Volume 224,
Issue 1,
2008
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1月第1土曜特集【がん分子標的治療の最先端】
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医学のあゆみ 224巻1号, 1-1 (2008);
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モノクローナル抗体
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医学のあゆみ 224巻1号, 5-10 (2008);
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EGFRファミリーのひとつであるHER2蛋白は細胞膜上でホモ・ヘテロダイマーを形成し過剰発現することで,癌の増殖・転移に重要な関与をしている分子である.このファミリーのひとつ,HER2に対する基礎研究は古くから行われ,立体構造の解明により結合部位の異なる抗体療法として,trastuzumabとpertuzumabの2剤の臨床応用・研究が進んでいる.すでにtrastuzumabは多くの大規模臨床試験の結果から,再発乳癌・早期乳癌の標準的治療と位置づけられている.Pertuzumabも再発乳癌で,trastuzumabとの併用による第㈽相試験が海外で開始されている.乳癌は旧来の病理学的分類から,マイクロアレイを使った分子機構の違いによる分類が進み,個々の乳癌に対するホルモン療法を含めた適切な個別化治療が模索されている.さらに,trastuzumab抵抗性のメカニズムの解明やその対策など,新しい分子標的治療薬の開発とともに,研究は日進月歩で進んでいる.
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医学のあゆみ 224巻1号, 11-15 (2008);
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抗vascular endothelial growth facto(r VEGF)療法をどのように臨床応用するか,現在の重要な課題である.HER2発現のような癌と正常との間の大きなthresholdは存在せず,タキサンを中心とする化学療法との併用,HER2陽性乳癌におけるtrastuzumabとの併用,ホルモン受容体陽性乳癌におけるホルモン療法との併用が原発性乳癌の臨床試験において検討されている.なかでも軸となる治療法がないホルモン受容体陰性,HER2陰性の乳癌に対する有用性が期待されている.効果の予測はまだ難しく,効果のモニタリングが種々のアッセイ系を用いて試みられている.併用抗癌剤の選択,投与期間,投与のタイミングなどに関するさまざまな角度からの検討も行われている.
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医学のあゆみ 224巻1号, 17-22 (2008);
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血管内皮成長因子とその受容体を標的とした様々な薬剤が開発されているが,消化器癌に対して有用性が確立しているものはbevacizumab(BV)のみである.BVと化学療法の併用は切除不能進行・再発大腸癌に対する一次治療,二次治療において生存期間の延長が示された.三次治療における有用性は示されていない.術後補助化学療法における有用性は検証中である.作用機序の異なる分子標的薬との併用も検証されている.膵癌に対してgemcitabine(GEM)との併用では有用性が示されなかったが,GEM+erlotinibとの併用による試験が進行中である.胃癌に対してはcapecitabine/fluorouracil+cisplatinとの併用において有用性が検証中である.効果予測因子となるバイオマーカー,至適投与量や一次治療以降にBVを継続すべきかが今後の課題である.
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医学のあゆみ 224巻1号, 23-26 (2008);
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癌細胞を直接攻撃するのではなく,腫瘍に酸素と栄養を供給する腫瘍血管を標的とする治療法の開発が注目されている.腫瘍血管を標的とする薬剤vascular targeting agen(t VTA,広義)は血管新生阻害剤angiogenesis-inhibiting agent(s AIA)と血管破壊剤vascular disrupting agents(VDA)/vascular targeting agen(t VTA,狭義)に大きく分類される.VDAは腫瘍の既存の腫瘍血管の選択的遮断をもたらす薬剤である.AIAとしては抗VEGF抗体であるAvastinIやマルチターゲット型チロシンキナーゼ阻害剤であるSutentIなどがすでに臨床応用されている.AIAによる血管新生阻害療法は,アジュバント治療や癌の発症予防といった腫瘍細胞数が比較的少ない場合にもっとも効果が期待される.一方,VDAの作用メカニズムでは既存の血管閉塞による腫瘍虚血により細胞の壊死を惹起するため,より大きな腫瘍や進行癌への治療効果が期待される.VDAでは血管内皮細胞への作用などにより血管の閉塞や血流遮断効果がもたらされるが,腫瘍血管への選択性が課題である.前臨床段階の研究では,VDAは従来の細胞障害性抗癌剤や放射線治療,温熱療法などとの相乗作用が認められている.VDAは低分子薬剤とligand-directed薬剤に分類される.低分子薬剤としては,tubulin binding agentsであるCombretastatin A4 phosphate,ZD6126,AVE8062やflavonoidなどが知られている.Ligand-directed薬剤は,腫瘍血管に特異性のある抗体,ペプチド,growth factorを用いて,より腫瘍血管遮断の選択性の向上が期待されている.本稿では現在開発段階にあるvascular disrupting agentsの代表的な薬剤を取り上げる.
