Volume 224,
Issue 3,
2008
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あゆみ 周術期輸血療法UPDATE
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医学のあゆみ 224巻3号, 181-181 (2008);
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医学のあゆみ 224巻3号, 183-189 (2008);
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周術期の輸血療法は出血に対するものと考えてよい.なかでも循環血液量を超えるような大量出血では特別な対応が求められる.もとより周術期の出血には,先天的にせよ,後天的にせよ術前に出血性素因であることが明らかな場合と予期せぬ出血をきたす場合があるが,前者は一部の疾患ではその対応は困難なことはあっても,ほとんどは手術前に対応は可能である.しかし,後者の場合の大部分は局所の止血困難であり,その対応はもっぱら局所的止血を貫徹する以外方法はない.循環血液量を超える大量出血や胸部外科領域における動脈瘤によって惹起される凝固障害はその原因が血小板や凝固諸因子の欠乏のためであり,逆に適切な病態の把握さえ行えば血小板やフィブリノゲンなどの凝固因子の十分な補充で対応は可能である.そのためには,止血凝固のメカニズム,検査の意義およびそれを行うタイミング,そして輸血検査の意義とそのタイミングを十分理解することが求められる.
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医学のあゆみ 224巻3号, 190-193 (2008);
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周術期の血液使用量が院内の使用量に占める割合は大きく,その適正使用を推進することは重要である.過剰な術前の血液準備による血液廃棄の削減対策としては,T & S法,MSBOSおよびSBOEを用いるべきである.外傷などの外科的急性出血では,ヘモグロビン(Hb)値10 g/dl以上では輸血の必要はないが,6 g/dl以下では輸血はほぼ必須である.一般的な外科手術の術中の輸血は循環血液量に対する出血量と,臨床所見,血液検査結果および循環動態とを指標として行う.循環血液量の15〜20%の出血には,細胞外液量補充液の投与,20〜50%の出血では人工膠質液を投与し,組織への酸素供給不足が懸念される際には赤血球濃厚液を投与する.50〜100%の出血では適宜等張アルブミン製剤を投与,それ以上では新鮮凍結血漿や血小板の投与を考慮する.一般外科手術においては重篤な心肺疾患や中枢神経系疾患がない患者では赤血球輸血のトリガー値はHb値で7〜8 g/dlとする.周術期には,血液各成分の体内分布,体内生産量を考慮した,より生理的な輸液・輸血療法により血液は適正に使用されなければならない.
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医学のあゆみ 224巻3号, 194-198 (2008);
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手術中のみでなく,手術前や手術後にも貧血や出血傾向などに対して輸血が行われることがしばしばある.出血量が多い手術では術前から赤血球濃厚液や血小板濃厚液,新鮮凍結血漿の準備が必要となる.輸血の可能性が低い手術では血液型不規則抗体スクリーニング法を用い,輸血の可能性が高い手術では最大手術血液準備量などを用いて血液製剤を準備する.適正な準備量としないと,術中に血行動態の悪化を招いて予後を悪くしたり,逆に貴重な血液製剤をむだにすることになる.輸血にあたっては,出血量や患者の全身状態,検査データを参考にして輸血を行う.しかし,大量出血や急速な出血が起こった場合には救命を最優先した輸血療法を行う必要がある.ときには交差適合試験の省略や,O型血など異型適合血を使用せざるをえない場合もある.厚生労働省の策定した輸血指針のほか,日本麻酔科学会および日本輸血・細胞治療学会が出した“危機的出血への対応ガイドライン”が参考になる.
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医学のあゆみ 224巻3号, 199-204 (2008);
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周術期の止血検査・モニタリングの目的は,手術に伴う出血リスクを事前に評価してハイリスク患者に対して可及的に予防措置をとれるようにすることと,時々刻々変化する術中の止血状態を評価して現在起こっているかあるいは起こることが強く予想される止血異常に対して,患者のかたわらで的確に輸血製剤や止血剤の投与を行うことである.しかし,一定の静的条件下に試験管内で起こる現象(凝固)が,実際の手術の際に体内の止血局所でダイナミックに起こる現象(止血)を正確に反映するとは考えられない.実際,多くの報告により,異常検査値から術中・術後の出血リスクを予想することはできないとされている.出血に対して的確に対処するためには患者のダイナミックな止血状態を患者に近接して適宜モニターすること(point of care)が不可欠である.その目的にはいまだに標準化には至っていないが,全血の血液凝固を総合的に連続記録する装置が適している.
