Volume 231,
Issue 8,
2009
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あゆみ 拡張不全−得られた知見,残された疑問
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医学のあゆみ 231巻8号, 803-803 (2009);
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医学のあゆみ 231巻8号, 805-808 (2009);
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食塩と血圧の関係は複雑であるが,減塩による降圧効果が大規模臨床研究から明らかにされている.食塩と心血管障害に関しては高食塩食による血圧の上昇に伴う影響が大きいが,血圧非依存性の作用も存在し,またレニン アンジオテンシン アルドステロン系(RAAS)の関与や酸化ストレス,炎症,血管内皮機能障害などが明らかにされ,臨床的にも食塩は脳血管障害や心臓の拡張不全と関係している.食塩と腎障害に関しては,組織RAASの活性化やTGF β1,PAI 1,NFκ BやVEGF2などの関与も明らかにされている.今後RAAS阻害薬として,従来臨床的に有効なACE阻害薬,アンジオテンシンII受容体ブロッカー,アルドステロンブロッカーに加え,レニン阻害薬が登場し,さらなる臨床研究の成果が期待される.
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医学のあゆみ 231巻8号, 809-814 (2009);
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アルドステロン/ミネラロコルチコイド受容体(MR)系は長らく電解質・体液調節ホルモンと認識されてきたが,大規模臨床試験(RALES試験)で収縮不全に対するMR拮抗薬の予後改善効果が実証されたのを契機に,心不全の病態におけるMRを介するカスケードの役割がクローズアップされるようになった.最近,MR刺激が拡張不全にも深く関係すること,そのメカニズムとして炎症,酸化ストレス惹起などを介した心臓の線維化,心筋スティフネス増大などの関与が明らかにされている.臨床研究や動物実験で,拡張不全に対するMR拮抗薬の有用性を示すデータも集積しつつある.現在進行中の大規模臨床試験TOPCAT(2013年終了予定)での拡張不全患者に対するMR拮抗薬の治療成績に大きな期待が寄せられている.
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医学のあゆみ 231巻8号, 815-817 (2009);
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心不全患者では血中ならびに心筋中の酸化ストレス発生が亢進し,心筋に障害・肥大・アポトーシス・間質の線維化が引き起こされる.動物モデルを用いた検討では拡張不全時に酸化ストレス発生が亢進しており,Ca2+ハンドリング異常,心筋細胞肥大,酸化ストレスの連鎖反応などの結果,拡張機能障害が引き起こされると考えられている.しかし,酸化ストレスの関与はいまだ明確でなく,基礎的そして臨床的に今後さらなる検討をしていく必要がある.
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医学のあゆみ 231巻8号, 818-822 (2009);
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Heart failure with preserved ejection fraction(HFPEF)は心不全全体の20 60%を占めると報告されている.Heart failure with reduced ejection fraction(HFREF)に比較して高齢者,女性が多く,高血圧や心房細動の合併が多い.HFPEFとHFREFの生命予後はほとんど差がないか,あってもわずかであると報告されているが,HFPEFの有効な治療のエビデンスはまだ十分でない.本稿では,わが国と海外のHFPEF症例の臨床的特徴や予後の差異について文献学的考察を行った.
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医学のあゆみ 231巻8号, 823-827 (2009);
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拡張不全(DHF)患者の健康関連QOL(HRQOL)は健常人よりも悪く,収縮不全患者と同じくらい損われている.心疾患特異的なMinnesota Living with Heart Failure Questionnaire(MLWHFQ)を用いて評価すると,DHF患者のQOLは低下しており,運動耐容能の低下が原因としてあげられている.包括的な評価法であるMOSShort Form 36 Item Health Survey(SF 36)を用いると,DHF患者では身体面のみならず精神面のHRQOLも低下していた.小規模の臨床試験で,利尿薬がHRQOLを改善したとする報告がある.一方でわが国の観察研究では,長期の薬物治療によってもHRQOLがいぜんとして低下したままであり,DHFに苦しむ患者の姿が浮き彫りにされている.薬物療法の限界を補うものとして,心臓リハビリテーションと疾病管理プログラムが期待されている.心臓リハビリテーションは身体機能に関連したHRQOLの改善に有効である.訪問看護や電話相談などの疾病管理プログラムによる包括的なサポートは精神的なHRQOLも改善する可能性がある.DHFのHRQOL改善をめざし,さまざまな方策が試される必要がある.
