Volume 235,
Issue 5,
2010
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【10月第5土曜特集】 悪性リンパ腫Update
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医学のあゆみ 235巻5号, 351-351 (2010);
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概 論
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医学のあゆみ 235巻5号, 353-357 (2010);
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悪性リンパ腫分類は変遷する.あらたなひとつの思想を伝えようとしたとき,リンパ腫分類は変わるものともいえる.最近では,WHO 分類第 4 版が 2008 年 9 月に公刊された.あらたなリンパ腫分類の提唱ではなく,2001 年に同第 3 版が公刊されて以降の進歩を取り入れることを念頭に置いたものである.分類の枠組み,方針などに基本的な変化はない.正しくは第 3 版の改訂版であり,いくつかのあらたな疾患が付け加えられた点が特筆される.それらの認識,また改訂作業を通じて日本人が果たした役割には少なからぬものがある.
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医学のあゆみ 235巻5号, 358-365 (2010);
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悪性リンパ腫の診断には臨床上病変と考えられる部分の生検が行われる.その後, ①臨床情報,②HE 標本による病理組織学的観察,③免疫学的表現型検索〔flow cytometry(FCM),免疫組織化学〕,④染色体分析,⑤遺伝子解析,⑥ ウイルス学的情報(HTLV-Ⅰ,EBV など),こういった情報を整理したうえで,総合的に判断していかなければならない.免疫組織学的表現検索の際には FCM と免疫組織化学の両者の長所・利点を生かし,悪性リンパ腫のそれぞれの亜型の特徴を理解しながら判断していく.今回は,臨床医にとって必要な FCMの判読方法を中心に概説する.
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悪性リンパ腫の生物学と分子生物学
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医学のあゆみ 235巻5号, 369-374 (2010);
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免疫細胞が自己抗原は攻撃せず非自己抗原のみを攻撃する仕組みは,長い間免疫学のもっとも興味深い疑問のひとつであり,重要な命題であった.現在では,自己非自己認識の担い手が T 細胞であることは明らかである.しかし,T 細胞がその分化の場である胸腺において,どのように自己非自己認識能を獲得するのか,また共通の CD4+CD8+ダブルポジティブ(DP)胸腺細胞から CD4+あるいは CD8+シングルポジティブ(SP)細胞への分化決定はどのようなシグナルによって決定されるのか,それらの機構のすべてが解決されたとはいいがたく,胸腺免疫学はいまもって魅力に満ちた分野である.一方で,ここ数年の間に胸腺内 T 細胞分化決定機構は抗原受容体からのシグナルレベル,転写制御レベルで活発に解析され,その精密なコントロールの詳細が明らかにされてきた.本稿では T 細胞がどのように胸腺内で分化の過程を遂げるか,その最新知見を紹介する.
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医学のあゆみ 235巻5号, 375-379 (2010);
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Hodgkin リンパ腫は,反応性背景中に Reed-Sternberg(RS)細胞の増殖が認められる腫瘍である.RS 細胞の認識により,悪性リンパ腫のなかでも明確に区別される疾患であるが,RS 細胞の一部は EB ウイルス感染を伴っており,加齢性 EBV 陽性びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫などの EB ウイルス感染に伴う他のリンパ腫との異同鑑別が問題となっている.本稿では,Hodgkin リンパ腫の診断と EB ウイルスとの関連を中心に概説したい.
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医学のあゆみ 235巻5号, 380-383 (2010);
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悪性リンパ腫は造血器腫瘍のなかでもっとも頻度が高く,またその罹患率・死亡率は年々増加傾向にある.固形腫瘍に比較し抗癌剤に対する感受性が高く,また化学療法の進歩も著しい.治療強度は分子標的薬から造血幹細胞移植まで大きく異なるため,個々の治療選択において正確な予後予測が非常に重要である.予後予測モデルの研究は臨床学的マーカー(clinical marker)から生物学的マーカー(biological marker)に至るまで幅広く行われ,臨床でも広く使用されてきた.とくに B 細胞性非 Hodgkin リンパ腫は悪性リンパ腫のなかでも患者数の多い subtype であり,予後予測モデルの開発が積極的に行われてきた.本稿においては,なかでももっとも罹患率の高い,びまん性大細胞型 B リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)における予後因子を中心に概説する.
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医学のあゆみ 235巻5号, 384-388 (2010);
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Paired box 5(PAX5)は,EBF1 などとともに B 細胞分化に必須の役割を果たす転写因子である.近年,B細胞の正常分化には多数の転写因子間の時系列的な相互作用と,ヒストンおよび DNA の修飾によるエピジェネティックな転写調節機構が重要であることがわかってきた.一方で腫瘍の網羅的ゲノム解析は,従来の遺伝子・染色体解析では検出できなかったあらたな遺伝子異常の同定を可能にした.PAX5 の B 細胞分化,腫瘍発生機序,診断および予後における重要性について最新知見を含め解説する.
