なゲノム変異の同定がそのまま急性白血病の診断と病型分類に直結するようになるなど,とくにゲノム変異情報の重要性が増している.一方で今でも芽球の増加によって診断される病型も多く,周辺疾患との関連,鑑別を含め,急性白血病診断は患者既往歴,血球形態からゲノム変異の同定まで,統合的な手法でなされている. - [Chapter 2]白血病の治療法
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抗がん薬の種類
134巻4号(2024);View Description Hide Description伝統的抗がん薬の多くは細胞分裂を阻害する作用機序を有する.アルキル化薬はがん細胞の核DNA にアルキル基を結合させDNA 合成を阻害する.cytarabine は代謝拮抗薬に属し,ヌクレオシドアナログとしてDNA 合成期にDNA 内に転入されDNA 鎖伸長を阻害する.doxorubicin やdaunorubicin は抗悪性腫瘍薬に属し,トポイソメラ-ゼⅡを阻害し,活性酸素を産生し,DNA を傷害する.vincristine は微小管阻害薬であり,細胞分裂中期での紡錘糸形成を阻害する.脱メチル化薬azacitidine とBCL‒2 阻害薬venetoclax 併用療法は,高齢者急性骨髄性白血病の標準治療となった. -
チロシンキナ-ゼ阻害薬
134巻4号(2024);View Description Hide DescriptionBCL‒ABL 阻害薬は初発慢性期慢性骨髄性白血病(CML)の治療薬で,分子遺伝学的大奏効(MMR)を目指す.T315I 変異を有する慢性期CML にはponatinib が有用である.asciminibはSTAMP阻害薬で,前治療に抵抗性または不耐容のCMLに有用である.初発FLT3‒ITD 変異陽性急性骨髄性白血病(AML)には,標準の抗白血病療法とquizartinib の併用が有用である.再発・難治FLT3 変異陽性AML にはgilteritinib またはquizartinib が有用である.治療適応のある未治療の慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫に対しては,ibrutinib またはacalabrutinib±obinutuzumab が推奨される. -
モノクロ-ナル抗体
134巻4号(2024);View Description Hide Descriptionモノクロ-ナル抗体は遺伝子組換え技術などの応用により作製され,キメラ型抗体,ヒト化抗体,ヒト抗体の作製へと進歩してきている.日常診療で白血病に対して用いられるモノクロ-ナル抗体には,モノクロ-ナル抗体単体薬剤,抗体薬物複合体,二重特異性T 細胞誘導抗体がある.モノクロ-ナル抗体の作用機序はさまざまあるが,主として標的分子(抗原)との結合により発揮される.モノクロ-ナル抗体全般に共通する有害事象としては急性輸液反応(infusion reaction)がある. -
CAR-T療法
134巻4号(2024);View Description Hide Description遺伝子改変T 細胞であるキメラ抗原受容体遺伝子改変T 細胞(CAR‒T)療法は,とくにB 細胞腫瘍に対して高い効果を示し,その治療アルゴリズムを大きく変えた.CAR‒T 療法の特徴的合併症であるサイトカイン放出症候群(CRS)や免疫エフェクタ-細胞関連神経毒性症候群(ICANS)に対する十分な管理が要求される.すべての患者が治癒するわけではなく,治療抵抗性もしくは再発を示す場合があり,そのメカニズムも明らかになってきた.今後の課題として,効果と副作用を予測するバイオマ-カ-の研究が,CAR‒T療法を成功に導くうえできわめて重要であると考えられる. -
造血幹細胞移植
134巻4号(2024);View Description Hide Description難治性の白血病に対して造血幹細胞移植が完治をもたらす可能性がある.同種造血幹細胞移植にはさまざまな合併症のため治療関連死亡やQOL 低下などをきたす可能性があるという課題がある.安全性・倫理性を確保し,高い水準の同種造血幹細胞移植を受けられるよう造血細胞移植コ-ディネ-タ-(HCTC)は重要な役割を果たしている.多職種が協力して移植サバイバ-の長期フォロ-アップを行い,QOL 向上,社会復帰,合併症の早期発見,生命予後の改善が図られており,造血幹細胞移植患者手帳を通して地域の医療機関と共有できる体制が整備されている. - [Chapter 3]ここまで来た! 白血病の治療
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急性骨髄性白血病
