医学のあゆみ
Volume 250, Issue 2, 2014
Volumes & issues:
-
あゆみ Structural heart diseaseの治療の進歩
-
-
- 【先天性心疾患】
-
心房中隔欠損症へのカテーテル治療の現況と課題
250巻2号(2014);View Description Hide Description心房中隔欠損症(ASD)は成人ではもっとも頻度が高い先天性心疾患であり,その頻度も0.1%と少なくない.ASD は頻度の高い順に,①二次孔欠損,②一次孔欠損,③静脈洞欠損,④無天蓋冠状静脈洞の4 型に分類される.若年者の多くは無症状であるが,中高年になり息切れ,浮腫,心房細動を生じる.ASD の治療適応は肺体血流比で1.5 以上とされている.従来は開胸手術しか治療の選択肢がなかったが,昨今では二次孔欠損型のASD では大多数の症例(80~90%)でカテーテル治療が可能である.日本では2005 年に開始され,約5,000 名の患者がその恩恵に預かっており,特筆すべきことに死亡例もなく安全に行われている.本稿では,ASD のカテーテル閉鎖術の現況と課題について解説する. -
卵円孔開存症の臨床的意義と治療
250巻2号(2014);View Description Hide Description卵円孔開存(PFO)は一般健常成人の約25%に認められる心内構造である.右房への流入血流の増大や右房圧が左房圧を越えた場合には右左短絡を生じ,血栓がPFO を通過すると脳梗塞をはじめとする塞栓を引き起こす.片頭痛,潜水病,高山病などとの関連も報告されている.若年成人の奇異性脳塞栓患者において高い頻度でPFO が認められたことから,脳梗塞の原因としてのPFO の重要性が認識されるようになり,奇異性脳塞栓の二次予防として,PFO に対するカテーテル閉鎖術の有効性が検討されている.しかし,カテーテル治療と薬剤治療の無作為比較試験においては,脳梗塞再発予防に対するカテーテル治療の優越性は実証されていない.PFO がありふれた心内構造であり,病因を検討する際に偶然紛れ込む可能性が存在するため,病因と特定するには慎重な評価が必要である.現在,片頭痛に対するPFO 閉鎖の有効性を検討する治験も進行している. - 【後天性心疾患】
-
経皮的左心耳閉鎖術の可能性とその実際
250巻2号(2014);View Description Hide Description左心耳はその複雑な構造たるがゆえに,心原性脳塞栓症の原因となりうる.脳卒中,とくに脳梗塞による死亡および後遺症はいまだ解決すべき深刻な問題であり,とくに心原性脳塞栓症はより重症で,その原因の多くを占める心房細動は,高齢化社会を迎えるわが国において年齢とともに増加している.2009 年のACC & i2Summit にてPROTECT AF(WATCHMAN Left Atrial Appendage System for Embolic PROTECTion inPatients With Atrial Fibrillation)試験の結果が発表され,これまでのいくつかのデバイスによる左心耳閉鎖法の成績が報告されていたものの現実味をおびていなかったこの治療法が,一躍クローズアップされることとなった.本稿では,日本でいまだ導入されてはいないが,ヨーロッパを中心に施行されている同治療方法の可能性とその実際について概説する. -
経カテーテル的大動脈弁植込み術における術前CT画像評価
250巻2号(2014);View Description Hide Description2013 年10 月に,ハイリスク大動脈弁狭窄症に対するSAPIEN XT を用いた経カテーテル的大動脈弁植込み術(TAVI)が保険償還となった.TAVI を安全に施行するうえで心電図同期マルチスライスCT(MSCT;ECG-gated)を用いた弁輪径計測,石灰化病変の場所,その程度,大きさなどについても詳細な検討が必要となり,わが国の患者に多いことが予測されるTAVI 時の自己弁によって生じる冠動脈閉鎖やデバイスごとの解剖学的制限を理解したCT アセスメントが重要となる.アプローチ選択においても実際の血管径のみならず,石灰化病変,粥状硬化性病変の評価の点でMSCT(thin slice:1 mm)での血管評価は非常に優れているとされ,アプローチ部位から大動脈弁までのアクセスルート間の粥状硬化性病変の有無およびその重症度,石灰化病変の有無,蛇行,瘤化病変の有無など,その患者に合ったアプローチを選択することが重要である.安全なTAVI を行うためには上記に留意のうえ,その適応・対応策をmultidisciplinary に考慮することが不可欠である. -
大動脈弁狭窄症への治療選択と成績の評価
250巻2号(2014);View Description Hide Description先進諸国では社会の高齢化が進んでおり,そのなかでも日本は今後数十年でその傾向がいっそう進むとされる.重症大動脈弁狭窄症の原因として高齢者にみられる弁硬化が最多であるため,高齢化が進むと大動脈弁狭窄症患者の数が増えることが観察研究で示されている.一方,高齢自体もそうであるが,加齢に伴って併存症も増えるため,高齢者は弁膜症手術のよい(低リスクの)候補とはいえない.以上のような経緯から,世界的に外科的大動脈弁置換術の代替治療としての経カテーテル大動脈弁植込み術(TAVI)が急速に普及しており,とくに手術不能例(inoperable patients)や手術ハイリスク例(high surgical risk patients)における役割が確立されつつある.近年におけるTAVI 治療の背景と,その成績,展望を示す. -
僧帽弁閉鎖不全症に対する経カテーテル治療
250巻2号(2014);View Description Hide DescriptionMitraClip システムによる経皮的僧帽弁形成術は,僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対する新しい低侵襲な治療法である.本治療法は外科手術のAlfieri 法を経カテーテルにて実現した治療法であり,MR の起源となっている僧帽弁の部位にclip を留置し,前尖と後尖を繋ぎ合わせることによって新しいcoaptation line を作成しMRの改善をはかる.現在,アメリカおよびヨーロッパでは多くの臨床成績が報告されるとともに,ガイドラインにも掲載され,MR に対する標準的治療のひとつとして認識されている.わが国でも臨床治験の開始が期待されており,本治療法の円滑な導入に向け各施設における機能的なHeart team の重要性が増してくると考えられる.
-
-
連載
-
- エコヘルスという視点 11
-
都市の健康問題とエコヘルス
250巻2号(2014);View Description Hide Description都市の形成は経済の発展や人びとの生活の質の向上などに貢献してきた一方で,環境汚染や生活様式の変化などを介して健康への悪影響ももたらしてきた.本稿では,モノ・エネルギー・そしてヒトの移動という都市の生態系のプロセスに注目することで,都市による負の健康影響のメカニズムを説明する.また,バングラデシュの首都ダッカにおけるヒートアイランド現象の問題を事例として取りあげ,その現状や解決策について論じる.
-
速報
-
-
-
【NEW】 輝く日本人による発見と新規開発本 1
-
-
-
フォーラム
-
-
- パリから見えるこの世界 30
-
- ゲノム人類学の最先端 13
-
-
-
TOPICS
-
- 生化学・分子生物学
-
- 免疫学
-
- 神経内科学
-