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医学のあゆみ 231巻8号, 828-831 (2009);
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拡張不全では左室の拡張能が著しく低下し,また末梢血管抵抗が増加しており,左室拡張末期容積の少しの増加に対し左室拡張末期圧が著しく増加するという特徴をもっている.その結果,左房圧の上昇,肺静脈圧の上昇,肺うっ血が生じる.運動時には組織の酸素需要に応じて静脈灌流量が増加するため,その傾向は著明となる.また,運動時には健常人では左室の弛緩の著明な亢進による左室拡張早期圧の低下に基づき,左室流入は増強されるが,拡張不全患者においては左室弛緩の亢進の抑制や高い左室stiffnessのため左室流入の増強は制限される.また,上昇する血圧が左室の駆出様式を変化させ,左室拡張能をますます低下させる.このような,運動時の血行動態を理解することは拡張不全の診断および治療に重要であると思われる.
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医学のあゆみ 231巻8号, 832-837 (2009);
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左室収縮障害を認めない,あるいは存在しても軽度であるにもかかわらず心不全を発症する病態があることが報告され,この病態は拡張機能障害に基づくと考えられることから拡張不全とよばれる.拡張不全は心不全症例の約40%を占める頻度の高い病態であることが明らかとなっている.拡張機能の非侵襲的診断の基本は心エコー法を用いたものであるが,単一ではなく,いくつもの指標,そして心エコー以外の指標も組み合わせて総合的に評価されている.
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医学のあゆみ 231巻8号, 838-842 (2009);
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拡張不全の治療においては,基礎心疾患に対する加療を行うこと以外,確立された有効な治療法はない.アンジオテンシン変換酵素阻害薬,アンジオテンシン受容体拮抗薬,β遮断薬など収縮不全に有効性が確認されている薬剤は,拡張不全においても有効であることを示唆するデータはあるものの,収縮不全で認められるほど顕著な効果ではない.逆に言えば,収縮不全と拡張不全の病態を同一視してはならないことを示している.現在,いくつもの前向き臨床試験が行われており,これらの結果が待たれる.さらには,全く新しいアプローチ法が提唱されることも期待したい.
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フォーラム
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医学のあゆみ 231巻8号, 843-844 (2009);
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TOPICS
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腎臓内科学
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医学のあゆみ 231巻8号, 847-848 (2009);
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加齢医学
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医学のあゆみ 231巻8号, 848-850 (2009);
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眼科学
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医学のあゆみ 231巻8号, 850-851 (2009);
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連載
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がん診療連携拠点病院にみる工夫− レベルアップをめざして14
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医学のあゆみ 231巻8号, 852-856 (2009);
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当院(福井県立病院;図1)は中央医療センター,救命救急センター,母子医療センター,健康診断センター,こころの医療センターに加えて,2009年2月にがん医療センターを開設した急性期総合病院である.福井県の2006年度がん死亡率は人口10万人当り276.6人(全国平均261.0人)で,死亡総数7,725人のうち,がんが28.9%を占め,がん死亡者数は2,235人である.福井県は“健康長寿の福井”をアピールしているが,今後さらにがん予防・治療に力をいれ,数の多い胃癌,大腸癌,乳癌,子宮癌,難治性の肺癌,肝癌の6部位がんについて生存率の向上をめざしている.以下に専門のがんセンターではない急性期総合病院でのがん医療センターの取組みについて述べる.
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注目の領域
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医学のあゆみ 231巻8号, 857-861 (2009);
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