医学のあゆみ
Volume 231, Issue 3, 2009
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あゆみ ラジオ波焼灼療法(RFA) − 低侵襲治療の現状と今後の展開
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肝細胞癌に対する経皮的ラジオ波焼灼療法−最新の進歩
231巻3号(2009);View Description Hide Description肝細胞癌に対する経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)は1999年に日本に導入され,以後局所療法の中心的治療法として日本をはじめとする世界において定着している.切除とRFAを比較した報告では3 cm,3個以下に限ればほぼ切除と同等の成績が得られるとの結果が多く,RFAは小肝癌治療の中心的治療法となっている.RFAは日本肝癌研究会の登録症例の成績でも5年生存率57%と高く,肝障害度Aに限ると5生存率73%,肝障害度Aかつ単発で2 cm以下に限定すると83.8%,2〜5 cmの単発肝癌,肝障害度Aの症例でも76.3%と,切除とほぼ同等の成績である.著者らの施設においてもChild Aかつ3 cm以下,3個以下の肝癌の5年生存率はRFA 84%,切除78%と良好な治療成績をおさめている.またRFAには,かつては種々の合併症や限界が報告されていたが,医師の熟練度の向上とさまざまな工夫により合併症を回避し,さらなる適応の拡大がはかれるようになってきた.TACE併用RFA,人工胸水,人工腹水併用RFA,造影エコーガイド下RFAなどがそのよい例である.今後,根治的治療後のインターフェロン治療や分子標的薬治療などのアジュバント治療により,RFA後の予後がさらに改善することが期待される. -
大腸癌肝転移に対するラジオ波焼灼療法−国内外の現況と治療成績
231巻3号(2009);View Description Hide Descriptionラジオ波焼灼療法(RFA)は,低侵襲にもかかわらず根治性のある治療である.当科では大腸癌肝転移122例にRFAを実施した.81歳以上が11例,全身化学療法63例,肝切除35例など前治療ありが94例,切除不能肝外病変36例など根治的治療不能例が64例という背景であったが,122例全例の5年生存率は36.9%であり,5年生存11例,7年生存5例であった.根治的治療をめざしてRFAを実施した58症例では5年生存率は61.7%であった.RFAは日本では肝細胞癌に対しておもに行われているが,欧米では転移性肝腫瘍,とくに大腸癌肝転移がおもな適応である.3年生存率は20.2〜68%,5年生存率は18.4〜33%と報告されている.3 cm未満の成績は良好とされ,肝切除とのランダム化比較試験も提案されている.RFAの長期成績は良好であり,治療の選択肢に加えられるべきであろう.ただし,RFAは成績に施設間格差がある.とくに転移性肝腫瘍のRFAは難しい.Safety marginを確実に取るため,同じサイズの肝細胞癌より穿刺・焼灼回数は多く,焼灼時間は長くなる.肝切除可能例に安易に手を出して癌を残存させてはならない. -
大腸癌以外の肝転移に対するラジオ波焼灼療法−国内外の現況と治療成績
231巻3号(2009);View Description Hide Description胃癌,膵癌,乳癌,肉腫の肝転移に対するラジオ波焼灼療法(RFA)について,英文論文を中心にまとめた.大腸・結腸癌肝転移以外ではRFAの報告は限られており,エビデンスは非常に不足している.ただ,各論文に共通しているのはRFAの優れた局所効果と安全性である.転移性肝癌の治療は基本的に集学的治療であり,臨床家としてはRFAの特徴をいかに使いこなしていくかでその腕を問われることとなる.さらに,症例の積み重ねによりエビデンスの構築も急務であると考えられる. -
肝腫瘍に対する手術的(開腹/鏡視下)ラジオ波焼灼療法−国内外の現況と治療成績
231巻3号(2009);View Description Hide Description手術的ラジオ波焼灼療法(RFA)には,腹腔鏡や胸腔鏡による鏡視下RFAと開腹/開胸RFAがある.鏡視下RFAは,経皮的アプローチの適応外の肝細胞癌を中心に広く行われている.鏡視下RFAは開腹/開胸RFAと同等の治療効果を有し,出血や術後癒着が少ないことから第一選択である.肝表在性の肝細胞癌に手術的RFAを行うことで,neoplastic seedingの根絶が可能である.手術的RFAの予後不良因子は,局所麻酔下治療,Child−Pugh B/C,腫瘍径5 cm以上などである.RFAは肝移植へのbridging therapyとして重要である.大腸癌肝転移の手術的RFAは,5 cm以下の脈管に近接しない切除不能例を対象として全身化学療法の併用が望まれる.切除可能症例への適応拡大には,無作為化比較試験が必要である.大腸癌以外の肝転移のRFAは,化学療法やホルモン療法と併用して選択される場合が多い. -
ラジオ波凝固療法と肝切除術の比較
