Volume 214,
Issue 1,
2005
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7月第1土曜特集【血管炎の基礎と臨床】
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医学のあゆみ 214巻1号, 1-1 (2005);
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■基礎
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医学のあゆみ 214巻1号, 5-8 (2005);
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血管炎モデルマウスを用いて血管炎の感受性遺伝子座をマップすると血管炎のゲノム的仕組みを学ぶことができる.すなわち,血管炎は相加性と階層性を有する複数の遺伝子が作用して発症し,それらは集団内に潜在的に分布する多型遺伝子である.ゲノム交雑により生じるこれらの組合せが,血管炎の発症,重症度のみならず,その組織分布や他の膠原病との合併をも規定していると考えられ,このシステムを血管炎のポリジーンネットワークとよびたい.
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医学のあゆみ 214巻1号, 9-12 (2005);
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ヒト血管炎は障害される血管のサイズにより大型・中型・小型血管炎に分類される.また,その病理組織像は内皮下および中膜にフィブリノイド壊死を伴うもの,主として中・外膜に肉芽腫を形成するもの,血栓形成を伴うものなど多彩である.病因として宿主の遺伝的素因に加えて微生物抗原あるいは自己抗原が重要であると推定されており,これまでにII型・III型・IV型アレルギーの関与や血管攣縮,血管機能修飾などが血管炎発症にかかわる免疫学的・非免疫学的機構として解析されてきた.このような多因子疾患の病因の究明やその予防法,治療薬の
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医学のあゆみ 214巻1号, 13-18 (2005);
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CAWSは病原性真菌Candida albicansの培養上清から得られるmannoprotein−beta−glucan complexである.CAWSはさまざまな生物活性を有するが,マウスにおいて強力な血管炎惹起物質であることがわかった.また,血管炎惹起の有無と強度は著しく系統間に格差があった.この格差には系統ごとのサイトカイン産生の違いが密接に関連している可能性がある.すなわち,IL−6,IFN−γ,TNF−αは正の要因として,IL−10は負の要因として作用しているものと思われる.一方で,誘発物質の
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医学のあゆみ 214巻1号, 19-23 (2005);
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血管炎は発症様式から2つのタイプに大別される.ひとつは細菌やウイルスなどの感染による直接的血管障害で引き起こされるものである.もうひとつは血管炎症候群といわれるもので,全身の種々の血管にさまざまな炎症性変化が観察される.血管炎症候群に含まれる各疾患の原因は不明といわざるをえないが,血管炎を発症しやすい遺伝的素因を有した個体に何らかの環境要因が相乗的に作用することで発病するものと理解されている.血管炎症候群の疾患の多くには,免疫複合体の沈着やANCA,抗内皮細胞抗体など免疫反応の関与が考えられる.ウイルス感
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医学のあゆみ 214巻1号, 25-29 (2005);
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血管炎の病態は,T細胞や好中球と血管内皮細胞との相互作用により誘導される血管と血管周囲の炎症によりもたらされる.病態形成の過程では,自己反応性T細胞は樹状細胞やB細胞などの抗原提示細胞の刺激を受けて活性化し,また,T細胞からの刺激を受けたB細胞は,抗好中球細胞質抗体(ANCA)などを産生して組織障害を引き起こす.したがって,T細胞の共刺激分子やCD20抗原などのB細胞の表面機能分子は疾患制御の格好の標的となる.一方,ANCAやTNF−αに代表される炎症性サイトカインは内皮細胞の接着分子の発現量を増強し,ま
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医学のあゆみ 214巻1号, 31-37 (2005);
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血管炎の発症機構に関連する因子としては好中球自己抗体(anti−neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA),抗DNA抗体,TNF−α,IL−1β,IFN−γ,IL−6,IL−8,IL−10,IL−12p70などのサイトカインがあげられる.一方,血管炎の患者やモデルマウスでは好中球顆粒酵素のmyeloperoxidase(MPO)が放出されやすい活性化好中球が循環していることが,著者らの研究から明らかになっている.血中にはMPOを抗原とするMPOANCAの上昇とともに,MPO
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医学のあゆみ 214巻1号, 39-44 (2005);
