Volume 242,
Issue 9,
2012
-
【9月第1土曜特集】 骨免疫学―研究最前線
-
-
概論
-
Source:
医学のあゆみ 242巻9号, 639-645 (2012);
View Description
Hide Description
骨と免疫系はサイトカインなどの多くの制御分子を共有し,不可分な関係を築いている.関節リウマチにおける炎症性骨破壊の研究はこうした骨と免疫系の相互作用に光を当て,両者の融合領域である“骨免疫学(osteoimmunology)”の発展をもたらした.また,遺伝子改変マウスの解析は両者の制御系の共通性を浮き彫りにした.自己免疫炎症に重要なヘルパーT 細胞サブセット・Th17 細胞が関節リウマチにおいて骨破壊を誘導する破骨細胞誘導性T 細胞として機能することが明らかとなり,骨免疫学の視点は臨床的にも重要性を増してきている.さらに,近年,骨髄構成細胞と造血幹細胞との関係性が指摘され,骨免疫学は多方面に発展しつつある.骨髄内に存在するすべての細胞が相互作用しながら骨量維持,カルシウム代謝,造血という骨の機能を果たす.骨免疫学は免疫学にとっても骨代謝学にとっても不可欠な視点となってきた.
-
骨と免疫系のクロストーク
-
Source:
医学のあゆみ 242巻9号, 649-654 (2012);
View Description
Hide Description
骨芽細胞は,破骨細胞の分化と機能を調節する司令塔としての役割をもち,破骨細胞の分化に必須なサイトカインRANKL とM-CSF を発現する.単球・マクロファージ系の破骨細胞前駆細胞はRANKL の受容体RANKとM-CSF の受容体Fms を発現しており,RANKL とM-CSF を認識して破骨細胞に分化する.そのとき前駆細胞には,破骨細胞分化のマスター転写因子であるNFTAc1 が誘導される.骨芽細胞はRANKL のデコイ受容体であるOPG も分泌する.OPG はRANKL-RANK 相互作用を阻害し,骨吸収を負に制御する.一方,免疫受容体OSCAR やTREM-2 を介したシグナルも破骨細胞分化に重要な役割をもつ.免疫受容体からのシグナルはITAM シグナルとよばれ,PLCγ-Ca2+シグナルを誘導し,NFATc1 を活性化する.免疫受容体のリガンドも骨芽細胞が発現すると想定される.最近,骨芽細胞はWnt5a やセマフォリン3a を分泌し,破骨細胞の分化を調節していることが示された.Wnt5a は破骨細胞前駆細胞のWnt 非古典経路を活性化し,破骨細胞の分化を促進する.一方,セマフォリン3 A は破骨細胞前駆細胞のITAM シグナルを阻害することで,破骨細胞分化を抑制する.また,骨芽細胞はin vivo において,破骨細胞前駆細胞の維持やホーミングにも重要な役割をもつことが示された.
-
Source:
医学のあゆみ 242巻9号, 655-659 (2012);
View Description
Hide Description
破骨細胞は単球/マクロファージ系前駆細胞を由来とし,細胞融合を繰り返して分化した多核巨細胞である.破骨細胞は骨基質上で極性化し,特有の微細形態を示すとともに,酸や蛋白質分解酵素を分泌して骨を吸収する.こうした一連のダイナミックな形態変化や骨吸収機能にかかわる遺伝子群の発現は,転写因子NFATc1 が中心となってコントロールしている.破骨細胞分化のマスター転写因子としてNFATc1 が同定されてから10 年が経つが,その間共刺激受容体-カルシウムシグナルやNFATc1 標的遺伝子の解析が進み,NFATc1 の重要性もよりいっそう明確となってきた.さらに近年,NFATc1 を制御する抑制性因子やNFATc1プロモーターに作用して転写制御する核内因子などが同定され,NFATc1 を取り巻く複雑かつ綿密な制御機構の実態がわかりつつある.またこれらの多くが免疫関連分子であり,NFATc1 を中心とする制御システム全体において骨と免疫系の共有性が見出されている.
