Volume 251,
Issue 7,
2014
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あゆみ 肝臓と糖尿病の相関
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医学のあゆみ 251巻7号, 533-533 (2014);
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【糖代謝と肝臓】
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医学のあゆみ 251巻7号, 535-538 (2014);
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◎肝は摂食状態に応じて糖脂質代謝を行い,その調節を考えるうえでインスリンは重要な役割を果たしている.しかし,肥満の状態においてはアディポカインの分泌パターンが変化し,インスリンシグナルが低下している.これにより高インスリン血症が生じ,肝におけるインスリン抵抗性を増悪させるだけでなく,他の臓器においてもインスリン抵抗性を引き起こすという悪循環が形成される.一方で肝における脂肪酸合成は増加しており,脂肪組織からの遊離脂肪酸の流入と相まって,肝細胞で脂肪が蓄積するとミトコンドリアにおける活性酸素種(ROS)の産生が増加する.それに伴う酸化ストレスはインスリン抵抗性の増悪に寄与するのみならず,脂肪蓄積や炎症・線維化の促進を介して,非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の病態形成においても大きな役割を果たしている.
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医学のあゆみ 251巻7号, 539-542 (2014);
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◎著者らは2010年,ヒト肝発現遺伝子に対する網羅的な解析を用いて,肝由来分泌蛋白であるselenoproteinP(SeP)がインスリン抵抗性誘導を介して2 型糖尿病における高血糖発症に寄与することを明らかにし,このようなあらたな機能が同定された肝由来分泌蛋白を“ヘパトカイン”と総称することを提唱した.その後,肥満で発現が上昇しJNKリン酸化を介して筋にインスリン抵抗性を惹起するヘパトカインとしてLECT2を同定した.これらの報告と前後して,Fetuin-AやFGF21などいくつかの糖代謝に関連するヘパトカインの機能解析が報告され,ヘパトカインの総説が出版されるようになった.肝が多種多様なヘパトカインを分泌すること,ならびにヘパトカインの分泌異常が2型糖尿病に代表される過栄養関連疾患の発症に関与することが世界的に認識されるようになってきている.
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医学のあゆみ 251巻7号, 543-548 (2014);
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◎近年,健診での脂肪肝に代表される肝機能異常者はいぜんとして多く,男性受診者の約40%,女性受診者の20%弱を占めている.一方,糖尿病と診断される例は,この15年で4%から7.9%に増加している.慢性肝疾患はそもそも糖尿病が合併しやすい傾向がある.C 型慢性肝疾患においてもインターフェロン(IFN)でウイルスが排除されないと,排除された場合より2.78 倍糖尿病が発症しやすかった.また脂肪肝例でも,肥満の有無,メタボリックシンドロームの有無を考慮しても糖尿病発症は高率であった.慢性肝疾患に糖尿病が合併すると肝癌の発症が増加し,また虚血性心疾患などの大血管病変も促進された.糖尿病の予防では肝炎ウイルス排除,脂肪肝の消失,運動促進などが重要と考えられた.さらに,慢性肝疾患での糖尿病の治療に際しては,肝への負担が少なく,食後高血糖を改善しやすい薬剤を選択することなどが肝要と思われた.
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【糖尿病・脂質代謝異常と肝癌】
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医学のあゆみ 251巻7号, 549-553 (2014);
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◎B型およびC型慢性肝炎を背景にもたない非B 非C肝癌は近年増加の一途をたどっており,肝癌全体のおよそ1/4 を占める.非B 非C肝細胞癌には種々雑多な背景をもった患者集団が含まれるが,そのなかで一般人口に占める肥満者の増加が非B非C肝癌増加のおもな背景にあると推定されている.肝に脂肪が過剰に蓄積した状態である非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は病態形成の背景にインスリン抵抗性が強くかかわっており,メタボリックシンドローム(MetS)の肝での表現形と考えられている.糖尿病,脂質異常症,高血圧といったMetSの他の因子との関係も深く,内臓肥満を背景として起こってくるアディポカインを中心としたシグナル伝達系の異常や,細胞内恒常性維持機構の破綻が,炎症・線維化といった肝発癌のメインルート以外のメカニズムも介して肝発癌を直接促進している可能性が示唆されている.
