Volume 233,
Issue 3,
2010
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あゆみ 高血圧の発症機序にせまる
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医学のあゆみ 233巻3号, 197-199 (2010);
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医学のあゆみ 233巻3号, 201-204 (2010);
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動脈硬化の発症・進展機序には酸化ストレス,炎症,血管作動性物質,サイトカイン,ケモカイン,増殖因子などが関与し,これらが複雑に絡み合うことにより病態が進行するといわれている.血管リモデリングによる抵抗血管内腔の狭小化が進展すると血管抵抗が増大し,血圧が上昇する.内皮障害と血管リモデリングの進展は血圧上昇に先行することが知られている.血管リモデリングが進行している場合には,同程度の機能的血管収縮が加わっても,より大きな血圧上昇がもたらされる.血管内皮障害が進展すると血管リモデリングを引き起こし,高血圧,糖尿病,脂質異常症などのリスクファクターが併存することにより,さらに血管内皮障害が進行するといった悪循環を形成し,さまざまな臓器障害を誘発する.本稿では,高血圧の発症機序に深く関与する血管内皮障害,血管リモデリング(動脈硬化),酸化ストレスに着目し概説する.
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医学のあゆみ 233巻3号, 205-209 (2010);
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血圧を規定するおもなものは一回心拍出量と末梢血管抵抗といわれるが,拍動流である生体では動脈の径と弾性も大きく作用する.動脈系の中枢側は血管径も大きく血管弾性に富むが,末梢に行くに従い,血管弾性は低下し,分枝とともに血管径も小さくなる.こうした血管特性の影響を受け,血圧波形は血管部位によって異なる波形を呈する.従来,日常診療における“血圧”は便宜的に上腕血圧が用いられ,その値に基づいた高血圧の診断・治療が行われてきた.しかし近年,血管の硬さ(arterial stiffness)が注目されるようになり,それをより反映する中心血圧や収縮期高血圧に関心をもたれるようになった.観察研究でも中心血圧と上腕血圧の乖離が確認され,中心血圧が心疾患や高血圧性臓器障害の評価や予後予測において,より有用とする報告があいついでいる.本稿ではこうした血管特性と中心血圧,収縮期高血圧の関係を中心に述べる.
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医学のあゆみ 233巻3号, 211-216 (2010);
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視床下部や延髄など中枢神経系の電気活動亢進は,心臓,細動脈,腎などへの遠心性交感神経活動を亢進させることにより本態性高血圧の原因となる.オーストラリアのKrumとEslerのグループは,平均4.7種類の降圧薬を内服しても平均血圧が177/110 mmHgと高い患者45人に対して,経皮的・経腎動脈的にアクセスする電気的アブレーションによって腎神経を傷害する治療を行い,血圧を24/11 mmHgと著明に低下させることに成功した1-3.).内服する降圧薬を減らすことができ,血圧が低下するならば,きわめて有用な新しい治療法である.病態生理学的に興味深く,また解明すべき点も多い治療法である.現在,日本でも降圧薬治療に抵抗性の高血圧患者にこの新しい治療を行うべきか,興味がもたれている.日本高血圧学会とアブレーションの専門家の学会である日本不整脈学会との合同の検討委員会が組織され,適応患者の選択基準,施行方法,有効性の判断の指標,Na喪失が過剰にならないかなど,安全性について検討がはじまったところである.
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医学のあゆみ 233巻3号, 217-220 (2010);
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動脈圧受容器は頸動脈洞と大動脈弓に存在し,瞬時の血圧を感知し,その情報を脳に伝えることによって,交感神経・副交感神経を介して一定の血圧を維持する仕組みである.すなわち,血圧の短期的な調節機構として重要であり,長期的な調節機構としてはあまり重要ではないと考えられてきた.しかし,最近約10年間の動物実験の成績を踏まえ,慢性的に頸動脈洞を刺激する装置(デバイス)が薬剤抵抗性高血圧患者の治療法として臨床応用され,欧米で臨床試験が開始された.慢性的に心周期と関係なく頸動脈洞を電気刺激してもその効果は持続し,交感神経の抑制,副交感神経の活性化を介して持続することがわかった.その効果とともに,高血圧の成因としての動脈圧受容器の役割が見直された.さらに,アンジオテンシン注入高血圧や肥満に伴う高血圧での効果など,このデバイスを用いた動物実験により,中枢機序も含め神経性調節機序が高血圧の成因・維持に関与することがふたたび注目されている.
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医学のあゆみ 233巻3号, 221-226 (2010);
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アルドステロンは腎ホルモンとして電解質調整のみに重要と考えられてきた.しかし,最近の研究から食塩の存在下で直接的に臓器障害を起こすことが明らかになってきた.実際,アルドステロンブロッカーを心不全・急性心筋梗塞後の左室機能障害の患者に用いた大規模臨床試験であるRALES,EPHESUSの結果は劇的であった.その機序として心臓のミネラルコルチコイド受容体(MR)を介したアルドステロン作用の抑制が考えられる.さらに,近年,アルドステロンのMRを介する脂肪組織に対する作用を抑制し,インスリン抵抗性の改善,肥満に伴うアディポサイトカインの変化に対する作用などが,アルドステロンブロッカーのあらたな臓器保護の機序として考えられるようになった.アルドステロンブロッカーはメタボリックシンドロームのかなり上流に効き,最終的には動脈硬化の進行を抑制する効果も期待できそうである.今後はcardiometabolicsyndromeという概念が重要になってくると思われる.
