Volume 224,
Issue 6,
2008
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あゆみ 異状死問題をこえて—法医学からの提言
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医学のあゆみ 224巻6号, 421-421 (2008);
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医学のあゆみ 224巻6号, 423-426 (2008);
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県立大野病院事件で産婦人科医が逮捕・起訴され,改めて医師法第21条(異状死届け出)に注目が集まってきた.異状死の届け出に関する問題点は,異状死の定義が明確でないことが根本にある.現在,日本法医学会の“異状死”ガイドライン,日本外科学会,日本学術会議,厚生労働省“リスクマネージメントマニュアル”などがあるが,日本法医学会では異状死を,診療行為の過誤や過失の有無を問わず届け出ることとしている.ほかは医療過誤によって死亡あるいはその疑いのあるものとしており,混乱を生じている.届け出る場合,法律では検案した医師となっているが,厚労省では施設長(病院長)としている.また,届け出は24時間以内となっているが,届け出に迷う場合は厚労省の本庁の指示を仰ぐとしており,24時間以内に届け出がなされない場合が多い.このように,異状死届け出に関して問題点が多く,早急な法改正が望まれる.
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医学のあゆみ 224巻6号, 427-431 (2008);
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学会などで新進気鋭たちが供覧する手術動画をみていると,成功裏に終わると知りつつも思わず全身が緊張し,説明しがたい“一種の不安”を感じることが少なくない.外科医の萎縮の心理とはまさにこれなのかもしれない.クリティカルな手技に際し,成果いかんでは警察への届け出義務(医師法21条)やその後の捜査などが脳裏に浮かぶようでは,外科医として難度の高い手術を敬遠したいと考えても責められまい.治療結果に満足できなければ,昨日まで信頼していた主治医を訴えざるをえない場面も少なくない.わが国には医療被害に対する補償制度がないことも大きな一因であろう.外科医は,患者のために最善を尽くしながらも,やがて患者と争わなければならない境遇を何と受け止めるであろうか.判決までの長い(かつて33カ月かかった)期間,平常心で難手術への挑戦を続けられるであろうか.かつて多くの外科医にとって法廷は縁もゆかりもない別世界であった.いまやメディアと社会全体が,ときに法曹界すら同調しつつ,医療における過失探しをはじめたかのように思える.
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医学のあゆみ 224巻6号, 433-436 (2008);
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“医療事故被害者は「医療は100%」という誤解に基づき,医師や病院を非難する”という言説がある.しかし,果たしてほんとうにそうだろうか.大淀病院事件と大野病院事件の遺族は,事故直後の病院側の対応に納得していない.両者のケースを考察してわかることは,患者側が求める“真相究明”と医療者が考える“真相究明”にはズレがあるらしいということである.患者側は医学的な妥当性だけでなく,事故に至るまでのプロセスにある詳細な“事実”を知りたいと思っている.その“思い”に医療者側が応えられなかった場合に,患者側は裁判に訴えるしか道がなくなる.医療者が“真相究明”を求める患者側に向き合うには大変な労力が必要だろう.しかし,両者ともに望まない裁判を回避するためには,患者側と医療者が粘り強く“対話”を続けるにはどうすればよいか,知恵を絞るべき時期に来ているのではないだろうか.
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医学のあゆみ 224巻6号, 437-441 (2008);
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当院では医療を行う過程で患者に予期せぬ重大な障害が発生した場合,速やかに第一報を医療安全対策室に報告することを取り決めている.報告を受けてきたなかで異状死届に値する事例にかかわり,患者家族,当該診療科の医師医療現場スタッフ,病院の反応などを通じて異状死届け出への解釈のばらつきと対応にとまどいを経験した.警察署の対応の問題として,所轄の警察署に連絡しても電話に応対する警察官によって扱い方が異なる.病院が果たすべきことは,有害事象に対し関係者や当事者とともに,あらゆる人的・物的資源をフル稼働させ真の原因究明に向けて行動を起こし,その結果をあらゆる職域で働く人びとに周知させることである.また,再発防止へ必要な知識や技術を病院全体で共有し,同様に全職員に周知することが重要である.医療現場に働く私たちは,自力解決への努力を恒常的に続けることによりはじめて,医療事故事例に対しての警察介入のもたらす効果を超え,今後の医療活動の安全と質の向上をはかることができるのではなかろうか.
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医学のあゆみ 224巻6号, 443-446 (2008);
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1999年に都立病院で発生した消毒液誤注事件以降,医師法21条に関する解釈は一般犯罪の端緒のほかに,医療にかかわる不審死の申告義務が確認された.医師は患者が死亡した場合は,自らの医療行為の検証と患者死体を客観的に検査(検案)して異状の有無を検索しなくてはならない.一方,歯科医師法には歯科医師の死亡診断権は規定しているが,医師法21条に該当する規定が存在しない.現在の歯科医療には,人の生命に関与する疾患や医療行為が存在するのに,法規と歯科医療の現状に距離感がある.現在,政府は診療関連死の死因究明機構の制度化を検討している.医療不審死を他の医療者が客観評価する時代がやってくる.歯科はこの状況を現認して国民医療を担う職者としての責務を再考しなくてはならない.
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医学のあゆみ 224巻6号, 447-451 (2008);
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医師法第21条異状死体届出義務が,法制定の時代的背景,条文の内容から犯罪捜査の端緒と考えている点については大きな異論はないはずである.その後,脳死・臓器移植に関連し,日本法医学会では脳死(体)の検視・検案との関係で議論を重ねてきた.その結果,脳死(体)を検視・検案し,異状でないことを確認し,臓器移植を実施する体制ができ,社会的に受け入れられるに至った.その間の議論を踏まえ1994年“異状死ガイドライン”は策定された.その後,ガイドラインは一定の理解を得たものと考える.しかし,診療関連死との関係で,医師法違反で逮捕者がでるに至って,ガイドラインに大きな異論が出てきている.これに対し2002年に日本法医学会は“考え方”を説明している.あらたな診療関連死の死因解明制度への取組みが進むなか,この制度への届け出の対象をどうするか,ガイドラインの意義を再度“考え方”から考える機会にしたい.
