Volume 251,
Issue 9,
2014
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【11月第5土曜特集】 くすりの副作用のすべて
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医学のあゆみ 251巻9号, 663-663 (2014);
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総論
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医学のあゆみ 251巻9号, 667-671 (2014);
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◎医薬品は多くの疾病の治療と症状緩和に絶大な威力を発揮するが,同時に患者にとって好ましくない作用を生じることがある.従来は処方者の治療目的に合致した薬理作用を“主作用”というのに対して,目的としない作用ということで“副作用”といわれてきた.しかし,医療のあり方が患者主体となるにつれ,処方者に薬物投与との因果関係の確立を求めず,医薬品の投与中に生じた,すべての患者にとって好ましくない作用を総称して“有害事象(反応,経験)”の名称を使用して医薬品開発にかかわる臨床試験(治験)や市販直後調査における調査が行われている.有害反応の機序については,薬物消失過程に関与する臓器(肝,腎)の機能不全,薬物動態機能分子(薬物代謝酵素,薬物トランスポーター)の遺伝子多型に基づく機能低下あるいは亢進と薬物応答性を支配する薬物標的分子の遺伝子多型に基づく感受性の変化が検討されている.ゲノム科学の技術革新により個人全ゲノムシークエンスが安価に行えるようになれば,有害反応へのアプローチは大きく変化する可能性がある.
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医学のあゆみ 251巻9号, 672-676 (2014);
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◎薬物による副作用は国民の健康上の重大なリスクであり,医療不信を招く要因でもある.副作用を隠すことなく調査研究を進め,できるかぎり減らす努力が製薬会社,医療機関,規制当局に求められている.そのためには副作用の一要因であるゲノム情報を臨床に応用する必要がある.これまでもHLA をはじめ,重大な副作用に関する遺伝子がいくつか発見されている.それらの多くは薬の添付文書に情報として記載されており,一部は治療ガイドラインに含まれ,保険収載されている.これからGWAS,次世代シークエンサーなどの最新手法を加えることにより,ゲノム情報により重症薬物副作用を予測し,より適切な薬物選択が行われるようになると期待される.しかし,膨大なデータと表現型との関連性に関する判断はかならずしも単純ではない.今後,遺伝子検査のエビデンスに関するガイドラインの制定,認定臨床分子遺伝学者の認定制度などが必要になると思われる.
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医学のあゆみ 251巻9号, 677-682 (2014);
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◎ 2013年4月より医薬品リスク管理計画(RMP)の運用が開始され,医薬品医療機器総合機構(PMDA)のウェブサイトでの公表もはじまっている.RMPとは医薬品のリスクが安全性検討事項として要約され,それを踏まえた安全対策の具体的内容がひとつの計画書にまとめられたものである.RMPの実装により,PMDA/厚生労働省(MHLW)や製薬企業では,より効率的で一貫性のあるベネフィット・リスクバランスの評価が可能になると考える.本稿では,RMPの概要およびPMDAが行っている医薬品のリスク管理について紹介する.
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医学のあゆみ 251巻9号, 683-689 (2014);
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◎ある有害事象が“副作用(ADR)”とよばれるようになるまでには,医薬品との因果関係があることのエビデンスを高めるために重層的な評価が行われるべきである.因果関係評価は,個別症例における因果関係評価と,これに続く集積された情報(複数の症例あるいは情報源)に基づく因果関係評価からなる.しかし現状は,個別症例における因果関係評価に依存しすぎており,医療関係者に伝達される安全性情報は,本当に副作用かどうかもわからないノイズのような情報で溢れている.“副作用”を因果関係のエビデンスレベルと明確に関連づけて説明されることも少なかった.ノイズを最小化し,エビデンスレベルを考慮したリスクコミュニケーションこそ,究極的にめざすべきゴールであり,適正使用にも資するはずである.
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医学のあゆみ 251巻9号, 691-695 (2014);
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◎医療情報データベースとしては,レセプトデータベース,DPC データベース,医療機関ごとの電子カルテ情報に基づくデータベース,処方箋・調剤データベース,疾患・薬剤あるいは領域ごとの患者登録システムを利用したデータベースなどが知られている.薬剤疫学研究に利用可能なデータベースの整備がわが国でもしだいに進んできたが,データベースに含まれる患者数,患者特性,診療行為の情報などはさまざまであり,研究目的にもっとも適合するデータベースを慎重に選択する必要がある.ナショナルデータベース,DPC データベースなどの大規模データベースは,医薬品・医療機器の副作用の研究においても活用可能であり,今後の積極的な利用が期待される.患者登録システムを利用したデータベースは保険データベースとは異なり,研究者の研究目的に合ったきめ細かい情報を集積できるので,感染症などの薬剤副作用の研究に非常に有用である.
