Volume 214,
Issue 5,
2005
-
7月第1土曜特集【高血圧UPDATE】
-
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 281-281 (2005);
View Description
Hide Description
-
■高血圧の疫学
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 285-290 (2005);
View Description
Hide Description
わが国の循環器疾患の特徴は,脳卒中が多く虚血性心疾患が少ないことにあった.しかし,脳卒中死亡率は1965年を頂点として1990年にかけて急速に減少し,世界一の低下率を示した.一方,年齢調整した心筋梗塞死亡率は先進工業国のなかでは低い国であったが,さらに低下した.その結果として,わが国は世界一の長寿国となった.この要因のひとつは国民の血圧水準の低下や高血圧者頻度の低下による.しかし1990年以降,わが国の脳卒中,心疾患をはじめとした循環器疾患死亡率・罹患率低下の鈍化がみられ,国民の血圧水準低下傾向の鈍化と符
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 291-297 (2005);
View Description
Hide Description
高血圧の自然史とその合併症の疫学について本稿では概説する.高血圧の自然史は,降圧薬のない時代の極少人数の観察研究の結果,あるいは比較的最近の大規模介入試験における無治療対照群からうかがうことができる.高血圧に基づく合併症は,血圧レベルだけでなくて遺伝的要因,環境要因が重要な役割を果たしている.生活習慣の欧米化により糖尿病,高脂血症といった代謝異常を合併する高血圧患者が増加しており,これらを背景とした高血圧合併症,とくに脳梗塞や冠動脈疾患がさらに増加すると推察され,その合併症予防がますます重要になっている.
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 299-303 (2005);
View Description
Hide Description
久山町の疫学調査によれば,脳卒中発症リスクは高血圧レベルよりさらに低い正常高値の血圧レベルから有意に上昇する.80歳までの高齢者では心血管病発症率は臓器障害や耐糖能異常の有無にかかわらず軽症高血圧のレベルから有意に上昇することから,降圧目標は青壮年と同じでよいことが示唆される.しかし,80歳以上の超高齢者における高血圧管理のあり方は今後の検討課題として残されている.高血圧は耐糖能異常やアルコール摂取と合わさることにより脳卒中のリスクを大幅に上昇させる.また,最近の地域住民では高血圧発症にインスリン抵抗性あ
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 305-310 (2005);
View Description
Hide Description
高血圧は循環器疾患の最大の危険因子であり,高血圧の予防や管理は生命予後や機能予後の保持に直接影響する.札幌医科大学第二内科では1977年より北海道端野町,壮瞥町において高血圧や循環器疾患の病態解明を目的とした疫学調査を開始し,今日までこのコホート研究を継続してきた.この間の研究成果として,1.高血圧進展の背景としての過栄養状態の存在と,高血圧発症予測因子としての耐糖能異常,肥満,運動不足を証明,2.脳卒中,心血管疾患の危険因子としての高血圧が最重要であることの再確認,3.一般住民の長期生命予後は軽症高血圧
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 311-316 (2005);
View Description
Hide Description
大迫(おおはさま)研究は24時間自由行動下血圧,家庭における自己測定血圧(家庭血圧)を用いた世界初の住民ベースの疫学研究であるという特色をもち,これまでの10年以上の追跡を通じ,“わが国発,世界初”のエビデンスを発信し続けてきた.具体的には24時間自由行動下血圧,家庭血圧は血圧レベル自体が優れた表現型であるのみならずさまざまな変動性パラメータをもち,それらが独自の予後予測能を有していることを明らかにしてきた.今後,観察を継続するとともにより詳細な検討を行い,多くの血圧パラメータの組合せ,さらにはそれらのパ
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 317-320 (2005);
View Description
Hide Description
小児の本態性高血圧は思春期に多く,0.1〜1%の頻度で見出されるが,一般に程度は軽い.年齢が低いほど,また血圧が高いほど二次性高血圧の可能性が高く,なかでも腎炎や腎血管性高血圧など腎が原因となる高血圧が8割を占める.ただし,小児の高血圧全体に占める二次性高血圧の割合は少なく,たとえば平成10年(1998)度小児慢性特定疾患治療研究事業に新規に登録された腎血管性高血圧は全国で41名しかいない.小児の本態性高血圧は肥満に伴うことが多く,肥満小児が増加している現在,高血圧小児も増加していると考えるのが妥当である
