Volume 244,
Issue 2,
2013
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あゆみ 糖尿病性神経障害Update
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医学のあゆみ 244巻2号, 137-137 (2013);
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医学のあゆみ 244巻2号, 139-145 (2013);
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糖尿病性神経障害は“糖尿病の随伴現象(epiphenomenon)”とも呼ばれるほど,糖尿病で早期から発症し,頻度の高い合併症ともいえる.神経障害の成因として,高血糖からのポリオール代謝やグリケーションなど解糖系側鎖路の亢進が大きな役割を担っている.これまで,その系と関連した酸化ストレス,小胞体(ER)ストレス,オートファジー異常,催炎症反応などによる細胞傷害機構が,糖尿病性神経障害に特徴的な末端性軸索変性をもたらすものと考えられてきた.最近になり,神経組織でのインスリンシグナルをはじめとした細胞内シグナル伝達機構の異常も,末梢神経機能の異常に深く関わっていることがわかってきた.血糖コントロールを超えた(beyond blood glucose control)末梢神経障害発症機序は,新しい神経障害治療の標的の可能性となっている.
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医学のあゆみ 244巻2号, 146-150 (2013);
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糖尿病性多発神経障害(DPN)患者の重症度を客観的に判定するため,下肢神経伝導検査所見による重症度分類(NCS 馬場分類)を作成し,それをもとに重症度診断のためのアルゴリズム(NCS 重症度アルゴリズム馬場試案)を作成した.NCS 馬場分類は,NCS-0:速度系,振幅系ともに異常なし,NCS-Ⅰ:速度系因子の遅延所見のみ,NCS-Ⅱ:腓腹神経電位軽度低下,NCS-Ⅲ:腓腹神経電位高度低下あるいは脛骨神経複合筋電位軽度低下,NCS-Ⅳ:脛骨神経複合筋活動電位高度低下と規定される.糖尿病患者59 名で試用したpreliminary解析により,NCS 馬場分類および馬場基準重症度はミシガン糖尿病神経障害評価スコアと平行的に推移し,さらに鋭敏であることが確認された.NCS 馬場分類およびNCS 重症度アルゴリズム馬場試案は,神経変性度の把握が容易かつ客観性にも優れるので,今後の臨床的活用に向けてさらなる前向き研究を実施中である.
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医学のあゆみ 244巻2号, 151-157 (2013);
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糖尿病性多発神経障害(DPN)は糖尿病性神経障害の中核をなす糖尿病特有の慢性合併症で,患者のQOL を著しく低下させ,生命予後にも関与する.DPN の危険因子は高血糖とその持続および高血圧であり,欧米では脂質異常,肥満,喫煙も危険因子と報告されている.DPN 予防には血糖コントロールがもっとも重要であり,それによりDPN進展を抑制できることはDiabetes Control and Complication Tria(l DCCT)やKumamotoStudy で証明され,Epidemiology of Diabetes Interventions and Complication(EDIC)研究はDPN においてもメタボリックメモリー効果が存在することを示した.一方,長期の高血糖症例では急激な血糖コントロールによる治療後有痛性神経障害に注意すべきである.現在,成因に基づく治療薬としてDPN を適応症にもつのはアルドース還元酵素阻害薬(ARI)のみであり,多施設ランダム化比較試験で神経機能の悪化を抑制することが証明された.サブ解析では血糖コントロールが良く,細小血管症が軽度の群で改善効果が大きいこと,DPNの進展抑制が網膜症・腎症の進展にも抑制的に働くことが示された.ARI 以外のDPN 治療薬の研究・開発も進んでいるが,臨床の場で利用できる薬剤はない.
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医学のあゆみ 244巻2号, 159-164 (2013);
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糖尿病神経障害は多彩な臨床像を呈し,包含される病型の多くで疼痛を伴う.そのなかでも慢性疼痛をきたす多発神経障害がもっとも高頻度であり,治療指針を立てるためには,鑑別診断と診断基準に基づく確定診断をすることが望ましい.治療に際してはまず血糖正常化と生活習慣改善を進める.疼痛改善薬の第一選択は三環系抗うつ薬(TCA),プレガバリン,デュロキセチンがあげられる.後2 剤の副作用が比較的少ないが,とくに高齢者や腎機能低下者では後者が使用しやすい.選択薬剤を増量しても無効の場合には他の第一選択薬を使用する.さらに,2 剤による併用投与を試みる.今後,トラマドール(弱オピオイド)とアセトアミノフェンの合剤の第2 選択薬としての有用性に注目したい.急性疼痛をきたす治療後神経障害は1~2 年以内に改善するので,精神的安定を与えることが重要である.糖尿病筋萎縮ではメチルプレドニゾロンのパルス療法や免疫グロブリン療法が奏効する場合があるが,治療法としては確立していない.
