Volume 246,
Issue 6,
2013
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あゆみ 結核―病態解明と制御の新展開
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医学のあゆみ 246巻6・7号, 463-463 (2013);
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医学のあゆみ 246巻6・7号, 465-469 (2013);
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結核菌の特徴は細胞壁中の脂質の質と量の豊富さにある.ゲノムの解読により脂質の合成経路が明らかになると,それらの因子の病原性が明確になってきた.また,タイプⅦ分泌装置,PE/PPE ファミリーなど抗酸菌特有のシステムや結核菌-宿主細胞間における環状ヌクレオチドの働きも徐々に明らかとなり,同時に病原性因子としての側面も明らかになってきた.
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医学のあゆみ 246巻6・7号, 470-473 (2013);
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結核菌は飛沫核感染によって肺を侵入門戸としてヒトに感染する.感染者の約5%が速やかに結核を発症するが,感染者の約95%で無症候感染が成立する.ヒト型結核菌はヒトによく適応した寄生病原体であり,感染成立後,免疫系は菌を生体から駆逐できない.無症候感染は潜在性結核と定義されるが,その理由は5~10%で内因性再燃による病気が生じるからである.結核菌はヒトを住み処とし,ときに発症によって住み処を拡大しながら有史前より今日まで種を継いできた.現在,無症候感染者は人類の1/3 にのぼる.このような事実は病原体の源泉である潜在性結核の対処なしには結核を制圧できないことを意味しており,潜伏感染メカニズムの解明はそのよりどころとなる.潜伏菌は休眠と増殖のサイクルを繰り返し,単細胞生物でありながら長期間の生命維持を実現している.本稿では結核菌の潜伏感染のメカニズムについて,これまでの知見を概説する.
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医学のあゆみ 246巻6・7号, 474-478 (2013);
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結核菌は細胞内寄生性細菌であり,貪食されたマクロファージ内で増殖することができる.結核菌の細胞内増殖能はファゴリソソーム形成を阻害することによって獲得している.また,結核菌は細胞内寄生性細菌の排除に機能するオートファジー誘導も阻害している.著者らは小胞輸送を制御するRab GTPase に注目して,ファゴソーム成熟に機能するRab GTPase を同定した.これらのRab GTPase が結核菌ファゴソームに局在しないため,ファゴリソソーム形成が阻害されることを明らかにした.つぎに,アクチン結合性蛋白質であるCoronin-1a による結核菌へのオートファゴソーム形成阻害機構について解析した.Coronin-1a はファゴリソソーム形成を阻害することによって結核菌の細胞内増殖を支持していると考えられていた.Coronin-1aノックダウンマクロファージに感染した結核菌は,オートファゴソーム形成の標的になること,その結果,結核菌の増殖が阻害されることを明らかにした.
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医学のあゆみ 246巻6・7号, 479-483 (2013);
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結核菌は多量の脂質を含有した疎水性の細胞壁をもち,酸アルコール処理に対する抵抗性,すなわち抗酸性を示す.細胞壁の構築にとりわけ重要な脂質はミコール酸とよばれる結核菌特有の長鎖脂肪酸であり,多糖層・ペプチドグリカンと共有結合して細胞壁骨格を形成するとともに,トレハロースやグルコースと結合した遊離型ミコール酸糖脂質として細胞壁表層に発現する.宿主免疫系との接点に存在するこれらのミコール酸糖脂質は,菌の生育環境によりダイナミックに変容し,宿主自然免疫系からのエスケープを成立させる.一方,宿主獲得免疫系は宿主内であらたに生合成されたミコール酸糖脂質を標的にした免疫応答を誘起する.また最近,休眠結核菌に特有のミコール酸含有脂質とそれに対する免疫応答の存在が明らかになってきた.これらの研究から,脂質免疫を基盤にした結核制御の新戦略が構築されつつある.
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医学のあゆみ 246巻6・7号, 484-488 (2013);
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細胞内寄生性細菌である結核菌(Mycobacterium tuberculosis)による感染症である結核は世界中に蔓延しており,結核をコントロールする新規ワクチンの開発には結核菌に対する防御免疫とその制御に関する情報が重要である.結核に対する感染防御には獲得免疫,とくにT 細胞に依存した細胞性免疫が重要な役割を果たす.CD4 陽性1 型ヘルパーT(Th1)細胞の産生するインターフェロン(IFN)-γによるマクロファージ活性化の重要性は,ヒトのマイコバクテリア感染への感受性遺伝子の解析からも確認されている.また近年では,Th1 細胞以外のCD4 陽性T 細胞サブセットであるインターロイキン-17 産生性T(Th17)細胞および濾胞ヘルパーT(Tfh)細胞の防御免疫への関与が示唆され,またCD8 陽性T 細胞の重要性も明らかとなった.さらに,T 細胞応答を抑制する制御性T(Treg)細胞が抗結核免疫応答を抑制する可能性も報告されている.本稿ではヒトでの所見に注目しながら,近年の結核感染に対する獲得免疫応答の知見をまとめた.
