Volume 249,
Issue 6,
2014
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あゆみ 糖尿病と認知症―アルツハイマー病を中心に
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医学のあゆみ 249巻6号, 509-509 (2014);
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医学のあゆみ 249巻6号, 511-515 (2014);
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近年,欧米の疫学調査を中心に糖尿病と認知症の関係が報告されているが,結論は得られていない.福岡県久山町で継続中の精度の高い疫学調査(久山町研究)の成績では,時代とともに糖代謝異常の有病率が上昇し,最近の40 歳以上の男性では55%,女性では36%に達していた.また,65 歳以上の高齢者では時代とともに認知症,とくにアルツハイマー病(AD)の有病率が人口の高齢化を超えて上昇した.高齢者住民の追跡調査では,糖尿病はとくにAD 発症の有意な危険因子であった.血糖レベル別にみると,空腹時血糖レベルと血管性認知症(VaD)およびAD の発症リスクとの間には明らかな関連は認めなかったが,負荷後2 時間血糖レベルの上昇とともに両病型の発症リスクが有意に上昇した.以上より,糖尿病を含む糖代謝異常の増加がわが国の認知症増加のおもな要因であることが示唆される.
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医学のあゆみ 249巻6号, 517-521 (2014);
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糖尿病はさまざまな機序を介して認知機能を低下させ,認知症の発症リスクを高める.これを反映して糖尿病患者では,核磁気共鳴画像法(MRI)で海馬や側頭葉・大脳半球の萎縮をきたし,深部白質病変やラクナ梗塞が出現しやすい.単一光子放射断層撮影(SPECT)やポジトロン断層法(PET)でも血流や代謝の低下所見を認め,ときにはアルツハイマー病(AD)の代謝低下パターンに類似した所見を示すこともある.糖尿病を伴うADでは血管性病変や代謝性病変などが同時に加わることから,やや非典型的な脳画像所見を示しやすい.著者らは,AD 病理や血管性病変の関与よりも糖代謝異常との関連が推測される一群を“糖尿病性認知症”とよぶべきであると提唱しているが,本症は前頭葉を含む大脳皮質の萎縮は明瞭であるが海馬領域の萎縮は軽度で,SPECT では頭頂側頭葉の有意な血流低下所見を認めない.PET でもアミロイドの集積がないか限局的であることが多く,AD とは異なる背景病理が推測されるため,診断や治療において留意する必要がある.
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【なぜ糖尿病患者にアルツハイマー病が高率に発症するのか】
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医学のあゆみ 249巻6号, 523-527 (2014);
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糖尿病は孤発性アルツハイマー病(AD)の危険因子として注目を集めている.AD の初期病変である老人斑の形成は,発症の20 年以上前から脳実質で起こる.したがって,老人斑形成と,その後の神経変性に至るそれぞれの過程を区別し,糖尿病が両過程にどのように影響するかを精査することは非常に重要である.近年,ヒトおよびモデルマウスを用いた研究から,耐糖能の異常が老人斑形成を促進することが明らかになりつつある.“先制医療”の重要性を考慮すると,耐糖能の異常と老人斑形成とを結びつける詳細な機序の解明は必要不可欠である.本稿ではAD モデルマウスを用いた知見をもとに,とくに老人斑形成と耐糖能との関連性について,詳細な分子メカニズムに焦点を当てて考察したい.
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医学のあゆみ 249巻6号, 529-533 (2014);
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アルツハイマー病(AD)は大脳皮質における老人斑の蓄積を病理学的特徴とする進行性の神経変性疾患である.近年,2 型糖尿病とAD との関連が明らかになりつつあるが,その背景にある病態の解明をめざし,モデル動物を用いた研究が精力的に進められてきた.その結果,糖尿病がアミロイド蓄積や認知機能障害といったAD 病態を促進するという,ヒトの臨床研究で得られた結果がマウスにおいても再現され,その分子メカニズム解明の契機となる知見がもたらされた.それに加えて,両疾患に共通の分子病態として脳のインスリン作用の障害が示唆されている.これらの結果を受け,脳のインスリンシグナルの異常とAD という観点から,既存の糖尿病治療薬のAD 治療への応用が期待されている.これまでにAD モデルマウスを用いた複数の検討において,PPARγアゴニストやGLP-1 受容体作動薬の有効性が示されており,あらたなAD 治療戦略につながる可能性が見出されている.
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医学のあゆみ 249巻6号, 535-538 (2014);
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モデル動物を用いた一連の研究およびヒトにおける遺伝子解析から,インスリン様シグナルの機能欠失が糖尿病をはじめとする内分泌・代謝疾患を誘導することが知られている.一方で最近の研究から,脳のインスリン様シグナルの欠損は寿命を延長させ,アルツハイマー病(AD)モデルマウスの病態を改善させることが判明し,末梢組織とは異なった本シグナルの中枢神経系特異的な欠失による抗脳老化・神経保護作用の存在が示唆されている.インスリン様シグナルの機能障害を伴う糖尿病はAD のリスクファクターとして認知されているが,脳のインスリン様シグナルはAD のあらたな治療標的として期待される.
