医学のあゆみ
Volume 224, Issue 10, 2008
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あゆみ NET(神経内分泌腫瘍)—新しい概念・診断・治療
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神経内分泌腫瘍(NET)の概念の変遷—WHO分類を中心に
224巻10号(2008);View Description Hide Description神経内分泌腫瘍ホルモンの発見とカルチノイドが提唱されるようになった時期は約100年前のほぼ同時期であるが,カルチノイドが神経内分泌腫瘍であると認識されたのは約50年後のことである.WHO分類初版では神経内分泌腫瘍は消化管,膵内分泌細胞に分類されているのみであったが,神経内分泌細胞が全身に分布することが注目され,全身のあらゆる臓器に存在することがわかり,WHO分類最新版では全身諸臓器の腫瘍に分類されるに至った.また当初,カルチノイドは異型に乏しく良性の性格を示す腫瘍と考えられていたが,転移する症例がみられることから,悪性度の指標について注目されてきた.WHO分類の変遷からみた神経内分泌腫瘍の概念について述べる. -
NET臨床の変遷—局在診断法の進歩と病態解明
224巻10号(2008);View Description Hide DescriptionNETに関する臨床では,臨床的関心の中心であった症候性NETに関して,根治術が局在診断法の進歩により可能となった.切除標本の病理学的研究からNETの性格的特徴が明らかにされて,根治的切除術のための標準的手術術式が定まってきた.非症候性NETの症例数も増加しており,肝転移をきたす前の切除が勧められる.肝転移例や非治癒例に対する症状緩和と腫瘍増殖抑制のために抗癌剤以外に長期作用性ソマトスタチンアナログ製剤も開発されて有用である.最近のNET臨床に至る変遷を述べる. -
わが国におけるNETの疫学的知見
224巻10号(2008);View Description Hide Descriptionわが国における消化管神経内分泌腫瘍(NET)の実態調査を目的に,NET Work Japanが設立された.まず,2002〜2004年の全国調査より症例を集積した.その結果,わが国における消化管カルチノイドの部位別頻度は,foregut 28.8%,midgut 5.2%,hindgut 66.0%であり,hindgutにおけるカルチノイドの頻度が高かった.症候性頻度は,消化管カルチノイド全体で1.7%,遠隔転移率も5.6%と低く,欧米と大きな差を認めた.また,非機能性膵内分泌腫瘍におけるMEN-1合併頻度はわが国では5.4%であり,欧米の約30%に比較し低率であった.つぎに,2005年の全国疫学調査を無作為抽出法で施行した.中間報告ではあるが,わが国における2005年1年間の消化管カルチノイドの受療者数は約4,400人,人口10万人当りの有病患者数は約3.5人,新規発症数は2.1人と推定された.一方,膵内分泌腫瘍の受療者数は約2,850人,人口10万人当りの有病患者数は約2.2人,新規発症数は1.0人と推定され,わが国におけるNETの疫学的知見を得た. -
NETsの外科治療Update
224巻10号(2008);View Description Hide DescriptionNETは各種内分泌腫瘍とカルチノイドの総称で全身臓器に発生しうる.膵のNETとくにホルモン産生性腫瘍は小さくても症状をきたすので,局在診断が困難なことがある.画像診断のほかに経動脈的カルシウム投与と経皮経肝門脈採血によるホルモン定量も行って局在を決める.術中超音波も駆使し多発性の腫瘍にも注意する.非機能性膵NETは大きいほど悪性例が多く,直径10 mm以上は切除を勧める.切除法には腫瘍核出術,膵分節切除術,膵体尾部切除術,膵頭十二指腸切除術があり,分節切除は体尾部切除より膵の内外分泌機能を温存できる.核出術,膵体尾部切除術は腹腔鏡下にも施行できる.肝転移例でも可能であれば,debulkingと称し原発巣を切除して転移巣に集学的治療を加えることがある.肝転移には肝動脈塞栓術,放射線照射,化学療法も考慮されるが,可能なら切除・ラジオ波焼灼術で腫瘍の減量をはかる.肝移植はカルチノイド以外の生存率がきわめて低い. -
NETの内科的治療Update—ソマトスタチンアナログ(オクトレオチド)を用いた治療を中心として
224巻10号(2008);View Description Hide Description神経内分泌腫瘍の治療の基本は腫瘍の外科的な摘出である.進行例では肝転移巣に対する腫瘍塞栓術とともに薬物療法を行う.薬物療法には抗腫瘍効果をねらった根本療法と症状をコントロールするための対症療法がある.ソマトスタチンアナログであるオクトレオチドの出現によって神経内分泌腫瘍の内科的治療は大幅に進歩した.オクトレオチドは患者のホルモンや生理活性物質の分泌を抑制し,臨床症状を改善させる.有効性は90%以上の患者に認められ,効果の発現も迅速である.根本療法としての薬物療法は一般には効果が不確実で現状では手術療法の補助的手段にとどまる.しかし,オクトレオチドは,多くの症例において腫瘍の発育と増殖を抑制する腫瘍安定効果を示し,一部の症例では腫瘍が縮小させることから,本剤を長期投与することによって患者のQOLは向上し,延命効果を期待できるものと考えられる. -
神経内分泌細胞からのホルモン分泌
224巻10号(2008);View Description Hide Description神経内分泌細胞,とくに消化管,膵に分布するホルモン分泌細胞は,栄養取込みの際の消化器の機能調節を自律神経系と協同して担っている.これらの細胞からのホルモン分泌の細胞内機構についてはとくにインスリン分泌について詳細に研究されてきた.しかし,それ以外のホルモンについての解析は遅れ,ごく最近になって知見が得られはじめたところである.神経内分泌細胞の多くは興奮性細胞である.ブドウ糖によるインスリン分泌刺激のように興奮性の調節によって分泌調節を行う場合と,細胞外カルシウムの上昇によるガストリン分泌刺激の場合のように細胞内カルシウムストアからのカルシウム放出などによって分泌調節を行う場合があるようで,これらを解説したい.また,機能性神経内分泌腫瘍からのホルモン過剰分泌の治療薬の作用機構についても簡単に解説する. -
NETにおけるソマトスタチン受容体とソマトスタチン製剤
224巻10号(2008);View Description Hide Descriptionペプチドホルモンであるソマトスタチンはペプチドホルモンの合成・分泌を抑制する以外に,細胞増殖も抑制することが知られてきている.ソマトスタチン受容体には6種類のサブタイプ(亜型)があることが知られており,ソマトスタチンはこれらの受容体亜型に結合した後で,同じような細胞内情報伝達経路をたどって種々の作用を及ぼすことが知られている.どのソマトスタチン受容体の亜型が発現しているのかということでその細胞に対してのソマトスタチンそのものの作用が決まってくる.近年,ソマトスタチン誘導体を用いてNETの診断ばかりでなく治療にも用いられ有効な治療成績をあげている症例もあるが,この誘導体が治療効果を発揮するためにはそれぞれの生物学的作用を特異的に抑制する受容体が発現している必要がある.すなわち,転移・再発することが少なくないNETの治療に際して,ソマトスタチン誘導体を用いるにあたっては腫瘍の病理組織標本でどのタイプのソマトスタチン受容体サブタイプが発現しているのかを免疫組織化学他の方法で検討することが肝要になる.
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フォーラム
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- 逆システム学の窓 13
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- 家族みんなのドタバタ留学記 in Melbourne 13
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- 医師不足と地域医療の崩壊—現状と展望 2
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TOPICS
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- 再考“レストア腎”移植 1
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