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医学のあゆみ 233巻3号, 227-232 (2010);
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近年,臓器障害におけるアルドステロン/鉱質コルチコイド受容体(MR)系の役割が注目されている.メタボリックシンドロームのモデル動物では,アディポカイン異常によりアルドステロンが過剰に産生され,アルドステロン依存性の臓器障害を早期より発症した.一方,血中アルドステロン濃度が高くない状況でも標的臓器でMR活性化が生じ,臓器障害を惹起しうることがわかってきた.核内受容体であるMRの活性は,リガンドのみならず,受容体の修飾,核移行,エピジェネティック機構,他の転写因子やシグナル伝達物質とのクロストークなど,さまざまなレベルで制御されうる.著者らはリガンド非依存的なMR活性化因子として低分子量G蛋白質Rac1を同定し,Rac1によるMR活性化が慢性腎臓病の病態に深くかかわっていることを見出した.メタボリックシンドロームにおけるMR活性化にもアルドステロン依存性・非依存性機序が関係することが示された.
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医学のあゆみ 233巻3号, 233-237 (2010);
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慢性腎臓病(CKD)自体が心血管病(CVD)のリスクであり,このリスクは腎機能が保たれているCKD早期から腎機能低下の関数として増すことから,心-腎連関が注目されている.本来,夜間入眠後に血圧は日中平均の90%値未満に低下するが(dipper),CKDにおいては夜間血圧の低下しないnon-dipper型リズムを呈する.増塩食下で血圧が10%以上上昇する食塩感受性亢進もまたCKDに伴って生じやすい.non-dipperも食塩感受性亢進もともにCVDのリスクであることから,著者らは食塩感受性に基づく夜間高血圧を,心-腎連関を結ぶ鍵と考えている.CKDにおいては,腎機能の低下につれて日中に十分Naを排泄しきれなくなる.著者らは,CKDにおける夜間高血圧を,「本来であれば夜間に下がる血圧を低下させずに高いまま持続させ,この高い夜間血圧で腎における濾過圧を上げ,日中に排泄しきれなかったNaを排泄する」代償機転と考えている.このことを支持するように,腎機能が低下するにつれて“夜間入眠後の高血圧の持続時間”が延長した.この夜間高血圧持続時間を著者らはCKDにおける夜間高血圧の重要な要素と考え,dipping timeと定義した.dippingtimeがCKDにおける夜間高血圧の定量的指標のみならず,CVDリスクの指標となりうるかはさらなる検討を要する.
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医学のあゆみ 233巻3号, 239-244 (2010);
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閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は高血圧の発症機序として,第1に交感神経の亢進にはじまり,レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の活性化や酸化ストレスの増加など多くの機序が関与し,治療抵抗性高血圧に至るneurogenic hypertensionモデルである.OSASでは無呼吸発作時に一過性血圧上昇(スリープサージ)を伴う夜間高血圧を示す.OSAS患者の降圧療法はより厳格な降圧療法を原則とするが,どの種類の薬剤が有用であるかを示すエビデンスは確立しておらず,今後の課題である.
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フォーラム
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第74回日本循環器学会総会・学術集会緊急レポート1
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医学のあゆみ 233巻3号, 245-246 (2010);
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冠動脈疾患は,現在,世界的に死因の第一位であるが,世界的な寿命の延長と生活の欧米化の浸透などにより,その比率が今後さらに増加することがWHOにより予測されている.わが国は,世界の中でも最も急速に高齢化社会を迎えており,冠動脈疾患にどう対処するかは極めて重要な課題になってきている.冠動脈疾患の治療手段には,主として,薬物療法,冠動脈インターベンション(PCI),冠動脈バイパス(CABG)の3つがあり,それぞれに発展している.われわれ日本の循環器内科医は,世界で得られるエビデンスを常に学びながら,一方では日本人を対象とした臨床試験を通じて日本人独自のエビデンスを構築し,個々の患者の治療に役立てる必要がある.日本循環器学会では,過去2年間,学術集会において冠動脈疾患の治療戦略に関する特別企画を行ってきた.今回は,さらに広く世界に目を転じ,欧米の主要な臨床研究(SYNTAX,FAME)の研究者とわが国の研究者が一堂に会することにより,エビデンスに基づいた慢性冠動脈疾患の治療戦略について論じた.
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患者アドボカシーの実践2
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医学のあゆみ 233巻3号, 248-249 (2010);
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注目の領域
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医学のあゆみ 233巻3号, 257-262 (2010);
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TOPICS
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 233巻3号, 253-254 (2010);
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循環器内科学
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医学のあゆみ 233巻3号, 254-255 (2010);
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腎臓内科学
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医学のあゆみ 233巻3号, 256-256 (2010);
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