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医学のあゆみ 235巻5号, 389-392 (2010);
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B 細胞性腫瘍(悪性リンパ腫,急性リンパ性白血病)には特徴的な遺伝子異常が存在するが,そのなかで 18番染色体に存在する BCL2 遺伝子の発現はアポトーシスの抑制,8 番染色体に存在する MYC 遺伝子の発現は細胞回転の促進と密接に関連している.同一細胞内で両者がそれぞれ免疫グロブリン遺伝子と転座した症例は dual hit lymphoma/leukemia(DHL)とよばれ,両遺伝子の性格を合わせもつためきわめて予後不良であることが知られている.本稿では,BCL2 遺伝子と MYC 遺伝子について概説したうえ,DHL について現時点で判明している知見について紹介する.
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医学のあゆみ 235巻5号, 393-400 (2010);
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Blimp-1(B lymphocyte-induced maturation protein)は PRDM1 ともよばれ,B 細胞が形質細胞へ終末分化する際に重要な役割を果たす転写因子である.Blimp-1 は,悪性リンパ腫をはじめとするリンパ系腫瘍で高率に欠失が報告されている染色体 6q21 領域に存在することより,リンパ系腫瘍の発症に関与することが予想されていた.2006 年に Blimp-1 の遺伝子変異がびまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫(DLBCL)で認められ,とくにactivated B ce(ll ABC)タイプの約 1/4 症例で変異があるのに対して,germinal cente(r GC)タイプではまれであることが報告され,ABC DLBCL における癌抑制遺伝子候補として注目されている.一方,Blimp-1 は B 細胞だけでなく T 細胞分化の調節にも関与していることが示されてきた.さらに,Blimp-1 には N 末端側の PRドメインが欠失した Blimp-1βが存在し,T 細胞リンパ腫において Blimp-1βの高発現と治療抵抗性との関連性を示す報告があるなど,T 細胞リンパ腫でも Blimp-1 変異が重要な役割を果たす可能性が示唆されている.本稿では,Blimp-1 遺伝子変異の B 細胞および T 細胞リンパ腫における役割について,これまでの報告をまとめて紹介する.
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医学のあゆみ 235巻5号, 401-406 (2010);
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抗体医薬の作用機序は非常に多岐にわたり,ひとつの抗体製剤において複数のメカニズムが関与することもけっしてまれではない.一方で臨床における抗腫瘍作用において,それぞれの作用機序がいつ,どこで,どの程度機能しているかを正確に評価することは容易ではない.とくに ADCC や CDC などのエフェクターメカニズムは,多くの抗体医薬に共通する作用機序であるが,実験動物を用いた検討だけでは臨床の状況を再現することは難しく,さまざまな臨床試験や臨床研究,あるいは動物モデルを用いた研究により,一歩一歩解き明かされつつあるのが現状である.そうした状況のなか,B 細胞性非 Hodgkin リンパ腫は,CD20 を標的とした抗体療法が早くから臨床応用され,エフェクターメカニズムの解明に大きく貢献している.そして得られた知見から,さらにエフェクター作用を強化した抗体が開発され,抗体医薬の進化の場として注目されている.
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医学のあゆみ 235巻5号, 407-410 (2010);
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びまん性大細胞型 B 細胞性リンパ腫(DLBCL)は悪性リンパ腫の 30~40%を占めるが,その病態・病理学的形態・予後を含む臨床像は多岐に及ぶ.マイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現解析に基づいた発現プロファイルから,濾胞中心 B 細胞様(GCB)DLBCL,活性化 B リンパ球様(ABC)DLBCL,原発性縦隔 B 細胞リンパ腫(PMBL)といった亜型に分類できることが示された.これらはリンパ腫発生の起源となる細胞の違いを示すと考えられるが,分子病態が異なることが明らかとなりつつあり,予後判定・治療選択において今後重要な指標となることが期待される.
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疫学・発症機構
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医学のあゆみ 235巻5号, 413-417 (2010);
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成人 T 細胞白血病(ATL)は,HTLV-Ⅰ感染が原因で発症する CD4+T 細胞の腫瘍である.ウイルス遺伝子Tax は多機能で,感染細胞の異常増殖,細胞周期の促進,アポトーシスの抑制,突然変異の亢進などの異常をもたらすが,in vivo での発現レベルがあまりにも低い.この問題点を補強するように,アンチセンス遺伝子HBZ が見出された.HBZ は ATL 細胞,キャリア細胞を問わず持続的に発現し,Tax の発現を抑制しながらT 細胞の増殖を促進するという.HTLV-Ⅰの解析とともに ATL の発症機構の理解は大きく進んだが,ウイルス感染の細胞特異性,腫瘍化の最後の分子機構,その細胞特性など基本的な問題は残されたままである.