134巻4号(2024);View Description Hide Description2023 年に造血器腫瘍診療ガイドラインが改訂され,最新の知識に基づいた新たな指針が示された.FLT3 阻害薬の有効性が明らかになり,FLT3 変異を伴う急性骨髄性白血病(AML)患者に対する治療選択肢が広がった.BCL2 阻害薬venetoclax 併用化学療法の有効性が明らかになり,高齢者や合併症を有するAML 患者に対する治療選択肢が広がった.ヒト白血球抗原(HLA)不適合血縁者間移植時の移植後cyclophosphamide (PTCy)法による移植片対宿主病予防の有用性が明らかになり,HLA 不適合血縁者間移植の安全性が向上した. -
急性前骨髄球性白血病
134巻4号(2024);View Description Hide Description未治療の急性前骨髄球性白血病(APL)に対する本邦での標準治療は,全トランス型レチノイン酸(ATRA)とアントラサイクリン系薬を併用した治療法である.再発・難治APL における第一選択薬は,亜ヒ酸(ATO)治療である.再寛解到達後は,ATO による寛解後療法を行い,PML::RARA 融合遺伝子が分子学的に陰性化すれば,大量抗がん薬併用自家造血幹細胞移植を行う.移植非適用の症例には,ATO ベ-スの寛解後療法,もしくはATO 治療後の再発例にも有効なgemcitabine ozogamicin やtamibarotene が勧められる. -
急性リンパ性白血病
134巻4号(2024);View Description Hide Description急性リンパ性白血病は,薬物療法が有効な白血病である.小児型プロトコ-ルが,成人型プロトコ-ルより,優れている.顕微鏡による治療効果判定は不正確であり,測定可能残存病変/微小残存病変(MRD)を測定する必要がある.同種造血幹細胞移植は,化学療法抵抗性の症例に行われる. -
フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病
134巻4号(2024);View Description Hide Descriptionフィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ性白血病(ALL)の治療成績はチロシンキナ-ゼ阻害薬(TKI)併用化学療法の開発により飛躍的に改善した.Ph 陽性ALL に対するTKI 併用化学療法は,第二・三世代TKI の開発,造血幹細胞移植方法の改善などにより治療成績を改善させてきた.Ph 陽性ALL の治療として,TKI 併用化学療法の後,可能な症例には造血幹細胞移植を行うことが現時点での推奨であるが,造血幹細胞移植を回避して治癒を目指す試みが始まっている. -
慢性骨髄性白血病
134巻4号(2024);View Description Hide Description慢性骨髄性白血病(CML)の初期治療は,それぞれのチロシンキナ-ゼ阻害薬(TKI)の特徴を理解し,合併症などの患者背景も考慮したうえで決定する.二次治療は,ABL1 キナ-ゼ部位の点突然変異解析や付加的染色体異常の有無を確認し,変異の種類によって,適切な第二世代TKI(nilotinib,dasatinib,bosutinib),第三世代TKI(ponatinib)を選択する.三次治療として,STAMP 阻害薬であるasciminib も選択可能である.無治療寛解を試みる場合には,TKI 治療期間や分子遺伝学的に深い奏効維持期間などの条件を確認し,綿密なBCR::ABL1 国際基準値(IS)のモニタリングのうえで行う. -
慢性リンパ性白血病
134巻4号(2024);View Description Hide Description慢性リンパ性白血病(CLL)は末梢血リンパ球数の増加とリンパ節腫脹,肝脾腫を特徴とする.腫瘍細胞はCD5 陽性かつCD23 陽性のB 細胞(CD19,CD20 陽性)で,κ,λいずれかの表面免疫グロブリン軽鎖を発現する.iwCLL ガイドラインで活動性・症候性病態と判断されれば治療介入を考慮する.新規分子標的治療により多くの患者で長期生存が得られるようになった. - [Chapter 4]白血病治療の合併症
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免疫不全と感染症
