Volume 219,
Issue 11,
2006
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あゆみ アスベスト関連疾患
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医学のあゆみ 219巻11・12号, 809-809 (2006);
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医学のあゆみ 219巻11・12号, 811-816 (2006);
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アスベストは天然の繊維状ケイ酸塩鉱物の総称で,クリソタイル,アモサイト,クロシドライト,および繊維状のアンソフィライト,トレモライト,アクチノライトをいう.アスベストは粉砕で縦に細く裂けて極細の繊維となって,鼻毛や気管・気管支の繊毛を通り越して肺胞にまで到達しやすい.クロシドライトとアモサイトはとくに細くなりやすく,さらに酸・アルカリに溶けず体内耐久性が高い.肺内に長期間とどまったり胸腔や腹腔に移動したりして,肺癌や中皮腫を発生させる危険性の高いアスベストである.アスベスト関連疾患の確定診断や労災認定などで吸入アスベスト量が重要な情報となる場合がある.体内に残されたアスベスト量からそうした曝露評価を行うには,分析電子顕微鏡(透過電子顕微鏡にエネルギー分散型X線分析器を装着したもの)による方法が優れているが,だれもがすぐにできる方法ではない.アスベスト曝露評価法として本稿では,容易にできる光学顕微鏡を用いて肺組織あるいは肺胞洗浄液(BALF)のなかの石綿小体を計数する手法を紹介した.
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医学のあゆみ 219巻11・12号, 817-820 (2006);
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中皮由来の悪性腫瘍である中皮腫の原因の多くはアスベストであるといわれている.中皮腫の発生には,繊維と細胞との物理的相互作用,繊維由来のフリーラジカルによるDNA損傷などの直接的作用のほか,マクロファージなどの炎症細胞による活性酸素種,細胞増殖因子の産生を介した間接的作用もあり,発生機序は複雑である.これまでに,ヒト中皮腫組織あるいは腫瘍細胞株の分子生物学的解析結果から,特定領域の染色体欠失,p16,NF2などの癌抑制遺伝子の異常が高頻度に認められることなどが報告されている.しかし,いまだ中皮腫の発生機序を十分に説明できる遺伝子異常は明らかでない.本稿ではアスベストによる中皮腫発がんの分子機構について,治療研究への応用も期待される中皮腫の動物実験モデルの報告を含めて概説する.
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医学のあゆみ 219巻11・12号, 821-825 (2006);
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アスベスト曝露は悪性中皮腫と肺癌を引き起こす.悪性中皮腫はアスベスト以外ではほとんど起こらないが,肺癌はさまざまな原因で起こるので,原因を特定するのが難しい.分子生物学的な解析により腫瘍の原因が推定できる場合がある.癌遺伝子K−rasや癌抑制遺伝子p53の変異パターンから癌原因子を推定する試みが行われてきた.アスベスト関連の肺癌ではK−ras変異が高頻度でみられるという.p53遺伝子変異には喫煙と関連するものがあることが知られている.ではアスベストと関連するp53変異はないのであろうか.さらに,染色体レベルの変異と相関するloss of heterozygosity(LOH)についてもアスベスト曝露との相関を調べた研究を紹介する.
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医学のあゆみ 219巻11・12号, 827-830 (2006);
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アスベストへの曝露による疾患の代表は,非腫瘍性疾患としてのアスベスト肺と,腫瘍性疾患としての中皮腫および肺癌である.アスベスト肺は塵肺症の一型であり,末梢肺の呼吸細気管支周囲からはじまる線維化とアスベスト小体の沈着が特徴である.画像診断ではHRCTで小葉中心性に分布する多くの粒状影をみることが特発性肺線維症との鑑別点となる.中皮腫はその大半がアスベスト曝露によって生じる特異な腫瘍であるが,分子生物学的な研究によってもその発生機序についてはいまだ明確でない.その組織像は上皮型,肉腫型,二相型,線維形成型など多彩であり,その病理診断は難しい.そこで確定診断のためには免疫組織化学的染色が有用であるが,組織型に応じて適切な抗体を選択することが重要である.また,小さな生検材料を用いる場合は,中皮細胞の反応性過形成や線維性胸膜炎との鑑別診断を慎重に行う必要がある.
