医学のあゆみ

Volume 246, Issue 1, 2013
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【7月第1土曜特集】 血管炎の診断と治療―新分類CHCC2012に沿って
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- 大型血管炎
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高安動脈炎の診断と治療―生物学的製剤による治療の現状に焦点を当てて
246巻1号(2013);View Description
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CHCC2012 であらたに発表された血管炎の分類で一カテゴリーを形成する“大型血管炎”には,高安動脈炎(TA)と巨細胞性動脈炎(GCA)がある.TA はいまだ原因不明の慢性肉芽種性大血管炎であり,わが国では患者の大半が若年女性である.大動脈とその第1 分枝に狭窄や閉塞が生じて臨床症状を呈し,脳虚血発作や大動脈弁閉鎖不全,大動脈瘤,心不全,失明,腎不全など重篤な合併症を引き起こすことが知られている.その診断には画像検査としてCT,MRI,頸動脈エコーやFDG-PET などが有用とされる.治療の第一選択はステロイドであり,多くの症例でいったんは寛解に至るものの,再燃がしばしばみられる.再燃の際にはステロイドに加えてさまざまな免疫抑制療法を併用するが,治療に難渋するケースも多い.近年,難治性経過をとるTA症例に対しては,生物学的製剤のTNF-α阻害薬やIL-6 阻害薬の有効性が報告されており,今後の新しい治療の選択肢として期待されている. -
巨細胞性動脈炎(GCA)の正しい理解―側頭動脈炎(TA)ではなぜいけないのか
246巻1号(2013);View Description
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日本では側頭動脈炎(TA)の概念や名称が普及し,巨細胞性動脈炎(GCA)の概念や名称が広くは浸透していない.CHCC2012 の報告にある「GCA は側頭動脈にも病変を認めるが,GCA のすべての症例が側頭動脈を傷害するものではない.また,他の血管炎であっても側頭動脈を障害することがある」の意味を理解する必要がある.また,GCA はheterogeneous な疾患であり,大動脈を含めた大型血管炎の理解を深める必要がある. - 中型血管炎
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結節性多発動脈炎
246巻1号(2013);View Description
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結節性多発動脈炎(PAN)は「中・小動脈の壊死性血管炎で,糸球体腎炎あるいは細小動脈・毛細血管・細小静脈の血管炎を伴わず,抗好中球細胞質抗体(ANCA)と関連のない疾患」と定義される.わが国の推定患者数は300~1,400 名,男女比は1:1~3,発症平均年齢は55 歳,7 年生存率は80%である.PAN では筋性動脈の血管壁に強い炎症と壊死が出現し,壊死部の血管にはフィブリノイド壊死,内・外弾性版断裂が認められ,しばしば動脈瘤が形成される.罹患臓器として皮膚,腎,腸管,神経,筋肉が代表的で,倦怠感,体重減少,発熱,関節痛などの全身症状と,虚血による臓器症状が出現する.疾患標識抗体はなく,生検によって確定診断する.中等症~重症のPAN の場合には,中等量~大量の副腎皮質ステロイドと免疫抑制薬を併用し,軽症のPAN の場合には副腎皮質ステロイド単独で治療する. -
川崎病の診断と治療
246巻1号(2013);View Description
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川崎病(KD)はその存在が発見されてから50 年近い年月が経過したが,原因はいまなお不明である.その診断は主要6 症状の出現の有無という若干不確実な物差しに依存しているため,診断確定に苦慮したり,診断の遅れから治療開始の遅れをしばしば経験する.また,その治療法は原因に対して直接的・特異的介入ができていないため,初期標準治療(免疫グロブリン超大量療法+アスピリン)に対する治療抵抗例が,地域差なく15~20%存在し,治療法の進歩にもかかわらず,いまなお罹患患者の約3%に冠動脈障害を残している.本稿では不全型KD などKD の診断に関する諸問題について解説し,さらに最近公表された新しい治療ガイドラインに沿って,初期標準治療法や治療抵抗例に対して試みられているさまざまな2nd Line,3rd Line 治療法,および初期強化療法など最新の治療戦略について解説したい. - 小型血管炎