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医学のあゆみ 224巻3号, 205-209 (2008);
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循環血液量を超えるような大量出血(3000〜4,000 ml以上)が起こった場合に,補液や赤血球製剤の輸血ばかりが優先されると止血のために必須の血小板や凝固因子の漏出により希釈性凝固障害を招く.したがって,速やかに血小板数のチェックと凝固検査(PT,APTT,フィブリノゲン値)を行い,止血能の評価を行うことが重要である.しかし,実際には血小板数や凝固因子量は出血量によりどの程度低下するのか見当をつけられるので,それぞれを止血可能レベルまで上げるための輸血治療を行う.この際もっとも重要なのは血中フィブリノゲン値で,すくなくとも100 mg/dlを維持しなければ止血不全を改善することはできない.そのためには新鮮凍結血漿(FFP)の輸血では不十分であり,フィブリノゲン製剤やクリオプレシピテートの投与が必要となる.しかし,これらの製剤の確保と使用には制限があり,十分な供給体制の整備が不可欠である.
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医学のあゆみ 224巻3号, 210-216 (2008);
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心臓血管外科手術は患者背景や術式に多様性があり,その標準化は非常に困難である.したがって,その輸血適応や,止血管理についても標準化はたいへん困難な作業となる.しかし,周術期輸血トリガー値を探索するランダム化比較試験も含めた臨床試験の報告が増加し,標準化に向けてのさまざまなデータが提示されつつある.本稿では製剤ごとにこれら報告について詳細に検討を試みた.各施設で主観ではなく客観的な根拠に基づく,血液製剤の適正使用を検討する参考となれば幸いである.今後,輸血トリガー値に関して,よく組織された,十分なパワーをも
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医学のあゆみ 224巻3号, 217-220 (2008);
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肝移植は技術的に大きな侵襲を伴うのみならず,凝固因子の産生源を置換する手術であるため,輸血療法のサポートなしには安全に施行することはできない.いったん希釈性凝固能障害が生じると外科側の止血操作のみでは解決しがたい術野全体からの出血に見舞われることがある.凝固因子の効果的な補充により,“出血傾向”→“凝固因子補充”→“出血傾向の改善”→“凝固因子喪失の回避”→“止血”という流れに導くことが可能であり,かつ有効である.
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医学のあゆみ 224巻3号, 221-226 (2008);
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周産期における出血は,わが国では現在でも妊産婦死亡の第一位を占める.したがって,産科大量出血に際しては不可逆的になる前に早期に診断し,早期に適切な治療をしなければならない.その治療には多くのスタッフが必要であり,緊急時の対応が可能な高次医療機関で対処すべきである.輸血の管理は出血量のみならず,血液検査所見,バイタルサインを参考にしながら行う.産科大量出血では容易に産科ショック・DIC,そして低フィブリノゲン血症をきたしやすいので,抗ショック療法・抗DIC療法に加え,補充療法として赤血球濃厚液輸血に引き続き早めにフィブリノゲン(新鮮凍結血漿投与)を補充する.なお,いかなる処置を行っても止血しない場合は,遺伝子組換え活性型血液凝固第VII因子製剤の投与も考慮する.そして,家族とたえず連絡を取り,逐一病状経過を伝えることはたいへん重要である.
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【関連トピックス】
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医学のあゆみ 224巻3号, 227-227 (2008);
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フォーラム
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医家向け電脳道具箱 その十(最終回)
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医学のあゆみ 224巻3号, 229-232 (2008);
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医学のあゆみ 224巻3号, 233-234 (2008);
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TOPICS
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免疫学
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医学のあゆみ 224巻3号, 237-238 (2008);
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医学のあゆみ 224巻3号, 238-239 (2008);
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神経内科学
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医学のあゆみ 224巻3号, 239-240 (2008);
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耳鼻咽喉科学
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医学のあゆみ 224巻3号, 240-241 (2008);
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連載
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ファーマコビジランスをもっと身近に 10
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医学のあゆみ 224巻3号, 243-246 (2008);
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2000〜2005年に日本で承認された新有効成分含有医薬品の承認条件の付与状況について調査したところ,承認条件として製造販売後調査・臨床試験の実施を課される新薬数が増加傾向にあることが明らかとなった.2003〜2005年に承認された新有効成分含有医薬品に限ると半数の品目に承認条件が付されている.また,承認条件のある品目では承認条件のない品目と比較して臨床開発期間が短い傾向がみられる.因果関係は明確ではないが,海外データの利用状況と承認条件の有無との間に関連性があることが示唆される.