Volume 250,
Issue 8,
2014
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あゆみ 妊娠高血圧症候群をめぐる最近の話題
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医学のあゆみ 250巻8号, 539-539 (2014);
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医学のあゆみ 250巻8号, 541-545 (2014);
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◎日本における妊娠高血圧症候群のリスク因子のうち,母体年齢が40 歳以上,糖尿病,本態性高血圧,腎疾患,甲状腺疾患の既往,多胎妊娠は海外でのリスク因子と共通していたが,母体年齢が35~39 歳,初産婦,喫煙,女児妊娠は日本独自のリスク因子であった.また妊娠高血圧症候群を,①高血圧のみの妊娠高血圧(GH)と,②高血圧と蛋白尿を有する妊娠高血圧腎症(PE)の2 群に分けて検討すると,両者に共通したリスク因子は海外と同様に40 歳以上,初産,糖尿病,腎疾患既往であった.妊娠高血圧のみのリスク因子として,母体年齢が40 歳以上,妊娠高血圧腎症のみのリスク因子として初産,腎疾患の既往があげられた.また,妊娠高血圧に比べて妊娠高血圧腎症は,妊娠32 週までに発症する早期発症型,初産が多く,重症高血圧と重症蛋白尿を呈する最重症型がもっとも多く38.5%を占めていた.このように妊娠高血圧と妊娠高血圧腎症との間ではリスク因子が明らかに異なっていることから,別の概念としてとらえて管理していくことが重要である.
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あゆみ 妊娠高血圧症候群をめぐる最近の話題
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医学のあゆみ 250巻8号, 547-553 (2014);
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◎妊娠高血圧症候群は母子ともに予後不良な疾患である.その病因・病態として2 ステップセオリーが提唱されている.まず,胎盤形成の際,絨毛外トロホブラスト(EVT)の子宮筋層内やラセン動脈へのリモデリング不全によりラセン動脈が妊娠後に十分に拡張できず,絨毛間腔への血流減少,hypoxia を生じる(ステージ1).その後,絨毛間腔に血管新生を阻害するsFlt-1,sEndoglin が大量に分泌され,新生血管の阻害,血管内皮障害を引き起こす.同時に胎盤由来のaponecrosis 断片により,炎症反応や免疫担当細胞の活性化,補体や凝固系の活性化を生じ,血管内皮障害を引き起こし,高血圧,蛋白尿を発症する(ステージ2).現在のところ,効果的な治療法は児の早期娩出に限られているが,マウスのモデルではスタチンの有用性が指摘されており,ヒトでも体外循環を用いたsFlt-1 除去法が臨床的に試みられるようになってきた.
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医学のあゆみ 250巻8号, 555-560 (2014);
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◎ 2005 年までの総説では,妊娠高血圧腎症(PE)の発症予知に有用な検査法はないとされていた.2003 年にsoluble fms-like tyrosine kinase 1(sFlt-1)が妊娠ラットにおいてPE 様病態を発生させることが報告された後,多数の臨床研究において,妊娠中期から後期前半にかけての血中sFlt-1 単独,あるいはsFlt-1/placentalgrowth facto(r PlGF)比が PE の発症予知に有用であることが示されてきた.著者らは sFlt-1/PlGF比について,PE 発症閾値が存在し,妊娠早期ほど正常上限を大きく逸脱することを明らかにした.1,200 例の妊婦コホートにおいて,このsFlt-1/PlGF 比をECLIA 法で測定したところ,妊娠19~2 週,26~31 週において採血後4 週間以内のPE の発症予知におけるLR+はいずれも≧100 であり,また,感度はいずれも≧80%であった.このように,子宮動脈血流速度波形計測,血圧レベル,母体情報を用いずとも,妊娠中期以降のsFlt-1/PlGF 比単独測定でPE の発症予知が可能である.また著者らは,血漿HSD17B1 濃度の低値はsFlt-1/PlGF比とは独立して,PE 発症予知のリスク因子であることを発見した.
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医学のあゆみ 250巻8号, 561-565 (2014);
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◎妊娠高血圧腎症の主症状は蛋白尿と高血圧であり,診断もこの2 つの臨床症状によりなされる.実際,いままでの臨床的評価や妊娠高血圧腎症モデル動物作製もこの2 症状をもとになされてきた.しかし,とくに実験動物モデルにおいてあまり注目をされていない妊娠高血圧腎症の症状に耐糖能異常,インスリン抵抗性がある.本稿では,妊娠高血圧腎症の病態生理にインスリン抵抗性や耐糖能異常が関与する可能性を論じ,今後の妊娠高血圧腎症の臨床検討と,実験動物モデル解析に関して述べる.
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医学のあゆみ 250巻8号, 567-571 (2014);
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◎妊娠高血圧症候群では,重症高血圧(BP 160/110 mmHg 以上)で治療を開始することは世界共通の認識である.日本においては,メチルドーパやヒドララジンの経口投与,そして新しく妊婦において適応使用可能なニフェジピン(妊娠20 週以降)やラベタロールの経口投与を行う.経口投与で血圧コントロール不能な場合,ニカルジピンやヒドララジンの静脈投与を用いる.子癇や子癇予防のためにMgSO4の持続静脈投与を行う.妊娠36 週を超えた妊娠高血圧症候群は,分娩を視野に入れた管理が必要である.