-
Source:
医学のあゆみ 242巻9号, 660-664 (2012);
View Description
Hide Description
免疫系細胞に広く発現し,免疫応答を正または負の両方向に調節するペア型受容体が,破骨細胞の分化・活性化制御に重要な役割を果たすことが明らかになった.活性化シグナル伝達モチーフであるITAM を有するアダプター分子DAP12 やFc 受容体共通γサブユニットと会合する活性化型受容体により導入されるシグナルは,破骨細胞の分化・活性化に必須であり,DAP12/FcRγ二重欠損マウスは破骨細胞分化不全と重度の大理石骨病を発症する.一方で,抑制性シグナル伝達モチーフITIM を有する抑制性受容体は,破骨細胞分化・活性化シグナルを抑制する.このように,ペア型受容体により導入されるITAM とITIM のシグナルバランスは,骨ホメオスタシスの維持に重要な役割を果たす.
-
Source:
医学のあゆみ 242巻9号, 665-670 (2012);
View Description
Hide Description
破骨細胞の分化を誘導するRANK(receptor activator of NF-κB)シグナルが,樹状細胞や胸腺髄質上皮細胞など抗原提示細胞に作用して自己免疫疾患を制御していることが明らかとなってきた.RANK リガンド(RANKL)のシグナルは,樹状細胞の生存を促すことでT 細胞の活性化を誘導し,免疫応答を促進する.一方で,紫外線(UV)照射などにより表皮で発現したRANKL が表皮樹状細胞に作用すると,その性質を変化させ,免疫反応を抑制する制御性T 細胞の増加を促し免疫応答を抑制する.また,T 細胞が分化する場である胸腺で産生する自己反応性T 細胞を除去し,自己免疫疾患の発症を抑制するうえでもRANK シグナルが重要であることが判明している.その際,胸腺内のT 細胞などで発現するRANKL が,組織特異的な蛋白質を異所的に発現・提示する胸腺髄質上皮細胞を分化・成熟させ,自己反応性T 細胞を除去する.これら抗原提示細胞へのRANKL シグナルの作用による自己免疫応答の制御機構の解明に基づき,RANKL シグナルを制御することで自己免疫病や癌などに対するあらたな治療法開発が期待できる.
-
Source:
医学のあゆみ 242巻9号, 671-676 (2012);
View Description
Hide Description
骨髄移植に代表される同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)患者では,移植片に混入するドナーT 細胞が組織適合抗原の異なるレシピエント細胞を異物として認識して強力な排除応答を示す同種免疫により,レシピエントの正常臓器が障害される急性移植片対宿主病(GVHD)を発症する.また,急性GVHD 発症患者ではしばしば,獲得免疫を担うT 細胞・B 細胞などのリンパ球系細胞の再構築が遅延し,致死的感染症の原因ともなる.最近のマウスallo-HSCT モデルの解析から,急性GVHD に伴うリンパ球系細胞の再構築抑制が,骨髄における造血幹細胞(HSC)から共通リンパ球系前駆細胞への分化障害に起因すること,またGVHD 発症時の骨髄ではリンパ球系細胞の分化を支持する造血ニッチ,とくに骨芽細胞性造血ニッチが重度に障害されることが見出され,骨髄GVHD というあらたな病態が明らかになった.これらの病態はおもにドナーCD4+ T 細胞によって引き起こされており,CD4+ T 細胞による骨髄造血ニッチ障害の分子・細胞機序の解明が,allo-HSCT 後の免疫再構築不全に対する新規予防・治療法の開発につながると考えられる.
-
サイトカインと骨破壊機序
-
Source:
医学のあゆみ 242巻9号, 679-684 (2012);
View Description
Hide Description
サイトカインは免疫システム制御や生体防御機構を担う重要な生理活性物質であるが,過剰な炎症応答は関節リウマチ(RA)や歯周病などの病態形成に関与する.免疫細胞の関節局所への浸潤と慢性的な炎症応答を伴う炎症性疾患は,活性化した破骨細胞による関節部の骨破壊を伴う.免疫学的な病態解析から,浸潤細胞や関節局所の滑膜細胞から産生されるTNF-α,IL-1,IL-6 やIL-17 などの炎症性サイトカインが直接的・間接的に破骨細胞分化に関与することが明らかにされ,これらの炎症性サイトカインを標的とした治療法に応用されてきた.しかし,生物学的製剤が十分な治療効果を発揮しない場合もあり,炎症性サイトカインによる病態形成と骨破壊機構の包括的な理解が求められている.そこで骨破壊病態形成に関与する炎症性サイトカインに関する最近の進捗を紹介したい.