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医学のあゆみ 251巻9号, 696-700 (2014);
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◎医薬品は,ヒトの健康や生命を守るために欠かせないものであるが,十分な注意を払って適正に使用していたとしても,医薬品の副作用の発生や生物由来製品を介した感染などを防止できない場合がある.病気の治療などの際に使用した医薬品による副作用や感染で発生した疾病といった健康被害に対して迅速に救済を行う必要があることから,“医薬品副作用被害救済制度”および“生物由来製品感染等被害救済制度”がある.医療関係者には,医薬品による副作用が疑われた際には適切な処置を行うとともに,健康被害を受けた方への本制度の紹介や診断書の作成などといった協力や,より多くの方々の迅速な救済につながる橋渡しの役割をお願いしたい.
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医学のあゆみ 251巻9号, 701-705 (2014);
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◎日本の主要な薬害事件を振り返ることで,なにが問題であったか,それに人びとはどのように対処し,どのような改革が行われたかを考察する.薬害の歴史を考えることは,薬の有効性・安全性を高めるための最良の教科書である.薬害の研究は,薬の開発から審査,承認,販売,安全性監視など薬のライフサイクル全体にかかわるさまざまな問題を提起してくれる.薬害を防止することは厚生労働省,製薬会社,医療機関だけでなく,行政,司法,経済,教育,報道にかかわる社会全体の責任である.利益相反やデータ捏造など,最近の話題とも関連して,薬害裁判が薬事行政や制度改革に果たしてきた役割,薬害事件を契機に薬害防止に取り組んできた市民運動の意味などを紹介する.
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医学のあゆみ 251巻9号, 706-712 (2014);
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◎医薬品の副作用は患者の心身に大きな負担を強いるだけではなく,副作用に起因する医療費や労働損失など経済的な面でも負担を生じる.本稿では,まず医療経済評価における立場とコストについて説明し,つぎに副作用の経済評価に関する国内と海外の研究について,例を含めて紹介する.最後に,関節リウマチ(RA)患者に生物学的製剤を使用した場合と使用しなかった場合(非生物学的製剤を使用した場合)で,有害事象による直接医療費がどれほどかかっているのか,DPCによる包括支払制度を用いて比較を行った研究を紹介する.生物学的製剤を使用した場合は1 人年当り39,600円,使用しなかった場合は1人年当り24,900円となった.日本では大規模な医療データベースの構築が進められており,今後はそれらを利用して実際に副作用にかかったコストをもとに経済評価の研究が進められていくであろう.
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病態からみたくすりの副作用
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医学のあゆみ 251巻9号, 715-719 (2014);
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◎薬剤性のアナフィラキシーは薬剤投与を受けた直後に生じる全身性の過敏反応で,重篤な場合には生命の危険を伴う.医療スタッフにとっては薬剤投与直後に予期せずに目の前で急変することもあり,即座の鑑別と対応が必要となる.近年,原因薬剤の検査法の改善が着実に進んでいるが,確実な予知はいまでも難しい副作用といえる.
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医学のあゆみ 251巻9号, 720-725 (2014);
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◎医薬品による造血系への副作用は軽度の血球減少から無顆粒球症,高度の血小板減少症,再生不良性貧血といった重篤なものまでさまざまである.無顆粒球症では重篤な感染症,高度の血小板減少症では大出血,再生不良性貧血では重篤な感染症や大出血など,それぞれ適切な対処・治療を誤ると致死的となりうる.医薬品副作用は発症した後の適切な対処・治療はもちろん大事であるが,それよりも重要なことは医薬品の副作用を熟知し,発症を未然に防ぐ,あるいは早期に診断をして被疑薬を中止することである.無顆粒球症の原因薬剤には,塩酸チクロピジン,抗甲状腺薬などの有名なもの以外にもH2受容体拮抗薬,NSAIDs,抗不整脈薬など高頻度で用いられる医薬品がある.血小板減少症はさまざまな医薬品が引き起こし,その種類は600以上にも上る.再生不良性貧血は抗菌薬,抗消化性潰瘍薬,抗てんかん薬,抗リウマチ薬のメトトレキサートなど多くの医薬品が起こしうる.