- 【ANCA関連血管炎】
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顕微鏡的多発血管炎
246巻1号(2013);View Description
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顕微鏡的多発血管炎(MPA)は1994 年,Chapel Hill Consensus Conference(CHCC1994)1)で提唱された比較的新しい疾患概念である.CHCC1994 ではMPA だけでなく一次性血管炎に関する用語や疾患の定義が提唱され,血管炎の基礎・臨床研究におおいに貢献した.2012 年,CHCC1994 から18 年間の医学の進歩を踏まえ,血管炎に関して病名,分類の変更,疾患の定義などの改定が行われた(CHCC2012)2).MPA に関しても定義・位置づけに関し若干の変更があった.本稿ではまずMPA の疾患概念の変遷について述べ,つぎにCHCC2012 のなかのMPA に関する事項,さらにMPA の臨床・病理組織所見の特徴,診断,治療について概説する. -
多発血管炎性肉芽腫症(Wegener’s)(GPA)
246巻1号(2013);View Description
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新分類CHCC2012 による多発血管炎性肉芽腫症(Wegener’s)(GPA)は,壊死性肉芽腫性炎で通常上・下気道を侵し,小・中血管を中心に(ただし毛細血管,細静脈,細動脈,動脈,静脈も含め)壊死性血管炎をきたす.壊死性糸球体腎炎はよく認められる.眼血管炎と出血を伴う肺毛細血管炎もしばしば認める.肉芽腫性および非肉芽腫性血管外炎症もよく認める.限局性GPA はとくに上気道と下気道および眼に疾病が制限され,全身性の血管炎の所見を認めないが,臨床病理学的表現はGPA の気道型と同一であり,とくにANCA が陽性の場合はGPA の範疇に入れるべきである.CHCC2012 の分類はアメリカリウマチ協会(ACR),アメリカ腎臓学会(ASN),ヨーロッパリウマチ学会によりWegener 肉芽腫症の呼称を多発血管炎性肉芽腫症(Wegener’s)に置き換える推奨に適応している. -
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(Churg-Strauss症候群)―診断と治療における最近の進歩
246巻1号(2013);View Description
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好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の臓器病変は,強い上下気道の好酸球性炎症(好酸球性鼻茸と重症喘息±好酸球性細気管支・肺炎)が基本で,さらに全身の好酸球性炎症と小血管炎に伴う全身所臓器の虚血性変化が加わる.臨床症状としては,先行する喘息と血管炎発症時の多発性単神経炎をほとんどの例で認めるのが特徴である.心障害,副鼻腔・肺病変,消化管障害,皮膚病変も軽度のものを含めると70%以上に認める.気道症状は重症喘息と鼻茸を伴う好酸球性副鼻腔炎・中耳炎が多いが,アトピー素因合併は少ない.腎障害も20%以下で軽微な例が多い.近年のヨーロッパ報告や自験成績ではP-ANCA 陽性率は高くないこと(30~40%),また陽性例ではMPA 様の病態(腎障害)が優位で,陰性例では心障害が多いことが確認されている.治療はステロイドが主役であるが,シクロホスファミド大量静注療法(IVCY)も中等症以上で数カ月併用すべきである.生命予後に強く影響するのは顕性の心障害であり,末梢神経障害も患者QOL を大きく損なうが,これらにはγ-グロブリン大量静注療法(IVIG)が奏効しやすく,追加治療として推奨される.最近は,抗IL-5療法の著効例や抗IgE 治療,rituximub の奏効例が報告されている. - 【免疫複合体性血管炎】
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抗GBM病診療の実際
246巻1号(2013);View Description
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抗糸球体基底膜(GBM)病は血液中にGBM に対する自己抗体を認め,腎生検組織では糸球体係蹄壁に沿った線状の免疫グロブリンの沈着を認める比較的まれな疾患で,病型としては腎では急速進行性腎炎を,肺では肺出血をきたす.2012 年のCHCC において抗GBM 病が免疫複合体型の小型血管炎のひとつとして位置づけられた.急速進行性腎炎を呈する他の疾患と比べ強い炎症とともに急速に腎機能の悪化をきたす症例が多く,早期発見と早期の治療開始が必須であるが,いまだ予後は不良である. -