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医学のあゆみ 224巻1号, 27-31 (2008);
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抗体療法の出現によっていくつかの癌種は治療法や疾患の概念が変化したが,そのなかでも悪性リンパ腫の治療は抗体療法によって変化した.リツキシマブはB細胞分化抗原であるCD20分子を標的分子としているが,最近になって,B細胞性リンパ腫のCD22抗原を標的にした抗体療法の開発が脚光を浴びつつある.CD22抗原もまた成熟B細胞に特異的な膜抗原であるが,細胞質内にはpro-B細胞後期からpre-B細胞初期まで発現し,成熟B細胞になると細胞表面に発現するようになる.このCD22を分子標的としたCMC-544は抗体医薬であるが,カレキアマイシンを抱合したものであり,抗体-抗原が細胞質に取り込まれて作用する.CMC-544の臨床試験が進められており,今後リンパ腫治療で期待される薬剤のひとつである.
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医学のあゆみ 224巻1号, 33-38 (2008);
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癌は高頻度に骨転移を合併し,骨痛,病的骨折,神経麻痺などの骨合併症のために患者のQOLを著しく低下させることが多い.骨転移の形成・進行には,破骨細胞による骨吸収活性の亢進が重要であることが明らかになっている.RANKL(receptor activator of NF-κB,リガンド)/RANK(レセプター)/OPG(デコイレセプター)系が破骨細胞の主要な活性調節系であることが明らかになり,RANKL活性の抑制は骨転移に対するあらたな治療法として期待される.ヒト型RANKLモノクローナル中和抗体(denosumab)の臨床試験が開始され,骨転移患者における皮下注射の第II,III相試験において著明な骨吸収マーカー低下が得られ,また重篤な副作用がみられないことが報告された.現在,骨合併症の減少をエンドポイントとしたビスフォスフォネートとの大規模比較臨床試験が開始されている.
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低分子阻害剤
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医学のあゆみ 224巻1号, 41-44 (2008);
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HER2陽性乳癌に対して分子標的薬剤であるラパチニブは有効である.ラパチニブはチロシンキナーゼを阻害することにより,HER2の増殖シグナルを抑制し癌細胞の増殖を阻止する.トラスツズマブに耐性化したHER2陽性転移乳癌に対して,ラパチニブはカペシタビンとの併用により無進行期間を2倍に延長させる.おもな毒性は発疹と下痢である.重篤な心毒性は報告されていない.ラパチニブは脳転移に対する効果が示唆される.早期乳癌における有効性を検証するために大規模な比較試験が進行中である.HER2陽性乳癌に対するラパチニブは,乳癌治療の中心薬剤のひとつになるであろう.
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医学のあゆみ 224巻1号, 45-50 (2008);
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上皮成長因子受容体(EGFR)の過剰発現はいろいろな癌腫の予後不良因子とされる.このチロシンキナーゼを阻害する小分子蛋白キナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)であるゲフィチニブとエルロチニブが臨床で使用できるようになった.非小細胞肺癌に対する生存期間延長効果はさきにエルロチニブで証明されたが(BR21試験),ようやくゲフィチニブでもドセタキセルに対する非劣性が証明された(INTEREST試験).また,これらの薬剤がとくに奏効する患者の多くにEGFR遺伝子変異が存在することが報告された.しかし,その限られた集団におけるEGFR-TKIによる延命効果は現在も証明されていない.EGFR-TKIへの耐性化のメカニズムも解明されつつあり,これらを克服する戦略に期待がもたれている.EGFR-TKIの登場により非小細胞肺癌の分子学的な理解が深まったが,いまだ難治性であることには変わらず,血管新生阻害薬との併用など検討すべき課題は多い.
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医学のあゆみ 224巻1号, 51-54 (2008);
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c-metは肝細胞増殖因子(HGF,SF)の受容体として細胞の遊走,浸潤,増殖,生存や形態形成に重要な働きをしている.さまざまな癌でc-metの過剰発現が報告されており,c-metの過剰発現と予後不良との関係が報告されている.c-metは癌組織では腫瘍増殖や浸潤,血管新生を促進し,腫瘍の増殖・転移に関与していることから,癌のあらたな治療標的として注目されている.現在,c-met阻害剤としてARQ197,XL880,PF-02341066などが開発されており,それぞれc-metに対する特異性が異なる.それぞれの薬剤に対し現在臨床試験(第II相試験,第III相試験)が行われており,その効果が示されつつある.今後,他の分子標的治療や化学療法との組合せにより,癌の種類に応じたより有効な治療法が開発されるものと思われる.
