Volume 224,
Issue 7,
2008
-
あゆみ 再生医療とアンチエイジング
-
-
Source:
医学のあゆみ 224巻7号, 495-495 (2008);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 224巻7号, 497-500 (2008);
View Description
Hide Description
高齢者の疾患の成り立ちは複雑であるが,若いころからの病気が臓器機能の加齢変化に伴い病態が変化するものと,加齢とともに増加し高齢者に比較的特有なものとに大別され,後者は老年病あるいは老年疾患と総称される.老年病は生命予後を規定する観点からも重要であるが,生活機能障害や要介護状態を引き起こし,本人および家族などのQOL(quality of life)を障害する点が臨床的に重要であり,successful agingの実現を妨げる要因ともなっている.また,高齢者は加齢に伴う生理機能の変化を基盤に機能障害を起こす点で若年者と異なっており,残存した身体機能を保持し,社会復帰をはかることに主眼をおいた医療が必要とされる.近年の発生学や幹細胞生物学を背景とした再生医療の進歩はめざましく,徐々に実用化されつつあり,老年病に対する治療法としてもその応用性,実用化に期待が寄せられる.本稿では老年病の成因や疾患背景も含め,再生医療に通じる知見や応用性について概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 224巻7号, 501-504 (2008);
View Description
Hide Description
抗加齢医学は1990年代に欧米ではじまった考え方で,その目的は日々の健康増進と生活の質(QOL)の向上,そして結果として健康長寿を達成することにある.研究成果は病的老化の予防という予防医学に利用する.2001年に設立された日本抗加齢医学会の活動経緯について紹介する.老化に関係する検査項目・バイオマーカーとその評価方法,日本人の加齢に伴うデータ変化,医科から歯科領域への広がり,皮膚科・眼科領域の老化度評価,サプリメント・機能性食品の臨床評価,アンチエイジングドックから企業健診・地域医療への応用へと,抗加齢医学の概念は着実に広まりつつある.抗加齢医学はそれぞれの専門領域や立場の差を越えた,ふところの広い学問といえよう.今後の展望として抗加齢医学が透明性と中立性を保ち,高い視点から医学的証拠を着実につみあげつつ適正な早さで進むことをめざすべきと考える.
-
Source:
医学のあゆみ 224巻7号, 505-510 (2008);
View Description
Hide Description
神経幹細胞は胎児期から成体に至るまでおもに脳室周囲に存在し,さまざまな神経系の機能に関与している.増殖できる自己複製能と,多様な細胞に分化できる多分化能をもつことから,加齢に伴って増加する脳卒中や認知症,神経変性疾患などにおいて,一旦傷害を受けた組織における神経再生への応用が期待されてきた.成体脳において神経幹細胞は側脳室側壁の脳室下帯(SVZ)と海馬歯状回の顆粒下層(SGZ)に存在するが,とくに海馬歯状回では加齢とともにニューロンの新生が減少することが知られている.一方で,環境の改善や成長因子の存在下,変性や損傷により障害された脳においてニューロン新生が促されることも知られており,内在性の神経幹細胞を用いた神経再生の可能性が示唆されている.また,細胞移植の観点からは,体細胞をリプログラミングすることで人工多能性幹細胞(iPS細胞)が樹立され,倫理的な問題や免疫拒絶などの問題点を克服したあらたな神経再生の戦略が期待される.
-
Source:
医学のあゆみ 224巻7号, 511-517 (2008);
View Description
Hide Description
ヒトを含む成体哺乳類の海馬歯状回のsubgranular zone(SGZ)や側脳室外側壁のsubventricular zone(SVZ)には神経幹細胞が存在し,生涯を通じて新しい神経細胞が産生され,神経回路に組み込まれる.この発見に伴い,幹細胞の増殖・分化能を利用し,神経組織を再構築し,機能を再生しようという試みがなされはじめた.眼組織においても,成体において幹細胞・前駆細胞が存在することが明らかになった.しかし近年の研究により,哺乳類の老化には幹細胞を含む組織の再生能力の低下が伴うこと,その原因のすくなくとも一部は加齢による幹細胞自身の老化によることが指摘されている.本稿では神経組織のひとつである網膜に着目し,発生と再生,エイジングについて考察したい.