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医学のあゆみ 235巻5号, 419-424 (2010);
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粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫は,慢性炎症を先行病変とする悪性リンパ腫である.慢性炎症は,リンパ腫発症のための微小環境を提供する.この微小環境は,おそらく腫瘍の増殖を支えるための間質細胞と種々のサイトカインである増殖因子を腫瘍に提供していると考えられる.また,ピロリ菌除菌により 60~80%の胃 MALT リンパ腫は退縮するため,腫瘍についての性質が疑問視されることもあるが,腫瘍と考えるのが妥当である.この特殊な病型の MALT リンパ腫の発症機構は,これまでに解析されてきた染色体転座による悪性リンパ腫の発症機構と共通する点が多く認められる.
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医学のあゆみ 235巻5号, 425-430 (2010);
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悪性リンパ腫の治療方針を決定するうえで病理分類が重要であるが,WHO 分類に示されるように多くの疾患単位があり,同じ病型でも予後の異なる不均一な疾患から成り立っている.そのため,悪性リンパ腫の治療方針はおもに臨床病期および予後因子によって層別化され決定されている.そのため,病期分類および予後予測モデルを理解し使用することが大切である.予後予測モデルの代表的なものが aggressive リンパ腫における国際予後指標(IPI)であるが,近年,進行期 Hodgkin リンパ腫に対する国際予後スコア(IPS),濾胞性リンパ腫に対する国際予後指標(FLIPI),末梢性 T 細胞性リンパ腫,非特異群の予後指標(PIT)などが報告されている.また,rituximab の臨床応用によりあらたな予後因子が報告されている(FLIPI2,R-IPI).今後これらの予後因子の有用性が臨床研究によって確認されることにより,あらたな層別化治療が期待される.
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医学のあゆみ 235巻5号, 431-437 (2010);
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抗 HIV-1 薬の開発と多剤併用療法(HAART)の普及により,HIV-1 感染者の予後は劇的に改善した.しかし,AIDS 治療の長期化に伴い,AIDS 患者の長期予後を脅かす問題として悪性腫瘍,とくに悪性リンパ腫の合併がクローズアップされている.AIDS リンパ腫は,非 AIDS リンパ腫と比べて骨髄・中枢神経浸潤などの節外病変が多く病期が進行しており,HIV-1 感染と日和見感染のコントロールが必要なため,治療が困難である.近年,強力な化学療法の導入により AIDS リンパ腫の生命予後は改善している.
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医学のあゆみ 235巻5号, 438-442 (2010);
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現行の非 Hodgkin リンパ腫の効果判定規準は,“非 Hodgkin リンパ腫の効果判定規準の標準化国際ワークショップ”に基づく.その後,PET を取り入れた改訂版が出されたが,臨床試験への応用は病理組織型によって意義が異なる.PET により代謝を考慮した完全奏効が定義され,とくに節外病変の消失を評価するうえではCT に勝る.しかし一方では,炎症,骨折,他の悪性腫瘍の合併などとの鑑別を要する.化学療法後あらたに出現した FDG 集積部位の評価には慎重であるべきで,ときに他のモダリティや生検を要する.したがって,PET 検査で擬陽性になりやすい解剖学的部位や,その特性を熟知しておく必要がある.ベースライン評価で骨髄や消化管浸潤がある場合には,PET を用いても治療効果の完全な評価は不可能で,完全奏効が画像診断上期待できる場合には忘れないようにこれらの検査を効果判定時期に行うことが必須である.
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医学のあゆみ 235巻5号, 443-448 (2010);
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多クローン性高γ-グロブリン血症のなかにはさまざまな疾患が含まれており,それらを鑑別していく必要がある.Castleman 病はリンパ節腫大と多クローン性高γ-グロブリン血症を特徴とし,臨床的には単発性(限局型)と多発性(全身型)に分類され,病理組織学的には硝子血管型と形質細胞型に分類される.多発性の多くは IL-6 が著明高値であり,腫大リンパ節の IL-6 産生異常がさまざまな全身症状や炎症反応高値の原因と考えられている.欧米の多発性 Castleman 病症例では HIV 陽性,HHV-8 陽性が多いが,わが国の症例は HIV陰性,HHV-8 陰性例が大多数であり,異なった疾患をみている可能性が高い.IgG4 関連疾患は,高 IgG4 血症と IgG4 産生形質細胞による腫瘤形成・組織浸潤を特徴とする疾患である.このため全身性の炎症病態と罹患臓器固有の障害をきたすが,一方で副腎皮質ステロイド(以下,ステロイド)治療が著効するという特徴をもつ.かつて Castleman 病または悪性リンパ腫と診断されてステロイド治療が劇的に奏効した症例は IgG4 関連疾患の可能性も高く,臨床所見や病理組織を見直す必要がある.