-
Source:
医学のあゆみ 242巻9号, 685-689 (2012);
View Description
Hide Description
関節リウマチ(RA)は増殖性滑膜炎を特徴とする全身の炎症性疾患であり,病期が進むと関節の高度な破壊をきたす.一方,破骨細胞とは骨吸収能を有する多核の細胞であり,骨形成を有する骨芽細胞とともに骨リモデリングに関与する.RA 関節炎においては,増殖した滑膜がIL-1(interleukin-1)やTNF-α(tumor necrosisfactor-α)などのいわゆる炎症性サイトカインを産生し,これらにより誘導された破骨細胞による骨吸収が関節破壊の主役を担う.炎症性サイトカインは滑膜細胞やT 細胞のRANKL(receptor activator of nuclear factorkappa B ligand)発現を介して破骨細胞の分化・活性化を促進すると考えられている.近年,IL-17(interleukin-17)を産生するT 細胞のサブセットであるTh17 細胞が発見され,このTh17 がRA の発症のみならず,RA 関節における破骨細胞の異常な活性化にも大きく関与することがわかってきた.
-
Source:
医学のあゆみ 242巻9号, 690-696 (2012);
View Description
Hide Description
癌は高頻度に骨に転移する.癌の骨転移は,骨微小環境と癌細胞との相互関連に基づいて発現・産生されるさまざまな因子の関与により成立・進展することが知られている.なかでも癌細胞産物により刺激された骨芽細胞が産生するRANKL(ligand for receptor activator of nuclear factor-κB)が,破骨細胞前駆細胞が発現するその受容体RANK と結合し,破骨細胞形成と骨破壊を促進するステップが中心的役割を果たすことが示されている.これに加えて近年,癌細胞自身がRANKL あるいはRANK を発現することが明らかにされており,RANKL/RANK シグナル経路が癌細胞の細胞特性に直接影響を及ぼす可能性が示唆されている.したがって,ヒト型抗RANKL 中和抗体デノスマブを用いてRANKL/RANK シグナル系を阻害することにより,骨環境あるいは癌細胞の細胞特性を変化させることが,特異的かつ有効な骨転移治療法として期待できる.
-
Source:
医学のあゆみ 242巻9号, 697-702 (2012);
View Description
Hide Description
骨髄腫は骨髄微小環境に依存した進展を示し,進行性の広範な骨破壊性病変を呈する.本症の骨病変は骨吸収の著明な亢進と同時に骨形成の低下が相まってもたらされる.骨髄腫細胞由来のMIP-1 などの骨吸収促進因子は骨髄間質細胞に破骨細胞分化因子(RANKL)の発現を誘導し,RANKL の発現亢進を介して,腫瘍病変部骨髄内に破骨細胞形成・機能の著明な亢進をもたらす.その一方で,骨髄腫細胞由来のWnt 阻害因子や骨髄腫骨病変部で産生が亢進しているactivin A やTGF-βなどが骨芽細胞分化を抑制することにより骨形成が障害され,急速な骨喪失がたらされる.また,このようにして骨病変部に誘導される破骨細胞や骨芽細胞分化が抑制された骨髄間質細胞は,骨髄腫細胞と密接な細胞間相互作用を営み,骨破壊を進行させつつ骨髄腫を進展させるという悪循環を形成している.RANKL-RANK 系の異常が本症の骨破壊病変形成の基盤にあるため,RANKL-RANK 系は重要な治療標的と考えられるが,骨形成の回復は現在の治療法では困難であり,病態を踏まえた骨形成をもたらす新規治療戦略の構築が必要である.
-
造血幹細胞と骨髄
-
Source:
医学のあゆみ 242巻9号, 705-711 (2012);
View Description
Hide Description
成体では免疫担当細胞を含むすべての血液細胞が,骨に囲まれた空間である骨髄で造血幹細胞より産生されることは古くから知られており,ニッシェ(niche)とよばれる造血幹細胞を維持する特別な微小環境が想定されてきた.2003 年に米国のLi らが,骨内膜の骨芽細胞の一種が造血幹細胞ニッシェであるという骨内膜ニッシェ説を提唱し,骨代謝と造血の関連が一躍注目されることになったが,最近,骨内膜ニッシェ説の根拠は十分とはいえないという報告が出されている.一方,血管内皮細胞が造血幹細胞ニッシェを構成する可能性や,CXCL12 とSCF を高発現し長い突起をもつ骨芽細胞・脂肪細胞前駆細胞であるCAR(CXCL12-abundantreticular)細胞が,造血幹細胞・前駆細胞ニッシェを構成する可能性も示されている.本稿では,骨髄で造血幹細胞や造血を調節するニッシェについての最新の研究を概観し考察を加えた.
