Volume 244,
Issue 4,
2013
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あゆみ 慢性低酸素状態の腎臓
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医学のあゆみ 244巻4号, 273-273 (2013);
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医学のあゆみ 244巻4号, 275-279 (2013);
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腎の血管系は,糸球体に高い血圧で大量の血液を送って糸球体濾過量を確保するようにできあがっている.動脈の内皮細胞は典型的な半小胞(caveola),Weibel-Palade 小体,アクチン・フィラメントを備えているが,中膜の平滑筋細胞との間にギャップ結合を備えているのが特徴である.中膜の平滑筋層は他の組織に比べて厚くできており,平滑筋は円周方向に走って円周方向の張力を発生する.動脈の外に広がる動脈周囲結合組織では縦走するコラーゲン線維が豊富で,長軸方向の張力を発生するとともに,交感神経線維およびリンパ管の通路になっている.糸球体は網目状の毛細血管からなる糸玉で,内部にある毛細血管とメサンギウムの表面を糸球体基底膜と足細胞が覆っている.糸球体毛細血管の内皮細胞は有窓性で隔膜のないのが特徴であり,これにより孔が大きくなり,糸球体濾過量を確保するのに役立つと考えられている.
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医学のあゆみ 244巻4号, 280-285 (2013);
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腎は他臓器に比べて平均血流量が1,000~1,200 mL/min と多く,脳や肝の5~8 倍もの酸素供給を得ている.また,腎は灌流圧が変化しても血流量と糸球体濾過量を一定に保つ自動性調節能を備えており,腎自らを保護している.こうした腎循環動態の変化は全身循環にも大きな影響を与え,出血性ショックのような全身循環の緊急事態においては腎血流の減少を伴う心拍出量の再分布が生じ,脳などへの血流供給を維持する.しかし,腎の酸素供給は糸球体毛細血管と尿細管周囲毛細血管という2 つの血管床に由来し,併走する動静脈にシャント経路が数多く存在するため,腎での酸素消費が他臓器に比べて非効率的である.そのため,腎は低酸素に曝されやすく,こうした酸素の相対的供給不足が組織内の酸化ストレスを助長する因子にもなる.腎機能低下の原因のひとつとして低酸素が注目されるなか,腎微小循環の制御メカニズムを明らかにすることは重要である.
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医学のあゆみ 244巻4号, 286-291 (2013);
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酸素の利用が制限される低酸素ストレス環境下では,正常な細胞機能維持のために,細胞は酸素に依存しないエネルギー代謝への変換を起こす.この低酸素応答には多くの生物種で共通に保存されているシステムがかかわっており,その中心分子が転写制御因子の Hypoxia Inducible Facto(r HIF)である.近年,低酸素が癌や虚血性疾患のみならず,糖尿病,肥満や脂肪肝などの代謝疾患を含めたさまざまな病態の発症と進展にかかわっていることが明らかにされ,HIF の病態生理学的役割の解明とその知見に基づくあらたな診断・治療法の可能性に多くの期待が寄せられている.本稿ではエネルギー代謝制御の観点から疾患をとらえ,疾患にかかわる低酸素の役割について理解を深めるために,これまでに明らかになってきたHIF による低酸素応答性代謝制御について概説する.
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医学のあゆみ 244巻4号, 292-296 (2013);
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慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)の基礎疾患は慢性糸球体腎炎や糖尿病,高血圧性腎硬化症など免疫学的機序から代謝異常,血行動態異常を背景とするものなど多岐にわたるが,ある一定の閾値に達すると腎不全の進行は不可逆的かつ持続的で原疾患に非依存的となる.1960 年代後半の報告からはじまった尿細管間質病変の進行程度が腎機能低下と相関するという最終共通経路(final common pathway)の概念が現在では広く受け入れられている(図1).尿細管間質病変は,炎症,線維化,尿細管障害と尿細管周囲毛細血管網(Peritubular Capillary:PTC)の脱落によって特徴づけられる.尿細管間質病変の進行には蛋白尿と慢性低酸素状態が大きく関与するが,ここにはしばしば炎症が介在する(図2).尿細管間質での炎症は,腎内在細胞と浸潤炎症細胞がオートクラインとパラクラインに働き,ここにサイトカインも加わり複雑な病態を形成する.組織を障害から守る役割を担う炎症反応は慢性化すると組織障害につながる.CKD は,炎症,低酸素,活性酸素(Reactive Oxygen Species:ROS),線維化が悪循環を形成して末期腎不全へと進行する.
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医学のあゆみ 244巻4号, 297-302 (2013);
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慢性腎臓病の病態形成には防御機構を凌駕する活性酸素種(ROS)産生,すなわち“酸化ストレス”が深く関与している.また,酸化ストレスの亢進には鏡像的変化として一酸化窒素(NO)のbioavailability 低下が付随している.このROS/NO の不均衡は腎臓病の進展のみならず,心血管病の発症機序にも関与している.一方,虚血と酸化ストレスは共存するのが通例であり,また病因的にも双方向性の関係を有している.虚血の解除は酸化ストレス軽減をもたらし,病態改善につながる.