134巻4号(2024);View Description Hide Description免疫不全(皮膚・粘膜バリアの傷害,好中球減少,細胞性免疫不全,液性免疫不全)の種類や程度は白血病の病型や治療内容によっても異なり,それに伴って注意すべき病原体や感染症も変わってくる.B 型肝炎,結核のスクリ-ニングは原則としてすべての化学療法前に実施する.急性骨髄性白血病に対する化学療法では長期の好中球減少が感染症の最大のリスク因子となり,細菌・真菌感染症の発症リスクが高い.急性リンパ性白血病に対する化学療法では,好中球減少に加えて細胞性免疫不全が起きるため,ニュ-モシスチス肺炎に対する予防などが必要となる.慢性リンパ性白血病は,疾患自体による液性免疫不全に加えて,化学療法による細胞性免疫不全などが生じるが,治療薬によっても免疫不全,注意すべき病原体のプロファイルが変わってくる. -
腫瘍崩壊症候群
134巻4号(2024);View Description Hide Description腫瘍崩壊症候群は緊急性を要する疾患であり,低カルシウム血症と高尿酸血症および閉塞性尿毒症における尿毒症の身体所見がみられる.自然に,あるいは化学療法開始から約72 時間後に発現することが多く,白血球数が非常に多い白血病患者に最もよくみられる.allopurinol 投与後のキサンチン濃度の上昇は閉塞性尿毒症を悪化させる.rasburicase は尿酸オキシダ-ゼの遺伝子組換え製剤で,高尿酸血症の治療に使用される.尿のアルカリ化は腎尿細管へのカルシウム塩やリン酸塩の沈殿により急性腎障害を悪化させる.febuxostat は高尿酸血症をコントロ-ルし,腎機能を維持する.糸球体濾過量を速やかに増加させる目的の体積拡張には晶質液を使用する. -
心血管系合併症
134巻4号(2024);View Description Hide Description白血病治療で用いられるアントラサイクリン系薬や新規分子標的治療薬は,特有の心血管系合併症(CTR‒CVT)の発症リスクと関連する.CTR‒CVT 発症リスクを低減することや,CTR‒CVT 発症時に適切な対応を行うことは,白血病に対する治療を計画どおりに実施し,最終的に白血病患者の予後を改善することにつながる.このために治療開始前のベ-スライン評価,モニタリング,CTR‒CVT 発症時の対応を連続的に行うことが重要で,循環器専門医へのコンサルテ-ションを適宜行うことが必要である.各薬剤に特徴的なCTR‒CVT として,アントラサイクリン系薬ではアントラサイクリン心筋症が,BTK 阻害薬では高血圧や心房細動がある.BCR‒ABL チロシンキナ-ゼ阻害薬は薬剤によりCTR‒CVT プロファイルが異なる. -
薬物相互作用
134巻4号(2024);View Description Hide Description白血病に用いられる経口分子標的治療薬の薬物相互作用としてしばしば問題となるのは,吸収と代謝過程における薬物動態学的相互作用である.吸収過程では,H2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬などの胃酸分泌抑制作用を有する薬剤の併用時に,胃内pH の上昇に伴い分子標的治療薬の吸収が低下し,薬効が減弱する可能性がある.代謝過程では,アゾ-ル系抗真菌薬をはじめとするCYP3A 阻害薬の併用により分子標的治療薬の代謝が阻害され薬効や毒性の増強が,rifampicin などのCYP3A誘導薬の併用により代謝誘導が起こり薬効の減弱が生じうる. -
晩期合併症
134巻4号(2024);View Description Hide Description白血病は,新規治療薬の導入,同種造血幹細胞移植の治療成績の改善などにより治癒が期待でき,長期生存が得られるようになっている.一方,白血病そのものや治療により生じる多様な合併症である晩期合併症が近年問題となっており,その管理が重要な課題になっている.そのなかには,妊孕性低下などQOL の低下につながるものから,心血管障害,呼吸機能障害,二次がんなど生命予後に影響するものまでさまざまである. -
精巣・卵巣機能障害 治療による妊孕性低下とどう向き合うか
134巻4号(2024);View Description Hide Description米国臨床腫瘍学会(ASCO)ガイドラインが2018 年に改訂され,すべての医療従事者が妊孕性温存について,患者への説明や意思決定をサポ-トするべきであることが明記された.医療従事者は化学療法,放射線療法,造血幹細胞移植による妊孕性低下について理解し,血液悪性腫瘍の診断がついた時点で可能な限り早く妊孕性温存方法について患者へ情報提供をするとよい.また,専門医への紹介も大切である.現在の妊孕性温存の方法として,女性は卵子凍結や卵巣組織凍結,男性は精子保存や精巣内精子回収術がある.それぞれのリスクとベネフィットを理解して患者へ説明することが肝要である. - [Chapter 5]もうすぐこうなる! 白血病治療
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急性前骨髄球性白血病に抗がん薬はいらない?