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医学のあゆみ 249巻6号, 539-543 (2014);
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2011 年7 月,厚生労働省は従来の4 大疾病である“癌,脳卒中,心臓病,糖尿病”にあらたに“精神疾患”を加えて,“5 大疾病”とする方針を発表した.うつ病や統合失調症,認知症などの精神疾患の患者は年々増加しており,従来の4 大疾病とともに重点的にその対策に取り組むことが不可欠と判断したためと思われる.認知症は高齢者においてもっとも頻度の高い疾病のひとつであり,とくにアルツハイマー病(AD)は認知症の主要な原因疾患として,高齢化社会の到来とともに社会問題としても注目されている.AD の原因としては“アミロイド仮説”が広く受け入れられている.しかし,家族性AD に認められるような遺伝子変異はごく少数の家系にかぎられており,急増するAD を説明することはできない.そこには遺伝素因に加え,AD の発症や進展を促進する環境要因の存在が深く関与していると考えられる.本稿では,メタボリックシンドローム(MetS)の病態とAD に着目し概説したい.
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医学のあゆみ 249巻6号, 545-550 (2014);
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糖尿病ではなくとも平均血糖値が高めの人は,認知症の発症率が高くなることが明らかとなっている.糖尿病という疾患の存在よりも高血糖そのものがアルツハイマー病(AD)を含む認知症発症に寄与する可能性があり,そのメカニズムが注目されている.高血糖が持続することによる終末糖化産物(AGE)の増加とその結果引き起こされる血管内皮障害,インスリン抵抗性,低血糖イベントの合併などがその原因と考えられる.軽度認知障害から認知症への移行率は糖尿病よりもむしろ糖尿病前症で高いことも報告されており,認知症への進展予防という観点からは,“糖尿病”の管理よりも“高血糖”の管理が優先される.高血糖とAD の関連が注目されがちであるが,報告によっては血管障害を介した認知症の増加を示唆する報告もあることから,認知症の背景病態のいかんによらず,脳血管保護をめざした高血糖管理が望まれる.
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連載
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エコヘルスという視点 5
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医学のあゆみ 249巻6号, 557-563 (2014);
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疫学分野でもエコの概念が広がりつつあり,エコ疫学(ecoepidemiology)として提唱されている.曝露から疾病という一方向の因果関係についての一般化を追求してきた“疫学”に対する新しい方向性として,健康(人間)を取り巻く複雑な環境の影響とその生態学的な関連を考慮しつつ,集団における疾病の成立ちを解明しようとする考え方である.生活習慣病など長い経過を経て発症する疾患に対して発達した概念であるが,環境の変化に影響を受けやすい開発途上国における健康問題も気候,環境,文化,歴史などさまざまな要素が複雑にかかわっていることから,その概念を応用することが可能である.しかし,開発途上国では地域住民登録や医療施設などでの情報システムが脆弱なことから,生態学的な複雑な関係を明らかにするために必要な情報量が不足する.本稿では,エコ疫学と開発途上国においてそれを実現するために必要とされる情報収集システムの最新の動向について解説する.
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フォーラム
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パリから見えるこの世界 28
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医学のあゆみ 249巻6号, 565-569 (2014);
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第78 回日本循環器学会学術集会レポート 2
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医学のあゆみ 249巻6号, 571-572 (2014);
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J 波症候群という呼称は,phaseⅡリエントリーにより致死的心室性不整脈を発症させる心電図学的疾患概念として2004 年にはじめて記載され,2008 年にはHaïssaguerre らにより早期再分極(early repolarization:ER またはJ 波)と突然死の関連性について報告がなされて注目された.心電図QRS 終末期に出現するノッチまたはスラーを有する所見は,古くは低体温で出現するOsborn 波,健康な若年者にみられる早期再分極とみなされていた.これまでに,J 波の存在と突然死との明確な因果関係を示すに至っていない.疫学的研究から特発性心室細動,Brugada 症候群などprimary electricaldisease との関連性が話題となっている.本シンポジウムは,このJ 波症候群の疫学的・電気生理学的背景よりその本質を明らかにすべく企画された.
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ゲノム人類学の最先端 7
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医学のあゆみ 249巻6号, 573-575 (2014);
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TOPICS
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 249巻6号, 551-552 (2014);
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循環器内科学
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医学のあゆみ 249巻6号, 552-554 (2014);
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神経内科学
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医学のあゆみ 249巻6号, 554-556 (2014);
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