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医学のあゆみ 251巻9号, 726-731 (2014);
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◎薬剤性肺障害とは,医薬品投与中に起こった呼吸器系の障害のうち,医薬品と関連があると考えられるものの総称である.薬剤性肺障害には特異的な診断方法がないため,日常臨床では診断が困難な場合が少なくない.近年,抗悪性腫瘍薬の種類が年々増加しており,とくに分子標的治療薬の開発がきわだっている.分子標的治療薬には薬剤性肺障害の頻度の高いものが多く,施設を限定した全例調査などにより,精度の高い疫学情報も報告されている.治療は原因薬剤の中止および必要に応じたステロイド投与が原則であるが,mTOR阻害薬のように例外的な対応が要求される薬剤もあり,マネージメントには注意を要する.呼吸器以外の臓器領域で使用される薬剤も多いことから,あらゆる領域の医師が広く情報を共有することが重要である.本稿では薬剤性肺障害を概説するとともに,最近注目される薬剤の肺障害の実態に焦点をあてて述べる.
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医学のあゆみ 251巻9号, 732-737 (2014);
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◎高齢化社会に伴い各種疾患を有する患者数は増加し,治療目的で多くの薬物が使用されている.また個々の患者においては複数の薬物を投与されている場合も多く,薬物有害事象のリスクも高くなっている.薬物の副作用による循環器疾患は,抗うつ薬やマクロライド系抗生剤などによる薬剤性QT延長症候群,甘草などによる薬剤性高血圧,アントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬による心筋障害などが知られている.近年多くの疾患に使用されている分子標的薬は,その有効性の反面で有害事象としての心筋障害や高血圧も多く報告されている.また各種薬物の効果により基礎疾患の長期予後が改善するに従い,薬物に起因する心血管疾患も増加すると考えられ,発症リスクのマネージメントや早期診断・治療が必要となる.そのためには,各薬物が原因で生じうる疾患とその特徴や,併用薬物によって生じうる薬物相互作用を十分理解し,治療やリスク因子の管理をすることが重要である.
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医学のあゆみ 251巻9号, 738-743 (2014);
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◎薬剤性上部消化管傷害のもっとも典型例はNSAID,アスピリンによる消化性潰瘍,消化性潰瘍合併症としての上部消化管出血である.NSAID,抗血小板薬アスピリンはともにシクロオキシゲナーゼを阻害するため傷害機序はよく似ているが,アスピリンの粘膜傷害作用はNSAIDほど強くない.しかし,アスピリンには抗血小板作用があるため出血リスクはほぼ同じである.本稿では,疫学データで示されている出血リスク,無作為化比較試験で示されている潰瘍発症率,および出血頻度について紹介する.また,消化性潰瘍既往歴はこれら薬剤性消化管傷害のリスク要因であり,プロトンポンプ阻害薬併用による予防効果が明らかにされている.アスピリン以外の抗血小板薬,とくにクロピドグレルの出血リスクや,抗凝固薬ワルファリンや新規経口抗凝固薬のリスクについても紹介する.さらに,ビスホスフォネートの食道・胃粘膜傷害作用や,SSRIの出血リスクについても解説する.
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医学のあゆみ 251巻9号, 744-749 (2014);
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◎薬剤による下部消化管障害は,①抗生物質起因性腸炎(クロストリジウム腸炎,MRSA 腸炎,ペニシリン系急性出血性大腸炎),②薬剤性腸管粘膜障害(非ステロイド性抗炎症剤および低用量アスピリン起因性腸管粘膜障害,ランソプラゾールに関連した膠原線維性腸炎,漢方薬に関連した腸間膜静脈硬化症,抗癌剤など他の薬剤による粘膜障害),③薬剤性腸管機能障害(抗コリン作用薬,オピオイド,アルカロイド系抗癌剤などの腸管運動抑制薬による便秘,マクロライド系抗生剤やミソプロストールなど腸管運動促進薬による下痢,αグルコシダーゼ阻害剤やポリスチレンなどの腸管内容作用薬による腹部膨満)などに大別される.薬剤による腸管障害は多彩で頻度も高く,日常臨床において注意が必要である.