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従来,自己抗体の出現しにくいとされてきた血管炎症候群でも種々の自己抗体がみられてきている.Wegener肉芽腫症などに特異性の高い抗好中球細胞質抗体がもっとも有名であるが,これに次いで高率に認められる抗内皮細胞抗体はいまだ意義が確定していない.これは用いる内皮細胞の多様性や反応条件の違いによって一定の成績が得られないからである.著者らは本抗体の検索中に,高安動脈炎に特異的な抗74 kDa抗体を見出した.この抗74 kDa抗体は高安動脈炎に比較的高率で特異性高く検出される.その対応抗原は検索中であるが,それ
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医学のあゆみ 214巻1号, 45-49 (2005);
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血管系に生じる病変のなかで動脈硬化性疾患,たとえば心筋梗塞や狭心症といった虚血性心疾患,脳梗塞や閉塞性動脈硬化症はわが国において増加しつつあり,その病態解明は重要な課題である.動脈硬化は平滑筋細胞に代表される細胞成分と細胞外マトリックスの増生,ならびに脂質の蓄積による内膜の肥厚が主体と考えられているが,さらにマクロファージやリンパ球が関与する炎症としてとらえられるようになってきた.また,自己抗体の存在やCD40/CD40Lシステムなど,免疫応答の点からも研究されている.また最近では,血管壁細胞の一部は骨髄
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医学のあゆみ 214巻1号, 51-54 (2005);
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Chapel Hill Consensus Conferenceの分類を紹介し,その分類に含まれていない疾患を加えて血管炎各疾患の病理を解説した.血管炎は病理組織学的には壊死性血管炎,肉芽腫性血管炎の2つに大別される.壊死性血管炎グループとして結節性多発動脈炎,顕微鏡的多発血管炎,Henoch−Schonlein紫斑病,皮膚白血球破砕性血管炎,膠原病(悪性関節リウマチ以外の疾患)に伴う血管炎があげられ,肉芽腫性血管炎グループとして高安動脈炎,側頭動脈炎,血管Behcet病があげられる.アレルギー性肉芽腫性
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■臨床
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医学のあゆみ 214巻1号, 57-62 (2005);
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血管炎とは血管壁の炎症をきたす病態の総称である.原因不明の原発性血管炎は罹患血管のサイズにより分類される(Chapel Hill分類).これによると,大型血管炎には高安動脈炎と側頭動脈炎,中型血管炎には結節性多発動動脈炎と川崎病が含まれる.小型血管炎にはHenoch−Schonlein紫斑病,特発性クリオグロブリン血症,皮膚白血球破砕性血管炎,および顕微鏡的多発血管炎,Wegener肉芽腫症,アレルギー性肉芽腫性血管炎が含まれるが,後者の3疾患は抗好中球細胞質抗体(anti−neutrophil cyto
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医学のあゆみ 214巻1号, 63-66 (2005);
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ANCA関連血管炎の病因・病態解明のためのゲノム解析研究が進められている.最近の注目される成果として,Wegener肉芽腫症において自己抗原であるproteinase−3の細胞表面発現強度の高い好中球の比率が遺伝的に規定され,その比率の高い表現型がWegener肉芽腫症に対する疾患感受性が高いとする報告や,日本人における多施設共同研究によりHLA−DRB1*0901−DQB1*0303ハプロタイプが顕微鏡的多発血管炎の疾患感受性と関連することが示されたことがあげられる.本稿ではこれらの知見を中心に,ANC
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医学のあゆみ 214巻1号, 67-73 (2005);
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高安動脈炎(大動脈炎症候群)は若い女性に好発する難治性の大型血管炎である.その原因は不明であるが,感染などを契機として自己免疫的な機序で血管組織に炎症が生じ,その結果,大動脈弓ならびにその分枝血管に血管病変が生じると考えられている.発症にはHLAなどの遺伝要因の関与が示唆されている.現在,全身の非特異的な炎症所見と画像診断による血管病変の同定により診断が行われているが,診断までに時間がかかることが多く,合併症の進展を抑制するためにも早期診断,治療指標の開発が望まれている.本稿では高安動脈炎の診断と治療の現
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医学のあゆみ 214巻1号, 75-83 (2005);
