Volume 244,
Issue 12,
2013
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あゆみ 糖尿病の疾患感受性遺伝子Update
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医学のあゆみ 244巻12号, 1011-1011 (2013);
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医学のあゆみ 244巻12号, 1013-1018 (2013);
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1 型糖尿病の頻度は低いが,高い家族内集積性が認められ,1 卵性双生児と2 卵性双生児における一致率の差から1 型糖尿病の成因に遺伝因子が関与していることは明らかである.疾患感受性遺伝子を同定するためのアプローチとして,ファンクショナルクローニングとポジショナルクローニングの2 つの道筋がある.ファンクショナルクローニングからはHLA 遺伝子,インスリン遺伝子,CTLA4 遺伝子,PTPN22 遺伝子,IL2RA 遺伝子が同定された.ポジショナルクローニングは近年のゲノム情報の整備や遺伝子解析法の進歩により急速に進んできており,あらたな疾患遺伝子も複数見出されつつある.疾患にかかわる遺伝子を解明することは病態の分子メカニズムを理解するうえで重要である.1 型糖尿病疾患感受性遺伝子の解明により疾患の予防,診断および治療の進歩につながることが期待される.
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医学のあゆみ 244巻12号, 1019-1024 (2013);
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全ゲノム関連解析(GWAS)によって2 型糖尿病の感受性遺伝子が続々と同定され,その数は60 を超えている.しかし,それら個々の感受性遺伝子の2 型糖尿病発症に対する効果は弱く,これらすべてをまとめても2型糖尿病遺伝素因の一部しか説明できないという推測もなされている.今後は次世代シークエンサーも活用したゲノム研究によって,これまでGWAS では解明できなかった2 型糖尿病遺伝素因の部分や,インスリン分泌が低く肥満をきたさないで2 型糖尿病を発症する日本人を含めた東アジア民族に特徴的な遺伝素因の解明が進むことを期待する.
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医学のあゆみ 244巻12号, 1025-1029 (2013);
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ゲノムワイド相関解析により空腹時血糖値,糖負荷後2 時間血糖値,空腹時血中インスリン値と相関する遺伝子領域が多数同定されており,その大部分は2 型糖尿病とも関連する.多くはこれまで糖代謝との関連は知られていないことから,2 型糖尿病疾患感受性機序を解明するうえでも重要な情報と考えられる.HbA1c 値と相関する領域の約半数は血糖値との相関に基づくものと考えられるが,残りの半数は赤血球寿命などの血糖値に依存しない要因との関連が示唆されている.したがって,HbA1c などでは遺伝情報を加味した正常値の設定が必要と考えられる.一方,肥満関連形質としてBMI,腹囲,ウエスト/ヒップ比および体脂肪率を対象とした解析が行われている.すでに40 以上の肥満関連遺伝子領域が同定されているが,肥満の遺伝的要因の10%程度しか説明できない.糖代謝関連形質の遺伝要因についても状況は同様であり,その全体像解明にはさらに多くの遺伝子領域同定が必要と考えられる.
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医学のあゆみ 244巻12号, 1030-1034 (2013);
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MODY の頻度はヨーロッパで糖尿病全体の1~2%と報告されており,イギリスでは80%以上のMODY が遺伝子診断を受けないまま治療を受けているという調査結果が2010 年に公表された1).わが国では,2005年に報告された881 万人の児童の学校検尿のデータによると年間10 万人当り2.63 名の2 型糖尿病が発見されている.家族歴陽性率は56.5%と高く,16.5%は肥満を伴わないとされており2),この集団にはMODY が高率に含まれていると考えられた.実際,学校検尿が診断契機となった56 名を含む,79 名の20 歳未満診断例の検討において,MODY 遺伝子変異が38 名(48%)に同定された3).このように,MODY は決してまれな病型ではなく,積極的に疑うことにより正しい診断に至ることが期待される.本稿では効率的なMODY 診断の進め方とその意義について遺伝子診断も含めて概説する.
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医学のあゆみ 244巻12号, 1035-1039 (2013);
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Wolfram 症候群は若年発症の糖尿病と視神経萎縮を主徴とする常染色体劣性遺伝性疾患で,尿崩症,難聴,多彩な精神・神経症状,尿路異常などを高率に合併する.日本での有病率は100 万人に1 人程度と推測されている.主要な原因遺伝子としてWFS1 遺伝子が同定されており,日本人の患者では約60%にこの遺伝子変異が認められる.WFS1 蛋白質は小胞体膜に存在し,小胞体ストレスおよび小胞体ストレス応答に関与する.また,β細胞ではインスリン分泌顆粒にも多く存在し,顆粒内の酸性化維持に重要である.WFS1 蛋白の分子機能については未解明の点も多い.WFS1 遺伝子には優性遺伝する非症候性低音障害型難聴や,優生遺伝する視神経萎縮と難聴の合併例でもミスセンス変異が同定されている.また,WFS1 遺伝子のSNP と2 型糖尿病との関連が示され,2 型糖尿病遺伝子としても認知されている.
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医学のあゆみ 244巻12号, 1040-1044 (2013);
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2 型糖尿病の遺伝要因を明らかにするため,これまで全ゲノム関連解析(GWAS)や連鎖解析(linkage analysis)が行われてきたが,いまだ大部分の2 型糖尿病症例においてその遺伝要因は未知である.一方,近年開発された次世代シークエンサーにより個人ゲノムの全エクソンを網羅的に配列解析するエクソーム解析が実用化され,それまで原因究明が困難であった数々のMendel 疾患の原因遺伝子同定があいついでいる.糖尿病領域においても家族歴濃厚糖尿病例の研究や大規模症例対照研究についてエクソーム解析が応用されつつあるが,エクソーム解析により得られた莫大な塩基配列変化から疾患原因を絞り込む方法にはさまざまな工夫が必要であり,今後の課題である.
