医学のあゆみ

Volume 245, Issue 1, 2013
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【4月第 1 土曜特集】 トランスポーターと疾患研究の最前線
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- トランスポーターと疾患
- 【尿酸】
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SLCトランスポーターと痛風・高尿酸血症
245巻1号(2013);View Description
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高尿酸血症は痛風関節炎や腎障害などの尿酸塩沈着症の病因となり,性・年齢を問わず血清尿酸値が7.0mg/dL を超えるものと定義されている.高尿酸血症は痛風の病因となるだけでなく,肥満,脂質異常症,耐糖能異常,高血圧などの心血管リスク因子に伴って認められることも多い“生活習慣病”のひとつである.また,尿酸はそれ自体が心血管リスクを有する可能性も指摘されている.原発性痛風患者の約9 割に腎での尿酸排泄低下が認められることから,高尿酸血症の発症原因として腎における尿酸の排泄低下が重要と考えられている.腎での尿酸排泄はおもにATP 非依存性に有機溶質の細胞膜透過を行うSLC トランスポーターが重要な役割を担っており,本稿ではこのSLC トランスポーターと痛風・高尿酸血症との関連に関する最近の知見を紹介する. -
ABCトランスポーターによる尿酸輸送
245巻1号(2013);View Description
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尿酸は,血清中濃度が高値になると痛風や尿路結石の発症リスクが高まるのみならず,最近では心血管疾患・腎疾患などの病態発症との関連性も示されている.受動的な細胞膜透過がほぼ不可能である尿酸の体内動態制御にはトランスポーターが必須であり,腎性低尿酸血症の原因遺伝子として複数の尿酸再吸収トランスポーターが同定されていたものの,尿酸排出を担うトランスポーター分子は長らく不明であった.本稿では,細胞内から細胞外への物質輸送を担うABC トランスポーターによる尿酸輸送について,ABCG2/BCRP を中心に概説する.高容量性・低親和性の尿酸輸送活性をもつABCG2 には機能低下を伴う遺伝子多型が高頻度に存在し,腸管への尿酸排泄低下に伴う腎外排泄低下型高尿酸血症や,痛風発症リスクとの関連に注目が集まっている. - 【脂質・胆汁酸】
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疾患と関連する脂質トランスポーターとその機能制御
245巻1号(2013);View Description
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多くの脂質トランスポーターが体内の脂質恒常性に大きな役割を果たすことが近年わかりつつある.脂質トランスポーターの機能異常は脂質恒常性の破綻をもたらし,アテローム性動脈硬化をはじめとするさまざまな疾病と関連する.複数のABC トランスポーターが脂質を輸送することが明らかとなり,それらの変異が遺伝病を引き起こすこともわかってきた.脂質トランスポーターのうち,コレステロールを輸送するABCA1,ABCG1,ABCG5/ABCG8 は,末梢に蓄積したコレステロールを体外へ排出する方向に働くことでマクロファージの泡沫化,炎症,アテローム性動脈硬化症を抑制する.脂質トランスポーターの機能は厳密に制御されており,転写制御,転写後制御,翻訳後制御によって蛋白量や細胞内局在,活性が調節されている.本稿では脂質トランスポーターについて紹介するとともに,現在明らかとなっている制御機構についても述べる.今後,脂質トランスポーター自体のみならず,脂質トランスポーターの制御を標的とした薬剤開発にもつながることが期待される. -
生活習慣病とトランスポーター―コレステロール動態を中心に
245巻1号(2013);View Description
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現代人における食生活の欧米化は食事からの脂質摂取量の増加を招き,肥満や脂質異常症の増加の原因となっていると考えられている.生体内における脂質恒常性の破綻が脂肪肝や糖尿病,動脈硬化など,生活習慣病を含む各種疾患と密接に関係していることは周知の事実である.このような疾患の予防・治療において血中コレステロールレベルの適切な管理が重要であると考えられており,コレステロールの全身動態を制御する分子機構の解明が精力的に行われている.当初,細胞膜構成成分のひとつであるコレステロールは受動的に細胞膜を通過するといわれていたが,今世紀に入ってからの研究進展に伴い,コレステロールの輸送を担うトランスポーター群が見出されてきた.本稿では脂質動態にかかわるトランスポーター群について概説した後,細胞内へのコレステロール吸収を担うNiemann-Pick C1-like 1(NPC1L1)をはじめとしたNPC 関連蛋白質群および細胞外へのコレステロール排出を担うATP-binding cassette G5(ABCG5)/ABCG8 に焦点を当て,その生理的役割と疾患・治療との関連性について記述する. -