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顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis:MPA)は,おもに腎・肺病変で特徴づけられる全身性血管炎症候群である.臨床的に腎病変は典型的な急速進行性腎炎症候群(RPGN)であり,肺病変では肺出血・間質性肺炎が高頻度にみられる.RPGNの進行例は腎機能の可逆性に乏しく,肺出血はしばしば生命予後を左右する重大な合併症である.良好な予後のためには早期の診断と治療開始が望まれ,とくに急激な腎機能障害例に遭遇した際に,RPGNで高頻度を占める本症を念頭に鑑別診断,検査を進めなくてはならない
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医学のあゆみ 214巻1号, 85-89 (2005);
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Churg−Strauss症候群(CSS)はアレルギー肉芽腫性血管炎ともよばれ,先行する気管支喘息などアレルギー性疾患から中小血管の壊死性炎症を発症する血管炎症候群のひとつである.また,抗好中球細胞質抗体(ANCA;多くはMPO−ANCA)が陽性であることから,Wegener肉芽腫症(WG)や顕微鏡的多発血管炎(MPA)などと並んで,ANCA関連血管炎の代表的な疾患でもある.病因・病態の研究が進められているが,いぜん不明な点が多い.近年,CSS発症と気管支喘息治療薬(ロイコトリエンレセプター拮抗薬)との関
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医学のあゆみ 214巻1号, 91-97 (2005);
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Wegener肉芽腫症(WG)は上気道(E),下気道(肺:L)の壊死性肉芽腫性炎,腎(K)の壊死性半月体形成腎炎,全身の中・小血管の壊死性肉芽腫性血管炎(V)の3つを臨床病理形態学的特徴とする難治性血管炎である.WGに高率に認められるC(PR−3)ANCAおよびE,L,K,Vの臨床病型および病理組織所見により確定診断する.E,Lに病変がとどまる限局型とELKの全身型に分け,重症度に応じてシクロホスファミド(CY)および副腎皮質ステロイド(CS)の併用大量療法により寛解導入可能で,予後の改善が認められる疾患
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医学のあゆみ 214巻1号, 99-103 (2005);
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皮膚白血球破砕性血管炎はChapel Hill Conference on the Nomenclature of Systemic Vasculitisの分類においては最小血管を主病変とし,病変が皮膚に限定される疾患名として定義されている.これに対して皮膚科領域では従来より他臓器の症状の有無にかかわらず,皮膚病理組織像として皮膚白血球破砕性血管炎という用語が使用されており,病名,すなわち疾患単位の意味で使用されることはない.本稿では皮膚科領域において病理組織学的に白血球破砕像を認める代表的な血管炎として
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医学のあゆみ 214巻1号, 105-110 (2005);
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ウイルス関連血管炎として1970年代にB型肝炎ウイルス(HBV)感染に伴う結節性多発動脈炎が,さらにヒト免疫不全ウイルス(HIV),C型肝炎ウイルス(HCV),最近ではSARSコロナウイルスなどによる血管炎が明らかとなっている.ウイルスの関与が明らかにされる血管炎は今後も増え続け,その発症にかかわる免疫学的機序の検討も進展することが予想される.それに伴い,あらたな抗ウイルス薬の開発だけでなく,血管炎の発症に関与するサイトカインや細胞表面分子などを標的とした治療法の導入もはじまった.HIV,HBV,HCVに
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■注目される治療
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医学のあゆみ 214巻1号, 113-119 (2005);
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わが国では血中に抗好中球細胞質抗体(anti−neurotrophil−cytoplasmic antigen:ANCA)が陽性となる小血管炎のうち,myeloperoxidase(MPO)−ANCA関連顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis:MPA)が急速な進行性腎炎をきたす症例の報告が増えている.とくに老齢者に高頻度に発症し,強力な免疫抑制療法を必要とすることもあり,副作用も重篤で治療に難渋している.これに対し経静脈性免疫グロブリン大量療法(IVIg)はその有効性が注目さ
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医学のあゆみ 214巻1号, 121-126 (2005);
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近年,末梢血管疾患,冠動脈疾患に対する新しい治療法として遺伝子治療が注目されている.海外では早くよりFGF,VEGF遺伝子を中心に検討されている.一方日本では,肝細胞増殖因子HGF遺伝子を用いて,ASOとBuerger病を対象とした遺伝子治療臨床研究が実施された.安全性は許容範囲であると考えられ,また現在のところASOとBuerger病の両方に同程度の改善度が観察され,Buerger病に対する新しい治療法になりうる可能性が考えられた.今後,有効性を評価するためにコントロールを設置した研究が必須である.