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医学のあゆみ 251巻9号, 750-756 (2014);
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◎くすりによる健康被害のなかでも薬物性肝障害(DILI)は日常診療で遭遇する頻度の高い疾患のひとつであり,すべてのくすりが原因となりうる.DILIはその発症機序により“中毒性”と“特異体質性”に大別され,後者はさらに“アレルギー性特異体質”と“代謝特異体質”によるものに分類される.“特異体質性”の発症の予測は困難なことが多いが,近年,遺伝子解析手法の進歩により薬物代謝酵素,トランスポーター,ヒト白血球抗原(HLA)における一塩基多型(SNPs)との関係が徐々に明らかになっている.DILIの症状は全身倦怠感,食欲不振,発熱,好酸球増多,皮疹などさまざまであり,肝臓専門医以外が見落とさないために,診断基準であるDDW-Japan2004スコアリングは有用である.治療の基本は,疑われる起因薬物をただちに中止すると同時に起因薬の速やかな同定である.重篤化した場合は血漿交換や肝移植が必要となることがあるため,早めに肝臓専門医やそれらが行える施設とコンタクトをとることが望ましい.
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医学のあゆみ 251巻9号, 757-762 (2014);
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◎薬剤の投与後に尿や腎機能の異常がみられた場合,薬剤性の腎障害が疑われる.腎障害は部位別に糸球体障害と尿細管・間質障害に大別されるが,前者は蛋白尿,後者は腎機能低下に反映されやすい.薬剤性ネフローゼ症候群は,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やブシラミンなどの関節リウマチの経過中に用いられる薬剤による報告が多かったが,近年,生物学的製剤や分子標的薬によるネフローゼ症候群が増加している.腎機能低下が腎前性,腎性,腎後性のいずれによって生じるかは,薬剤の性質によって左右されるため,どのような機序で腎機能低下が生じているかの鑑別は,診断・治療に有用である.薬剤による腎性の機能低下は,尿細管上皮細胞に対する直接毒性かアレルギー性の機序で生じる.前者はアミノグリコシド系抗菌薬,白金製剤,造影剤などで生じやすく用量依存性である.後者は尿細管・間質性腎炎の様態を呈し,ほぼすべての薬剤で生じる可能性がある.薬剤性腎障害の治療は,原因薬剤の中止が基本である.
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医学のあゆみ 251巻9号, 763-766 (2014);
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◎薬剤による膵炎は急性膵炎であり,症状,臨床経過,転帰には他の原因による急性膵炎と差異はない.多くは腹膜刺激症状を伴う上腹部痛を呈し,背部に放散することが多く,重症膵炎の報告例もある.機序については,すべてについて明らかになっているわけではないが,用量依存性によるものとアレルギー機序によるものがある.再発予防のためには,患者リスクや投与リスクとともに,同一薬だけでなく,類似構造をもつ薬剤の投与も避けることが重要である.
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医学のあゆみ 251巻9号, 767-772 (2014);
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◎近年,糖尿病とその予備軍が増加している.降圧薬,グルココルチコイドなど日常診療で頻繁に使用する薬剤には高血糖を副作用にもつものが多いため,副作用の早期発見には定期的な血糖値測定とともに食後血糖の測定が重要である.従来から高血糖をきたすことが知られていた薬剤以外にも新規免疫抑制薬による高血糖が報告されており,これまで行われてこなかった疾患・医療分野でも血糖測定の重要性が増しつつあることを示唆している.薬剤による高血糖はケトアシドーシスなどの高血糖による急性合併症で発見されることもあり,糖尿病専門医と連携して診療にあたることが重要である.
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医学のあゆみ 251巻9号, 773-780 (2014);
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◎薬剤性中枢神経障害として,抗精神病薬による錐体外路症状はよく知られた副作用であるが,それ以外にもさまざまな薬剤によってパーキンソニズム,脳症,不随意運動,髄膜炎など多岐にわたる中枢神経障害の症状を呈することがある.多くは原因薬剤の中止により治癒するが,抗癌剤による白質脳症,フェニトインによる小脳萎縮など不可逆的なものもある.日常診療においてよく使う薬剤,たとえば抗生剤や消化器作用薬において,痙攣や意識障害といった重篤な中枢神経症状を引き起こすことに注意する必要がある.とくに多剤を内服している高齢者や腎機能低下例ではこういった中枢神経障害を引き起こす可能性が高くなるため,よりいっそうの注意が必要である.