クリオグロブリン血症性血管炎―HCVとの関連を中心に
246巻1号(2013);View Description
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クリオグロブリン(CG)血症性血管炎はCHCC2012 では小型血管炎に分類される血管炎で,軽症例から全身性血管炎や膜性増殖性糸球体腎炎をきたすような重症型まで,幅広い臨床病型が存在する.CG とは寒冷で乳白色に沈殿し,37℃に加温すると再溶解する異常蛋白で,構成する免疫グロブリンによってⅠ~Ⅲ型に分類される.Ⅰ型は血液疾患,混合型(Ⅱ,Ⅲ型)はC 型肝炎ウイルス(HCV)感染症を代表とする慢性感染症や自己免疫疾患によるものが多い.現在,診断基準はなく,血管炎や血栓塞栓部位からのCG 検出が困難であるため,血清中でのCG の検出と基礎疾患の存在や症状,病理所見などの組合せで診断していることが多い.治療法は病態・病状の重症度によって異なり,Ⅰ型では血液疾患の治療が優先される.混合型の場合は原因の大半であるHCV に対する抗ウイルス療法に加え,HCV 感染に由来するB 細胞のクローン性増殖に対する生物学的製剤の使用に対する理解も重要である. -
IgA血管炎(Henoch-Schönlein)
246巻1号(2013);View Description
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血管炎の国際分類,Chapel Hill 分類(通称CHCC1994)が改定され,CHCC2012 となり,eponym を一掃する考えが示された.ここからHenoch-Schönlein 紫斑病がIgA 血管炎(IgAV)へ,と疾患名が変更となった.さらに,IgA1 優位の免疫複合体性血管炎であること,その病因として,IgA1 ヒンジ部の糖鎖付加に減少があり,これを抗原としたIgG との免疫複合体を形成し,IgAV が発症することも記載された.また,IgAV とIgA腎症を類似疾患とみなす方針がもりこまれた.すなわち,IgAV とIgA 腎症を鑑別するよりむしろ同一範疇とする意見が提示されている.こうしたCHCC2012 の原著を十分にひもとくとともにIgA 血管炎の臨床症状,検査所見,治療を,皮膚科からの側面を意識してまとめた.皮膚症状では下肢のpalpable purpura が特徴的である.同時に腹部症状,遅れて腎症状が起こる.皮膚病理検査では真皮上中層に壊死性血管炎(白血球破砕性血管炎),罹患血管にIgA 沈着をみる.治療は副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬である. -
低補体血症性蕁麻疹様血管炎
246巻1号(2013);View Description
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蕁麻疹様血管炎(UV)は蕁麻疹様紅斑を呈し,皮膚真皮浅層にleukocytoclastic vasculitis を認める.蕁麻疹より長時間持続し,紫斑を伴い灼熱感や疼痛を伴うことがあり,色素沈着を残しうる.血清補体価により,normocomplementemic urticarial vasculitis(NUV)とhypocomplementemic urticarial vasculitis(HUV)に分類される.HUV は血中免疫複合体や,血管壁の免疫グロブリンや補体の沈着がみられ,Ⅲ型アレルギーでの免疫複合体病である.HUV は関節痛・関節炎,肝障害,腎障害,慢性閉塞性肺疾患などの全身症状を伴いうる.とくにhypocomplementemic urticarial vasculitis syndrome は,血清C1q 低下,抗C1q 抗体陽性を示し,全身症状をより高頻度に合併する.予後は基礎疾患や随伴する全身症状の有無・程度に左右される.軽症での治療にはインドメタシンやジアフェニルスルホンなども使用するが,臓器障害を伴う場合は副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤内服が使用される. - さまざまな血管を侵す血管炎
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ベーチェット病の血管炎
246巻1号(2013);View Description
