Volume 242,
Issue 4,
2012
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あゆみ 脂肪由来幹細胞の臨床応用への展開
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医学のあゆみ 242巻4号, 287-287 (2012);
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医学のあゆみ 242巻4号, 289-295 (2012);
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現在,間葉系幹細胞(MSC)は細胞治療において主要な位置を占めている.これまでに腎臓病に対する骨髄由来間葉系幹細胞(BMSC)の有用性を示す基礎的検討が多く報告されており,一部では臨床試験の結果も報告されている.著者らは脂肪由来間葉系幹細胞(ASC)に着目して研究を行っている.独自に開発した低血清培養法を用いると,高い組織再生促進能と免疫抑制能を有する間葉系幹細胞が培養されることを見出した.この低血清培養脂肪由来間葉系幹細胞を各種実験モデル動物に投与することで,その治療効果を確認している.本稿では,難治性腎疾患治療への応用に向けた基礎的検討を紹介する.
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医学のあゆみ 242巻4号, 297-302 (2012);
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頻回の虚血障害により残存心筋幹細胞が消失する虚血性心筋症など重症心不全においては,これまでの内科的治療も十分な効果を上げえず,PC(I percutaneous coronary intervention)による血流改善も限定的な効果しかない.これら治療抵抗性の重症心不全end-stage にあっては1 年死亡率が75%とされ,新規治療法・医薬品の開発が待たれている.著者らは,大量に簡便・安全・容易に採取可能なヒト皮下脂肪組織から新規間葉系幹細胞として,脂肪組織由来多系統前駆細胞の単離・培養法を確立した.当該細胞から誘導した心筋芽様細胞が慢性心筋梗塞モデルラットに移植した結果,心機能と長期生存率を改善し,被投与細胞を慢性心筋梗塞モデルラット心筋組織内で心筋細胞への分化を組織学的に確認している.非臨床試験として,単回投与毒性試験(経左心室腔内投与・経静脈投与)を中枢・呼吸安全性薬理試験(GLP)下で実施した.毒性を認めず,特殊毒性試験としては,造腫瘍試験,軟寒天コロニー形成試験,核型分析試験をGLP にて終了している.薬理試験のうち安全性薬理コアバッテリー試験では,GLP が終了している.このように著者らは,自らが行ってきた研究の成果を1 日でも早く社会に還元するため,当初から薬事開発をめざしている.
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医学のあゆみ 242巻4号, 303-308 (2012);
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近年の幹細胞研究の進歩により,傷害臓器修復のための細胞移植治療に期待が高まっている.そのなかでも脂肪由来幹細胞は採取量の多さや拒絶反応回避可能などの理由から注目され,肝・膵領域における対象疾患は肝硬変,1 型糖尿病のみならず,劇症肝炎あるいは肝癌における大量肝切除,生体肝移植における過小グラフトに対する補助療法にも有用である可能性がある.臨床応用にはさまざまな問題をクリアする必要があるものの,動物実験レベルでは傷害臓器機能細胞への分化や,幹細胞自身が放出する液性因子による細胞保護作用など,さまざまな効果が報告されている.本稿では,肝・膵領域におけるそれらの知見を自験例とともに概説するとともに,臨床応用に向けた問題点について考察する.
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医学のあゆみ 242巻4号, 309-313 (2012);
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括約筋機能不全による腹圧性尿失禁(SUI)に対する新しい再生治療として,自己皮下脂肪由来幹細胞を用いた傍尿道注入治療を開発した.本法では吸引採取した腹部脂肪組織からCelutionTMシステムを用いて脂肪組織由来再生細胞を抽出し,経尿道的に尿道括約筋部に注入する.自己組織由来細胞を用いること,体外での細胞培養操作を必要としないこと,脂肪吸引・幹細胞抽出・尿道注入までを3 時間以内の一連の操作で実施できることから,低侵襲で有望な治療法と考えられる.
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医学のあゆみ 242巻4号, 315-320 (2012);
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脂肪吸引で切除された脂肪組織は自家移植材料として,あるいは貴重な組織幹細胞源として利用することができる.脂肪組織に存在する前駆細胞(ASC)は,組織の恒常性維持をつかさどるとともに,脂肪の傷害や移植時における組織修復・治癒においては骨髄由来前駆(幹)細胞とともに中心的役割を果たす.またASC は血管ときわめて密接な関係をもつ細胞であり,脂肪新生や血管新生を目的とした治療ツールとして利用できることが示唆されている.脂肪組織の移植はたんに組織の量的増大だけでなく,放射線障害組織など幹細胞欠乏状態と思われる虚血線維性組織を質的に肥沃化するための再生医療として期待される.一方で,標準化が難しい臨床研究ではまだ不明の点も多く,初歩的な臨床試行から発展して,今後はさらに細胞の機能を最大限に引き出す治療戦略の最適化が期待される.