-
■高血圧の診断法の進歩
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 323-328 (2005);
View Description
Hide Description
家庭血圧の測定では長期間にわたり多数の測定とその平均値が得られ,その値は随時血圧よりも予後予測能が良好である.したがって,日常診療においても外来随時血圧とともに必要不可欠のものとなっている.降圧薬の評価,白衣現象,白衣高血圧,仮面高血圧の同定,さらにはコンプライアンスの維持向上にも役立つ.日・米・欧それぞれのガイドラインもほぼ出揃った.しかし,家庭血圧の特徴は医師でなく患者自身が測定することであり,これによるメリットと同時にデメリットも生じうる.今後メモリー機能やプリントアウト機能の充実も必要である.さら
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 329-333 (2005);
View Description
Hide Description
診察室で医師が測定する血圧はいわば,診察室という患者にとっては特殊な雰囲気のなかでの血圧値である.血圧は身体的・精神的変動によって変化しやすい生体指標であり,普段の日常環境のもとでの血圧こそが本来の血圧値である.血圧値は心拍数と同じ数,すなわち1日約10万回存在するものであり,診察室での血圧は偶然の血圧値にすぎないともいえる.高血圧の予後を正しく評価し,昼間血圧のみならず,夜間・早朝高血圧の管理,仮面高血圧の発見と適切な管理を行うためにも,24時間血圧測定は有用である.また,低血圧などQOLをそこねる病態
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 334-338 (2005);
View Description
Hide Description
白衣高血圧は1988年にPickeringらにより提唱された.白衣高血圧は“外来等の医療環境下で医師存在下の血圧は常に高血圧であるが,非医療環境下で測定した血圧は正常である状態”と定義される.現在までに世界各国で白衣高血圧に関する多くの研究が行われた.白衣高血圧例では臓器障害の程度および心血管危険因子とされる検査値異常の程度については持続性高血圧例と正常血圧例の間に位置し,長期的に見ると心血管疾患の発症および生命予後は正常血圧例と比較して悪いことが報告されている.そのため,白衣高血圧を認める例では治療また
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 339-343 (2005);
View Description
Hide Description
最近になり,外来血圧が正常にもかかわらず24時間血圧(ABPM)や家庭血圧では高血圧を示す仮面高血圧という病態がクローズアップされてきた.これまでの研究から,ABPM・家庭血圧は外来血圧に比べ高血圧に合併する心血管病リスクをより鋭敏に示すことが明らかとなっているが,これらによってしか検出できない仮面高血圧患者の高血圧性臓器障害や心血管系予後は,外来血圧とABPM・家庭血圧の両方で高血圧を示す持続性高血圧患者と同等かそれ以上不良であることが明らかとなってきた.仮面高血圧が生じる詳細なメカニズムは不明な点も多
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 345-351 (2005);
View Description
Hide Description
早朝高血圧には夜間高血圧から移行するタイプと朝方に急峻に血圧が上昇するサージタイプの2つの成分がある.最近,この両者がともに心血管リスクとなることを示すエビデンスが集積されつつあるが,この2つのタイプの早朝高血圧の背景病態は異なる.すなわち,前者は睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害,心不全や腎不全などの体液量の増加,糖尿病などの自律神経障害が病因となり,後者は大血管硬化による圧受容体反射の障害などによる血圧変動性の増加と関連している.現在,わが国の降圧療法の現状は,診察室血圧が正常レベルにコントロールされて
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 352-356 (2005);
View Description
Hide Description
内分泌性高血圧は外科的処置で治癒可能ないわゆる二次性高血圧症で,頻度の高い疾患である.著者らは,一般内科外来で日本人の高血圧症1,020例を対象に,5年間にわたるprospective studyを行った.その結果,最終的には6.0%が原発性アルドステロン症,Cushing症候群が1.0%,プレクリニカルCushing症候群が1.0%,褐色細胞腫が0.6%,腎血管性高血圧が0.5%に認められた.残りの90.9%が本態性高血圧症と確定診断された.したがって,内分泌性高血圧症はけっしてまれな疾患ではなく,かな