134巻4号(2024);View Description Hide Description急性前骨髄球性白血病(APL)において,全トランス型レチノイン酸(ATRA)と亜ヒ酸(ATO)の併用療法は,抗がん薬を用いずに治癒を目指せる治療である.標準リスクAPL では,無作為化試験によってATRA‒ATO 併用療法のATRA‒抗がん薬併用療法に対する優越性が示されている.ATRA‒ATO 併用療法でも高リスクAPL や治療中の白血球増加に対して最小限の抗がん薬による追加治療が行われる.国内では初発APL に対してATO に保険適用がなく,ATRA‒ATO 併用療法の実施は臨床試験などに限られている. -
フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に抗がん薬はいらない?
134巻4号(2024);View Description Hide Description従来の化学療法では困難であったフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)の治療成績が,チロシンキナ-ゼ阻害薬(TKI)の登場,さらに最近の報告では古典的な抗がん薬を含まないTKI+blinatumomab 併用療法の登場により飛躍的に向上してきている.dasatinib+blinatumomab併用療法やponatinib+blinatumomab併用療法は,Ph+ALL 患者において非常に高い奏効率が報告されている.とくにponatinib+blinatumomab 併用療法は,同種造血幹細胞移植を施行されている例がほとんどないなかで非常に優れた成績が報告されている点が注目される.これらの治療法は,Ph+ALL 患者の予後を大きく改善する可能性が高く,本邦でも導入が進むことが期待される. -
高齢者急性骨髄性白血病に対する強度を減弱した新しくやさしい化学療法
134巻4号(2024);View Description Hide Descriptionvenetoclax(VEN)+azacitidine(AZA)併用療法は,高齢者や強力な化学療法の適応とならない急性骨髄性白血病(AML)の治療選択肢の一つである.VEN+AZA 併用療法は強度を減弱した治療であるが,両剤の相乗作用によって高齢者AML において従来の治療よりも高い奏効率が得られる.VEN+AZA 併用療法は疾患進行まで継続する治療である.骨髄抑制が遷延する場合があり,適切な時期に骨髄評価を行い,VEN の休薬,顆粒球コロニ-形成刺激因子(G‒CSF)の併用および次サイクル以降のVEN の投与期間の調整が必要である.
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連載
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- 内科医のための睡眠外来入門
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- ほんとに意味あるの? その感染対策・感染症治療
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第8回 抗菌薬へのアレルギ-歴
134巻4号(2024);View Description Hide Descriptionこれまでの本連載では,マスクの着用は新型コロナウイルス感染症の予防に本当に意味があるのか,また三密の回避はどれくらい必要か,経口コロナウイルス薬はどのくらい効果があるのか,また視点を変えて抜歯や歯科治療の際の経口抗菌薬や手術室のスクラブへの着替え,手術時に投与する抗菌薬の効果やうがいの効果について解説した. 今回は「抗菌薬にアレルギ-歴がある人には本当に抗菌薬を再投与できないのか」を考えてみようと思う. - 内科医が精神科のくすりを処方する.
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- イメ-ジで捉える呼吸器疾患
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- Focus On
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「ダニに刺されたかも」といわれたらどうしたらよいですか?
134巻4号(2024);View Description Hide Description室内環境で生じる機会の多い虫刺性皮膚炎の主な原因として,イエダニ,アカイエカ,ネコノミ,トコジラミなどがあげられる.虫刺性皮膚炎の臨床像はいずれも瘙痒を伴う紅斑や紅色丘疹が孤立性に散在するのが特徴で,夏場を中心として春~秋に認められる.診断を確定するには原因虫の捕獲・確認が必要であるが,虫体を持参する患者は少なく,「ダニが原因」と自己判断して受診する例が多い.一般に,イエダニ刺症は主に被覆部,アカイエカ刺症は主に顔面,ネコノミ刺症は主に下腿,トコジラミ刺症は顔面・頸部・上肢などに皮疹が認められることが多いため,皮疹分布や病歴から原因虫を推定する.治療の基本はステロイド外用薬であるが,再発を繰り返す場合は原因虫の駆除が必要である.
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投稿
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- 症例
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durvalumab投与後にIsaacs症候群を発症した小細胞肺がんの1例
134巻4号(2024);View Description Hide DescriptionIsaacs 症候群は国内で難病に指定される稀少疾患であり,電位依存性カリウムチャネル(voltagegated potassium channel:VGKC)の機能異常である.病因として自己免疫性,遺伝的要因,傍腫瘍性神経症候群(paraneoplastic neurological syndrome:PNS)などが報告されているが1),本症例はdurvalumab 投与後の発症であり,免疫関連有害事象(immunerelated adverse events:irAE)の可能性が示唆された.同様の症例報告は検索の範囲内で存在せず,貴重な症例と考え文献的考察を加えて報告する.
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その他
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