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医学のあゆみ 250巻8号, 573-578 (2014);
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◎妊娠に伴って生じる高血圧は,通常の高血圧とは異なっていると理解する必要がある.最近は妊娠高血圧症候群として妊娠20 週以降に血圧が収縮期血圧140 mmHg あるいは拡張期血圧90 mmHg 以上となった場合と定義される.多くは妊娠の終了後12 週以内に通常の血圧に復する.わが国では結婚年齢の高齢化,女性の社会進出,30 歳代女性の肥満の問題などいくつかの社会現象が,妊娠に伴う血圧の変動に複雑な影響を与えている.さらに後年になり,妊娠高血圧症候群を既往にもつ女性は心血管疾患に陥りやすいと考えられてきている.
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医学のあゆみ 250巻8号, 579-583 (2014);
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◎妊産婦脳卒中はわが国における妊産婦死亡の主原因であり,周産期医療上非常に重要な疾患である.比較的予後良好な子癇と致死的転帰が多い脳卒中の鑑別は容易ではない.AICHI DATA は,子癇および妊産婦脳卒中の発症率が分娩の0.04%,0.01%であり,約30%が一次医療施設での発症,過半数が分娩時と産褥期の発症であることを明らかにした.子癇と脳卒中の鑑別は臨床神経症状と頭部画像所見により行われる.妊産婦の高血圧緊急症(180/120 mmHg 以上)は子癇や脳卒中の危険性が高いため,早急な降圧療法が必要となる.また,妊娠中は正常血圧で経過し分娩時にはじめて高血圧を呈する“分娩時高血圧”の存在を認識し,分娩中の定期的な血圧測定と高血圧時の医師への報告を徹底することが,脳卒中発症予防にとって重要である.妊産婦脳卒中の母児救命に必要不可欠な産婦人科と脳神経外科の連携構築に向けて,“妊産婦脳卒中に関する合同委員会”が活動を開始している.
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医学のあゆみ 250巻8号, 584-587 (2014);
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◎妊娠管理において血圧測定の重要性はいうまでもない.血圧の測定方法としては,医療環境下での診察室(外来)血圧と,非医療環境下の24 時間自由行動下血圧測定および家庭血圧測定がある.短期変動や日内変動をとらえるには24 時間自由行動下血圧測定が適しており,血圧の長期変動をとらえるために家庭血圧が適している.診察室血圧は高血圧であるが,診察室外血圧は正常血圧という白衣高血圧とよばれる状態がある.白衣高血圧は比較的に予後は良好であるが,妊娠高血圧症候群に進展するリスクが高いため,定期的な経過観察が推奨される.したがって,白衣高血圧を診断することで,不必要な治療を防ぐことができ,また,診察室外血圧を適切に用いることで,重症化を早期にとらえることができると考えられる.家庭血圧は,重症化の早期発見や,治療効果の判定やモニタリング,褥婦の外来管理などにも有効であろうと考えられるが,家庭血圧測定と予後との関連を調べた報告はなく,研究の成果がまたれる.
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医学のあゆみ 250巻8号, 588-592 (2014);
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◎正常妊婦の循環血流量は妊娠中約1.5 倍に増加する.したがって,妊婦の血圧を維持するためには,末梢血管抵抗(とくに子宮胎盤循環における)の低下が必要である.そのための妊娠に伴う変化として大事なものが2つある.ひとつは大量の血管増殖因子の産生に伴う胎盤における血管新生,もうひとつは血清因子による血管弛緩性の亢進である.妊娠高血圧症候群(PIH)の病態のひとつとして,血管内皮機能障害による血管収縮性の亢進や過凝固の状態がある.血管内皮機能は血清中に存在する数多くの機能的に相対する血清因子のバランスによって調節されているが,PIH ではそのバランスが損なわれることによって血管内皮機能障害が生じていると考えられている.また,抗血管増殖因子の増加に伴い,胎盤における血管新生が障害されることで,さらに末梢血管抵抗の増加が生じている可能性がある.本稿では,PIH の病態と血清因子のバランスについて概略する.
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連載
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エコヘルスという視点 15
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医学のあゆみ 250巻8号, 599-602 (2014);
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◎エコヘルス教育は,開発途上国にも近年急速に進んでいる包括的学校保健の普及において,包括的な健康なコミュニティーづくりに繋がり,さらには自立発展性をもたせる役割をもっていると考えられる.FRESH(Focusing Resources on Effective School Health)に代表される学校保健のグローバルな戦略は開発途上国に共通した保健課題をより効率的に改善するかに焦点があてられており,開発途上国の学校保健の普及に大きく寄与してきた.エコヘルス教育をこの戦略とインテグレートさせることによって環境を意識した健康像を考えることにより,その国に適した健康教育や保健サービスを考えざるを得なくなる.このため,学校よりもより広く多くの住民を対象とするコミュニティーにおいても,包括的活動を学校からもたらすことができる可能性がある.さらには,その独自な健康像への創出によってオーナーシップの高まりを促進する可能性があるため自立発展性に寄与する可能性があるともいえる.
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輝く 日本人による発見と新規開発 5
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医学のあゆみ 250巻8号, 603-608 (2014);
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フォーラム
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医学のあゆみ 250巻8号, 609-610 (2014);
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近代医学を築いた人々 31
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医学のあゆみ 250巻8号, 611-611 (2014);
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医学のあゆみ 250巻8号, 612-613 (2014);
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医学のあゆみ 250巻8号, 614-616 (2014);
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TOPICS
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消化器内科学
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医学のあゆみ 250巻8号, 593-594 (2014);
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腎臓内科学
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医学のあゆみ 250巻8号, 594-595 (2014);
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輸血学
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医学のあゆみ 250巻8号, 596-597 (2014);
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