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 357-360 (2005);
View Description
Hide Description
腎性高血圧は腎実質性高血圧症と腎血管性高血圧症に分けられる.腎実質性高血圧症としては糖尿病性腎症や慢性糸球体腎炎が臨床的に多く経験される.腎血管性高血圧症は腎動脈の主幹部あるいは分枝に狭窄が生じ,傍糸球体細胞よりレニンが過剰に分泌して発症する.腎血管系の画像診断と血漿レニン活性やレノグラム,レノシンチグラフィーなどの機能的検査により診断する.若年発症の原因としては線維筋性異形成や大動脈炎症候群が多い.近年,人口の高齢化,糖尿病や高脂血症患者の増加につれて動脈硬化性腎血管病変の合併している例が多くなっている
-
■エビデンスに基づく高血圧の治療とあらたな展開
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 363-368 (2005);
View Description
Hide Description
本態性高血圧においては環境要因の修正を目的とした生活習慣改善は重要である.とくに食塩摂取量の多いわが国において降圧のために減塩は必須であり,2004年の日本高血圧学会のガイドラインでは食塩制限6 g/day未満を推奨している.また,欧米の臨床試験から,野菜・果物の積極的摂取とコレステロール・飽和脂肪酸の摂取制限が血圧を下げることが示され,高血圧患者に対して推奨される.さらに,肥満は高血圧を含めたメタボリックシンドロームの原因であり,体格指数(body mass index[BMI]:体重(kg)÷[身長(
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 369-373 (2005);
View Description
Hide Description
高血圧の治療は単に血圧を低下させるだけでなく,動脈硬化の進展阻止と,高血圧が関係する心血管系疾患の発症を防止することである.そのためには,食事療法や運動療法といった生活習慣の修正をしっかりと行うとともに,各患者の病態にもっとも適する降圧薬を投与して,血圧を降圧目標までしっかりと低下させる.現在のところ降圧目標として,若年・中年者では130/85 mmHg未満,高齢者は140/90 mmHg未満,糖尿病・慢性腎疾患を合併する者では130/80 mmHg未満に低下させることが勧められている.降圧薬としてはCa
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 375-379 (2005);
View Description
Hide Description
人口構造の高齢化の進行とともに,脳血管障害や認知症(旧痴呆症)の発症増加が懸念されており,その予防は先進諸国に共通の保健衛生上の重要課題となっている.わが国では高血圧性臓器障害に占める脳血管障害の頻度が高く,人口構造の高齢化の進行と相まって脳血管障害を合併する高血圧患者を診療する機会は今後ますます多くなるものと懸念される.その意味で,脳血管障害既往患者を対象に,降圧療法の再発予防効果を検討したはじめての本格的な大規模臨床試験であるPROGRESS(Perindopril Protection Agains
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 381-385 (2005);
View Description
Hide Description
高血圧は腎障害の発症・進展因子であり,逆に腎障害は高血圧,さらに心血管疾患の重要な発症・増悪因子である.腎疾患を合併した高血圧の治療においては腎障害の進行をいかに抑制するかという視点が重要で,早期からの適切な血圧管理が不可欠である.改訂された『高血圧治療ガイドライン2004(JSH2004)』では検尿と推定GFRを用いて腎疾患を早期に発見することが重要であるとし,慢性腎臓病(CKD)の概念を取り入れた.高血圧と蛋白尿が腎障害の進展を促す危険因子であるため,治療においては降圧だけでなく尿蛋白減少も考慮する必
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 387-391 (2005);
View Description
Hide Description
高血圧を合併した糖尿病患者はハイリスクであり,その降圧目標は130/80 mmHg未満である.血圧が140/90 mmHg以上あれば降圧薬による治療をただちに開始し,130〜139/80〜89 mmHgの場合にはライフスタイルの修正を指導し,3〜6カ月後に血圧が目標血圧に達しなければ降圧薬を開始する.第一選択薬として,臓器障害を改善しインスリン抵抗性を改善するACE阻害薬,ARB,長時間作用型Ca拮抗薬を用いる.降圧目標値を達成できない症例には複数の降圧薬を併用すべきである.