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医学のあゆみ 224巻1号, 55-59 (2008);
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イマチニブはBCR-ABL,KIT,血小板由来増殖因子受容体(platelet-derived growth factor receptor:PDGFR)蛋白質を分子標的とし,慢性骨髄性白血病,フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ白血病,消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor)に用いられ,高い治療効果と良好な認容性を示している.これら以外に,わが国での保険適応の問題はあるが,好酸球増多症候群や好酸球性白血病,骨髄異形成/骨髄増殖症候群,全身性肥満細胞症の一部,隆起性皮膚線維肉腫にも有効性が認められている.しかし,最近,イマチニブ治療の継続とともに標的蛋白質の構造変化(遺伝子変異)を伴う耐性腫瘍の出現が臨床上の問題となっている.
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医学のあゆみ 224巻1号, 61-64 (2008);
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SunitinibはPDGFR,VEGFR,KIT,RETおよびFLT3を標的とする経口マルチターゲットチロシンキナーゼ阻害剤である.imatinib耐性消化管間質腫瘍(GIST)および進行腎細胞癌を対象にした臨床試験において良好な成績が示された.GIST症例を対象とした臨床試験ではimatinib耐性とされるエクソン9,エクソン13変異を有する患者にも有効であることが示されている.これらの結果をもって,2006年アメリカのFDA(食品医薬品局)で承認され,現在,わが国においても承認申請中である.また,乳癌,神経内分泌腫瘍,大腸癌,胃癌などにおいても臨床開発が進行中である.おもな有害事象として疲労・無力症や高血圧,下痢,血球減少などがあるが,それら以外にも多彩な副作用があるので,使用にあたっては十分な注意が必要である.
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医学のあゆみ 224巻1号, 65-69 (2008);
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著者らはNF-κB阻害剤の探索を行い,分子設計によってDHMEQを発見した.DHMEQは動物実験でリウマチや腎炎症などへの抗炎症活性を示したほか,前立腺癌,乳癌,甲状腺癌,多発性骨髄腫,成人T細胞白血病などに対して強力な抗癌活性を示した.DHMEQやCD20抗体rituximabは,直接的または間接的にNF-κBを抑制することで抗癌剤への増強効果も示した.DHMEQを用いた一連の研究成果により,NF-κB阻害剤はかならずしも顕著な毒性を示さず,多くの難治性癌に有効で,新しい抗癌剤として有望であることが示された.
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医学のあゆみ 224巻1号, 71-74 (2008);
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ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)はヒストンのアセチルリシン残基の脱アセチル化反応に関与し,癌抑制にかかわる遺伝子の転写活性を制御することから,癌に対する分子標的治療薬の開発ターゲットとなっている.このような背景を踏まえ,著者らはHDAC阻害薬の探索を行ってきた.そのなかで,著者らはHDACアイソフォームのひとつであるHDAC6を選択的に阻害する化合物を見出した.また,それらの阻害薬は特徴的な腫瘍細胞増殖阻害活性を有することを明らかとした.これらの発見によりHDAC6選択的阻害薬はHDAC6の生理作用を
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医学のあゆみ 224巻1号, 75-79 (2008);
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PI3K-Akt経路やmTORは細胞周期の進行や抗アポトーシス作用により腫瘍細胞の増殖に深く関与している.これらを標的とする分子標的薬剤が開発され,mTOR阻害剤であるCCI-779やRAD001,AP23573の臨床試験が進行中である.また,CCI-779はFDAにより2007年5月に進行性腎細胞癌を適応症として承認され,その臨床応用が期待される.また,mTOR阻害剤の効果や毒性を予測するバイオマーカーを探索することも今後重要と考えられる.
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医学のあゆみ 224巻1号, 81-86 (2008);
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乳癌の約60〜70%はエストロゲン依存性腫瘍であり,エストロゲンが乳癌の発生・進展などにおいて重要な役割を果たしている.近年,乳癌組織局所でのエストロゲン濃度の低下を狙ったアロマターゼ阻害剤が開発され,閉経後乳癌に対するホルモン療法の主流となりつつある.乳癌組織局所でのエストロゲン合成・代謝にはステロイドサルファターゼ(STS)も重要な役割を果たしており,乳癌治療におけるあらたな標的として注目されている.2006年,STS阻害剤のphase1試験成績がはじめて発表され,末梢血リンパ球中および腫瘍内STS活
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医学のあゆみ 224巻1号, 87-92 (2008);
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オーロラとは,医学生理学領域では真核生物の染色体有糸分裂を制御している蛋白質キナーゼ(蛋白質をリン酸化する酵素活性を有する蛋白質)を指す.私たちの体はたった1個の受精卵から出発し,細胞分裂を繰り返して数十兆個もの細胞からなる成体を完成させる.この過程でかならず1個の親細胞から2個の娘細胞への正確な染色体の分配が必要であり,その過誤は子孫細胞に重大な影響を与える.オーロラキナーゼは染色体を正確に分配する細胞内の装置を制御する.また,癌細胞では生体内での優位な細胞の分裂と生存を保証するために,オーロラキナーゼとその基質群が過剰に発現している.それゆえ,これらを分子標的とした癌の治療が可能であると考えられる.実際,オーロラを阻害する低分子量化合物が開発されている.オーロラキナーゼの活性発揮に重要なATP結合ポケットを阻害する低分子量化合物が抗癌剤として臨床応用試験へと進んでいる.