胆汁酸トランスポーターが関連する疾患と治療
245巻1号(2013);View Description
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肝細胞毛細胆管側膜に発現するABC トランスポーターのひとつであるbile salt export pump(BSEP)は毛細胆管側膜を介した胆汁酸輸送を担っており,肝細胞から胆汁中への胆汁酸排泄を促す.胆汁中への胆汁酸排泄は胆汁流形成の主要な駆動力であるため,BSEP 遺伝子の変異や種々の肝疾患に伴い,BSEP が機能低下した場合には肝内胆汁うっ滞という胆汁流の形成不全が惹起される.肝内胆汁うっ滞に対しては現在までに内科的療法は確立しておらず,症状が慢性化した場合には肝移植が唯一の治療法となる.本稿では,はじめにBSEP と肝内胆汁うっ滞について概説した後,著者らの最近の成果を交えながらBSEP の機能低下,すなわち肝内胆汁うっ滞の病態発症機構に関する知見を紹介し,肝内胆汁うっ滞の薬物治療の可能性について考察する. - 【その他の低分子】
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OCTN1(SLC22A4)とergothioneineの生理的役割と疾患への関与
245巻1号(2013);View Description
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カルニチン/有機カチオントランスポーターOCTN1(SLC22A4)は幅広い臓器に発現し,種々の有機カチオン性化合物を基質として認識する.これまでOCTN1 のin vivo における役割はほとんど解明されていなかった.そこで著者らはOCTN1 の生理的役割を解明する目的で,octn1 遺伝子欠損(octn1- / -)マウスを作製しメタボローム解析を行うことで,OCTN1 が生体内で認識する基質としてergothioneine を見出した.抗酸化物質であるergothioneine は幅広い臓器に発現するOCTN1 を介して全身に分布し生体内の酸化ストレスを抑制すると考えられるため,さまざまな疾患に関与すると推測される.本稿では,①ergothioneine の体内動態におけるOCTN1 の役割とergothioneine の抗酸化作用,②慢性炎症性疾患(Crohn 病,関節リウマチなど)とOCTN1 との関係,③脳におけるOCTN1 の生理的役割と神経変性疾患に対するergothioneine の保護効果,④OCTN1 の局在から推定される疾患との関与の可能性,について概説する. -
アミノ酸トランスポーターと疾患
245巻1号(2013);View Description
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アミノ酸トランスポーターは,アミノ酸の細胞膜透過を媒介する膜蛋白質である.腎尿細管や小腸上皮からのアミノ酸の吸収にあずかるアミノ酸トランスポーターの遺伝的欠損により,アミノ酸尿症などの上皮輸送障害が生じる.その疾患起因性変異の解析から病態形成の分子基盤が明らかになると同時に,トランスポーターの分子生理学の見地からも興味深い事実が明らかになってきている.Hartnup 病を生じる変異のなかに調節蛋白質との相互作用に起因する事例が見出されたこと,また日本人のシスチン尿症の主要な変異はいままで機能上重視されていなかったトランスポーターのC 末端にあり,トランスポーターの構造と機能の基礎研究にあらたな展開をもたらすことなどがそれにあたる.また,アミノ酸トランスポーターのなかには悪性腫瘍に高発現し,病態の進展に寄与するものがある.これは疾患の診断と治療の分子標的となり,今後の創薬研究の展開が期待される. - 【Ca2+,PO4,Zn2+イオン】
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Ca2+トランスポーターと循環器疾患
245巻1号(2013);View Description
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細胞内Ca2+濃度は,細胞膜や細胞内小器官に発現する種々のCa2+輸送蛋白質(チャネル・トランスポーター・ポンプ)によって時間的・空間的に巧みに制御されている.Na+ /Ca2+交換輸送体は細胞膜およびミトコンドリア内膜に存在するNa+濃度依存性のCa2+トランスポーターである.近年,特異的阻害薬や遺伝子改変マウスを用いた研究により,細胞膜Na+ /Ca2+交換輸送体(NCX1)が他のNa+輸送蛋白質(Na+透過性チャネル,Na+ポンプ)と機能的複合体を構成し,食塩感受性高血圧や虚血性心疾患などの病態機序に寄与することが示された.さらに,最近,ミトコンドリア内膜Na+ /Ca2+交換輸送体(NCLX)の分子実体が同定され,その生理機能や各種病態への関与が注目されている.本稿では,心血管系におけるNCX1 およびNCLX の生理的・病態的役割について概説する. -