-
Source:
医学のあゆみ 242巻9号, 712-716 (2012);
View Description
Hide Description
造血幹細胞の住みかである骨髄はまさしく“骨の髄”である.頭蓋骨と脳の関係のように完全に仕切られているわけではなく,骨と骨髄のインターフェイスはそれぞれの組織からの細胞成分が密に接している.しかし,その周辺の細胞・組織の有機的連携についてはほとんど不明であった.2003 年,『Nature』誌に2 本のあらたな研究ジャンルを開く論文が掲載され,これが造血の大元である造血幹細胞と造骨の大元である骨芽細胞のニッチとしての連携であった.ここにはじめて骨組織が単なるプロテクターではなく,緻密に造血を制御している可能性がみえてきたわけである.以後約10 年の間に,骨芽細胞ニッチを制御している周辺の細胞・組織や,それらに働きかけることで間接的に造血幹細胞の運命をコントロールする機構についての知見が蓄積されてきた.骨代謝の視点からみた造血幹細胞ニッチの理解について概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 242巻9号, 717-720 (2012);
View Description
Hide Description
骨と造血の間に相互作用があることについてはもはや疑いの余地はない.骨は骨髄腔を提供することで骨髄造血を支え,全身への血液の供給基地としての役割を担っている.骨髄腔には造血,とくに造血幹細胞(HSC)を支持する環境,いわゆるニッチがあることが明らかとされ,骨芽細胞や血管内皮細胞など,さまざまな細胞種やそれらの細胞が発現する分子がニッチの構成に寄与していることが明らかとなってきた.一方,破骨細胞はその骨吸収活性によってそもそもこの骨髄腔の形成に必須であるほか,骨髄造血ニッチを構成する一部となっていること,また骨髄腔の造血幹細胞・造血前駆細胞(HSPC)が末梢へ動員されるのに必須の役割を担うことなど,造血系への作用も多く報告されるようになってきた.しかし著者らは,破骨細胞の機能が完全あるいはほぼ完全に消失した3 種類のモデル動物の解析から,破骨細胞はHSC の維持ならびにHSPC の末梢への動員のいずれにも必須ではないことを明らかにした.
-
Source:
医学のあゆみ 242巻9号, 721-724 (2012);
View Description
Hide Description
造血幹細胞は骨髄中のニッチに存在し,われわれの生体内の全血液細胞を一生涯供給してくれる組織幹細胞のひとつであると考えられている1).マウスを用いた研究で,当研究室は造血幹細胞を高度に純化することを可能にしている.その結果,造血幹細胞は細胞周期のG0期,すなわち休眠状態を維持しながら骨髄中で存在することが明らかとなった.また著者らは過去に,造血幹細胞が休眠状態に誘導される原因分子としてTGF-βがニッチシグナルの候補であると報告している.一方で,骨髄中に存在するTGF-βを活性化する領域としてSchwann 細胞が同定された.骨髄Schwann 細胞の周囲には,血管内皮細胞や間葉系幹細胞などの細胞が存在する.神経系細胞と造血細胞は現在まで関係性がないものであると考えられてきたが,骨髄Schwann 細胞は機能的にも,造血幹細胞を骨髄中で維持するのに重要な細胞であることが示唆されている.本稿では,神経系細胞による造血幹細胞の休眠状態維持機構について解説する.
-
骨免疫とin vivoイメージング
-
Source:
医学のあゆみ 242巻9号, 727-733 (2012);
View Description
Hide Description
骨組織には,リモデリングにかかわる破骨細胞や骨芽細胞,骨髄内で分化・成熟を遂げる単球・顆粒球・リンパ球,その他の間葉系細胞や血液幹細胞など,多種多様な細胞が存在する.硬い石灰質に囲まれた骨組織の内部は従来,生きたままでの観察がきわめて困難であると考えられていたが,著者らは組織深部の観察が可能な“多光子励起顕微鏡”を駆使して,マウスを生かしたままで骨組織内の細胞動態を観察するイメージング方法を確立し,生体骨組織内での細胞の生きた動きをリアルタイムで観察することができるようになった.著者らはとくに,骨を破壊・吸収する働きをもつ破骨細胞の動きと機能に注目して解析を行い,破骨前駆細胞の骨への遊走が脂質メディエーターの一種であるスフィンゴシン1 リン酸(S1P)によって動的に制御されていることを解明した.さらに,生きた骨組織内の成熟破骨細胞や免疫細胞の動態解析を行っている.本稿ではこれらの研究成果に加えて,著者らが開発した骨のライブイメージングの方法論やその応用について概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 242巻9号, 735-740 (2012);
View Description
Hide Description
骨髄に存在することが示唆されている癌幹細胞ニッチは,癌の病態において重要な役割を果たしていると考えられる.さまざまな因子が関与して形成される癌幹細胞ニッチの成り立ちを解明するためには,螢光invivo イメージングによる生体内での多チャネルの解析が不可欠である.2 光子励起顕微鏡は,生体における螢光in vivo イメージングの問題点を大きく改善する方法である.著者らは2 光子励起顕微鏡を用いた螢光イメージングにおいて,細胞周期検出螢光プローブや第二次高調波発生などの技術を利用して,骨髄における癌細胞の細胞周期のイメージングを行っている.さらに抗癌剤投与により,冬眠状態の細胞のみを選択する系の構築を試みている.