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医学のあゆみ 251巻7号, 555-560 (2014);
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◎オートファジーとは自食作用とよばれ,さまざまなストレスなどで生じた不要となった細胞内小器官などが蓄積しないよう細胞内の恒常性を維持するためのメカニズムである.著者らは肝細胞への脂肪蓄積がオートリソソームのクリアランスを低下させリソソーム内のカテプシンの活性や発現の低下を生じ,p62の蓄積・オートファジー機能障害に寄与することを突き止めた.また,ヒト肝癌細胞株においてp62の蓄積を認め,p62の蓄積は核内の抗酸化蛋白の発現亢進や腫瘍の増殖に寄与することがわかった.これらのことから,オートファジーの機能障害が肝臓内の腫瘍の発現やその後の腫瘍の進展に関与している可能性が示唆された.
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医学のあゆみ 251巻7号, 561-565 (2014);
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◎厚労省NASH研究班で5,642例の糖尿病(DM)患者の肝癌を含む肝障害の実態調査を行い,また,背景肝組織がNASHと確認できたNASH肝癌87例を解析した.①DM患者のHBs抗原陽性率は1.7%であったが,多くはHBVDNA陰性で,かつ肝障害をきたす可能性が高いHBV-DNA量が4.0log copy/mL以上の例はHBs抗原陽性者のわずか10%であった.HCV 抗体陽性率は5.1%であったが,HCV RNA 陽性者はそのなかの62%で残りは既感染者であった.エタノール60 g/day以上の常習飲酒者は,男性6.9%,女性0.9%であった.②多変量解析でDM患者のALT値異常に影響を及ぼすのはHCV感染であった.HCVRNA 陽性のHCV感染者3.2%で,ALT 31IU/L以上を肝障害ありと仮定するとその割合は28.6%で,その約10%にHCV感染が関与し,糖尿病患者の肝障害の90%近くはNAFLD/NASHに起因すると推定される.③DM患者の67例(1.4%)に肝癌合併を認め,そのうち非B非C肝癌の割合は41%であり,全国調査と比較し有意に非B非C肝癌が高い割合であった.④NASH肝癌87例において,PIVKAⅡは66mAU/mLと増加していたが,AFPは7.1ng/mLと低値であった.NASHからの肝癌の早期発見には定期的画像検査とPIVKAⅡの測定が重要と思われる.
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医学のあゆみ 251巻7号, 567-571 (2014);
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◎非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は肥満や糖尿病などの生活習慣病が増悪因子と考えられ,近年わが国においてもその増加が大きな問題となっている.脂肪酸伸長酵素Elovl6 は炭素数12~16の飽和・一価不飽和脂肪酸の伸長をつかさどるリポジェニック酵素であり,脂肪肝においてその発現が増加する.Elovl6 欠損(KO)マウスは肝における脂肪酸組成およびエネルギー代謝関連遺伝子発現が変化し,高脂肪食負荷や遺伝性肥満マウスとの交配により野生型マウスと同様に肥満と脂肪肝を呈するが,野生型マウスに比べて良好なインスリン感受性を示した.また,高脂肪高コレステロール食を与えたElovl6KOマウスでは,肝に蓄積する脂質の量を変えずに脂質の脂肪酸組成を変化させることで,炎症,酸化ストレス,線維化が改善する.さらに,NASH患者の肝ではELOVL6発現が有意に上昇した.したがって,Elovl6はNASHの発症・進展の鍵因子であり,本酵素の阻害は新しいNASH治療標的として期待される.
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連載
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iPS細胞研究最前線-疾患モデルから臓器再生まで 7
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医学のあゆみ 251巻7号, 579-584 (2014);
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◎糖尿病は膵臓内の膵島組織を構成する膵β細胞の機能の低下が原因となって発症する慢性の代謝性疾患である.膵β細胞が機能不全に陥った病態に対しては,膵β細胞の置換が適応となる.現在このための医療として膵移植,膵島移植が臨床実施され,有効性が認められている.次世代の膵β細胞置換療法としてドナーに依存しない,再生医学を用いた治療戦略が期待されている.多能性幹細胞の性質を有するiPS 細胞を用いて膵β細胞とそれを含む膵島組織を生体外で再生するための研究が行われている.また,再生された膵β細胞を臨床応用するための周辺技術が開発されている.
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輝く 日本人による発見と新規開発 10
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医学のあゆみ 251巻7号, 585-588 (2014);
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フォーラム
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近代医学を築いた人々 34
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医学のあゆみ 251巻7号, 589-589 (2014);
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TOPICS
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細菌学・ウイルス学
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医学のあゆみ 251巻7号, 573-574 (2014);
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循環器内科学
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医学のあゆみ 251巻7号, 574-575 (2014);
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臨床栄養学
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医学のあゆみ 251巻7号, 575-577 (2014);
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