-
Source:
医学のあゆみ 224巻7号, 519-523 (2008);
View Description
Hide Description
臓器・組織の発生・再生には幹細胞の存在が必須であり,幹細胞が増殖・分化することにより組織の機能・形態は維持されている.すなわち,組織を構成しているすべての細胞の源は幹細胞である.皮膚付属器である毛包は,自律的に再生・減退を繰り返す器官であり,その活発な再生現象を解明するため幹細胞システムの研究が進められてきた.これまでに毛のもとになる表皮角化細胞の幹細胞の局在や遊走などの動態が解明され,毛が伸びる仕組みがわかってきた.さらに,細胞表面マーカーなどを用いて,表皮角化細胞の幹細胞のクローニングが進められている.また,毛に色をつけるメラノサイトの幹細胞システムや,毛の発生・再生を制御する毛乳頭細胞の性質についてもあらたな知見が得られている.毛そのものの源である表皮角化細胞の幹細胞を用いた毛髪再生,メラノサイトの幹細胞を用いた色素再生の臨床応用に向けたさらなる研究が期待される.
-
Source:
医学のあゆみ 224巻7号, 525-529 (2008);
View Description
Hide Description
歯周組織は歯根表面のセメント質から歯根膜,歯槽骨,歯肉と歯の周囲を構成する組織であるが,この歯周組織の崩壊の程度によって病態が分類される.アタッチメントロスのない仮性ポケットが存在するステージは歯肉病変であり,この状態では歯根膜の崩壊や,歯槽骨の崩壊は伴わない,いわば可逆的なステージである.一方,歯肉病変同様にプラークや歯石が沈着し,歯根膜と歯槽骨の崩壊を招いた結果,アタッチメントロスが生じるのが歯周炎である.この違いを招く大きな要素に,歯周組織の長期にわたる外因性刺激と免疫能があげられる.一度崩壊した歯槽骨は慢性的に移行する結果,自然治癒は困難となり,やがては歯の脱落を傍観せざるをえない状態を強いられることとなる.天然歯でいつまでも咀嚼できる口腔環境をめざして歯周組織を再生することは,この高齢化社会のQOL向上にとって重要な医療である.この歯周組織の再生に幹細胞を用いた組織再生の取組みが,現実的な医療となるのも間近である.
-
Source:
医学のあゆみ 224巻7号, 531-534 (2008);
View Description
Hide Description
皮膚は体表を覆う重要な器官であるが,そのために皮膚の老化は紫外線の影響を強く受けるとともに,その治療には機能のみならず美容的改善が要求される.皮膚のアンチエイジング治療は多様化し,これまでの美容外科,美容皮膚科的治療から美容内科的治療や再生医療といった新しい領域に広がりを見せている.培養真皮線維芽細胞を用いたしわ治療,培養毛乳頭細胞や培養表皮幹細胞を用いた毛髪再生医療は臨床研究がはじまっている.また,皮膚のたるみなどの治療を目的とした組織増大治療として,脂肪前駆細胞を利用した新しい脂肪移植治療が行われており,治療の有効性が報告されている.今後も,最近承認された自家培養皮膚製品をはじめ,細胞外基質や他の組織幹細胞などを使った治療など,再生医療研究の進展が期待されている.
-
Source:
医学のあゆみ 224巻7号, 535-538 (2008);
View Description
Hide Description
心筋細胞は,加齢に伴い酸化ストレスなどさまざまな刺激を受けることで老化が誘導される.しかし,成体における心筋細胞は終末分化細胞であり,老化あるいは細胞死に陥った心筋細胞は再生できないといわれてきた.近年,心臓内心筋幹細胞の存在を示唆する報告が多数出され,これら幹細胞による心筋再生の可能性が指摘されている.現在のところ,心臓内心筋幹細胞の有効な動員法あるいは大量培養法はなく,これに代わるさまざまな細胞ソースを利用した細胞移植が,あらたな心不全に対する再生医療として臨床応用されている.本稿では心臓の老化,およびその再生医療に関する最近の知見を紹介する.