231巻3号(2009);View Description Hide Description小型少数の肝細胞癌に対して従来は外科的肝切除がもっぱら行われていたが,近年ではエタノール局注療法・マイクロ波凝固療法の時代に続き,ラジオ波凝固療法(RFA)が行われる機会が増えている.再発率はRFAでやや高いことが知られているが,外科治療と経皮的治療との間で無作為化比較試験は困難とされ,RFAが真に肝切除と同程度の治療成績が得られるかどうか,これまでのところ明らかではない.今回,3 cm以下の肝癌の初回治療として肝切除またはRFAを行った155例について長期経過観察を行った.5年後の初回再発率は,肝切除群63.6%,RFA群74.5%と高く,反復再発も頻度も高かった.しかし,最終的な生存率に寄与する要因を多変量解析で求めると,初回治療がRFAであった群での死亡ハザード比は1.05であり,生存率への影響は少なかった. -
肺悪性腫瘍に対するラジオ波焼灼療法の国内外の現況と治療成績−手術,放射線治療に迫ることができるか
231巻3号(2009);View Description Hide Description肺悪性腫瘍に対する局所治療としては古くより外科的切除,放射線治療が適応とされてきたが,ラジオ波焼灼療法も低侵襲の局所治療として近年,世界的に行われるようになってきた.肺悪性腫瘍のラジオ波焼灼療法には,空気で満たされた肺は周囲に熱を伝導しにくい,電極針を挿入する際のガイドとしてCT画像を用いる,などの特徴がある.また,治療の評価としてはCTが有効であるが,近年PET/CTも用いられている.一般的に直径2 cm以下で心血管や太い気管支などに接していない腫瘍の局所制御は良好である.ステージ I の原発性非小細胞癌のラジオ波焼灼療法による成績は,局所制御率,術後生存率ともに最近の前向きならびに後ろ向き研究の報告では,外科的切除,放射線治療に迫る成績を上げている.副作用としては気胸があるが,予後や局所制御には影響を与えることはない.ラジオ波焼灼療法は肺悪性腫瘍に対して有効なはじめてのインターベンションによる治療といえる. -
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肝以外の領域におけるラジオ波凝固療法の国内臨床試験の現況
231巻3号(2009);View Description Hide Descriptionラジオ波凝固療法(RFA)は肝以外の領域にも活用され,優れた成績が報告されているが,その大部分は後向きの症例集積による評価であり,前向き研究による評価はなされていない.しかし,RFAを標準的治療(エビデンスに基づく行われるべき治療法)とするためには,臨床試験による評価が不可欠である.一方,臨床試験の方法論はおもに薬物療法により培われてきたため,RFAのような技術的治療についての方法論は確立しておらず,このため世界的にもRFAの臨床試験は数少ない.このような状況下にもかかわらず,日本では臨床試験の方法に種々の工夫を加えながら積極的に多施設共同臨床試験が進められている.今後,わが国の臨床試験がRFAの世界の潮流に大きなインパクトを与えることが期待される.
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フォーラム
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- グローバル化時代の漢方2
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- 書評
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TOPICS
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- 医動物学・寄生虫学
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- 腎臓内科学
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- 耳鼻咽喉科学
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注目の領域
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性同一性障害とは?その手術法は?
231巻3号(2009);View Description Hide Description性同一性障害(GID)とは身体的性別(sex)と心の性(gender identity)が一致せず,著しくQOLが障害されている病的状態をいう.GIDの知識が普及していないため,とくに中核群患者は病名がわからず,周囲の無知から差別を受ける.このため学童期から思春期の苦悩は大きく自殺企図も多い.精神療法,ホルモン治療,性別適合手術などの集学的治療が必要である.男性から女性への性別適合手術(MTF−SRS)としては,陰茎切除,膣形成術(陰茎皮弁+植皮術,大腿皮弁などを用いる),陰核形成,のど仏形成術,脱毛,乳房形成(プロステーシスを用いる)などを行う.女性から男性への性別適合手術(FTM−SRS)としては,乳房切除術,卵巣・子宮切除,尿道延長術,膣閉鎖術,膣口縮小術.陰茎尿道再建術などが行われる.
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速報
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