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 393-399 (2005);
View Description
Hide Description
高齢者高血圧の治療に関するエビデンスについて140〜159 mmHgの軽症高血圧を対象にした薬剤介入の大規模比較試験はないため,この範囲の高血圧患者については数カ月以上の非薬物療法の後で降圧薬を考慮する.降圧目標について一律140/90 mmHg未満を最終目標としているが,エビデンスがない後期高齢者の収縮期血圧160 mmHg以上の中等症,重症高血圧例では150/90 mmHg未満を暫定的降圧目標とする慎重な降圧を勧めている.超高齢者あるいは80歳以上の高血圧患者については,これまでのメタアナリシスや一部
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 400-404 (2005);
View Description
Hide Description
高血圧に伴う心肥大の出現および進展には左室壁応力の増加が密接に関係している.さらに,心肥大の進展に伴い心機能障害が出現するが,それには単位心筋当りの冠血流量低下が密接に影響している.一方,心肥大のなかでも求心性左室肥大を合併した高血圧患者では心血管事故の発生率がとくに高値を示している.これまでに行われた大規模臨床試験の結果では,この心肥大の退縮をはかることが心血管事故のリスク軽減には不可欠である.心肥大合併高血圧患者の治療にあたっては,心肥大退縮効果の強い降圧薬の使用により持続的かつ十分な降圧をはかり,心
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 405-410 (2005);
View Description
Hide Description
心筋に圧負荷が加わると肥大が形成される.心肥大は機械的負荷に対する適応現象であるが,さらに負荷が持続するとこの適応現象は破綻し,心不全に移行する.心肥大が心不全へ移行する過程には心筋の機能・構築変化(心筋リモデリング)が重要な役割を果たしている.心肥大に対しては厳密な降圧が重要であり,個々の患者でもっとも効果的に降圧が得られ,副作用のない薬剤を選択する.収縮不全による慢性心不全に対しては無症候性から重症まで幅広い重症度の患者においてACE阻害薬が有効であり,自覚症状ばかりでなく生命予後を改善する.さらに,
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 411-416 (2005);
View Description
Hide Description
虚血性心疾患合併高血圧では過度の降圧が予後を悪化させるとの指摘がある.一方,最近の介入試験の成績ではすくなくとも正常血圧(140/90 mmHg未満)まで降圧すべきことが示唆されている.降圧薬としてはβ遮断薬とCa拮抗薬が狭心症状の改善に用いられるが,わが国では冠攣縮性狭心症が多いので,Ca拮抗薬がよく用いられる.長期予後という点ではβ遮断薬が,心機能低下例では利尿薬に加えてACE阻害薬とARBが有効であるとのエビデンスが多い.短時間作用型Ca拮抗薬は虚血性心疾患のリスクを高めると以前より指摘されているが
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 417-421 (2005);
View Description
Hide Description
高血圧の治療の目的は以前は血圧を低下させることに主眼がおかれていたが,薬剤による十分な降圧がほぼ可能になった現在,合併症の抑制のための適切な薬剤の選択および新規薬剤,遺伝子治療による合併症の治療,個々のタイプや合併症の種類に応じた指導や治療などのいわゆるテーラーメイド治療などに着目されるようになった.新規薬剤に関しては遺伝子解析によって明らかになった高血圧原因遺伝子を標的にした薬剤が今後開発されていくであろう.また,薬剤代謝の酵素の遺伝子タイプによる治療は,治療の効果と副作用の両面からますます普及していく
-
■高血圧治療のコントラバーシー
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 425-430 (2005);
View Description
Hide Description
利尿薬の降圧効果は食塩感受性の高い例ほど著明である.また腎機能障害,浮腫,心不全を伴う例でもよい適応となる.著者らの検討から,食塩感受性の病態では利尿薬が血圧日内リズムを正常化させることが明らかになった.利尿薬の脳血管障害などに対する心血管事故予防効果の一部は,この血圧日内リズム改善に伴う負荷の軽減に基づいている可能性が示唆される.腎保護作用も期待できる可能性が高まってきた.一方,耐糖能,脂質・電解質代謝などへの悪影響は用量依存性であり,また少量でも降圧効果が期待されることより,少量かつ他剤との併用が勧め