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治療法
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医学のあゆみ 235巻5号, 451-456 (2010);
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Fludarabine は核酸合成阻害作用を有するアデノシン(プリンヌクレオシド)アナログで,抗腫瘍薬として使用される.造血器腫瘍,とくにリンパ性腫瘍で高い抗腫瘍効果が認められており,慢性リンパ性白血病や濾胞性リンパ腫などの緩徐に進行する疾患で重要な役割を占めている.CD4 陽性リンパ球を減少させることなどから免疫抑制作用が強く,患者が易感染性に陥ることがあり,ウイルス感染など通常はまれである感染症にも注意を払う必要がある一方,その免疫抑制作用から骨髄非破壊的造血幹細胞移植の前処置において欠かすことのできない薬剤である.悪心嘔吐,脱毛といった従来の抗癌剤で認められる副作用が少ない点も特徴で,qualityof life も重視される今後の悪性腫瘍治療に貢献すると考えられる.Fludarabine は現在,静注製剤以外に経口薬も認可・販売され,外来化学療法などでも使いやすい薬剤となっている.
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医学のあゆみ 235巻5号, 457-461 (2010);
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悪性リンパ腫に対してゼヴァリン(Zevalin)が使用可能となり,治療の分野に放射免疫療法という治療概念が導入された.ゼヴァリンはリツキシマブと同じ CD20 抗原を標的とし,β線を放出するイットリウムを標的細胞へ運搬することにより,高い抗腫瘍効果を発揮する.すでに低悪性度リンパ腫に対する高い有効性と安全性が報告されている.著者らの施設では,これまでに 40 例の再発または難治性の低悪性度 B 細胞非Hodgkin リンパ腫,Mantle 細胞リンパ腫に対して同治療を実施してきた.治療効果としては全奏効割合 76%,完全奏効割合 50%であった.比較的強い血液毒性に留意が必要であるが,治療後完全寛解に至った症例では長期の寛解維持が期待できる.前治療レジメン数が少ない症例において,より高い有効性が認められた.ゼヴァリン治療の実施にあたってはクリアしなければいけない要件がいくつかあり,チーム医療と地域連携の実践が肝要である.
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医学のあゆみ 235巻5号, 462-468 (2010);
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限局期低悪性度リンパ腫では,放射線療法によって長期間の無病生存期間が得られる.高悪性度リンパ腫では薬物療法が治療の主体となる疾患や病態が多いが,その場合でも放射線療法を効果的に用いることにより治療期間の短縮,薬物療法の毒性軽減,医療費軽減などに役立ち,患者に負担の少ない治療となる場合がある.特殊な節外性リンパ腫(NK 細胞リンパ腫など)では悪性度,臓器の解剖学的特異性,化学療法の到達度などを考慮し,放射線療法の特性を生かして固有の戦略が検討されている.悪性リンパ腫の長期生存者が増えるにつれて,二次癌と慢性臓器障害など治療関連毒性が問題となり,欧米では強度変調放射線療法が用いられるようになってきた.
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医学のあゆみ 235巻5号, 469-474 (2010);
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ヒト T 細胞が認識できる癌関連抗原が同定されてから,それらを標的とした細胞免疫療法の開発が進んでいる.癌免疫療法には癌ペプチド・蛋白質ワクチン,樹状細胞療法,癌特異的 T 細胞養子免疫療法,癌特異的 T 細胞レセプター遺伝子や抗体と CD3 とのキメラ遺伝子(CAR/T-body)などによる遺伝子治療などがある.悪性リンパ腫に対してはイディオタイプワクチンの臨床試験が進行しており,治療効果が認められたとする報告がある.また,CAR/T-body による治療効果も報告されている.他方,制御性 T 細胞をはじめとして,免疫応答を負に制御する機構が明らかにされつつあり,この人為的制御による免疫応答の活性化も重要な課題である.
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医学のあゆみ 235巻5号, 475-478 (2010);
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悪性リンパ腫に対する自家末梢血幹細胞移植は,患者に治癒をもたらす可能性の高い治療法として,近年その移植数は増加している.再発・難治性で化学療法に感受性のある非 Hodgkin aggressive リンパ腫の患者では標準治療となっているし,予後不良群では初回治療において自家末梢血幹細胞移植を併用した大量化学療法の臨床試験が実施されている.
