Volume 228,
Issue 4,
2009
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あゆみ 久山町研究 2009 Update
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医学のあゆみ 228巻4号, 265-265 (2009);
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医学のあゆみ 228巻4号, 267-271 (2009);
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福岡県久山町における疫学調査(久山町研究)によれば,時代とともに高血圧治療が普及し脳卒中発症率は低下したが,肥満,耐糖能異常,脂質異常症など代謝性疾患の増加によって脳梗塞発症率の低下傾向は鈍化し,脳梗塞病型が欧米化しつつある(ラクナ梗塞の割合の減少,アテローム血栓性脳梗塞・脳塞栓症の割合の増加).また,代謝性疾患の増加は虚血性心疾患発症率の低下を妨げる大きな要因になっている.近年注目されているメタボリックシンドローム(MetS)は心血管病発症の危険因子であるが,その構成因子に含まれていないLDLコレステロールの上昇も,MetSとは独立した心血管病発症の有意な危険因子である.わが国の心血管病を予防するうえで,徹底した高血圧対策とともに,急増する代謝性疾患の予防・是正が今後の大きな課題となっている.
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医学のあゆみ 228巻4号, 272-275 (2009);
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久山町研究の成績によれば,1960年代から2000年代にかけて高血圧頻度に大きな時代的変化はなかったが,高血圧治療の普及により高血圧者の血圧レベルは大幅に低下した.最近の正常血圧者の追跡調査では,飲酒や肥満とともにインスリン抵抗性が高血圧発症の有意な危険因子となった.久山町高齢者の追跡調査および連続剖検例の検討では,血圧レベルと心血管病発症率および腎細動脈硬化には密接な関連があり,とくに腎動脈硬化は至適血圧に比べ正常血圧レベルから有意に進展した.
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医学のあゆみ 228巻4号, 276-280 (2009);
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福岡県久山町における疫学調査によると,時代とともに糖尿病の有病率は大幅に増加している.糖尿病のない健診受診者の追跡調査では,高感度C反応性蛋白および肝酵素は,糖尿病発症の独立した有意な危険因子であった.また,インスリン分泌不全にかかわるとされるKir6.2のコドン23の遺伝子多型(E23K)は糖尿病発症と有意に関連していた.この多型の人口寄与危険割合は優性モデルで40.1%に達しており,日本人の2型糖尿病発症のおもな原因遺伝子であることが示唆される.一方,糖尿病は心血管病発症の独立した有意な危険因子であり,その相対危険は正常耐糖能に比べ3倍高かった.また,空腹時血糖値150 mg/dl以上または2時間血糖値350 mg/dl以上で定義した重症糖尿病では,悪性腫瘍の死亡率が有意に上昇していた.高齢化社会を迎えたわが国では,急増する糖尿病の抜本的な対策が重要な課題となっている.
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医学のあゆみ 228巻4号, 281-284 (2009);
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久山町における疫学調査では,慢性腎臓病(CKD)の頻度は1970年代より時代とともに増加している.肥満,高脂血症,耐糖能異常といった代謝異常の増加がその要因と考えられ,代謝異常の集積であるメタボリックシンドロームとCKD発症の間には有意な関連が認められた.また,CKDは心血管病発症の有意な危険因子であり,心血管病発症との関連を病型別に検討すると,男性では虚血性心疾患の,女性では脳梗塞の有意な危険因子であった.CKD対策は末期腎不全予防だけでなく,心血管病予防のうえでも重要な課題である.
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医学のあゆみ 228巻4号, 285-288 (2009);
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久山町の疫学調査によれば,わが国の一般住民においてメタボリックシンドローム(MetS)を有する者の心血管病発症の相対危険は男性で1.9,女性で1.7であり,MetSは脳卒中や虚血性心疾患など心血管病発症の有意な危険因子であった.さらに,MetSに他の危険因子が合併すると心血管病のリスクが相乗的に上昇したことから,心血管病を予防するうえで,MetSを構成する危険因子とともに,その基盤にある腹部肥満,インスリン抵抗性などの病態を包括的に是正・管理することが重要であると考えられる.一方,診断基準によってMetSの頻度は2 4倍に変化するため,心血管予防に有用な診断基準を策定するうえで,今後さらなる疫学的な検証が必要である.