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医学のあゆみ 242巻4号, 321-325 (2012);
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乳房切除術に対しては,自家組織やインプラントによって乳房の膨隆や乳頭・乳輪を再建する方法が考案されてきた.これに対して乳房温存術は普及が著しく,現在では早期乳癌の標準術式であるが,温存術後の再建方法には確立された選択肢がなかった.術後照射による線維化や癒着が引き起こす二次的な変形への対応も必要であり,“乳房を温存する手術”を受けたにもかかわらず整容性のかんばしくない術後乳房の形状に悩む症例も少なくなかった.近年,幹細胞を用いた再生医療が注目され,さまざまな領域で臨床応用に向けての研究が進んでいる.著者らは,自家脂肪由来の幹細胞を効率的に分離して幹細胞を採取する機器“CelutionTM”を用いて幹細胞数を増強させた脂肪組織を術後の陥凹部に注入する乳房再建方法(ASCAFT)を考案し臨床応用しているので,その手技と成績を紹介する.
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医学のあゆみ 242巻4号, 326-331 (2012);
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イモリやゼブラフィシュなどの生物では,成熟細胞が脱分化することにより,失われた組織が再生するメカニズムが備わっている.最近,哺乳類でも膵管など一部の組織では,脱分化現象による組織再生が起こることが明らかにされている.成熟脂肪細胞はそのダイナミックな生体内動態からも推測できるように,脱分化しやすい細胞であり,その浮遊性を利用した天井培養という方法により,線維芽細胞様の形態を示す細胞に脱分化させることができる.この細胞は脱分化脂肪細胞(dedifferentiated fat cell:DFAT)とよばれ,高い細胞増殖活性と間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell:MSC)に類似した多分化能を有することが明らかになった.DFAT は少量の脂肪組織からドナー年齢に関係なく調製が可能であり,得られた細胞は異種細胞の混入がほとんどない均質な細胞群であるといった特徴がある.このためDFAT は,高齢者や全身状態不良の患者など,いままで自己幹細胞移植が困難と考えられてきた患者に対する細胞治療用ドナー細胞として期待できる.
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医学のあゆみ 242巻4号, 332-336 (2012);
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歯周病によって失われた歯周組織に対して,1990 年代から現在に至るまで広く臨床応用されてきた歯周組織再生療法は,軽度から中程度の歯周炎が適応となる.より重篤な症例にまで適応拡大をはかるため,間葉系幹細胞移植による再生療法の開発が注目を集めている.著者らは採取に際して,患者への負担が少なく,安全性も高いと考えられる脂肪組織内に存在する未分化間葉系幹細胞に着目し,移植による歯周組織再生効果を検討してきた.ビーグル犬を用いた前臨床研究では,フィブリンゲルを基剤として歯周組織欠損部へ移植することにより,歯槽骨およびセメント質の新生において促進的な役割を果たすことが明らかとなった.現在,臨床試験の実施に向けて施設や体制を整えている.
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医学のあゆみ 242巻4号, 337-342 (2012);
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再生医療に用いる細胞ソースとして,脂肪組織や骨髄に含まれる間葉系幹細胞などの組織幹細胞に加え,無限増殖と分化万能性を兼ね備えた多能性幹細胞が期待されている.とくに,人工多能性幹(iPS)細胞の登場により1),患者特異的な分化万能性幹細胞を作製することが可能となり,再生医療の1 日も早い実現が大きく期待されるようになった.組織幹細胞は人工でない内因性の幹細胞であり,遺伝子導入などによる癌化の危険性の低い安全な細胞ソースであるが,採取効率や増殖能,分化効率に限界があり,十分な量の目的細胞を誘導することが難しい.一方,iPS 細胞は近年,樹立方法・分化誘導法などの改善に目をみはるものがあり,再生医療への実用化に向けて安全性や効率が高まっている.このような背景から本稿では,脂肪組織由来幹細胞(ASC)とiPS 細胞とのかかわり(類似性と相違など)について概説する.
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連載
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漢方医学の進歩と最新エビデンス 12
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医学のあゆみ 242巻4号, 349-353 (2012);
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古来よりインフルエンザに対して漢方治療が行われてきたが,現代医学的エビデンスは少なかった.この数年,わが国と中国においてランダム化臨床試験が報告されるようになってきた.とくに麻黄湯はノイラミニダーゼ阻害剤と遜色のない臨床効果があることがわかってきた.今後のメカニズム解明と大規模臨床試験が待たれるところである.
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フォーラム
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医学のあゆみ 242巻4号, 355-357 (2012);
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医学のあゆみ 242巻4号, 358-360 (2012);
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書評
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医学のあゆみ 242巻4号, 361-361 (2012);
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医学のあゆみ 242巻4号, 362-363 (2012);
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医学のあゆみ 242巻4号, 364-367 (2012);
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TOPICS
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 242巻4号, 343-345 (2012);
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免疫学
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医学のあゆみ 242巻4号, 345-346 (2012);
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形成外科学
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医学のあゆみ 242巻4号, 347-348 (2012);
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