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ベーチェット病(BD)の血管病変は男性に多く,病理学的には非肉芽腫性の非特異性の炎症像を呈し,病変も大小動静脈の多岐にわたる.また,血栓形成傾向の特徴をもち,動脈瘤,動静脈閉塞といった病態を形成し,2012 年のCHCC(Chapel Hill Consensus Conference)の新分類ではVVV(Variable Vessel Vasculitis)に分類されている.大血管の病変はBD の生命予後を規定する因子のひとつであるが,血管BD は特殊病型のなかでも症例数が少なく臨床成績の報告が少ない.本稿では,過去の文献上の報告と比較しながら,平成21年度に厚労省ベーチェット病班で施行した全国調査結果,ベーチェット病研究班内調査結果および自験412例の解析結果をもとに概説する.また近年のトピックスとして,ゲノムワイド関連解析(genome wide associationstudy:GVAS)の手法を用いて,HLA-B51,A26 などのヒト主要組織適合抗原以外にあらたに多くの疾患感受性遺伝子が発見され,今後,さらなる病態の解明,治療への応用が期待されているが,その詳細についても概説する. -
Cogan症候群の血管炎
246巻1号(2013);View Description
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血管炎症候群の新分類CHCC2012 において,Cogan 症候群(CS)は“さまざまな血管を侵す血管炎(variablevessel vasculitis)”に分類されている.同じカテゴリーに含まれるBehçet 病に比べるとかなり頻度が少ないものの,大動脈から小動脈まで傷害する血管炎症候群として重要であり,眼障害と前庭聴力障害は重篤であるため,早期から副腎皮質ステロイドを中心とした治療が望まれる疾患である. - 単一臓器を侵す血管炎
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皮膚に限局した血管炎
246巻1号(2013);View Description
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血管炎の多くは全身性で,臓器限局性の血管炎は少ない.皮膚においても全身性血管炎の部分症状としての血管炎は数多いが,経過を通じてきわだった全身症状を伴わない,皮膚に限局した血管炎はきわめて少ないと考えるべきである.しいていえば,皮膚型結節性多発動脈炎(CPN)と皮膚アレルギー性血管炎(Ruiter 型)の2疾患に限定されるといってもよい.しかし,CPN と結節性多発動脈炎(PN)との境界領域にある症例,あるいは移行例もあり,疾患の位置づけについてはいまだ議論が多い.また,皮膚アレルギー性血管炎(Ruiter 型)とIgA vasculitis(Henoch-Schönlein purpura)との鑑別もときに困難である.基本的鑑別点は,前者は螢光抗体法で罹患血管にIgA の沈着を認めないことである.しかし近年,皮膚アレルギー性血管炎(Ruiter 型)の定義,提唱された本疾患の特異性についての認識が乏しくなりつつあり,混乱を招いているのが実情である. -
中枢神経系血管炎
246巻1号(2013);View Description
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中枢神経系血管炎(CNS vasculitis)はCHCC2012 において,単一臓器に限局する血管炎に分類された.その臨床像はさまざまで,高度の白質病変を主体とするもの,腫瘍性病変を呈するもの,脳出血で発症するもの,などがある.診断には二次性脳血管炎を生じる感染症や全身性血管炎症候群を除外すること,さらに脳血管造影所見,脳生検所見が必要であり,組織所見が得られたものをdefinite とする.臨床症候としては頭痛の頻度が高いが,特異的な神経症候はない.致死的転帰をとる例も少なくないが,組織型によってはステロイドと免疫抑制剤による積極的治療で予後改善が期待できる.早期に本疾患を認識し,診断確定することが大切である. - 全身性疾患に伴う続発性血管炎
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関節リウマチに伴う血管炎
246巻1号(2013);View Description
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関節リウマチ(RA)に伴う血管炎(RV)は,RA の長い経過中,病勢の強い時期に生じることが多く,あらゆるサイズの血管に血管炎が生じる可能性がある.血管炎の発症頻度がもっとも高い皮膚病変には,真皮の細静脈炎を反映する触知性紫斑が多い.筋性動静脈炎を示す浸潤性や結節性病変,網状皮斑,深い潰瘍などの多彩な皮疹もみられる.低補体血症,リウマトイド因子高値,血管壁へのIgM およびC3 の沈着などの所見から,免疫複合体関連性血管炎が関与する.皮下組織の筋性動脈炎を反映する穿掘性潰瘍を呈する症例は重症化しやすい.一方,点状紫斑を呈し,真皮浅層に限局する細静脈炎の症例では予後がよい.動脈内膜の線維性肥厚,動脈硬化症による網状皮斑および潰瘍などの血管炎様臨床像を呈する血管炎を伴わない症例との鑑別は,生検による組織鑑別診断が必要である.抗CD20 抗体との併用は,重症の内臓合併症の治療と早期にステロイドを減量できる効果が期待される. -