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医学のあゆみ 235巻5号, 479-485 (2010);
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リンパ腫に対する造血幹細胞移植は自家移植が中心であり,同種移植は進行期の患者のみを対象として行われていたが,移植関連死亡率が非常に高いということが問題であった.近年になり,支持療法の進歩,より早期の同種移植の実施などによって,リンパ腫に対する同種移植の治療成績は確実に改善している.しかし現時点では,リンパ腫に対する同種移植が推奨されるべき病状・病態は明らかになっていない.強力な抗腫瘍効果が期待できるものの,化学療法や自家移植と比較して毒性が強い治療であるということに変わりはない.しかし,すくなくとも自家移植後に再発した症例などは,全身状態が保たれていればミニ移植のよい適応になる可能性がある.細分化された病理組織型のひとつひとつに対して前方視的試験を実施することは現実的ではないが,リンパ腫に対する同種移植の位置づけをすこしでも明らかにしていくために,すくなくとも各施設における均一的な治療方針や,その結果を集積した良質のデータベースの構築が必須である.
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エビデンスに基づくリンパ腫の治療とあらたな展開
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医学のあゆみ 235巻5号, 489-496 (2010);
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これまで濾胞性リンパ腫(FL)に対する化学療法は生存に対する有効性が証明されず,自家末梢血幹細胞移植などの強力な治療によっても治癒がもたらされるわけではなかったことから,初発例においても標準治療が確立していなかった.このため,腫瘍に関連した臨床症状が出現するまでは,“watchful waiting”も有用な“治療”方針のひとつとされてきた.しかし rituximab の登場により,この治療戦略に変化が起こりつつある.Rituximabと化学療法との併用療法は従来の化学療法単独での奏効率や生存率を凌駕し,rituximab 併用化学療法が未治療例の準標準的治療と位置づけられるようになってきた.また,rituximab は維持療法として無増悪生存率を改善させる有効性が示され,さらに活躍の場が広がりつつある.一方,再発・難治例を中心に開発されてきた新規薬剤や放射免疫療法が初発例に使用されるようになり,さらなる治療成績の向上が期待されている.本稿では,FL 初発例に対する現在の治療戦略と今後の方向性を概説する.
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医学のあゆみ 235巻5号, 497-503 (2010);
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マントル細胞リンパ腫は CD5 陽性,t(11;14)(q13;q32)転座によるサイクリン D1 の過剰発現を特徴として,1992 年に提唱された疾患単位である.中高年・進行期症例が多く,B 細胞性非 Hodgkin リンパ腫の標準的治療である R-CHOP 療法で奏効は得られるが再発しやすく,予後不良である.2008 年には MIPI とよばれる予後因子が報告された.リツキシマブを含む強力な多剤併用による寛解導入療法,引き続く自家末梢血幹細胞移植を含む大量化学療法などが試みられ,若年症例など施行可能な一部の症例では有効性が認められるものの,大半を占める高齢者では施行困難であった.近年,さまざまな新規治療薬の開発・研究が進むなか,有望な薬剤の成績が報告されている.ベンダムスチンはアルキル化剤の作用とプリンアナログ作用を合わせもつユニークな薬剤であり,その高い効果にもかかわらず有害事象がきわめて少ない.ボルテゾミブ,サリドマイド/レナリドマイドは多発性骨髄腫においてわが国でも中心的な薬剤であり,mTOR 阻害剤もわが国では腎細胞癌に対して保険承認された薬剤である.そのため,これらの有望な薬剤が本疾患においても使用可能になれば,治療戦略の幅が広がると期待される.
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医学のあゆみ 235巻5号, 504-509 (2010);
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悪性リンパ腫の標準治療は 1990 年代までは CHOP 療法であったが,抗 CD20 抗体であるリツキシマブの登場以来,4 つの代表的ランダム化比較試験が行われ,初発びまん性大細胞型 B 細胞性リンパ腫(diffuse largeB-cell lymphoma:DLBCL)患者では R-CHOP 療法が標準治療となった.ただし stageⅠ(non-bulky)患者では,R-CHOP 療法と放射線治療を組み合わせた治療が標準的であり,また若年中高・高リスク患者では RCHOP療法後,治療効果が得られれば,地固め療法として自己幹細胞移植併用大量化学療法を行うこともある.今日,さらなる抗体医薬の開発が進み,いくつかの有望な薬剤が研究されており,それらを含む DLBCLに対するあらたな治療展開にも期待がよせられている.
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医学のあゆみ 235巻5号, 510-515 (2010);
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未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)は元来,腫瘍細胞の形態と CD30 陽性という特徴から定義づけられてきたリンパ腫であるが,現在では全身性または皮膚原発の T 細胞性リンパ腫に分類され,さらに全身性 ALCL は,anaplastic lymphoma kinase(ALK)の過剰発現を認める ALK 陽性 ALCL と,その特徴をもたない ALK 陰性ALCL に大別されている.発症年齢が比較的若い ALK 陽性 ALCL は一般に予後がよいといわれているが,臓器浸潤がある場合や再発を繰り返す症例では ALK 陰性 ALCL に劣らず予後不良である.現在,ALK や CD30を標的とした新規治療薬が開発されている.
