Volume 244,
Issue 10,
2013
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あゆみ 小児臓器移植の最前線
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医学のあゆみ 244巻10号, 879-879 (2013);
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医学のあゆみ 244巻10号, 881-890 (2013);
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1997 年10 月に「臓器の移植に関する法律」が施行され,日本でも脳死での臓器提供による移植が可能になった.しかし,脳死臓器提供するには本人の生前の書面による意思表示が必要であったため,15 歳未満の脳死臓器提供ができなかった.そのため,15 歳以上の小児または成人からしか脳死臓器提供がなく,1999 年2 月に第1 例目の脳死臓器提供以来,改正法が施行されるまでに脳死臓器提供は86 例あったが,その内20歳未満の小児に対する脳死移植は,肝移植24 例(10 歳未満13 例),腎移植12 例(10 歳未満4 例),心移植14 例(18 歳未満8 例,内10 歳未満2 例),肺移植7 例,小腸移植4 例(10 歳未満1 例)に過ぎない.一方,腎臓は心停止後にも提供可能である.2000 年に小児(16 歳未満)が優先されるレシピエント選定基準が施行された以後は,年間10 例前後の16 歳未満の小児腎移植が行われてきた.いずれにせよ死体臓器提供が少ないため,20 歳未満の肝移植の 62%1() 2009 年までの総数から算出),20 歳未満の腎移植の 89%2() 2001~2007 年の総数から算出),18 歳未満の肺移植の86%を生体移植(2009 年までの総数を文献3)のデータと上記3 例から算出)が占めているのが現状である.このような現状を打開するために,「臓器の移植に関する法律」の改正法(改正移植法)が2009 年7 月17 日に公布され,2010 年同日に施行された.改正法では“本人の意思が不明な場合には家族の書面による承諾で脳死臓器提供が可能”となり,臓器提供者(ドナー)の年齢制限がなくなるため,国内でも体の小さな子供が心臓移植や肺移植を受けられるようになった.その後,2012年11 月末までに3 名の児童から脳死臓器提供があり,3 名の児童(1 名は10 歳未満)が心臓移植を,3 名の児童(1 名が10 歳未満)が肝移植を受けることができた.しかし,法改正はあくまでも体の小さな子供に臓器移植の門戸が開かれたにすぎず,わが国で実現するためにはまだまだ解決すべき問題がたくさんある.
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医学のあゆみ 244巻10号, 891-895 (2013);
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小児臓器移植の成人との違いに,適応疾患上,先天性疾患がどの臓器においても多いことがある1,2).また,手術の適応や時期を考える際に,成長発育など小児特有のQOL ともいえる問題を考慮する必要がある.技術的な面では,体が小さいことにより生じる移植グラフトの相対的大きさ,吻合すべき血管の細さなどの手技上の困難さが存在する.術後管理上は小児科や小児外科に共通するような,成長発育や社会への適応,およびこの間の外科的合併症や薬剤の長期投与による影響,易感染性や二次癌発症など,免疫抑制下での長期管理の諸問題が存在する.
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医学のあゆみ 244巻10号, 896-901 (2013);
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18 歳未満の小児心臓移植は欧米を中心に最近では年間約500 例実施されている.1 歳未満,1~10 歳,11~17 歳の各群の移植数の割合は25.4%,36.6%,40.0%で,ここ20 年間でほとんど変わっていない.適応疾患は特発性心筋症と先天性心疾患がおもで,1 歳未満では先天性心疾患の割合が高いが,年齢の上昇とともに特発性心筋症が増えてくる.免疫抑制療法は成人と同様であるが,導入療法の比率が増加している.小児心臓移植でも補助人工心臓を中心としたブリッジ症例が25%と増加しつつある.移植後の予後は時代の推移とともに改善の一途をたどっている.若年者ほど予後が優れ,1 歳未満では50%生存年数が約20 年である.わが国においては臓器移植法が改正されて小児優先提供のルールが導入されることによって小児心臓移植が国内でも可能となり,5 例実施された.しかし,移植数は十分とはいえず長期の待機期間を余儀なくされている.小児用補助人工心臓の治験が進行中であり,早期の臨床導入が期待されている.
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医学のあゆみ 244巻10号, 902-905 (2013);
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日本においては脳死ドナー不足から,生体肺移植が脳死肺移植に先行した.2010 年に臓器移植法が改正され,日本においても小児脳死ドナーからの臓器提供が可能となった.しかし,小児脳死ドナーからの肺移植は実現していない.2012 年11 月現在,日本で行われた肺移植279 例(脳死肺移植154 例,生体肺移植125例)のうち16 歳以下の小児例は31 例(11.1%)であった.うち29 例は生体肺移植であり,脳死肺移植を受けた小児はわずか2 例であった.その2 例も大人の脳死ドナーからの脳死両肺移植が施行された.小児肺移植自験例は20 例であり,全例が生体肺移植であった.両側生体肺移植が10 例,片側生体肺移植10 例で,人工心肺下に手術を行った.5 年生存率は77.4%であり,国際心肺移植学会レジストリー報告の約50%よりも良好であった.生体肺移植が小児患者に有用であることが明らかとなったが,生体ドナーがみつからない小児患者のために,脳死肺移植のさらなる発展が待たれる.