リントランスポーターと疾患―リン代謝における骨と腎の相関
245巻1号(2013);View Description
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リントランスポーターはⅠ型からⅢ型まで分類されている.Ⅱ型リントランスポーターの異常は,血中リン濃度調節や遺伝性低リン血症と関係している.リン代謝異常の研究より,ホスファトニンと呼ばれるリン利尿因子が明らかにされている.FGF23 は骨細胞から分泌されるリン利尿因子であり,その共受容体としてKlotho の役割が必須である.また,MEPE(matrix extracellular phosphoglycoprotein)の作用はカテプシンBにより分解を受け,その結果生じるリン酸化ASARM(acidic serine aspartate-rich MEPE-associated motif)ペプチドには,リン利尿作用や石灰化抑制作用がある.このように,リントランスポーターに関する異常はトランスポーター自身,あるいはそれらを調節する液性因子の異常により惹起される. -
乳癌細胞の悪性化進展における亜鉛トランスポーターの役割
245巻1号(2013);View Description
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亜鉛はわれわれの身体の機能が正常に働くために欠かせない必須微量元素のひとつである.亜鉛の膜透過の調節には亜鉛トランスポーターが関与しており,現在,哺乳類の亜鉛トランスポーターは23 種類存在し,亜鉛濃度の調節・維持だけでなく,多様な生理作用をもつことが明らかにされている.さらに,近年,疾患の発症や進行における亜鉛トランスポーターの関与が注目され,とくに乳癌において癌難治化の要因となる上皮-間葉細胞分化転換や浸潤・転移に関与する運動性に,亜鉛トランスポーターが大きく寄与するとの報告があいついでいる.また,癌細胞に発現している亜鉛トランスポーターは癌悪性度の診断と治療の分子標的になることが期待される.本稿では乳癌における亜鉛トランスポーターの病態生理学的役割と,乳癌治療ターゲットの可能性について最新の知見を紹介する. - 【神経伝達物質】
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塩素イオンにより制御されるトランスポーター群の発見と意義
245巻1号(2013);View Description
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神経伝達物質の分泌小胞への充填は,化学伝達の重要な一過程である.この過程をつかさどるのが小胞型神経伝達物質トランスポーターであり,モノアミン類,アセチルコリン,GABA とグリシンなどの抑制性アミノ酸,グルタミン酸などの興奮性アミノ酸,そしてヌクレオチドを輸送するものが知られている.最近になり,塩素イオンがこれらの小胞型トランスポーターの活性制御因子となっていることがわかってきた.本稿においてその概要を紹介する. -
精神・神経疾患の病態と薬物療法に関する脳内モノアミントランスポーターのPETイメージング
245巻1号(2013);View Description
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脳内モノアミントランスポーター(セロトニントランスポーター,ドパミントランスポーター,ノルエピネフリントランスポーター)は運動,認知,情動などの機能に深く関与しており,多くの精神・神経疾患の病態生理と関連することが示唆されている.近年ではそれらのトランスポーターに特異的に結合するPET 薬剤の開発によって,PET による生体での画像化が可能となり,さまざまな機能や病態との関連が調べられている.また,向精神薬による脳内の占有率を測定することによって医薬品の開発にも応用されている.さらに,最近では人間の意思決定の機序を探る脳科学領域にまで応用された報告もみられる. - 薬剤応答性とトランスポーター
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肝トランスポーターと薬剤応答性
245巻1号(2013);View Description