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医学のあゆみ 235巻5号, 517-520 (2010);
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Burkitt リンパ腫/白血病(BL)は c -MYC 遺伝子(8q24)と免疫グロブリン遺伝子の相互転座に起因する高悪性度 B 細胞腫瘍で,節外性浸潤,とくに骨髄浸潤や中枢神経浸潤をきたし,急速に進行する臨床症状が特徴的である.流行地型,非流行地型,免疫不全型という病型による臨床像の違いはよく知られているが,WHO新分類(第 4 版,2008 年)により診断と定義が再編成され,近年の抗体療法を併用した短期集中型化学療法の開発で予後が劇的に改善されるなど,悪性リンパ腫のなかでも非常にホットな疾患となっている.本稿では,BL の診断と治療の変遷について概説する.
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医学のあゆみ 235巻5号, 521-525 (2010);
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MALT リンパ腫は,おもに節外に病変をきたすインドレント B 細胞リンパ腫(低悪性度リンパ腫)である.胃MALT リンパ腫が代表的なもので,Helicobacter pylori(HP)慢性感染との関連が強く,HP 陽性限局期症例の多くで除菌療法が奏効する.また HP 陰性限局期例では放射線療法が著効する.胃外 MALT リンパ腫の限局期例では放射線療法,外科的切除などの局所療法が行われるが,その適応は病変臓器によって異なる.MALT リンパ腫の進行例では rituximab 単剤療法や化学療法などの全身療法が考慮されるが,無症状・低腫瘍量であれば待機療法の適応も検討してよいであろう.
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医学のあゆみ 235巻5号, 527-530 (2010);
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血管内リンパ腫は,まれな節外性悪性リンパ腫の一疾患である.9 割以上は B 細胞由来であり,血管内大細胞型 B 細胞リンパ腫ともよばれる.悪性リンパ腫の WHO 分類および国際コンセンサス報告により,疾患単位として確立した.T 細胞や NK 細胞を起源とする血管内リンパ腫も報告されている.特徴は,①小血管内でリンパ腫細胞がクローン性に増殖する,②皮膚,中枢神経系,骨髄内の血管,全身のどの臓器にも発症しうる.浸潤組織の臓器症状が発現する,③ 臨床症状は予後良好な皮膚限局型がヨーロッパに多く,全身型,血球貪食症候群がアジアに多いなど地域特性がある,④画像診断-MRI 検査では,皮質小血管の虚血や脱髄病変として皮質下に T2 強調画像として描出され,一部フレア画像として描出されるが一定しない,⑤確定診断には皮膚の無作為生検,骨髄生検,脳髄液検査,脳実質の生検などが必要である,⑥リツキシマブ併用の化学療法が初期治療として有効であり,治癒も期待できる.血管外浸潤を呈した中枢神経血管内リンパ腫では,脳原発悪性リンパ腫に準じた治療が勧められる.
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医学のあゆみ 235巻5号, 531-536 (2010);
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HTLV-Ⅰが病因である成人 T 細胞白血病リンパ腫(ATL)は,多様な臨床病態をとる難治性の疾患である.臨床試験と病態解析の結果により病型に基づいて化学療法,同種造血幹細胞移植療法,インターフェロン(IFN)・ジドブジン(AZT)併用療法,新薬開発などの治療法の開発が進みつつある.
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医学のあゆみ 235巻5号, 537-542 (2010);
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NK/T 細胞リンパ腫は東アジアおよび中南米に多いまれな疾患であり,多数例での病態解析および前向き臨床試験による治療開発は困難と考えられていた.しかし 2000 年以降,おもに東アジアの研究者により多数例での後方視的病態解析および多施設共同前向き臨床試験が続々と遂行され,新規治療の導入が進んでいる.全体の 2/3 以上を占める鼻咽頭限局期では,わが国で行われた対象世界初の本格的な前向き臨床試験(JCOG0211-DI)の結果から,放射線治療・化学療法同時併用療法であり,照射単独より優れた有効性が認められた RT-2/3DeVIC 療法を行うことが勧められる.初発Ⅳ期,再発・難治例に対しては東アジア多国間臨床試験の結果から,多剤耐性非関連薬剤とL-asparaginase,etoposide から構成される SMILE 療法による寛解導入が勧められる.現在,わが国の日常臨床においてもこれらの治療法によって,本疾患の予後改善が実感されつつある.