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医学のあゆみ 244巻10号, 907-911 (2013);
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わが国における肝移植医療は小児慢性肝疾患に対する生体部分肝移植医療を中心に進歩してきた.その成績は短期のみならず,長期においても良好な結果であり,ほぼ確立された医療として広く認識されるようになった.近年ではとくに先天性代謝異常症など,成人症例とは異なる視点で小児疾患特有の病態が肝移植医療の対象となり,また,周術期内科的管理の向上とともに小児肝移植手術手技の進歩により体重の小さな新生児・乳児症例においてもより安全に肝移植医療が施行されるようになった.2010 年7 月の改正脳死法案により15 歳未満小児脳死ドナーからの臓器提供が認められるなど,小児症例に対する脳死臓器提供機会を優先する状況下にあるが,いぜんとして小児症例における脳死肝移植数は少ない.今後,脳死臓器提供数の増加とともに,脳死臓器移植医療システムの充実が生体部分肝移植を主体とした小児肝移植領域のさらなる発展に結びつくものとなるであろう.
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医学のあゆみ 244巻10号, 913-918 (2013);
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小腸移植は重症腸管不全に対する治療として世界でこれまでに2,500 例以上が行われ,その過半数が小児症例である.症例数はいぜん少ないもののわが国の小腸移植の最近の成績は良好である.しかし,小児,とくに乳幼児症例の肝-小腸移植に対する対応は不十分であり,成績だけでなく制度面での改善が今後必要である.臓器移植法の改正により脳死ドナーからの臓器提供は増加したが,小児の脳死ドナーはきわめて少なく,増やしていくための一層の努力が必要であろう.一方,ω-3 系脂肪製剤の導入などにより小児腸管不全,とくに腸管不全関連肝障害に対する治療成績は,近年,格段に向上した.小腸移植をも包括した腸管不全治療(リハビリテーション)という考え方をさらに進め,小児重症腸管不全の治療成績向上をめざしたいと考えている.
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医学のあゆみ 244巻10号, 919-923 (2013);
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小児の慢性腎不全患者に対する治療は成人とは明らかにゴールが異なり,より健常児に近い成長・発達を促し,将来の社会適応を可能とする点で,腎移植治療が治療の第一選択と考えられている.近年,新規免疫抑制剤の導入や術後管理の進歩に伴い,急性拒絶反応の抑制に関しては有意な改善を認める.また,中長期の治療成績にも大きな改善がみられ,移植後の身体成長やQOL の向上にも影響している.とくに低体重乳幼児における移植成績の向上は目覚ましく,その成績は年長児に匹敵あるいはそれを凌駕するものとなっている.また,従来禁忌とされていたABO 血液型不適合間移植や下部尿路に重篤な障害を有する患児に関しても計画的な術前術後管理を行うことにより良好な成績が得られている.一方,移植腎機能喪失理由としてもっとも頻度が高い慢性拒絶反応に関してはいまだ有効な治療方法は確立されておらず,その克服は今後の重要な課題である.加えて思春期の患者のnon-adherence や成人施設への移行など小児特有な問題へも目を向ける必要がある.
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医学のあゆみ 244巻10号, 925-927 (2013);
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多臓器移植は世界的には小腸・肝移植を中心にこれまで約1,500 例が行われており,近年の報告では小腸・肝移植後の1 年,5 年,10 年におけるグラフト生着率は62%,45%,36%とされる.小児の多臓器移植では,先天性の要因による短腸症候群や腸管蠕動障害とその後の経静脈栄養管理による肝障害が背景病態となっており,炎症性腸疾患や後天性虚血性疾患を中心にした成人の疾患背景とは異なる.成長段階の小児では小さな腹壁容積も多臓器移植の技術的な問題になっている.わが国では2011 年の登録報告で,小腸移植20例のなかに1 例の多臓器移植例が含まれた.生体移植を中心に展開したわが国の移植医療も,臓器移植法の改正を機に脳死移植の増加や,臓器配分のルール改訂を経てようやく多臓器移植の下地が整備されつつある.
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連載
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疾病予防・健康増進のための 分子スポーツ医学 10
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医学のあゆみ 244巻10号, 934-938 (2013);
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食習慣の欧米化と慢性的な運動不足に伴い,肥満人口は急増している.肥満に伴う内臓脂肪の蓄積は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の重要な病態基盤となる.NAFLD においては,心血管系イベントのリスクが上昇すること,また,糖尿病のリスク因子も上昇させることより肝疾患のみではなく全身疾患としてとらえることが必要である.一方,運動は内臓脂肪の減少に有用であり,NAFLD による肝機能障害の改善にも有効であると報告されてきた.しかし,これら運動の有用性に関するエビデンスは少ない.本稿では肥満者の肝病態および中年肥満男性を対象とした減量教室の効果について概説し,運動実践が肥満者の肝病態に及ぼす影響について解説し,さらにその分子メカニズムについて言及する.
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フォーラム
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医学のあゆみ 244巻10号, 939-940 (2013);
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医学のあゆみ 244巻10号, 941-943 (2013);
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パリから見えるこの世界 14
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医学のあゆみ 244巻10号, 944-947 (2013);
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TOPICS
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呼吸器内科学
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医学のあゆみ 244巻10号, 929-929 (2013);
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腎臓内科学
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医学のあゆみ 244巻10号, 930-932 (2013);
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皮膚科学
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医学のあゆみ 244巻10号, 932-933 (2013);
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