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医学のあゆみ 244巻2号, 165-169 (2013);
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糖尿病性神経障害に対する根本的な治療法として,病態に応じた血管細胞・神経細胞の機能改善や変性した組織の再生が期待されている.糖尿病性神経障害に対する再生医療研究においては,骨髄や脂肪組織などから分離培養した前駆細胞や幹細胞,あるいはES 細胞やiPS 細胞より分化誘導した幹細胞や,こうした前駆細胞や幹細胞を比較的多く含む骨髄単核球などがおもに用いられている.これまで前駆細胞や幹細胞を用いた細胞移植療法の糖尿病性神経障害治療効果について著者らを含めて報告しているが,いずれの細胞においても神経機能改善や神経血流量の増加が示されている.今後は臨床応用をめざした臨床治験とともに,病態や細胞を得るための侵襲性を考慮した細胞の選択が求められる.
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医学のあゆみ 244巻2号, 170-174 (2013);
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糖尿病神経障害の臨床症状は多彩であり,糖尿病患者の生活の質(QOL)を著しく低下させるのみならず,生命予後に及ぼす影響も計りしれないものがあり,有用な治療法の開発が望まれている.現在までにさまざまな治療薬が開発され,基礎的研究においてその有効性が確認されているが,実際に臨床応用されている治療薬はわが国においてはアルドース還元酵素阻害薬のみであり,あらたな治療法の開発が望まれている.近年,インクレチン(GLP-1 およびGIP)には膵β細胞以外の細胞あるいは組織に対する作用,すなわち膵外作用のあることが明らかになってきた.そのなかで,実験医学的にインクレチンおよびその関連薬にはさまざまな神経庇護作用があることが報告されている.本稿では,糖尿病治療薬として注目されているインクレチンおよびその関連薬の糖尿病性神経障害に対する可能性について概説したい.
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医学のあゆみ 244巻2号, 175-178 (2013);
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陰圧閉鎖療法は創傷治療のなかで重要な治療法である.足潰瘍壊疽の基本的治療アルゴリズムはWoundbed preparation(創面治癒環境の改善)である.局所的な創部の要因と全身的な要因をたえず評価し,修正し,治療する.糖尿病足潰瘍壊疽の治療に対して陰圧閉鎖療法を用いることは有用である.また,足切断後の創部の閉鎖にも陰圧閉鎖療法は有用との多数の報告がある.陰圧閉鎖療法を使用するにあたり,適応と禁忌を十分検討することが重要である.とくに疼痛と出血の助長に対して細心の注意が必要である.
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連載
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疾病予防・健康増進のための 分子スポーツ医学 4
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医学のあゆみ 244巻2号, 184-188 (2013);
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運動は酸素の取込み,消費量を増大させる.これに伴い各臓器では活性酸素が発生し,酸化障害が引き起こされる危険性がある.一方,活性酸素に対する防御系として多数の抗酸化物質,抗酸化酵素が存在しており,これらが協調的に働くことで障害を未然に防ぐ仕組みが発達している.この仕組みを遺伝子発現調節レベルで正に制御する鍵因子として転写因子 Nrf2〔nuclear facto(r erythroid-derived 2)-like 2〕が知られている.Nrf2はその活性化によりグルタチオンを代表とする抗酸化物質の合成や,パーオキシレドキシンなどの抗酸化酵素群,さらに異物代謝にかかわる遺伝子の発現を統一的に制御している.抗炎症作用など,さまざまな疾患の進展や予防におけるNrf2 の関与が欠損マウスや活性化剤を用いた研究により示唆されてきたが,近年,運動における重要性についても明らかになってきた.Nrf2 が制御する遺伝子には生体防御機能が明らかなもののほかに,蛋白質分解経路オートファジーに寄与する因子や,機能未知な遺伝子も多く存在することからNrf2 は単なる抗酸化ストレス応答だけでなく,下流遺伝子の発現を介してさまざまな生理機能をもつと考えられる.Nrf2を中心とした解析を通して運動時におけるストレス応答のあらたな一面が解明されることが期待される.
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フォーラム
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病院内保育所の取組み 1
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医学のあゆみ 244巻2号, 189-191 (2013);
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医学のあゆみ 244巻2号, 193-195 (2013);
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パリから見えるこの世界 12
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医学のあゆみ 244巻2号, 196-199 (2013);
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TOPICS
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麻酔科学
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医学のあゆみ 244巻2号, 179-180 (2013);
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産科学・婦人科学
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医学のあゆみ 244巻2号, 181-181 (2013);
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皮膚科学
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医学のあゆみ 244巻2号, 182-183 (2013);
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