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医学のあゆみ 228巻4号, 289-293 (2009);
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福岡県久山町では1985年より,剖検を基盤にした精度の高い老年期認知症の疫学調査が進行中である.時代の異なる有病率調査の成績を比較すると,久山町では近年,Alzheimer病(AD)と脳血管性認知症(VD)の有病率がともに増加傾向にある.追跡調査の成績より認知症発症例の原因別内訳をみると,一番多かったのはADで,ついでVD,複数の原因が認知症発症に関与している混合型認知症の順で,純粋なLewy小体型認知症(DLB)は少なかった.そして認知症発症例の86%がADとVDであった.一度認知症を発症すると,その病型にかかわらず死亡のリスクが高かった.危険因子の検討では,高血圧はVD発症の有意な危険因子であったが,AD発症とは関連しなかった.一方,耐糖能異常は両者の有意な危険因子となった.糖尿病・耐糖能異常と高血圧は動脈硬化を促進してVDの危険因子となり,糖尿病・耐糖能異常は合併するさまざまな代謝異常によって,ADのリスクも増大させると考えられる.
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医学のあゆみ 228巻4号, 294-297 (2009);
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久山町研究における胃癌の疫学調査の成績から,生活習慣が胃癌発症に与える影響について概説した.最近の久山町住民の追跡調査によれば,これまでの多くの報告と同様にHelicobacter pylori(H.pylori)感染は胃癌の強力な危険因子であった.また,喫煙,高食塩食,高血糖は胃癌の発症リスクを有意に上昇させた.H.pylori感染にこれらの因子が加わると,胃癌発症の相対危険が急峻に立ち上がることが明らかとなった.H.pylori感染を含めた生活・環境要因は,複合的に胃癌発症のリスクを規定していると考えられる.
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医学のあゆみ 228巻4号, 298-302 (2009);
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脳梗塞の遺伝要因は十分解明されていない.そこで,40歳以上の脳梗塞患者群1,112名と同数の久山町住民からなる対照群を用いて,全ゲノム上に分布する一塩基多型(SNP)を用いた大規模な患者対照研究を行った.その結果,新規の脳梗塞関連遺伝子としてPRKCH遺伝子,AGTRL1遺伝子を同定した.機能解析の結果,PRKCH遺伝子上のSNPは遺伝子産物であるプロテインキナーゼCエータ(PKCη)のアミノ酸置換(Val374Ile)を伴い,キナーゼ活性に影響を与えることが示された.また,PKCηの発現量は動脈硬化の進展と相関した.一方,AGTRL1遺伝子の転写調節領域に存在するSNP( 154 G/A)は遺伝子産物であるアペリン受容体の量的変化をもたらし,動脈硬化に関与すると考えられた.これらのSNPsは,1988年に久山町循環器健診を受診した住民を14年間追跡したコホート研究により,脳梗塞発症の遺伝的危険因子であることが明らかとなった.
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医学のあゆみ 228巻4号, 303-303 (2009);
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医学のあゆみ 228巻4号, 304-304 (2009);
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フォーラム
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切手・医学史をちこち 85
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医学のあゆみ 228巻4号, 305-305 (2009);
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医療関連死問題をかんがえる 16
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医学のあゆみ 228巻4号, 306-309 (2009);
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医学のあゆみ 228巻4号, 310-311 (2009);
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医学のあゆみ 228巻4号, 312-314 (2009);
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TOPICS
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再生医学
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医学のあゆみ 228巻4号, 317-319 (2009);
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遺伝・ゲノム学
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医学のあゆみ 228巻4号, 319-320 (2009);
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神経精神医学
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医学のあゆみ 228巻4号, 320-321 (2009);
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連載
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医師のための臨床統計学7
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医学のあゆみ 228巻4号, 323-334 (2009);
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探索的な観察研究により研究仮説が提示され,コホート研究やケースコントロール研究といった分析疫学的方法,さらには実験研究である臨床試験により仮説が検証される.観察対象集団を設定し継時的に疾患発生を観察するコホート研究により,曝露因子のリスク比が直接推定される.観察年数の違いや打ち切りに対処するため,生存時間解析が用いられる.ケースコントロール研究は,逆に疾患発生患者(ケース)と対照(コントロール)の曝露分布を比較する方法論である.古典的な累積ケースコントロール研究ではリスクの代りにオッズ比を推定するが,コントロール選定法やコホート研究への埋め込み(ネスティッド・ケースコントロール研究)など,最近の理論的発展が著しい.疫学研究は交絡との戦いであり,このための普遍的な統計解析技術が層化調整と統計モデルの利用である.交絡に対処する新しい統計手法も開発されており,これらの活用の前提としてデータベースが重要な研究基盤となっている.