Volume 244,
Issue 7,
2013
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あゆみ 神経疾患の磁気刺激治療の可能性
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医学のあゆみ 244巻7号, 583-583 (2013);
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医学のあゆみ 244巻7号, 585-588 (2013);
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反復磁気刺激(rTMS)により運動野を刺激すると,刺激が終了後も持続する興奮性の促通や抑制が認められる.このような効果が生じるメカニズムとして,脳の可塑性にかかわるlong-term depression(LTD)やlongtermpotentiation(LTP)と同様の機序が想定されてきた.磁気刺激法の技術的進歩とともに,従来の定頻度のrTMS からより複雑なトレイン刺激を用いたrTMS が開発され,強力で持続時間の長い可塑性の変化を引き起こせるようになった.本稿では,ヒトでLTP/LTD を誘導できる方法のうちtheta-burst stimulation(TBS),repetitive paired-pulse stimulation(rPPS),quadripulse stimulation(QPS),paired associative stimulation(PAS)について概説し,可塑性誘導の機序についても簡単に触れる.
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医学のあゆみ 244巻7号, 589-595 (2013);
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経頭蓋的磁気刺激法を用いた連合性対刺激法(PAS)は,細胞レベルでの活動電位タイミング依存型シナプス可塑性の原理をヒトに応用した手法であり,大脳感覚運動皮質の脳可塑性評価法として非常に有用である.PAS では超低頻度刺激を用いるため,現在までに有害事象は報告されておらず,実際の臨床現場で使用する際に安全性での利点がある.著者らは同手法をおもにパーキンソン病(PD)に応用し,PD では大脳運動皮質の脳可塑性が低下しそれがドパミン治療で改善することを発見し,ドパミンと脳可塑性との関連性を報告してきた.さらに,脳機能画像法と組み合わせることで,脳可塑性とダイナミックな基底核-運動皮質回路との関連性を含めて検討することが可能である.これらの知見はPD や関連疾患における薬剤とリハビリテーションを統合したあらたな包括的治療戦略を期待させうるものである.
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医学のあゆみ 244巻7号, 597-601 (2013);
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経頭蓋的磁気刺激法(TMS)では非侵襲的にヒトの大脳皮質を刺激できる.反復TMS により,その後持続する興奮性の変化を起こすことができる.近年著者らは,単相性TMS を一定の間隔で4 発,5 秒ごとに30 分間与えるという反復単相性4 連発磁気刺激法(QPS)を報告した.運動野上に与えたQPS 前後で単発のTMSに対する運動誘発電位(MEP)の振幅を測定すると,QPS の刺激間隔が1.5~10 ms と短いときにはMEP 振幅は大きくなり,30~100 ms と長いときには小さくなる.4 発の刺激間隔と効果の関連は,シナプス可塑性のモデルであるBCM 仮説でのシナプス入力強度とシナプス後電位の関係に類似している.プライミング刺激の効果もみられており,QPS は運動野神経細胞のシナプスに可塑性を誘導していると考えられる.QPS による検査によって神経疾患における可塑性機能の障害を把握することができ,今後,神経疾患の病態解明,ヒトでの神経可塑性の研究,ひいては治療法への応用が期待される.
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医学のあゆみ 244巻7号, 603-607 (2013);
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2 つのシナプス結合した神経細胞が時間的に近接して発火することが繰り返されると,シナプス伝達効率が増強される現象はHebb の可塑性と呼ばれる.とくにその場合,2 つの発火の時間的関係によって可塑性の極性が長期増強や長期抑制に調節されることが多い(spike-timing dependent plasticity:STDP).2000 年に経頭蓋的磁気刺激法(TMS)と末梢神経電気刺激をペアにして組み合わせる連合性対刺激(PAS)を反復することで,ヒト一次運動野に非侵襲的に可塑性を誘導する手法が開発されて以来,PAS による神経科学研究やその臨床応用はトピックとなっている.本稿ではPAS の原理を概説し,末梢神経電気刺激以外を用いたPAS の変法や臨床応用について述べる.
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医学のあゆみ 244巻7号, 609-612 (2013);
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パーキンソン病(PD)は無動,筋強剛,振戦,姿勢反射障害といった運動症状を呈する神経変性疾患であり,中脳黒質および大脳基底核におもな障害が存在する.L-ドパという画期的な治療薬があることから,神経難病のなかでは比較的治療が容易であると考えられているが,薬物長期投与による合併症が高率に生じること,L-ドパの効果が得にくい非運動症状が問題となる症例があることなどから,補助治療の開発もまた重要である.反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は神経組織を非侵襲的に電気刺激する手法であり,神経可塑性に基づく神経・精神疾患治療としても期待されている.PD に対して大脳皮質刺激が有効であるとする動物実験の結果も存在し,ヒトにおける治療研究もさかんに行われている.また,近年ではいわゆるパーキンソン症状のみならず,薬剤合併症やうつ症状に対する治療研究も進んでおり,本稿ではこれらについても述べる.