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医学のあゆみ 224巻6号, 453-456 (2008);
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欧米の死因究明制度は,1専門の行政機関が検案・解剖まで含め死因決定を行う方式と,2検死では捜査機関が主体となってかかわり解剖を大学の法医学研究所に委託する方式に大別できる.日本はその混合型となっている.また,届出すべき死体および届出先の分類については,1おおまかな定義を法定し細部を実務の運用を任せる方式,2死体の外的状況(屋外,屋内,病院内)で分ける方式,3具体的にポジティブリスト化する方式がある.ただしいずれの国も,診療関連死のみを他の死亡と異なる窓口に届出させたうえで特別の死因究明手続きを経る方式は採られておらず,診療関連死も通常の異状死と同様の手続を経る.医療評価や再発防止対策の仕組みと死因究明機関は独立している制度が多いように思われるが,いかに解剖情報を事故調査や再発防止に活用するシステムを構築するかは各国での課題であろう.
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医学のあゆみ 224巻6号, 457-461 (2008);
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日本とフィンランドはほとんど同じ大陸法系の死因究明制度をもっている.しかし日本の解剖率は先進国でもっとも低率であり,フィンランドはもっとも高率である.両国の違いは保健医療政策の違いによるところが大きいが,近年日本では殺人事件の事後発覚などの事件事故の見逃し,医療事故死の隠蔽などの医療行為関連死の問題,犯罪被害者遺族の放置など,死因をめぐるさまざまな問題が起こってきている.フィンランドに学び,異状死の定義を明確化し,死因究明を犯罪捜査の端緒としてとらえるだけではなく,司法解剖の拡充,法医の臨床化などを通じて,貴い人命の問題として保健医療政策の重要な柱とすることが,いまの日本には必要なのではないであろうか.
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医学のあゆみ 224巻6号, 463-466 (2008);
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わが国の検死制度には,1刑事司法上の司法検視・司法解剖と,2公衆衛生上の行政検視・監察医解剖の2つの制度が併存しており,体系的ではない.一方,世界基準ではトラブル予防などを含め検死目的が広義化されており,責任部署が明確で解剖率も高い.ドイツは司法解剖で一本化され,司法手続きの簡素化と司法検視・解剖の広義化が行われている.イギリス圏の死因調査は中立化され,検死陪審と連動する再発予防機能を備えている.世界基準から検死制度の改善点についてみると,検視・検死段階では刑事訴訟法の代行検視条項の改正,検視局の分離独立による中立化,検視・検死能力の向上策,検視・検死機関のインフラ整備と集約化・相互交流.法医解剖では解剖処分許可権者の問題と行政承諾解剖の廃止,監察医解剖とその全国展開,検死後では死因判定困難事例対策,再発予防と事故調などの関係,情報開示の必要性などが指摘でき,体系的な検死制度の改革が必要とされる.
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医学のあゆみ 224巻6号, 467-470 (2008);
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わが国の死因究明制度はたいへん貧弱であり,そのために殺人や事故の見逃しが起こっている.著者らは,民主党のなかでこの問題を取り上げ,学者や遺族らからヒアリングを行うなど検討を重ねた後,法案をつくり,現在衆議院に提出している.その第1は“非自然死体の死因の究明の適正な実施に関する法律案”で,法の目的を「死者及び遺族の権利利益の擁護並びに公共の安全と秩序の維持に資すること」としたうえで,警察のなかに独立した死因究明のための部署を新設し,専門職員が死因究明のための調査を行うことを規定した.第2は“法医科学研究所設置法案”で,法医学や法歯学,法中毒学など死因究明関連分野の専門家が検案,解剖,検査をための機関を設置することを定めた.死因究明には警察などが行う調査と医師の診断の両輪が欠かせないが,わが国はその双方が機能していないため,誤認検視が続出している.この2法案は両面からの制度的な手直しを狙ったものだ.
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医学のあゆみ 224巻6号, 471-476 (2008);
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フォーラム
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医学のあゆみ 224巻6号, 477-478 (2008);
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TOPICS
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免疫学
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医学のあゆみ 224巻6号, 481-482 (2008);
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神経内科学
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医学のあゆみ 224巻6号, 482-483 (2008);
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循環器内科学
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医学のあゆみ 224巻6号, 483-485 (2008);
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連載
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定位放射線治療—最新動向
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医学のあゆみ 224巻6号, 487-487 (2008);
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医学のあゆみ 224巻6号, 489-494 (2008);
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Radiosurgery(放射線外科)とは,局所的に一定の部位を,周辺の正常組織には障害を与えずに放射線照射を行う技術である.たとえば,脳腫瘍を,周辺の脳には障害を与えずにメスで摘出したような治療法なので,この俗称が一般的に使われるようになった.患者は病気に対して侵襲が少なく,安全で,不安のない医療をつねに求めているが,ガンマナイフはその期待に応えられる治療法として定着している.世界では2006年末までに40万人以上,日本では10万人以上の患者がこの治療を受け,優れた治療成績を示している.とくに転移性脳腫瘍,髄膜腫などの治療では手術で摘出したのと同様の治療成績をあげている.最近では三叉神経痛や各種の頑固な痛み,またパーキンソン病による振戦などの機能的疾患の治療に適応が広がっている.他方,ガンマナイフのようにアイソトープを用いないサイバーナイフなどの局所放射線治療機器の開発も進んでいる.