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医学のあゆみ 235巻5号, 543-548 (2010);
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T 細胞リンパ腫には前駆(幼若)型と末梢(成熟)型がある.前駆型のリンパ芽球白血病・リンパ腫を除くと他は末梢 T 細胞リンパ腫(PTCL)で,WHO 分類 2008 では 18 種類記載されている.分子生物学的研究の進歩で新知見が得られているが,ALK 陽性未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)以外の発症機序は不明である.PTCL で頻度の高いものは末梢 T 細胞リンパ腫・非特定,血管免疫芽球性 T 細胞リンパ腫,ALK 陽性または陰性ALCL である.予後は ALK 陽性 ALCL などの一部のものを除き PTCL はアグレッシブ B 細胞リンパ腫よりも不良である.CHOP 療法などの多剤併用薬物療法,造血幹細胞移植に加え新規薬剤などが実施されているが,標準治療は未確立である.予後予測モデルは CHOP 療法を基本とする国際予後指標も有用であるが,PTCLに対するモデルや生物学的因子を加味されたものも開発されている.今後はどのようなモデルを使い,どのように層別化治療を実施するかが大きな研究課題である.
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医学のあゆみ 235巻5号, 549-554 (2010);
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血管免疫芽球性 T 細胞リンパ腫は全悪性リンパ腫の 2~3%,全末梢性 T 細胞リンパ腫の 15~20%を占める.比較的高齢者に多く発症し,性差はほとんどない.全身性リンパ節腫脹のほかリンパ腫細胞が直接的・間接的に産生するサイトカインに起因すると考えられる肝脾腫,発熱,皮疹,体重減少,胸水・腹水,多発性関節炎症状,貧血や汎血球減少あるいは好酸球増加,多クローン性高γ-グロブリン血症,血清 LDH 上昇など多彩な臨床像を呈し,また自己免疫疾患を合併する頻度も高い.組織学的には反応性病変,とくに薬剤性リンパ節腫大との鑑別はしばしば困難である.標準治療は確立していない.CHOP 療法の完全奏効割合は 50%以上であるが,比較的短期での再発が多く,5 年生存割合は 30~35%と不良である.免疫不全も高度で,化学療法遂行時には日和見感染症に対する注意が必要である.期待される新規の抗体薬,抗腫瘍薬,造血幹細胞移植療法の有用性も報告されているが,多くはいまだ研究段階にある.
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新規薬剤
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医学のあゆみ 235巻5号, 557-562 (2010);
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Bendamustine は,40 年以上前に旧東ドイツで開発されたアルキル化剤とプリン誘導体の骨格を合わせもつ抗腫瘍剤であり,アルキル化剤などの既存の抗腫瘍剤と非交差耐性の関係にある.濾胞性リンパ腫をはじめとする indolent B 細胞リンパ腫の化学療法施行後の再発・再燃患者に対して,単剤および抗 CD20 抗体 rituximabとの併用による高い臨床効果が認められた.未治療 indolent B 細胞リンパ腫に対する第Ⅲ相試験において,rituximab と bendamustine 併用は従来の標準治療である rituximab と CHOP 療法を上まわる有効性が報じられた.B 細胞性慢性リンパ性白血病,多発性骨髄腫に対する臨床的有効性も報じられ,乳癌,小細胞肺癌などの固形癌に対する抗腫瘍効果も示唆されている.抗腫瘍薬として分子標的薬がもてはやされている現在の臨床腫瘍学において,分子標的薬を凌駕するような高い有効性を発揮する,古くて新しいユニークな新抗癌剤の登場といえよう.
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医学のあゆみ 235巻5号, 563-569 (2010);
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癌細胞のユビキチン・プロテアソーム経路を阻害するボルテゾミブは,多発性骨髄腫治療薬の主軸のひとつになっているが,リンパ系悪性腫瘍に対する共通の抗腫瘍効果も有している.ボルテゾミブ単独療法では,再発・難治性 Mantle 細胞リンパ腫(MCL)に対し,全奏効率 33%(完全寛解率 8%)が得られ,長期の観察(23.5カ月)で増悪期間および全生存期間(中央値)は,それぞれ 6.7 カ月と 23.5 カ月の良好な成績を示した.そのほか,再発・難治性の濾胞性リンパ腫(FL),原発性マクログロブリン血症,粘膜関連リンパ腫に対しても有効性が認められる.ボルテゾミブとリツキシマブの併用療法は,再発・難治性 MCL のほかに,FL と辺縁帯 B 細胞リンパ腫で試みられ,5 割を超える奏効率が示された.ボルテゾミブは,悪性リンパ腫のいくつかのサブタイプで高い臨床効果を有しており,その至適な治療法の確立が急がれる.
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医学のあゆみ 235巻5号, 570-576 (2010);
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Rituximab era となり,びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫や濾胞性リンパ腫の著明な治療進歩がもたらされたが,rituximab の治療限界も明らかになりつつある.こうした治療限界を打破する目的で,post rituximab 抗体とよばれる新規のヒト化抗 CD20 抗体が開発され,臨床試験成績が蓄積されつつある.今後,rituximab 抵抗例に対する治療改善のみならず,初発例においても rituximab を上まわる有効性が期待されている.本稿では臨床試験が進められている新規抗 CD20 抗体のなかで,わが国での難治性 B 細胞リンパ腫に対する開発が進められている ofatumumab,GA101 と,わが国では未開発の veltuzumab について紹介する.