全身性エリテマトーデス(SLE)に伴う血管炎
246巻1号(2013);View Description
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全身性エリテマトーデス(SLE)には10~15%に血管炎がみられ,その大部分は皮膚に生じる.よくみられる皮疹はリベド,紫斑,皮内結節,皮膚潰瘍,白色萎縮症,蕁麻疹様皮疹である.皮膚生検では真皮において白血球破砕性血管炎がみられ,血管壁に免疫グロブリンや補体の沈着を伴うことが多い.内臓では肺,消化管,神経系,腎などに血管炎を生じることがあるが,病理学的に証明されることは少ない.治療の主体はステロイドと免疫抑制薬による全身療法であり,皮膚潰瘍には適切な局所処置を行う.SLE に他の型の血管炎,すなわち蕁麻疹様血管炎,クリオグロブリン血症性血管炎,ANCA 関連血管炎が合併することもあり,これらは一種のオーバーラップとして扱われる.SLE ではACNA がしばしば陽性となるが,ANCA 陽性であることと血管炎の発症はかならずしもリンクしない. - 誘因の明らかな続発性血管炎
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肝炎ウイルス関連性血管炎
246巻1号(2013);View Description
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B 型肝炎ウイルス(HBV)やC 型肝炎ウイルス(HCV)は持続感染から肝硬変や肝癌の原因となることが知られているが,同時に宿主の免疫応答や肝炎ウイルスの肝細胞以外への感染を介して血管炎を含む多彩な肝外症状を引き起こす.とくに,HBV は結節性多発動脈炎,HCV はクリオグロブリン血症の誘因となり,これらはときにコントロール困難な血管炎となりうる.一方,肝炎ウイルスは腎障害との関連性が強いが,ウイルス間で腎障害のスペクトラムが異なり,HBV では膜性腎症,HCV では膜性増殖性糸球体腎炎の頻度が高い.肝炎ウイルス関連性血管炎の治療では抗ウイルス療法による肝炎ウイルスの排除やウイルス量の低下が重要であり,重症例では血管炎の病勢コントロールのためにステロイド,免疫抑制剤や血漿交換が併用される.近年のウイルス性肝炎の治療の進歩に伴い,肝炎ウイルス関連性血管炎の予後は改善しつつあり,またその頻度も減少している. -
薬剤誘発性血管炎
246巻1号(2013);View Description
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多くの薬剤が血管炎を起こす可能性がある.その発現には免疫複合体性や抗好中球細胞質抗体(ANCA)など免疫学的機序が関与し,多様な病型をとる.プロピルチオウラシルは高頻度にミエロペルオキシダーゼ(MPO)反応性ANCA を誘導し,一部に原発性ANCA 関連血管炎類似の小型血管炎を起こす.ミノサイクリンは薬剤誘発性ループスの原因薬剤であるが,抗核抗体とともにMPO-ANCA を誘導し,皮膚限局型結節性多発動脈炎など皮膚血管炎が多い.近年,腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬が皮膚血管炎,ANCA 関連血管炎,IgA 血管炎(旧名Henoch-Schönlein 紫斑病)など多彩な血管炎を誘発することが報告されている. -
癌関連性血管炎
246巻1号(2013);View Description
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2012 年に改訂された新Chapel Hill 分類ではあらたに二次性血管炎が加えられ,そのひとつとして癌関連性血管炎が含まれている.これまではおもに腫瘍随伴性血管炎の名称で報告されており,腫瘍発症前後1 年以内,あるいは増悪時や再発時に生じる血管炎としていることが多いが,その定義はまだ定まっていない.血管炎患者中5%前後を占めており,固形癌よりも造血系腫瘍との合併が多い.最多は骨髄異形成症候群(MDS)である.皮膚白血球破砕性血管炎など,皮膚が侵される頻度が高い.発症機序としては免疫複合体関連血管炎などが考えられるが,明らかにはされていない.担癌患者の多くは何らかの薬剤を摂取しており,また,感染を生じやすくなっているため,薬剤関連性血管炎や感染関連性血管炎の除外が重要である.
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