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医学のあゆみ 251巻9号, 781-787 (2014);
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◎末梢神経障害をきたす薬剤は多岐にわたり,その頻度も意外に多い.すべての末梢神経障害のうち2~4%が薬剤性と診断され,原因薬剤が同定されている.感覚性末梢神経障害については潜在性の患者も多いと考えられ,とくに高齢者のしびれ感の原因として重要である.発症リスクの高い悪性腫瘍治療薬や処方頻度の高いスタチン系高脂血症薬は要注意である.原因薬剤の中止が可能であれば早期の場合には症状消失が期待できる.発症は通常,緩徐進行型で数カ月の経過で進行する.糖尿病,アルコール摂取,悪性腫瘍などの末梢神経障害を起こしうる基礎疾患があると,両者が合わさって薬剤性末梢神経障害も重症化する.発症機序として髄鞘障害(脱髄),軸索障害,神経細胞体障害の3 型が知られている.後根神経節の感覚神経細胞体自体が障害されると後遺症状が残りやすい.末梢神経障害が重症化すると,末梢神経伝導速度は低下する.症状から早期に疑い,治療を変更することが重要である.
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医学のあゆみ 251巻9号, 789-793 (2014);
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◎向精神薬(とくに抗精神病薬)を服用中に高熱,錐体外路症状,意識障害,自律神経症状を起こすことがあり,悪性症候群(神経遮断薬悪性症候群;NMS)とよばれる.NMS の多くは急激な症状の変化を示し,放置すると重篤な転帰をとることもあるため,迅速な対応が必要となる.向精神薬(とくに抗精神病薬)の開始時,増量,変更,中止時に起こりやすいため,医師はつねにNMS 発症の可能性を考慮する必要がある.まず,早期発見が肝要であるが,臨床症状,検査所見からNMS を疑われた場合,原因医薬品を中止する.同時に,循環器・呼吸機能をモニタリングしながら全身管理を行う.また,必要に応じて体液・電解質の補正を行う.薬物療法はダントロレンナトリウムが第一選択であり適応があるが,ブロモクリプチン(適応外)などとの併用が効果的である場合もある.
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医学のあゆみ 251巻9号, 794-800 (2014);
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◎くすりの副作用のなかで皮膚症状はよく知られているが,そのなかでもっとも頻度の高い発疹型(臨床病型)である蕁麻疹と中毒疹様紅斑(斑状丘疹状紅斑,多形紅斑,びまん性紅斑/紅皮症/湿疹紅斑)に焦点を当てて解説した.これらの発疹型の病態とアレルギー機序は,重症薬疹を含めてアレルギー性薬疹の各種発疹型における病態とアレルギー機序の基本を構成するものである.
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医学のあゆみ 251巻9号, 802-808 (2014);
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◎ Stevens-Johnson 症候群(SJS)と中毒性表皮壊死症(TEN)はいずれも重症薬疹の代表で,TEN の大半がSJS から進展する.皮膚と粘膜に壊死性障害による水疱形成や表皮剝離を認め,高熱を伴う.臓器障害を併発しやすく,経過中に敗血症などでしばしば致死的となり,治癒後も眼障害など後遺症のリスクがある.SJS/TEN は早期の診断と治療が必須で,発症初期の粘膜症状や多形紅斑に注意する.治療は被疑薬の中止とともに,早期のステロイド薬の全身投与が第一選択で,重症例はパルス療法も含めた大量投与を行う.免疫グロブリン製剤静注療法と血漿交換療法も有用である.最近は病態の解明が進み,特定の薬剤におけるSJS/TEN の発症とHLA の相関も注目され,その事前スクリーニングによる発症予防の試みがはじまっている.
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医学のあゆみ 251巻9号, 809-812 (2014);
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◎薬剤過敏性症候群(DIHS)は,薬剤投与から発症までの期間が2~6週間と比較的長い.ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)やサイトメガロウイルス(CMV)などの再活性化により2 相性に症状が出現する.発熱やリンパ節腫脹を伴って紅斑や丘疹が生じるが,膿疱や水疱が混在したり紅皮症化したりすることもある.いったん軽快した後に全身症状や皮疹の再燃をみることが少なくない.白血球増多や異型リンパ球出現,肝酵素上昇を認め,ウイルスの抗体価が上昇する.抗てんかん薬や抗菌薬など,一部の限定された薬剤が原因となって発症する.
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医学のあゆみ 251巻9号, 813-818 (2014);
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◎ B 型肝炎ウイルス(HBV)が感染すると,その増殖サイクルでcccDNA が形成され,キャリアのみならずHBs抗原陰性の既往感染例でも,これが肝細胞核内に残存する.このためHBV感染例は,免疫抑制・化学療法を実施するとウイルス増殖が活発となる再活性化を生じ,これに起因する肝炎を発症する場合がある.既往感染例のウイルス再活性化による肝炎をde novo B型肝炎と称するが,劇症化する頻度が高く予後不良であることから,その予防が重要である.再活性化の頻度は肝移植後がもっとも高く,末梢血幹細胞移植,リツキシマブを用いた悪性リンパ腫の治療がこれに次ぎ,関節リウマチなど免疫抑制療法および固形癌の化学療法では比較的低率である.HBV 再活性化による重症肝炎は2009年に厚生労働省研究班が発表したガイドラインを遵守することで予防可能である.同ガイドラインは改訂され,2013年には日本肝臓学会のガイドラインに引き継がれたが,医療経済的観点から見直しが続けられている.