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医学のあゆみ 246巻6・7号, 489-494 (2013);
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宿主に結核菌を感染させると強い防御免疫が発現し,菌の増殖を抑えることはできる.しかし,防御免疫が発現しても抵抗性の強い結核菌を体内から排除することは困難である.その結果として結核菌の持続的な感染が過剰な免疫応答を誘発し,結核に特徴的な肉芽腫内部の空洞化や感染局所周辺の重篤な組織傷害を招く.したがって,結核に対する感染防御を効果的に発揮するためには,防御免疫を適度に制御するための抑制性機序が重要となる.最近,活性化T 細胞に抑制性シグナルを伝達するレセプターとしてprogrammed cell death1(PD-1)の存在が明らかにされた.このPD-1を介したシグナルは,結核菌感染後の急性期の肺においてTh1型CD4+T 細胞のIFN-γ産生を抑制し,炎症反応の増大を適度に抑えていることが明らかにされている.また,PD-1 シグナルを阻害することによりBCG のワクチン効果を増強することが示された.これらの事実から,結核に対する防御免疫の発現増強あるいはその制御にはPD-1 分子が重要な役割を担っているものと考えられる.
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医学のあゆみ 246巻6・7号, 495-501 (2013);
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開発途上国ばかりでなく先進工業国も含めた世界的な結核の蔓延が続くなか,世界保健機関(WHO)は結核非常事態宣言を発し,DOTS による結核対策を推し進めるとともに,新規結核ワクチンの開発研究を推進している.新しい結核ワクチンをめぐる動きが世界的に活発となり,WHO が中心となってより効果の高い次世代結核ワクチンの開発を進めてきた.この数年はビルゲイツ財団やアエラスのような非営利民間団体を中心に,結核ワクチン開発に関する各種シンポジウムが毎年のように開かれるようになった.この十数年の基礎研究の結果,リコンビナントBCG ワクチン,弱毒化結核菌ワクチン,サブユニットワクチン,DNA ワクチンなどの候補ワクチンが開発された.感染そのものを阻止し,あるいは感染後の病気の発症を抑制する新しい予防ワクチンの候補のなかから臨床試験に到達しつつあるいくつかの候補ワクチンとしてリコンビナントBCG,弱毒化した結核菌変異株,サブユニットワクチンなど,新規結核ワクチン開発の動きを述べてみたい.
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医学のあゆみ 246巻6・7号, 502-506 (2013);
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肺結核は比較的頻度が高く,感染のおそれもある,もっとも重要な結核である.その診断は典型的な症状と胸部画像で疑い,喀痰中から結核菌を検出することで確定する.活動性肺結核の典型的HRCT 所見として,tree in bud appearance(木の芽様所見)が有名である.喀痰はかならず塗抹と培養検査に提出する.培養された菌が結核菌かどうか同定し,結核菌であれば薬剤感受性検査に提出する.イスコチン(INH)+リファンピシン(RFP)+エタンブトール(EB)またはストレプトマイシン(SM)+ピラジナマイド(PZA)を2 カ月間,その後INH+RFP を4 カ月間投与することが現在,結核の標準療法となっている.通常の結核であればこの治療法で98~99%完治可能である.薬剤耐性結核菌は突然変異で生じるが,実質的な単剤治療が行われていなければ,耐性菌が増殖することはない.薬剤耐性結核は間違った治療でつくられるのである.INH とRFP 両薬剤耐性以上の結核を多剤耐性結核とよぶ.その治療は残存有効薬の多剤併用に,可能なかぎり外科療法を加えることで行う.しかし,満足できる治療成績が得られないため,現在複数の新薬の開発が進行中である.
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連載
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Brain-Machine Interface(BMI)の現状と展望 11
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医学のあゆみ 246巻6・7号, 513-518 (2013);
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ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)とは,脳の信号を機械につないだり直接操作したりすることで失われた身体の機能を補う革新的技術である.失われた運動機能の再建をめざす“運動出力型BMI”の臨床応用が先行してきた一方で,発話や書字が困難となった患者やその家族にとって意思伝達の障害はもっとも深刻な因子であり,物体の視覚的イメージに関する脳情報を大脳視覚連合野の神経活動から読み解いて伝える“認知型BMI”の開発とその動作原理の解明はきわめて重要なテーマである.サルを対象にした動物実験と,ヒトを対象とした臨床研究を多元的に進めることで,視覚連合野からの皮質脳波多点記録により視覚提示している画像カテゴリーに選択的な神経活動がみられることが現在明らかになりつつある.広範囲な大脳ネットワークの活動に分散した脳情報を解読し,思い浮かべただけで自由に文字やアイコンを操作できる,低侵襲BMI の実現への第一歩が踏み出された.
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フォーラム
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医学のあゆみ 246巻6・7号, 519-521 (2013);
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パリから見えるこの世界 19
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医学のあゆみ 246巻6・7号, 522-526 (2013);
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TOPICS
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脳神経外科学
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医学のあゆみ 246巻6・7号, 507-508 (2013);
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消化器内科学
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医学のあゆみ 246巻6・7号, 508-510 (2013);
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皮膚科学
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医学のあゆみ 246巻6・7号, 510-511 (2013);
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