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医学のあゆみ 219巻11・12号, 831-836 (2006);
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アスベストとは天然に産する鉱物線維のことで,耐熱性,耐薬品性,絶縁体性などの諸特性に優れているため,3,000種を超える利用形態がある.戦前,戦後を通じて長く利用され,とくに高度経済成長期において使用量の増加と輸入量の増加がみられた.しかし,欧米にてアスベストの健康被害に対する危険性が指摘され,昨今のマスコミ報道などにより,アスベスト問題は当初の労働環境問題から一般環境汚染による一般住民の健康被害問題として取り上げられるようになってきている.これらのことから,アスベスト曝露関連疾患は現在もっとも注目されかつ重要な疾患のひとつである.一般にアスベスト曝露関連疾患として,胸膜病変では,1胸水,2限局性プラーク,3胸膜石灰化,4びまん性胸膜肥厚,5悪性胸膜中皮腫があげられ,肺病変では,1石綿肺,2円形無気肺,3肺癌などがあげられる.これらの画像の特徴を知ることは,検診のみならず日常臨床においても重要である.
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医学のあゆみ 219巻11・12号, 837-841 (2006);
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悪性中皮腫は以前よりアスベスト曝露との因果関係が知られていたが,昨今のアスベストによる健康被害は労働者のみならず工場周辺住民をも巻き込んだ社会問題に発展し,政府,自治体,企業はその対応を迫られている.悪性胸膜中皮腫の診断はかならずしも容易ではなく,早期発見・早期診断には従来の診断法に加えて,特殊光内視鏡システムを導入した胸腔鏡検査,中皮腫特異的に発現する分子に着目した病理組織診,新規血清バイオマーカーの臨床応用などが重要な役割を果たす.また,治療成績の向上には,抗中皮腫活性をもつ新規抗癌剤の開発,手術療法・化学療法・放射線療法を併用した集学的治療法の確立,分子標的治療の臨床導入などが必要不可欠である.
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医学のあゆみ 219巻11・12号, 843-846 (2006);
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アスベスト関連疾患における呼吸器外科の役割は,1診断への寄与,2十分な検体確保,3手術,の3点からなる.1については胸腔鏡(VATS)による胸膜生検は侵襲度が高いが,診断率も高く,他の手段で診断できない胸膜疾患の最終的診断法である.また,手術候補者に対する外科的診断法として縦隔鏡,対側胸腔鏡,腹腔鏡があげられ,これらによる正確な病期診断は手術の大前提である.2については,外科的診断術あるいは手術によって得られる腫瘍組織は,特殊な病理学的精査,分子生物学的検索,抗癌剤感受性テストなどを行うのに十分な質と量がある.中皮腫のような比較的まれな疾患の場合,多施設との共同研究や将来の研究のためにも十分な検体確保はきわめて重要な点である.3については胸膜切除術や胸膜肺全摘術が行われる.とくに胸膜肺全摘術は根治をめざすものであるが,手術の侵襲が大きいわりに成績は不良で,いまだ満足すべきでない現状である.
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医学のあゆみ 219巻11・12号, 847-850 (2006);
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腹膜中皮腫は全中皮腫の約10%を占めるまれな悪性腫瘍である.アスベスト曝露歴を有する比率は胸膜中皮腫よりも少ないが,高濃度曝露が多い.胸膜中皮腫に比べ女性比率が高く,組織亜型の構成は胸膜のそれとは異なっている.腹腔内に限局して腫瘍が発育するため,治療は局所療法に重点がおかれてきた.しかし,新規葉酸拮抗薬などの良好な抗中皮腫活性をもつ抗癌剤が登場し,全身化学療法による奏効が得られるようになっている.
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フォーラム
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医学のあゆみ 219巻11・12号, 853-853 (2006);
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医学のあゆみ 219巻11・12号, 854-855 (2006);
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医学のあゆみ 219巻11・12号, 857-858 (2006);
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医学のあゆみ 219巻11・12号, 859-861 (2006);
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TOPICS
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産科学・婦人科学
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医学のあゆみ 219巻11・12号, 865-866 (2006);
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 219巻11・12号, 866-868 (2006);
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神経精神医学
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医学のあゆみ 219巻11・12号, 868-870 (2006);
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