Volume 250,
Issue 6,
2014
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あゆみ マイトファジー―基礎から疾患との関連まで
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医学のあゆみ 250巻6・7号, 457-457 (2014);
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医学のあゆみ 250巻6・7号, 459-465 (2014);
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PINK1 とParkin は遺伝性劣性パーキンソン症候群の原因遺伝子産物であり,PINK1 はプロテインキナーゼ,Parkin は基質にユビキチンを付加するユビキチン連結酵素(E3)である.ミトコンドリアの膜電位が低下すると(つまりミトコンドリア機能が異常になると)PINK1 とParkin がそこに集積し,PINK1 依存的にParkinが活性型E3 に変換されてミトコンドリア外膜上の基質をユビキチン化する.その結果,マイトファジーなどの機構を介して異常ミトコンドリアが分解に導かれると考えられている.しかし,この過程においてPINK1がParkin を活性化する具体的なメカニズムは謎であった.2014 年に著者らは,ミトコンドリアの膜電位が低下するとPINK1 によってユビキチンがリン酸化されること,このリン酸化ユビキチンが未同定であったParkinの活性化因子であることを見出した.長い間不明であった“PINK1 がParkin のE3 酵素活性を制御する仕組み”の全貌がようやく明らかになりつつある.
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医学のあゆみ 250巻6・7号, 467-472 (2014);
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近年,特定の蛋白質やオルガネラを隔離膜とよばれる脂質二重膜で選択的に囲み込み,リソソームで分解する選択的オートファジーが知られるようになってきた.若年性パーキンソン病の原因遺伝子産物であるParkinとPINK1 が膜電位の低下したミトコンドリアの選択的な分解(マイトファジー)にかかわることが示され,選択的オートファジーのなかでもマイトファジーの研究が躍進している.Parkin の上流で機能するPINK1 は,通常はミトコンドリアへ輸送された後,速やかに分解されるが,ミトコンドリアの膜電位が低下するとPINK1は分解経路から免れ,ミトコンドリア外膜に蓄積する.これがParkin を不良ミトコンドリアへとリクルートし,マイトファジーを誘導する.本稿ではまず,ミトコンドリア移行シグナルをもつキナーゼであるPINK1のミトコンドリア内膜の膜電位に依存した分解と蓄積について詳細な分子機構が明らかになったので紹介したい.さらに,マイトファジーにかかわるRab 蛋白質の制御機構についても最新の知見を紹介する.
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医学のあゆみ 250巻6・7号, 473-478 (2014);
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パーキン依存的マイトファジーの過程では,さまざまなミトコンドリア外膜蛋白質がユビキチン化を受け,プロテアソームにより分解されることが観察されている.したがって,パーキンはミトコンドリア丸ごとの分解とともに,外膜蛋白質の品質管理をも担っているといえる.一方,このプロテアソーム依存的外膜蛋白質分解がマイトファジーに必須であるかは議論が分かれている.外膜蛋白質はプロテアソームとマイトファジー両者により分解されうるため,マイトファジーを解析する場合マトリックス蛋白質かミトコンドリアDNA の定量をすることが重要である.今後,マイトファジーとプロテアソームの2 つの経路がどのようにミトコンドリアの品質管理やパーキンソン病の病態形成に関与しているのか,それぞれの分解経路を見分けて研究を進めていくことが必要といえる.
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医学のあゆみ 250巻6・7号, 479-482 (2014);
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ミトコンドリアDNA(mtDNA)は多くの有性生物種において母方(片親)からのみ選択的に遺伝することが知られており,この遺伝様式は母性(片親)遺伝とよばれている.母性遺伝が成立するためには受精前後に精子ミトコンドリアあるいはそのmtDNA が選択的に除去される必要があり,その詳細なメカニズムが近年明らかとなってきた.モデル生物である線虫C. elegans では受精直後に受精卵に侵入してきた精子周辺にオートファジーが誘導され,精子ミトコンドリアとそのmtDNA を選択的に分解,除去することが判明している.本稿では,マウスなどその他の生物種での最近の知見と合わせ,精子ミトコンドリアとそのmtDNA の運命について紹介する.
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医学のあゆみ 250巻6・7号, 483-487 (2014);
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マイトファジーは真核生物に広く存在する仕組みであり,ミトコンドリアの質・量管理機構として働くと考えられている.出芽酵母においてはマイトファジーは酸化ストレスが引き金となって誘導される.まず,膜貫通型蛋白質Atg32 が強く発現し,ミトコンドリア表面に局在する.Atg32 はAtg8 およびAtg11 をミトコンドリアへリクルートし,オートファゴソーム様の膜構造(マイトファゴソーム)の形成を促進する.この際,蛋白質キナーゼCK2 はAtg32 をリン酸化し,Atg11 との相互作用を安定化することでマイトファジーを正に制御している.最近,マイトファゴソーム形成の場はミトコンドリアの分裂部位や小胞体とミトコンドリアの連結部位であると示唆された.酵母マイトファジーはミトコンドリアの量を調節しており,その破綻はミトコンドリアゲノムの不安定性を引き起こす.Atg32 がつかさどる分解の基本原理は哺乳類細胞のレセプター介在性マイトファジーにおいてもよく保存されている.