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医学のあゆみ 224巻1号, 93-96 (2008);
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【Purpose】新規サバイビン発現抑制剤YM155の安全性を各種固形癌患者を対象として検討を行うことにより,本剤のMTDを決定するとともに薬物動態の検討および抗腫瘍効果の観察を行った.【Patient andMethod】YM155単剤におけるMTDを決定するべく,初回投与量を1.8 mg/m2/dayとして10.6 mg/m2/dayまでの非盲検Dose Escalating P-I Studyを行った.1サイクルはYM155を168時間持続点滴静脈内投与後14日間休薬とした.【Results】34名の各種固形癌患者が組み入れられ,33名(非小細胞肺癌7例,食道癌6例,大腸癌4例,胸腺癌3例,甲状腺癌2例など)にYM155が投与され,安全性を評価された.DLTとして6.0 mg/m2/day投与群でAST上昇1例,10.6 mg/m2/day投与群で血清クレアチニン上昇が2例みられた(うち1例はリンパ球数減少も認められた)ため,MTDは8.0 mg/m2/dayと決定された.おもな副作用は,倦怠感,尿中ミクロアルブミン増加,発熱,貧血/ヘモグロビン減少,リンパ球数減少でありいずれも高用量において高頻度に認められたが,蓄積的な有害事象はみられなかった.定常状態の血漿中未変化体濃度(Css)はほぼ用量依存的であり,1.8〜10.6 mg/m2/dayの用量範囲でおおむね線形であった.サイクル1および2における薬物動態パラメータについてサイクル間における違いはみられなかった.RECISTガイドラインに基づくobjective responseは認められなかったが,9例がSDと判断され,そのうち5例にtumor shrinkageが認められた.【Conclusion】YM155の各種固形癌患者33名における忍容性は良好であった.DLTは腎毒性であり,MTDは8.0 mg/m2/dayであった.YM155の有用性について単剤あるいは併用で今後さらに検討していく必要がある.
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医学のあゆみ 224巻1号, 97-102 (2008);
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医学のあゆみ 224巻1号, 103-107 (2008);
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近年,癌や白血病の治療として低分子化合物による分子標的療法が注目されている.慢性骨髄性白血病に対するBcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤GreevecIの著明な効果がきっかけとなり,さまざまなキナーゼ阻害剤の臨床応用が期待されている.なかでも恒常的活性型サイトカインレセプターFLT3-ITDはAML患者の約30%で認められ,予後不良と相関があり,FLT3阻害剤の開発には注目が集まった.また最近,骨髄増殖性疾患(MPD)の50〜90%にチロシンキナーゼのJAK2の活性型変異が認められることが報告され,JAK阻害剤にも注目が集まっている.MPD患者細胞で認められるJAK2変異の多くは617番目のバリンがフェニルアラニンに置換される点突然変異(V617F)であり,恒常的活性化が認められる.現在,多くの製薬会社がJAK阻害剤の開発でしのぎを削っている.本稿ではFLT3阻害剤とJAK阻害剤について,国内外の開発状況と海外での臨床試験を中心として最近の動向を紹介し,今後の展望について考察した.
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医学のあゆみ 224巻1号, 109-114 (2008);
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9番と22番染色体の相互転座によりフィラデルフィア(Ph)染色体が生じる.慢性骨髄性白血病(CML)およびPh染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)では,Ph染色体により産生されるBCR-ABL蛋白の恒常的チロシンキナーゼ活性化が発症原因と考えられている.ABLチロシンキナーゼ阻害剤イマチニブはCMLおよびPh+ALLに対する優れた分子標的薬である.しかし,病期の進行した状態ではイマチニブに対し耐性を獲得する症例も多い.そのため,イマチニブ耐性患者にも有効である第二世代ABLチロシンキナーゼ阻害剤とよばれる新薬の開発が盛んに行われるようになった.これら阻害剤として,すでに欧米で承認されているダサチニブおよび臨床試験が進行中のニロチニブ,ボスチニブ,および著者らが日本新薬と共同開発したINNO-406がある.また,これら新薬をもってしても無効な症例を対象に,オーロラキナーゼ阻害剤やその他のあらたな薬剤も試みられようとしている.