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 431-436 (2005);
View Description
Hide Description
ACE阻害薬とAT1受容体ブロッカー(ARB)は異なる薬理作用をもつレニン−アンジオテンシン系阻害薬である.ELITEII試験,OPTIMAAL試験,VALIANT試験においてACE阻害薬とARBの心血管保護作用が比較検討されたが,両薬剤間において著明な差は認められなかった.しかし,ACE阻害薬でみられる咳の副作用はARBでは認められないため忍容性の点でACE阻害薬より優れており,高血圧治療薬として使いやすい薬剤である.最近,脳保護効果の点でARBで興味深い成績が報告されており,今後,ARBとACE阻害薬
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 437-441 (2005);
View Description
Hide Description
脳卒中は旧来の降圧薬で疫学的予測どおりのリスク予防が達成されたが,冠疾患では予測を下まわる成績に止まった.プラセボに比べACE阻害薬で高リスク保有者の心血管リスクが著減したHOPE試験や,旧来薬に比べアンジオテンシン受容体拮抗薬で心肥大を伴う高血圧者の予後を改善させたLIFE試験が注目された.この好成績は,アンジオテンシンIIのアテローム硬化,心血管リモデリング促進作用をレニン抑制薬が阻害したことによるもので,降圧を超えた(beyond blood pressure)降圧薬の利点とされた.一方,これらの治
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 442-446 (2005);
View Description
Hide Description
高血圧がすくなくとも1年間有効にコントロールされた後ならば,とくに生活習慣の改善を厳密に行っている患者では慎重にゆっくりと段階的に降圧薬の用量と数を減らすことを考慮する.休薬した患者はとくに生活習慣の改善を続けないと,ときには休薬後数カ月または数年して血圧が高血圧レベルまで再上昇してくるのが普通であるので,定期的なフォローアップが必要である.休薬後の血圧維持率は3〜74%であり,研究によりかなり異なる.降圧薬治療により正常血圧となっているときに降圧薬を中止しても正常血圧を維持できそうな患者は,比較的若年で
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 447-452 (2005);
View Description
Hide Description
インスリン抵抗性・代償性の高インスリン血症は交感神経系やレニン−アンジオテンシン(RA)系などの昇圧系の活性亢進をきたして昇圧すると考えられる.また,腎や心血管系でのNa代謝調節に直接作用して体内Na貯留や末梢血管抵抗を増大させることも機序の一部と考えられる.さらに,インスリン抵抗性を改善する薬剤の長期投与で有意な降圧を示すことも多数報告されている.したがって,インスリン抵抗性は高血圧における昇圧の機序の一部となりうることから,高血圧の薬物療法の選択においては降圧作用のみならず,インスリン感受性に対する影
-
■高血圧発症機序研究の最前線
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 455-459 (2005);
View Description
Hide Description
本態性高血圧は複数の遺伝要因と複数の環境要因の交互作用により,おもに中年期以降に発症する多因子疾患である.遺伝疫学研究により遺伝要因が存在することは疑いようがないが,具体的にどの遺伝子がどのようなメカニズムで高血圧の罹患しやすさ(感受性遺伝子)を決めているかはほとんどわかっていない.この遺伝子群をみつけ出すことを目的に,世界中で多くの研究が進められている.ヒトゲノム研究によってヒトゲノムの塩基配列と遺伝子の構造,さまざまな遺伝子多型の情報がウェブ上で自由に利用できるようになった.現在の研究はこれまでの蓄積
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 461-465 (2005);
View Description
Hide Description
発生工学を用いた遺伝子改変動物の作製と解析は,個体レベルでの遺伝子機能の解析や疾患の病態解明に強力な手段となっている.高血圧の研究領域においても血圧調節に関連する遺伝子などの変異マウスがつぎつぎに樹立され,病態解明に貢献している.本稿ではその基本的手法について説明し,合わせていくつかの液性調節因子のノックアウトマウスについて簡単に紹介する.
