医学のあゆみ

Volume 228, Issue 12, 2009
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あゆみ 心房細動の非薬物治療−カテーテルアブレーションUpdated
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心房細動に対する薬物治療の有効性と限界
228巻12号(2009);View Description
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心房細動に対する薬物治療の有効性とその限界について述べた.発作性心房細動では早期の除細動と洞調律維持が重要であり,従来からI群薬が用いられ比較的有効性が高い.持続性心房細動ではI群薬による除細動は困難であり,III群薬でもその除細動率は30%以下と低い.しかし,わが国で用いられているベプリジルは比較的高い除細動効果が得られ,その後の洞調律維持効果も良好であることから注目されている.そのほかアップストリーム療法としてACE I,ARB,スタチンなどの心房細動に対する有効性が報告されており期待されている.その一方で,薬物治療による発作停止・洞調律維持には限界があることや,また適切に行われなければ致死的な副作用を招くことも事実であり,必要に応じてアブレーションも考慮に入れた治療戦略を立てることが重要である. -
心房細動アブレーションに必要な心臓解剖
228巻12号(2009);View Description
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本稿では,左房に焦点をあて心房細動アブレーションに関係する以下のポイントを中心に,ヒト胸部前額断面,矢状断面を用いて概説する.1.右側上,下肺静脈開口部の位置関係は“上下”というよりむしろ“前後”である.2.左上肺静脈開口部が右上肺静脈のそれに比べ高位・後方に位置している.3.左房天井線は右肺動脈と交差し,それにより天井最下点が規定されている.4.左房天蓋静脈は剖検例の約10%でみられ,右側に多い傾向がある.5.左房前壁には卵円窩と同程度の大きさで壁の薄いtranslucent areaが存在し,ときにその近傍に小さな憩室が認められる.6.左上・下肺静脈 左心耳間には太い心筋束(left terminal crest)が存在する.7.その心筋束は僧帽弁輪 左下肺静脈間峡部領域を通過し僧房弁輪に至るが,この構造が同部位でのアブレーションを困難にする一因かもしれない. -
発作性心房細動のカテーテルアブレーション−拡大肺静脈隔離法の有効性と限界
228巻12号(2009);View Description
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孤立性あるいは反復性の心房期外収縮が発作性心房細動発生のトリガーとなることが報告され,本心房期外収縮が心房細動の発生機序として重要であることが認識されている.本起源の多くは肺静脈内心筋に存在することから,肺静脈開口部周囲への焼灼により肺静脈心筋と心房筋を電気的に離断し,心房細動の根治効果を発揮する肺静脈隔離アブレーションが考案され,発作性心房細動の非薬物治療として広く施行されるようになった.本法は当初,個々の肺静脈開口部を標的とした個別肺静脈隔離法が施行されていたが,近年,肺静脈開口部を広範に焼灼する拡大肺静脈隔離法のより高い有効性が報告され,発作性心房細動治療の一般的なアブレーション法となっている. -
発作性心房細動のカテーテルアブレーション−上大静脈その他の大血管内アブレーションの実際とその効果
228巻12号(2009);View Description
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発作性心房細動の10 30%は肺静脈以外の部位よりトリガーが生じる非肺静脈起源の心房細動であり,そのなかでもとりわけ上大静脈起源のものが多い.上大静脈起源の心房細動では上大静脈内に迷入している袖状心筋が長いことが多く,トリガーは上大静脈の遠位側より発生することが多い.上大静脈起源の心房細動の根治は上大静脈を電気的隔離することであるが,右房と上大静脈の電気的結合は比較的粗なことが多く,大半の症例では全周性の焼灼を必要とすることはなく,電気的結合部を数個所焼灼するだけで隔離に成功することが多い.上大静脈の電気的隔離の際に問題となる合併症は,右横隔膜神経麻痺や術後洞性頻脈傾向などがある.その他の大血管起源としては,下大静脈や左上大静脈遺やMarshall静脈などから生じる心房細動もまれではあるが存在する. -
慢性心房細動に対するカテーテルアブレーション−拡大肺静脈隔離法だけで十分なのか?
228巻12号(2009);View Description
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心房細動に対するカテーテルアブレーション治療は,発作性心房細動だけでなく持続性慢性心房細動にも治療適応が広がってきている.拡大肺静脈隔離術が現在の治療手技の基本であり,肺静脈およびその周囲組織を左房から隔離するために種々のテクニックが考案されている.慢性心房細動における心房内細動基質に対するアブレーション法も実用化されており,そのなかでも電位指標による細動基質焼灼法(complex fractionatedatrial electrogram:CFAE焼灼法)と心房内線状焼灼法が広く施行されている.慢性心房細動では症例によって責任病変の広がりは異なっており,進行度に応じて治療すべき領域を判断するオーダーメイド治療が必要となってきている. -
心房細動アブレーションの合併症診断と対処法・予防法
228巻12号(2009);View Description
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通常の上室頻拍でもアブレーション時合併症はつねに念頭におかなければならないが,心房細動アブレーションでは上室頻拍において以上の慎重なカテーテル操作が要求されること,多くの通電を要すること,また,より重篤な合併症がありうる点で,起こりうる合併症の対策・予防法を徹底し,把握しなければならない.合併症対策において現状では施設ごとに異なっている部分もあるが,本稿では心房細動アブレーション,おもにdouble Lasso cathetersを用いた拡大肺静脈隔離術(EEPVI)を行っている視点から,合併症診断と対処法・予防法について述べる. -
心房細動ハイブリッド治療の意義−慢性心房細動に対するハイブリッド治療
228巻12号(2009);View Description
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心房細動に対するアブレーションハイブリッド療法は大きく3種類の方法がある.カテーテルアブレーション治療が確立する前は主に心拍数コントロールの目的で,房室結節アブレーション後,ペースメーカー植込みが主流であった.その後,通常型心房粗動に対する三尖弁輪 下大静脈間狭部線状焼灼と各種抗不整脈との併用療法が施行されるようになった.しかし,最近では肺静脈アブレーションと抗不整脈薬の併用療法もこれに含まれる.発作性心房細動に対するアブレーションの治療成績に関しては方法論の進歩とともに近年向上してきているが,持続性,慢性心房細動に対するアブレーションの成功率は高くない.そこで,慢性心房細動に対して広範囲肺静脈電気的隔離を中心とする左房アブレーションと,抗不整脈薬を併用するハイブリッド療法の臨床的有用性について,自験例を交えながら述べる.
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フォーラム
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- 家族みんなのドタバタ留学記in Melbourn 16
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メルボルンの食事情(情報編)
228巻12号(2009);View Description
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医学部卒業後,母校の衛生学教室に入室し15年目.2006年8月からWomen’s Healthと英語を学習するため家族4人でメルボルンへ.2007年12月に無事帰国した.この留学で出会ったエピソードをもとにエッセイと,ちょっと役立つ(?)情報編に分けてご紹介.今回は前回のエッセイ編に引き続き,食事情の情報編.
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TOPICS
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- 遺伝・ゲノム学
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- 消化器内科学
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- 腎臓内科学
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連載
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- 医師のための臨床統計学11
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統計的推測の基礎(1)
228巻12号(2009);View Description
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統計学ではバラツキをもつ変数を確率変数としてモデル化する.このバラツキの法則,すなわち確率分布を記述する道具が確率関数(離散変数の場合),確率密度関数(連続変数の場合)である.離散分布の代表例が2項分布,ポアソン分布(次回紹介)であり,前者は治療対象集団中の有効例数,後者はまれな事象の発生件数のモデルとしてしばしば用いられる.