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医学のあゆみ 251巻9号, 819-825 (2014);
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◎日和見感染症を起こしうる薬剤として,免疫系に影響する糖質コルチコイド,免疫抑制剤,生物学的製剤,抗癌剤などがある.薬剤の副作用としての日和見感染症は,薬剤そのものの感染防御機構への抑制作用のみによるとは限らず,薬剤が投与される宿主の状態と関連して発生するものもある.近年,生物学的製剤が開発され,関節リウマチ(RA)などの炎症性疾患の分野で広く臨床に応用されるようになったが,これらは抗炎症性作用をもつと同時に免疫防御機構へも影響することから,日和見感染症への注意が必要である.呼吸器系の日和見感染症として細菌性肺炎,結核,ニューモシスチス肺炎(PCP)が注目されている.細菌性肺炎ではTNF阻害薬でのレジオネラ肺炎の増加が示唆されている.日和見感染症としての結核では肺外結核の頻度が高まる.PCPでは発熱,急速な呼吸困難などの症状から疾患を疑い,迅速な診断と治療を要する.
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医学のあゆみ 251巻9号, 826-830 (2014);
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◎くすりで誘発される悪性リンパ腫は,医療行為によって免疫不全を引き起こした患者に発症し,WHOでは他の医原性免疫不全症関連リンパ増殖性疾患と分類されている.おもに自己免疫疾患に使用される免疫抑制剤のメトトレキサート(MTX)やTNF 拮抗薬などの生物学的製剤で発症が報告されているが,とくにMTX の治療を受けた関節リウマチ(RA)患者での報告が多い.病態には不明な点が多いが,発症のメカニズムにはEBV の感染が深くかかわっている.さまざまな組織型が存在するが,B細胞性リンパ腫が多く,MTXを中止することで約半数の患者に自然消退がみられる.臓器移植も含め免疫抑制剤を投与する際には,悪性リンパ腫発症の可能性についても念頭におく必要がある.
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医学のあゆみ 251巻9号, 831-836 (2014);
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◎種々の薬剤が骨粗鬆症および骨粗鬆症性骨折を引き起こす.その原因は,薬剤が骨のリモデリングに影響を及ぼし,骨密度低下と骨質劣化から骨強度低下を誘導することによる.薬剤性骨粗鬆症のうち,ステロイド性骨粗鬆症と性ホルモン低下療法に伴う骨粗鬆症がもっともよく研究されており,ステロイド性骨粗鬆症に関しては各国から予防,治療,管理に関するガイドラインや勧告も提唱されている.2014年4月にわが国のステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドラインがあらたに改訂された.その他,チアゾリジン,選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI),抗痙攣薬,ループ利尿薬などにより骨粗鬆症が誘導されることは間違いがないと考えられているが,プロトンポンプ阻害薬(PPI)についてはいまだ確定には至っていない.
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医学のあゆみ 251巻9号, 837-842 (2014);
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◎ステロイドの全身投与後に発生するステロイド性骨壊死症は,大腿骨頭に好発する.1 日平均投与量が多い場合にとくにリスクが上がる.骨壊死はステロイド投与後早期に発生するが,発生から臨床的発症までには半年から数年以上の期間がある.一度発生した骨壊死域の拡大や骨壊死の再発はまれであり,骨壊死が発生したからといって原疾患に対するステロイド投与を中止・減量する必要はない.治療方針は,骨壊死の範囲(病型)と骨頭圧潰度などの進行度(病期)をもとに決定される.骨壊死が非荷重部に限局していれば積極的な治療を要さないが,荷重部外側に至る場合は高率に骨頭圧潰が進行するため,若年例では早期の関節温存手術が検討される.進行例では人工股関節全置換術などが行われる.手術によりADLの再獲得は可能であるが,医原性の疾患であることからも予防が望まれ,遺伝子解析や抗酸化薬,脂質代謝改善薬,抗凝固薬などの可能性が期待されている.