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肝には多くの取込み・排出トランスポーターが発現している.これらは基質認識性が広いことから,多様な医薬品の肝胆系輸送を制御することにより,効率よい異物解毒を実現している.これらトランスポーターは,遺伝子多型や薬物相互作用などさまざまな要因により発現や機能の変動が起こりうる.その際,基質となる医薬品の体内動態や組織分布の変化に伴い,薬効や副作用発現の強度も影響を受けることがある.とくに,肝取込みトランスポーターOATP(organic anion transporting polypeptide)類の機能変動とHMG-CoA 還元酵素阻害薬(スタチン類)の薬効(コレステロール低下効果)や副作用(筋毒性)との関連に関する研究が数多く実施されている.本稿では,肝トランスポーターの機能変動に伴う薬剤応答性の変化について,これまでヒト臨床研究によって示されてきた例を取り上げる. -
薬物トランスポーター機能の個体間変動―個人差を予測するバイオマーカーとしての遺伝子情報
245巻1号(2013);View Description
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本稿では,薬物トランスポーター機能にみる個人差を遺伝的要因から概説する.遺伝子変異が原因で輸送活性が変化する場合,薬物の体内動態,とくに吸収・分布・排泄過程に変化が生じる.いままで理由がわからなかったバイオアベイラビリティー(吸収率)の大きな個人差も,遺伝子多型で説明が可能になってきた.しかし,多くの薬物は数種類のトランスポーターにより輸送されることから,遺伝子多型の影響は限定的といえる.一方,蛋白質の発現量に影響するマイクロRNA(miRNA)が注目されている.トランスポーターの臓器発現量も特定のmiRNA により制御されている.miRNA の発現量によりトランスポーターの臓器発現量,さらには基質薬物の体内動態が予想できれば,血中miRNA 濃度のモニターが新規の機能的バイオマーカーとして活用されることもあり得る. -
腎薬物トランスポーターと薬剤応答性
245巻1号(2013);View Description
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腎の薬物輸送系は,近位尿細管上皮細胞の血管側側底膜に発現するトランスポーターによる細胞内取込み過程と管腔側刷子縁膜に存在するトランスポーターを介した排出過程の総和として尿細管分泌を営んでいる.有機カチオントランスポーターは腎機能の指標とされるクレアチニンの尿細管分泌を媒介し,有機アニオントランスポーターは腎血漿流量の指示薬であるパラアミノ馬尿酸の腎挙動を支配する.ループ利尿薬やサイアザイド利尿薬は,有機アニオントランスポーターを介した尿細管分泌を受けてはじめて管腔中から薬理効果を発揮できる.白金系抗癌薬シスプラチンやアニオン性の抗ウイルス薬による腎毒性発現は側底膜側のOCT2 やOAT1 による濃縮的な取込み活性に起因する.このように,薬物トランスポーターは腎において単なる異物解毒因子であるだけでなく,腎機能そのものを推し量るうえでの重要な機能分子であると同時に薬効発現の支配因子としても機能している. -
体内時計による薬物輸送トランスポーターの概日リズム制御
245巻1号(2013);View Description
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薬の効果は作用部位における“薬物の濃度”とその部位における“薬物に対する感受性”によって決定される.薬物が投与された部位から作用部位に到達するまでにはいくつもの“関門”があり,投与されたすべての薬物が作用部位に移行することはない.体内および作用部位における薬物の濃度は,吸収,分布,代謝,排泄の各過程によって規定されるが,薬物の生体膜輸送に関与するトランスポーターの発現や機能には概日性の変動が認められる.そのため,その基質となる薬物の輸送能は服用する時刻よって変化し,薬の効果や副作用の発現にも影響を及ぼす.本稿では,薬物の体内動態に影響を及ぼす生体機能の日周リズムと体内時計による薬物輸送トランスポーターの概日リズム制御メカニズムについて概説する. -
リバビリン輸送を担う核酸トランスポーターとそのC型肝炎治療における役割
245巻1号(2013);View Description
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核酸誘導体リバビリンはC 型肝炎標準療法の一翼を担う薬剤である.リバビリンは高い水溶性のためにそのままでは細胞膜を透過できず,核酸トランスポーターを介して細胞内に取り込まれる.これまでに複数の核酸トランスポーター分子種がリバビリンを基質とすることが報告されており,肝細胞核酸トランスポーターによるリバビリン取込みはその肝細胞内濃度を,また小腸上皮細胞核酸トランスポーターによるリバビリン吸収はその血中濃度を規定する一因となると考えられている.リバビリン肝細胞内濃度および血中濃度はいずれもリバビリン薬効発現を規定する要因であることから,肝細胞や小腸上皮細胞の核酸トランスポーターの機能や発現量はC 型肝炎治療効果に大きな影響を及ぼすと考えられる.したがって,核酸トランスポーターはリバビリンを用いたC 型肝炎治療において,その効果を規定する因子として重要な役割を担っていると考えられる. -