-
Source:
医学のあゆみ 242巻9号, 741-747 (2012);
View Description
Hide Description
造血はおもに骨髄で行われ,生態におけるさまざまな変化に対応し,恒常性(ホメオスタシス)を維持するためのほとんどすべての血球細胞が産生されている.血球細胞は造血幹細胞が分裂し,分化・成熟することで生みだされているが,実際の造血メカニズムに関しては未知の部分が多く残されている.著者らは共焦点顕微鏡を用い,whole mount 染色された骨髄標本を可視化し,コンピュータソフトウェアにより三次元構造に再構築後に解析するといった手法を用いることで,マウス骨髄における細胞外マトリックスによって血球細胞が覆われた細胞塊構造物“巣(ネスト)”の存在を明らかにした.さらに,ヒト再生不良性貧血患者の骨髄においては,幹細胞分画の細胞が統計学的な有意差をもって脂肪細胞の近傍に位置することを示した.本稿においては三次元画像化された骨髄画像とともに,得られた画像の解析について概説する.
-
骨免疫学の臨床
-
Source:
医学のあゆみ 242巻9号, 751-757 (2012);
View Description
Hide Description
ビタミンD 欠乏症・不足症の基準値が設定され,ビタミンD の骨代謝維持における重要性が指摘されるとともに,ビタミンD 不足症が高頻度に存在することが示されている.ビタミンD の骨に対する作用としては,カルシウム代謝平衡の改善に伴う骨密度増加や骨折抑制作用などがある.また,ビタミンD の転倒抑制,筋力増強作用なども骨折リスクの低減に関与する可能性が考えられている.ビタミンD の免疫系に対する作用としては,自然免疫の活性化による感染防御作用とともに,獲得免疫の制御による自己免疫疾患の抑制作用も示されている.
-
Source:
医学のあゆみ 242巻9号, 758-763 (2012);
View Description
Hide Description
関節リウマチ(RA)の治療においてはメトトレキサート(MTX)を中心とした抗リウマチ薬とTNF を標的とした生物学的製剤の導入により高率な臨床的寛解導入が可能となった.RA では,①滑膜炎による関節破壊,②滑膜炎の波及に伴う傍関節性骨粗鬆症,③閉経,加齢,不動,合成糖質コルチコイドなどによる全身性骨粗鬆症などの骨障害を伴う.MTX とTNF 阻害薬の併用療法により骨・関節破壊の進行を完全に抑止し,構造的寛解をめざすに至った.さらに,治験では関節破壊や傍関節性・全身性骨粗鬆化に対して抗RANKL 抗体デノスマブによる治療効果が示された.これらの薬剤の治療成績は臨床応用のみならず基本的な病態の理解にも重要な示唆を与える.
-
Source:
医学のあゆみ 242巻9号, 764-769 (2012);
View Description
Hide Description
関節リウマチ(RA)の関節破壊にはinterleukin(IL)-6 の過剰産生が関与している.IL-6 は可溶型IL-6 受容体の存在下で骨芽細胞上のRANKL の発現誘導を介して破骨細胞の分化を促す.IL-6 はVEGF の産生を介して血管新生を促し,パンヌス形成にもかかわっている.また,IL-6 はマトリックスメタロプロテナーゼ(MMPs)の産生を促し,プロテオグリカンやコラーゲンの分解にも関与している.IL-6 受容体を標的とする抗体医薬,トシリズマブ(TCZ)は一連の臨床試験のなかで,RA の臨床症状の改善効果と関節破壊の抑制効果を有することが証明された.また,TCZ 治療によりRA の骨代謝バランスも改善することがわかった.