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医学のあゆみ 251巻9号, 843-849 (2014);
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◎ビスホスホネート(BP)は骨転移や骨粗鬆症に有用であるが,長期投与によりまれに顎骨壊死が発生することから,BP関連顎骨壊死(BRONJ)といわれるようになった.その後デノスマブでも同様な骨壊死を発症することから,薬物誘発顎骨壊死ともよばれている.BP投与では静脈内投与のほうが経口投与に比べ,また静脈内投与ではゾレドロン酸のほうがパミドロン酸に比べ骨壊死の発症頻度が高かった.発症の契機については抜歯などの手術が自然発生のものよりも多く,部位では下顎が上顎に比べ2倍程度に多かった.BRONJ の診断基準,ステージ分類とその治療法が提唱されている.BRONJ は発生すると不可逆的なため,BP投与前になるべく抜歯などの外科処置をすませ,口腔清掃や口腔内チェックを行うことが大切である.またBP投与中には外科処置などはなるべく控え,抜歯が必要な場合には可能なら3 カ月程度の休薬と抜歯窩の完全閉鎖が勧められている.
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医学のあゆみ 251巻9号, 851-858 (2014);
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◎横紋筋融解症では,①筋組織壊死,②ミオグロビン尿,③尿細管閉塞,による急性腎障害が生じる.労作や感染,外傷で生じることが多く,病態の悪化に炎症機転も関与し,高熱や脱水,アシドーシスで増悪しやすい.状態の把握には血清クレアチンキナーゼ(CK),カリウム(K),カルシウム(Ca),クレアチニン(Cre)値などをモニターする.腎不全回避には大量輸液や強制利尿が有効であるが,重症腎不全に陥った場合には透析も必要になる.薬剤性であってもコンパートメント症候群にも注意する.薬剤誘発機序には,①過量による直接的な毒性,②低K 血症などの電解質異常,③意識障害などに伴う二次的な障害,④アレルギー,がある.ミオパチーを誘発する薬剤は横紋筋融解症をもたらしうる.悪性症候群や悪性高熱は過度の筋収縮で発熱も伴い,横紋筋融解症をきたしやすい.スタチンによる発症は製剤によって異なり,併用薬剤や食品との相互作用,併存疾患や遺伝的素因の関与も大きい.発症の契機となった薬剤に筋毒性があるとは限らない.通常量では基本的にまれな副作用であり,症例の集積が重要になる.本稿ではまれにしか起こらないことも可能なかぎり記載する.
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医学のあゆみ 251巻9号, 860-863 (2014);
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◎ SIADH は,アルギニンバゾプレシン(AVP)の分泌亢進による水利尿不全のため体液量が過剰となり,希釈性低ナトリウム(Na)血症を惹起する病態である.病因は異所性AVP 産生腫瘍,中枢神経疾患,胸腔内疾患など非内分泌疾患とともに,薬剤のかかわる低Na 血症が含まれる.病初期の希釈性低Na 血症は経過中水とNa代謝の両面から代償機構が働き,最終的に細胞外液量のほぼ正常な低Na 血症となる.薬剤の可能性が考えられる場合,まず薬剤を中止する.中止後SIADH の病態が速やかに消退する場合,中止後も病態が遷延して低Na 血症に対する対症療法を要する場合がある.SIADH の治療は,水制限による古典的な治療に頼る現況だが,腎集合尿細管でのAVPV2作用を阻害するAVPV2受容体拮抗薬が最適である.本薬は欧米で使用されているが,国内ではSIADH全般に保険未適応であり,早急な対応が急務となる.
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医学のあゆみ 251巻9号, 865-869 (2014);
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◎カリウム(K)は細胞内の主要な陽イオンであり,細胞膜において静止膜電位の決定に寄与する.取り込まれたK の90%は腎から,10%は消化管から排出される.腎では皮質集合管主細胞がK排泄の首座となり,さまざまなチャネルが連動しK排泄を調整している.急激に細胞外K濃度が上がる場合には細胞膜のNa-KATPaseによって細胞内外のK濃度を調整する.これらのK調節機構が崩れるとK 濃度異常を生じる.K 濃度異常は日常よく遭遇する病態であるが,その多くが医原性である.K濃度異常を生じる主要な原因薬剤と機序について理解することは日常診療のおける薬剤使用時に有用であると考えられる.