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医学のあゆみ 244巻7号, 613-616 (2013);
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難治性神経障害性疼痛の治療において,一次運動野電気刺激療法(「サイドメモ1」参照)の有効性が世界的に認められているが,侵襲性のある埋込み手術を必要とする.一方,被験者に苦痛を与えることなく局所の大脳皮質ニューロンを刺激できる反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法によって,電気刺激と同様の疼痛軽減効果が得られるとの報告が増え,Cochrane Review 2010 でも高頻度rTMS による一次運動野刺激は除痛効果があると評されている.著者らは平成21~23 年厚生労働科学研究で多施設共同研究を行い,70 例の神経障害性疼痛患者に対してクロスオーバー比較を行ったところ,シャム刺激に対して5 Hz rTMS は有意に除痛効果を示した.一方,埋込み式一次運動野電気刺激療法はオンデマンドで刺激が可能であるが,rTMS でも簡単に,繰り返して正確に刺激ができるようになればrTMS での継続的治療が可能となり,難治性疼痛治療のひとつの選択肢となりうる.
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医学のあゆみ 244巻7号, 617-620 (2013);
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うつ病の治療には薬物療法,電気けいれん療法などの抗うつ療法がある.欧米ではこれらの抗うつ療法に加え,経頭蓋磁気刺激(TMS)が認可されている.TMS は非侵襲的に大脳皮質を刺激する方法であり,規則的な刺激を連続して行うものをrepetitive TMS(rTMS)という.rTMS によるうつ病の治療では,左背外側前頭前野に高頻度刺激を行う方法と,右背外側前頭前野に低頻度刺激を行う方法がある.どちらの刺激方法も複数の二重盲検ランダム化試験によって抗うつ効果が示されており,その抗うつ効果には刺激部位である背外側前頭前野のみならず,前部帯状回,基底核,前頭葉眼窩野,梁下野などの脳領域が関与している.rTMS は他の抗うつ療法と比較し安全性や忍容性に優れている.しかし,現在の標準的な刺激条件は1 日40 分,週5 日,4~8 週間行うものであり,患者の時間的な負担は少なくない.したがって,より抗うつ効果の高い刺激条件の改良が期待される.
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医学のあゆみ 244巻7号, 621-624 (2013);
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反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)は近年,精神科領域でも応用されはじめ,統合失調症患者の幻聴に対する効果も示されつつある.治療のためには幻聴の発生に重要な領域と考えられている左側頭・頭頂部への1 Hz のrTMS が有効である報告が多いが,近年は機能的核磁気共鳴画像(fMRI)を用いて幻聴発生時の活性領域を直接刺激する試みがなされるようにもなった.エビデンスの蓄積や刺激条件の検討など今後の課題も残っているが,薬物療法抵抗性の幻聴を有する統合失調症患者も多く,rTMSは今後の治療の選択肢として期待されている.
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連載
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疾病予防・健康増進のための 分子スポーツ医学 8
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医学のあゆみ 244巻7号, 630-634 (2013);
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2004 年のアテネ大会では26 件,また,2008 年の北京大会では14 件のドーピングが発覚したが,2012年のロンドンオリンピックオリンピックでは6 件にとどまったと報告されている.これは五輪本番をにらんで4 月以降からはじまった大規模なアンチドーピングキャンペーンにより多数のアスリートの検体が事前にチェックされ,違反者が競技に参加すること自体を防いだことが功を奏したといわれている.しかし,一方ではドーピング手法が血液・尿検体からの検出が難しいとされる“遺伝子ドーピング”にシフトした可能性も懸念されている.そこで本稿では“疾病予防・健康増進のため”という連載テーマからすこし離れてしまうが,トップアスリートの健康とフェアプレーの精神を守りスポーツの価値を高めるために,分子スポーツ医学が役に立てるひとつの応用例としての“遺伝子ドーピングの検出”の現状について紹介する.現在,本研究室で取り組んでいるアンチドーピングの観点から行っている遺伝子ドーピング実験と,遺伝子ドーピング検出の限界についてデータを提示し,今後の課題を提案したい.
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フォーラム
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近代医学を築いた人々 14
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医学のあゆみ 244巻7号, 635-635 (2013);
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医学のあゆみ 244巻7号, 636-639 (2013);
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病院内保育所の取組み 4
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医学のあゆみ 244巻7号, 640-641 (2013);
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TOPICS
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遺伝・ゲノム学
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医学のあゆみ 244巻7号, 625-626 (2013);
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内分泌・代謝学
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医学のあゆみ 244巻7号, 626-627 (2013);
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産科学・婦人科学
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医学のあゆみ 244巻7号, 628-629 (2013);
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