-
Source:
医学のあゆみ 224巻7号, 539-544 (2008);
View Description
Hide Description
最近の高齢化社会は急速に進行し,それに呼応して運動器官の老化も重要な社会問題となり,運動器疾患を扱う整形外科領域にとって老化に対する治療や予防が重要な課題になっている.従来から60歳以上で全身の関節のどこにも退行性変化が起こっていない人はいないといわれてきた.このような変形性関節症や骨粗鬆症を中心とする退行性疾患に対する近年の治療学や予防医学にはめざましい進歩が認められる.一方,再生医療には胚性幹細胞(ES細胞)と組織幹細胞から各種の組織を再生させて治療に応用する方法に加えて,最近では万能細胞を利用するあらたな再生医療が開発されて注目を浴びている.著者らも,骨髄内に含まれる間葉系幹細胞を用いて骨や軟骨を再生させる一連の基礎研究を行い,その結果をもとに,倫理委員会の承認を得て臨床応用を行ってきた.すなわち,患者の骨髄を採取してセルプロセッシングセンター(CPC)で培養し,再生した骨および軟骨組織を組み込んだscaffoldを置換する骨関節疾患に対する再生医療を行ってきた.本稿では,その結果を報告するとともに,運動器の老化に対する治療や予防の今後の展望を述べたい.
-
Source:
医学のあゆみ 224巻7号, 545-549 (2008);
View Description
Hide Description
老化により吸収,萎縮した歯槽骨を再生する方法として,著者らは幹細胞による再生医療的手法を用いた.再生医療の三要素のうち,幹細胞には骨髄液より分離した未分化間葉系幹細胞を,足場,生理活性物質には自己多血小板血漿を用い,注入型培養骨と名づけた.低侵襲な組織再生療法である.現在,骨量不足時の骨移植に用いられるゴールデンスタンダードは自家骨移植であるが,侵襲が大きく,とくに,老齢となればあらたな健常部位に大きな侵襲を加えたくないのはなおさらである.一方,注入型培養骨は,(1)細胞採取のための侵襲は採血程度であり,(2)自己細胞を用いるため,安全性が高く,免疫拒絶を受けにくい,(3)注入型により複雑な形態にも対応可能である,(4)細胞の再利用ができるなどの利点をもつ.このようなアンチエイジング医療における細胞治療法はQOL向上に役立ち,高齢者の幸せな健康寿命を獲得するうえで有効であると考えられる.
-
フォーラム
-
-
Source:
医学のあゆみ 224巻7号, 552-555 (2008);
View Description
Hide Description
-
逆システム学の窓 12
-
Source:
医学のあゆみ 224巻7号, 556-559 (2008);
View Description
Hide Description
-
書評
-
Source:
医学のあゆみ 224巻7号, 560-561 (2008);
View Description
Hide Description
-
TOPICS
-
-
免疫学
-
Source:
医学のあゆみ 224巻7号, 563-564 (2008);
View Description
Hide Description
-
加齢医学
-
Source:
医学のあゆみ 224巻7号, 564-565 (2008);
View Description
Hide Description
-
形成外科学
-
Source:
医学のあゆみ 224巻7号, 565-566 (2008);
View Description
Hide Description
-
連載
-
-
定位放射線治療—最新動向 2
-
Source:
医学のあゆみ 224巻7号, 568-572 (2008);
View Description
Hide Description
Radiosurgeryは定位脳手術に起源をもつ放射線治療で,放射線を多方向から照射することで標的に集中させて治療を行う.これにより,病巣へ高エネルギー照射をすることで腫瘍組織だけを傷害させる.さらに,まわりの正常脳組織だけでなく身体への放射線被曝量を低く抑えた,きわめて低侵襲な治療方法である.よって手術による全摘困難例,全身麻酔のハイリスク症例などの場合にも治療可能である.適応疾患は,転移性脳腫瘍や髄膜腫,神経鞘腫,下垂体腫瘍,脳動静脈奇形,機能的疾患などが中心であるが,病巣の存在する部位や大きさにより制限を受けるため,効果が十分見込めない場合や治療戦略上不適なときは治療適応とはならない.これまでに良好な長期治療成績の報告は数多く,一治療法として確立された.今後は頭蓋内病巣だけでなく,脊髄・脊椎や躯幹部病変への応用が進んでおり,技術の発展が期待されている.