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 466-472 (2005);
View Description
Hide Description
レニン−アンジオテンシン(RA)系は重要な血圧調節系として知られているが,心血管リモデリング,腎,脳の機能などにも重要な役割を担っていることがしだいに明らかにされてきた.アンジオテンシンII(AngII)タイプ2(AT2)受容体はAngIIタイプ1(AT1)受容体とともに血圧の調節だけでなく多くの病態において拮抗して作用することがしだいに明らかにされてきたが,いまだ未知の部分も多い.また,AngIIがインスリンをはじめ生活習慣病に関与している種々の因子とも密接にクロストークして作用し,その病態生理に関与し
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 473-479 (2005);
View Description
Hide Description
アルドステロンのおもな作用は腎尿細管上皮細胞におけるナトリウムの再吸収促進である.アルドステロンの分泌過剰状態は体液貯留を生じ,臓器は血流調節のため血管収縮をきたす.その結果,慢性的アルドステロン過剰は高血圧,心肥大をもたらす.近年,このような腎作用とは別に,アルドステロンの心血管系組織に対する直接作用が証明され,注目されている.すなわち,内皮機能障害,血管収縮,心筋および血管周囲の線維化,血栓形成の促進など心血管障害性に働く.このようなアルドステロンの心血管作用は高食塩状態でさらに増強されるので,われわ
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 481-487 (2005);
View Description
Hide Description
肥満者では高血圧を高頻度に合併することが知られており,とくに上半身肥満は高血圧,糖尿病,虚血性心疾患をはじめとする生活習慣病の重要な危険因子である.肥満者における血圧の上昇には血行動態的・内分泌的・環境および遺伝的因子の関与に加えて近年,脂肪組織より分泌されるホルモンやサイトカインなどの生理活性物質の重要性が注目されている.レプチンは脂肪組織より分泌され,おもに視床下部に作用して強力な体重増加抑制をもたらす新しいホルモンである.最近,著者らが作製したレプチン過剰発現トランスジェニックマウスでは交感神経活動
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 489-495 (2005);
View Description
Hide Description
食塩感受性高血圧は二次性,本態性いずれの高血圧においても存在するが,食塩感受性二次性高血圧のいくつかには遺伝子の異常が解明されているものがある.これに対して高血圧の9割以上を占める本態性高血圧は多様な病態の集合体であり,個々の患者では食塩感受性の程度はまちまちで,その成因としての遺伝子異常に関しても,多くの候補遺伝子が報告されてはいるものの二次性高血圧のように明確なものはないことから,いくつかの遺伝子異常と環境要因が複雑に絡みあっているものと推測されている.食塩感受性二次性高血圧の遺伝子異常や本態性高血圧
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 497-501 (2005);
View Description
Hide Description
高血圧などの病態では血行力学的負荷が増大し,それによって心臓および血管の構造上の変化が生じる.このような構造変化を心血管リモデリングとよぶ.心臓においては心筋細胞肥大や心筋間質の線維化,また,血管においては血管内腔の変化や中膜平滑筋の増殖などが高血圧に伴う代表的な構造上の変化である.これらの構造変化は負荷に対する適応現象としての側面をもつが,同時にこのような形態変化が長期にわたって持続するとさまざまな臓器障害の原因ともなる.臨床試験および動物実験の結果から,心臓あるいは血管局所におけるレニン−アンジオテン
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 503-507 (2005);
View Description
Hide Description
2005年3月にアメリカ食品医薬品局(FDA)から薬理ゲノミクスに関するガイダンスが報告され,薬理ゲノミクスはゲノム創薬やテーラーメイド薬物療法における重要な役割だけではなく,世界の薬務行政においても中心的課題となりつつある.薬理ゲノミクスは医薬品の作用/副作用に関与する遺伝子クラスターを同定し,ゲノム/プロテオーム機構,薬物応答の個体差機序を解明し,テーラーメイド薬物療法を可能にする.さらに最終目的として,未解決のヒト病態(おもに多因子疾患)に有効な新しい薬物療法を確立することにある.精密なゲノム地図が
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 509-513 (2005);
View Description
Hide Description
高血圧の治療は,その合併症の臓器障害の予防・進展抑制が最終目標である.高血圧性臓器障害の基本病態である動脈硬化は高血圧に由来する機械的刺激に加えて,レニン−アンジオテンシン−アルドステロン系,サイトカインなどの液性因子,さらにインスリン抵抗性に代表される代謝異常の病態などが複雑に関連しつつ発症・進展していく.これまでの精力的な高血圧性臓器障害に関する研究は,同時に降圧薬が本来の降圧作用以外にいろいろな副次的な作用をもつ知見を得て,これらが高血圧性臓器障害抑制に影響を及ぼす可能性が示された.“降圧薬”の降圧
-
Source:
医学のあゆみ 214巻5号, 515-518 (2005);
View Description
Hide Description
日本の国民医療費の総額は年間31兆円を超え,なかでももっとも大きなもののひとつが高血圧症の治療に費やされる費用である.医療の経済学的評価を行うときには総費用(直接費用および間接費用)と健康改善度の両者を比較する.健康改善度を表す手段として効果(effectiveness),効用(utility),便益(benefit)の3種がある.高血圧治療を受けた患者(あるいは受けなかった患者)全員で同一の健康改善効果が得られることがないため,高血圧治療の医療経済学的評価を行うときは集団での解析が必要である.これまでに