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医学のあゆみ 244巻4号, 303-307 (2013);
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慢性腎不全に陥ると,その原因疾患によらず線維化と腎性貧血を引き起こす.線維化の原因や線維化を引き起こすαSMA 陽性myofibroblast の由来について近年盛んに研究されており,その知見が蓄積しつつある.また,腎性貧血は腎の線維芽細胞の機能不全によって赤血球産生ホルモンであるエリスロポエチン(EPO)の産生分泌が減少することで引き起こされる.本稿ではこれまであまり注目されてこなかった線維化と腎性貧血の関係に関して最新の知見を紹介する.
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医学のあゆみ 244巻4号, 309-314 (2013);
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Oxyhemoglobin とdeoxyhemoglobin はT1,T2 特性に差異があり,両者の比の変化がMRI の信号強度に変化をもたらすことを blood oxygenation level-dependen(t BOLD)効果と呼ぶ.脳の活動部位を MRI で画像化するfunctional MRI として応用されてきた.近年,BOLD 効果の影響を受けやすいT2*強調画像を利用して“あるがまま,繰り返し,非侵襲的に”腹部臓器の低酸素状態を評価する方法が注目されている.ヒト腎については利尿薬の投与による髄質での変化をとらえたのが最初であり,以降,動物実験を含めると,水利尿,angiotensinⅡ投与,腎動脈閉塞,移植後急性拒絶反応,nitric oxide合成阻害,free radical scavenge(r tempol)投与,糖尿病腎症モデルでの検討報告がある.微小電極法との比較から腎実質における酸素分圧の変化が理論どおりT2*値に変化をもたらすことも確認されている.通常,急性・一過性の酸素分圧の変化が評価対象になるが,移植後慢性拒絶腎や慢性腎臓病(CKD)症例を対象にした検討で,慢性の低酸素状態も評価しうることが明らかとなった.実臨床や創薬にも応用可能な腎のあらたな評価法として今後の発展が期待される.
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医学のあゆみ 244巻4号, 315-322 (2013);
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低酸素環境下ではさまざまな生体の細胞応答がみられる.そのひとつとして近年,細胞の遺伝子発現制御はゲノム情報のみならず,DNA メチル化やアセチル化,ヒストン修飾などのエピジェネティックな要素によっても影響を受けることが明らかになってきた.低酸素のマスターレギュレーターである転写因子HIF1 はさまざまなヒストン修飾酵素の転写開始点に結合することにより,低酸素下でそれらの発現を制御していることが癌細胞株および血管内皮細胞株で明らかとなりつつある.近年,高速シークエンサーが普及し転写因子の結合部位やヒストン修飾を網羅的に解析することが比較的簡便な手法で可能になった.本稿では著者らのグループがそれらの手法を用いて,低酸素刺激によってHIF1依存的にヒストン脱メチル化酵素がリクルートされ,クロマチン立体構造が変化することを明らかにした例を紹介する.
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医学のあゆみ 244巻4号, 323-327 (2013);
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我々はつねにさまざまな環境ストレスに曝されているが,このような環境ストレスに応答して遺伝子発現を変化させて環境に適応するメカニズムを有している.Keap1-Nrf2 経路ではKeap1 がセンサーとして機能して転写因子Nrf2 を制御し,環境ストレスへの適応・応答を制御する.非ストレス下ではNrf2 はKeap1 に補足されてつねに分解されるが,ストレス下ではKeap1 は反応性システイン残基の修飾に伴い,Nrf2 を分解できない状態となる.これにより新規合成されたNrf2 は核内移行し,生体防御系酵素群の遺伝子発現を誘導する.その結果,細胞のストレス防御能が強化される(システインコード).このKeap1-Nrf2 経路に基づく生体防御応答の失調が腎臓病の病因に密接に関連すると推測されており,本稿ではKeap1-Nrf2 経路の制御系およびこれまで明らかになっている腎疾患との関連性を概説する.
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連載
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疾病予防・健康増進のための 分子スポーツ医学 6
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医学のあゆみ 244巻4号, 336-343 (2013);
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動脈壁の加齢変化に伴って動脈が硬くなることにより,動脈の伸展性は低下する.動脈伸展性の低下は収縮期血圧の上昇や脈圧(収縮期血圧と拡張期血圧の差)の増加を引き起こす.収縮期高血圧や脈圧の増加は心血管疾患の独立した危険因子であることから,動脈伸展性の果たす役割は大きいと考えられる.また,動脈伸展性の低下自体も心血管疾患の独立した危険因子になることが明らかにされている.一方,習慣的に有酸素性運動を行っている人では同世代の運動習慣のない人に比べて動脈伸展性が増大していることが明らかにされている.さらに,数カ月間の有酸素性運動により動脈はしなやかになり,動脈伸展性が増大することも示されている.すなわち,運動には加齢に伴う動脈伸展性の低下を抑制する効果がある.運動が動脈をしなやかにし,動脈伸展性を増大させるメカニズムには,運動による血管内皮の改善などが関与することが分子レベルからのアプローチにより明らかにされている.
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フォーラム
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医学のあゆみ 244巻4号, 345-347 (2013);
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病院内保育所の取組み 3
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医学のあゆみ 244巻4号, 348-350 (2013);
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医学のあゆみ 244巻4号, 351-352 (2013);
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医学のあゆみ 244巻4号, 353-356 (2013);
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TOPICS
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感染症内科学
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医学のあゆみ 244巻4号, 329-332 (2013);
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消化器内科学
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医学のあゆみ 244巻4号, 332-333 (2013);
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癌・腫瘍学
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医学のあゆみ 244巻4号, 334-335 (2013);
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