消化管吸収型薬物トランスポーターOATPと相互作用
245巻1号(2013);View Description
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医薬品の消化管吸収へのトランスポーターの関与と分子的実体については消化管組織の解剖学的・機能的複雑さと多様性のために明確ではない点が多いが,有機アニオントランスポーターOATP 群の関与が示されている.なかでもOATP2B1 は多様な内因的物質や生体異物を基質とし,小腸上皮細胞管腔側膜に発現することから,薬物吸収に関与する可能性が高い.OATP2B1 遺伝子の多型の影響やフルーツジュース併用による基質薬物の血漿中濃度変動などから,医薬品吸収におけるOATP2B1 の重要性が裏づけられつつある.一方,OATP2B1 上でのジュースとの相互作用においては,競合的阻害のみならず持続的阻害や複数の活性部位の存在が考えられるなど,相互作用機構も複雑なことが推定される.OATP2B1 の特性についてさらに情報を得ることと同時に,その基質となる医薬品については吸収性・血漿中濃度の観察が必要である. -
メトトレキサートによる関節リウマチ治療と葉酸トランスポーター
245巻1号(2013);View Description
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関節リウマチ(RA)治療の第一選択薬であるメトトレキサート(MTX)は化学構造が葉酸ときわめて類似しているため,その小腸での吸収や組織分布に葉酸輸送系が関与することが古くから知られていた.近年のトランスポーター研究の進展に伴い,そのような輸送系の分子実体として各種葉酸トランスポーターが同定され,それらの機能特性や生理的役割が解明されるにつれ,MTX の体内動態への理解が深まりつつある.小腸での葉酸吸収を担うトランスポーターとしてはPCFT が同定され,葉酸だけではなくMTX の吸収もPCFT の機能に依存していることが明らかとなった.また,MTX の分布にはRFC1 やFR が関与し,RA の滑液中の炎症性細胞へのMTX の集積との関連性が示唆されている.本稿では,葉酸トランスポーターの生理的機能とこれらによるMTX 輸送に焦点をあて,葉酸トランスポーターとMTX のRA 治療とのかかわりについて最近の知見を紹介する. - トランスポーター技術
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定量的標的プロテオミクスに基づく胃癌・乳癌薬剤感受性関連トランスポーターの解明
245巻1号(2013);View Description
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化学療法は外科的手術および放射線療法と並び,癌の重要な治療法である.しかし,薬剤耐性が化学療法の問題点としてあげられ,抗癌剤の細胞内外への輸送を担うトランスポーターが関与していることが知られている.抗癌剤感受性に関与するとされるトランスポーターは多数知られており,各癌細胞において主要な役割を担うトランスポーターを特定することは薬剤感受性メカニズムを理解し,治療薬の選択だけでなく,より優れた抗癌剤の開発研究に重要である.これまで,輸送機能を担う細胞膜中のトランスポーターの蛋白質濃度を測定することなく研究を行ってきたことが問題である.本稿では近年著者らの研究室で開発した“蛋白質をトリプシン消化してできるペプチドのなかからアミノ酸配列に基づいて定量に適したペプチドを選択し,三連四重極型質量分析装置を用いて定量する手法”について概略を述べ,癌薬剤感受性とトランスポーターの関連性を解明する研究に応用した例を紹介する. -
PET分子イメージング技術を用いた薬物動態研究
245巻1号(2013);View Description
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薬物トランスポーターは薬物の組織分布および排泄において重要な役割を果たしており,その機能変化は薬効・副作用発現の個人差の一因になると考えられる.薬物トランスポーターの機能変動の評価を行うためには,個体レベルでの薬物トランスポーター機能の評価が必須となってくる.近年,同一個体における薬物の組織移行性および排泄に関して分子イメージング技術のひとつであるPET を用いた画像解析が注目されている.本稿ではPET 分子イメージング技術を用いた体内動態評価法として血液脳関門で関門機能として機能する薬物トランスポーターの機能変化を解析した例,また肝胆系輸送や腎排泄における素過程の評価により薬物トランスポーターの機能変化の解析を行った例を中心に紹介し,薬物動態研究へのPET 分子イメージング技術の有用性を概説する.
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