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医学のあゆみ 250巻6・7号, 489-494 (2014);
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マイトファジーはミトコンドリアを選択的にオートファゴソームに取り込み,リソソームによって分解する選択的オートファジーの一形態である.バルクオートファジーが細胞質にある蛋白質やオルガネラをランダムにオートファゴソームに取り込むのに対して,選択的オートファジーでは特定の分解基質を選択的にオートファゴソームに取り込む.オートファジーが基質選択性をもつためには,オートファジーアダプター蛋白質の介助が必要である.近年,オートファジーアダプターによる選択的オートファジー制御の分子機構が明らかとなってきた.マイトファジーにおいてはユビキチン結合型アダプターのほかに,ミトコンドリア局在型アダプターを介した経路も知られており,複数のマイトファジー制御機構が存在する.
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医学のあゆみ 250巻6・7号, 495-499 (2014);
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哺乳類オートファゴソーム形成は,細胞質内に複数存在する小胞体膜上から開始される.ミトコンドリアを含むオートファゴソームはマイトファゴソームとよばれる.近年の研究から,オートファゴソームは選択的に不良ミトコンドリアを取り囲むことが発見され,さらにその識別にかかわる因子についても明らかとなってきた.しかし,膜構造体であるオートファジー構造体がいつどのようにして巨大な細胞内小器官であるミトコンドリアへ近づき,取込みを行うのか不明であった.著者らは不良ミトコンドリアがオートファゴソーム内へと輸送されるのではなく,まずLC3 非依存的に不良ミトコンドリアがオートファゴソーム形成部位に局在して初期ATG によって認識され,つぎにLC3 依存的にマイトファゴソーム内部に取り込まれることを見出した.本稿では,マイトファジーにおける不良ミトコンドリアの2 段階認識機構について概説する
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医学のあゆみ 250巻6・7号, 500-504 (2014);
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中脳黒質ドパミン神経細胞の進行性細胞死を特徴とするパーキンソン病分子病態において,2003 年以降にオートファジー(とくにマクロオートファジー)の重要性が報告されている.さらに,2008 年に家族性パーキンソン病原因遺伝子産物であるparkin とPINK1 によるミトコンドリア品質管理機構マイトファジーの制御機構が明らかになり,2014 年現在もマイトファジー分子機構はPD 分子病態の重要なトピックとなっている.本稿では,1983 年より提唱されてきたPD 分子病態におけるミトコンドリア障害仮説の歴史的変遷をまとめ,マイトファジー(分子機構については他稿に譲る)異常がPD 臨床像におけるmain player であるかを,おもに臨床像・病理像を踏まえて議論する.
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医学のあゆみ 250巻6・7号, 505-510 (2014);
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p53 標的遺伝子として同定されたMieap 遺伝子のコードする蛋白質は,ミトコンドリア品質管理にきわめて重要な役割を果たしている.そのメカニズムはリソソーム蛋白質を介する現象と考えられるが,従来のオートファジーとは異なっている.Mieap は活性酸素種を高いレベルで産生する不良なミトコンドリアに対し,リソソーム蛋白質のミトコンドリア内への集積を誘導して酸化修飾蛋白質を除去することによって修復するか(MALM),あるいは液胞様の構造物を形成し,きわめて品質の劣化したミトコンドリアを直接この構造物内へ取り込んで分解して排除するか(MIV)の,いずれかの機能によってミトコンドリアの品質を健常に維持する.このMieap によるミトコンドリアの品質管理機構はヒトがんにおいて高頻度に不活性化されており,結果として生じるがん細胞への不良なミトコンドリアの蓄積ががんの発生・浸潤・転移に大きな意義をもつ可能性が高い.
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連載
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エコヘルスという視点 14
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医学のあゆみ 250巻6・7号, 517-524 (2014);
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メコン川流域において約10 万人の患者がいるとされるタイ肝吸虫症に関して,宿主となるBithynia 貝およびコイ科魚類の生息状況をラオス南部の水田地帯で調査した.とくに近年進む灌漑システムの整備と二期作への転換など水田環境の近代化とタイ肝吸虫症のリスクとのかかわりに着目した.第一宿主であるBithynia 貝は,水田付近の用水路がコンクリート化されることで減少する一方,二期作の拡大があらたな繁殖機会を増している.二期作の拡大は今後,Bithynia 貝の個体群動態に影響を及ぼす可能性があり,注意が必要である.また,二期作水田は河川氾濫源の後背湿地にある低地帯に分布し,タイ肝吸虫が寄生する高リスク魚種の生息場所でもある.さらに,雨季の後半には村人はそれらの魚を捕獲する.タイ肝吸虫の卵,Bithynia 貝,コイ科魚類,そして人間が時空間的に重なるホットスポットを明示化し,地域に根ざした解決法を探ることがエコヘルスからの課題である.
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輝く 日本人による発見と新規開発 4
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医学のあゆみ 250巻6・7号, 525-528 (2014);
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フォーラム
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パリから見えるこの世界 31
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医学のあゆみ 250巻6・7号, 529-533 (2014);
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書評
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医学のあゆみ 250巻6・7号, 535-535 (2014);
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TOPICS
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 250巻6・7号, 511-512 (2014);
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免疫学
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医学のあゆみ 250巻6・7号, 512-513 (2014);
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神経内科学
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医学のあゆみ 250巻6・7号, 513-515 (2014);
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