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医学のあゆみ 244巻12号, 1045-1050 (2013);
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Cyclin-dependent kinase 5 regulatory subunit-associated protein 1-like 1(CDKAL1)はゲノムワイド関連解析(GWAS)により2 型糖尿病感受性遺伝子として同定された.さらに,同遺伝子座のリスクアレルは低インスリン分泌能,非肥満・低体重,非インスリン抵抗性などと関連があることが明らかになった.従来,CDKAL1 の分子機能は不明であったが,最近その機能が明らかになった.同分子はリジンに対応するtRNA のアンチコドン近傍のアデニンをチオメチル化する酵素であった.チオメチル化修飾によりリジン翻訳時の誤翻訳を防止していた.CDKAL1 欠損マウスはプロインスリンのリジン量が低下しており,リジン翻訳時に誤翻訳が生じていることが示唆された.また,同マウスはインスリン分泌低下,耐糖能低下,非肥満,および非インスリン抵抗性などの表現型を呈した.このように最近のGWAS とCDKAL1 の機能解析からCDKAL1 が2 型糖尿病発症に関与することが明らかになった.本稿では,CDKAL1 の機能と同分子の機能欠損が糖尿病を発症する分子メカニズムを中心に紹介する.
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医学のあゆみ 244巻12号, 1051-1056 (2013);
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2 型糖尿病をはじめとするcommon disease の成因にはさまざまな遺伝素因と環境因子が関与するが,それらが病態と関与する分子メカニズムは多くの場合,いまだ明らかにされていない.染色体はDNA とヒストンなどのDNA 結合蛋白質から構成されるが,環境刺激はこれらに化学修飾をもたらすことによって,その核内におけるあり方を変化させる.このようなメカニズムによる遺伝子発現調節機構は“エピジェネティクス”と総称され,DNA の塩基配列を変化させるものではないが,塩基配列情報からも影響を受けるために,遺伝素因と環境因子の相互作用を直接反映する細胞種特異的なメカニズムとして注目を集めつつある.さらに,エピゲノム制御と関連するノンコーディングRNA の存在も知られている.著者らはヒト膵島において,2 型糖尿病ともっとも関連する一塩基多型周辺のゲノム領域が特徴的なエピゲノム状態を示すことを見出した.最近になり,他の細胞種や胎児組織の解析も行われ,いくつかのcommon disease の感受性座位にも同様の所見が確認されつつある.以上より“エピジェネティクス”はさまざまな疾患研究の一翼を担うものとして今後の展開が期待される.
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医学のあゆみ 244巻12号, 1057-1061 (2013);
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2 型糖尿病は代表的な多因子疾患であり,その発症には高脂肪食や運動不足といった環境因子に加え,遺伝素因が大きく関与している.糖尿病の遺伝素因についてはゲノムワイド関連解析(GWAS)をはじめとする遺伝学的アプローチにより,これまで70 あまりの疾患感受性遺伝子が同定されてきている.しかし,これらの遺伝子群がどのように糖尿病発症にかかわっているのか,その分子メカニズムについてはいまだ全容が解明されていない.そこで,著者らは疾患の発症に機能的に関連する遺伝子(疾患関連遺伝子)をゲノムワイドに探索するため,大量の遺伝子発現マイクロアレイをメタ解析するExpression GWAS という手法を考案した.実際,著者らはこの方法を糖尿病に適用し,もっとも有意であった遺伝子,CD44 が糖尿病の発症に機能的に関与している可能性を明らかにした.著者らはこの手法が糖尿病をはじめとする多因子疾患の分子病態を機能的側面から解明する一助となることを期待している.
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連載
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疾病予防・健康増進のための 分子スポーツ医学 12
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医学のあゆみ 244巻12号, 1068-1073 (2013);
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近年,脂肪細胞における脂肪分解反応の調節メカニズムに新しいプレーヤー達が続々と加わってきた.脂肪滴(細胞内のトリアシルグリセロール塊)を覆うペリリピン(PLIN),脂肪細胞特異的トリアシルグリセロールリパーゼ(ATGL),リパーゼ様因子CGI-58,である.これらの分子はたがいに,あるいは既知の分子とつぎつぎに連鎖して脂肪滴を分解する.古くから知られている運動トレーニングによる脂肪分解反応の亢進も,PLIN やATGL の働きが増すことによって支えられているようである.両者は骨格筋の脂肪分解反応においても重要な役割を果たす.骨格筋のPLIN 発現量と筋肉内脂肪量には相関があり,遅筋線維でその発現量が高い.また,ATGL を欠いたマウスでは運動時の血中遊離脂肪酸量の減少をともなって運動パフォーマンスが低下する.さらに,脂肪組織のATGL 蛋白発現量はBMI と負の相関関係があり,インスリン感受性とは正の相関関係があることも指摘されている.同様の関係はインスリン感受性を亢進するアディポネクチンでもみられる.したがって,脂肪分解反応の制御とその破綻のメカニズムを解明することも,肥満を基盤としたメタボリックシンドロームの原因究明と予防・改善のストラテジー構築におおいに役立つであろう.
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フォーラム
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病院内保育所の取組み 5
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医学のあゆみ 244巻12号, 1075-1076 (2013);
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医学のあゆみ 244巻12号, 1078-1079 (2013);
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医学のあゆみ 244巻12号, 1080-1084 (2013);
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TOPICS
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糖尿病・内分泌代謝学
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医学のあゆみ 244巻12号, 1063-1064 (2013);
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加齢医学
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医学のあゆみ 244巻12号, 1064-1065 (2013);
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皮膚科学
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医学のあゆみ 244巻12号, 1065-1066 (2013);
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