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医学のあゆみ 235巻5号, 577-581 (2010);
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近年,B 細胞性リンパ腫の治療に抗体医薬を応用することで,その予後は大きく改善された.21 世紀に入って登場したリツキシマブは,B 細胞性リンパ腫細胞の細胞表面に発現されている CD20 分子を標的としたモノクローナル抗体医薬である.その活躍はめざましく,多くの CD20 陽性 B 細胞性リンパ腫患者に使用されているが,難治性リンパ腫も少なからず存在する.そこで次世代の標的となっているのが,CD22 分子である.この分子を標的としたイノツズマブは,抗癌剤を抱合した新しいタイプの抗体医薬である.CD22 とイノツズマブの特徴,およびイノツズマブの臨床試験に関して述べたい.
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医学のあゆみ 235巻5号, 582-586 (2010);
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エピジェネティクスの異常を是正する抗癌剤,ヒストン脱アセチル化酵素(histone deacetylase:HDAC)阻害剤の臨床試験が固形癌・血液腫瘍において,日本を含めた各国で行われている.HDAC 阻害剤である vorinostatは難治性皮膚 T 細胞リンパ腫に対し,アメリカでは標準治療に組み込まれており,日本においても認可される見込みである.他の抗癌剤との相加・相乗効果や,従来の抗癌剤に耐性となった腫瘍における効果も報告されており,今後適応が広がることが期待される.一方,難治性リンパ腫に対する奏効率は 3 割程度であるが,効果を予測するバイオマーカー研究などはまだ十分とはいえない.遺伝子非特異的にアセチル化が起こるのでターゲットがかならずしも明確ではない,HDAC 阻害剤の効果のマーカーとして,末梢血単核球や腫瘍組織でのアセチル化の評価が行われているが,日常臨床的に確立された方法がまだない,などの問題点がある.
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医学のあゆみ 235巻5号, 587-593 (2010);
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CCR4 抗体のトランスレーショナルリサーチ(TR)は基礎研究から臨床試験に至るまで,日本の基礎研究者,臨床医そして企業(産),学術機関(学)の共同研究によりなされ,ヒト化抗 CCR4 抗体 KW-0761 のがん患者への the first in patient は日本でなされた.がん治療抗体の臨床導入が欧米諸国に先がけ日本で行われたのは本剤が初であり,2010 年 9 月現在,他に例がない.CCR4 抗体の TR の過程は,今後のわが国における新規抗腫瘍薬剤の臨床開発のひとつのモデルケースになることが期待されている.
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医学のあゆみ 235巻5号, 595-600 (2010);
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Rapamycin の標的分子である mammalian target of rapamycin(mTOR)はセリン・スレオニンキナーゼであり,癌細胞において重要なシグナル伝達経路である phosphatidylinositol 3-kinase(PI3K)/AKT キナーゼカスケードの下流の因子である.mTOR 阻害剤は PI3K/AKT キナーゼカスケードを遮断することにより,免疫抑制効果および抗腫瘍効果を示し注目されている.癌領域においては腎細胞癌,乳癌,肺癌,リンパ腫など多くの腫瘍に効果が認められ,その臨床応用が期待されている.現在,rapamycin の誘導体として temsirolims,everolims,deforolimus の 3 つの mTOR 阻害剤が開発されているが,これら 3 剤のリンパ腫を中心とした研究の進展を概説したい.
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医学のあゆみ 235巻5号, 601-605 (2010);
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TNF receptor family である CD30 は健常組織には発現せず,Hodgkin リンパ腫,ALCL,ATL などのリンパ系腫瘍に発現を認める特性を生かした抗体療法には期待がもたれる.また,抗体技術の進歩により,ヒト化抗体(SGN-30, MDX-060, MDX-1401),トキシン結合型抗体〔SGN-35(brentuximab vedotin), Ki-4. dgA〕,放射線同位元素を結合した RIT 用抗体(131I-Ki-4),二重特異性モノクローナル抗体(CD30/CD16 bi-specific 抗体:HRS-3/A9,CD30/CD64 bi-specific 抗体:H22xKi-4)が開発されている.Hodgkin リンパ腫は再発・不応例になると,通常化学療法のみでは治療が難渋する.また,初発 Hodgkin リンパ腫では,化学療法による二次性発癌への影響が問題視されている.抗体療法を用いることで,以上の問題が改善される可能性も高い.ALCL に関しては,ALK 陽性 ALCL は化学療法に対する反応性はよいとされているが,一方,ALK 陰性 ALCLにおいては通常化学療法では予後も悪い.ALK 陰性 ALCL にも抗 CD30 抗体は有効であるという報告もあり,期待がもたれる15,16).