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医学のあゆみ 251巻9号, 870-875 (2014);
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◎カルシウム(Ca)とリン(P)は人体のミネラル代謝において重要な成分であり,その血中濃度はそれぞれ,8.5~10.4 mg/dL,3.0~4.5 mg/dLという狭い範囲にコントロールされている.Ca とP の調整においては腎,副甲状腺,骨が重要な役割を担っており,とくに副甲状腺ホルモン(PTH),活性型ビタミンD,線維芽細胞増殖因子23(FGF23)によって調節されている.これらの産生異常により血中Ca と血中P 濃度の異常をきたすが,慢性腎臓病(CKD)ではその頻度が上昇するため,CKDに伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の概念がある.一方,薬剤によるCa・P代謝異常も多く,とくに骨粗鬆症治療薬の頻度が高いが,利尿薬,抗癌剤,抗菌薬,インスリン,グルココルチコイド,抗うつ薬,抗痙攣薬,制酸剤,そして大量輸血が原因になることもあるため,これらの薬剤投与時には血中Caと血中Pのモニターを考慮しなければならない.
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医学のあゆみ 251巻9号, 876-881 (2014);
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◎白内障治療にはおもに点眼薬を使用する.現在のところ,点眼薬の効果に関しての明確な研究結果は出ていない.白内障に関しては進行し視力障害が生じた時点で手術治療を行うことが治療の主体である.したがって,点眼薬を使用せずに経過をみている症例も多い.点眼薬による副作用が生じた場合には点眼を中止する.緑内障治療は点眼治療を優先し,十分な眼圧下降が得られない場合に手術治療を選択する.そこで,点眼薬による副作用の出現に注意し,点眼治療を継続できるよう努力することが重要である.点眼薬によって眼局所の副作用と全身副作用が生じることがあるので,使用する前の問診や使用後の経過観察が必要である.緑内障点眼薬による眼局所の副作用としては点眼薬へのアレルギーと細胞毒性があげられ,全身的副作用として交感神経や副交感神経への影響による心疾患や喘息,肝機能・腎機能障害に留意する.
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医学のあゆみ 251巻9号, 882-886 (2014);
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◎薬剤誘発性血管炎は発症機序の違いから,免疫複合体性と抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連に分類される.薬剤性ANCA 関連血管炎の原因としてプロピルチオウラシル(PTU),ミノサイクリン(MINO),腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬などが知られている.PTU は高頻度にミエロペルオキシダーゼ(MPO)反応性ANCA を誘導し,一部に小型血管炎を起こす.MINO は抗核抗体やMPO-ANCA を誘導し,薬剤誘発性ループス,皮膚限局型結節性多発動脈炎などを起こす.近年,TNF 阻害薬による皮膚血管炎,ANCA 関連血管炎,IgA 血管炎など多彩な血管炎の誘発例が報告されている.
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医学のあゆみ 251巻9号, 887-893 (2014);
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◎薬剤によって誘発される自己免疫疾患は,薬物アレルギーとは趣を異にする特有の薬物反応によって発症する.自己抗体が誘導される薬剤は多数あるが,実際に自己免疫疾患を発症させるものは多くはない.薬剤起因性ループス(DIL)は薬剤起因性自己免疫疾患のプロトタイプとされ,抗核抗体をはじめとする自己抗体が認められ,種々の症状を引き起こす.古典的なDIL として,プロカインアミドやヒドララジンで誘発されるものは,関節痛や皮疹などの比較的軽度の症状を呈することが多い.一方,関節リウマチやクローン病などの治療に用いられる抗TNF-α製剤や,ウイルス性肝炎の治療に用いられるインターフェロンα(IFN-α)により発症するDIL は,糸球体腎炎などの重篤な臨床像を認めることがある.それぞれの薬剤によってDIL の発症機序は異なるが,その解析は特発性の全身性エリテマトーデス(SLE)の解明に寄与するものと思われる.
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医学のあゆみ 251巻9号, 895-900 (2014);
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◎高齢社会の進行とともに味覚障害患者は増加している.味覚障害の原因は多岐にわたり,また複数の原因がかかわっていることもあり,その特定は容易ではないが,薬物性味覚障害の頻度は統計上少なくない.薬物性味覚障害の診断には,薬物の服用により味覚障害が発生したことと,薬剤の中止・変更により改善したという証明が必要であるが,かならずしも容易ではない.薬物性味覚障害の発生機序として,口腔乾燥など局所の要因が指摘されている一方で,薬物と亜鉛とのキレート形成による血中亜鉛の低下も原因のひとつとして指摘されている.診断には詳細な問診,とくに薬物歴の聴取,口腔所見,味覚検査ならびに血清亜鉛値の測定が有用である.治療としては,原因となる薬物が明らかな場合は投与の中止あるいは変更を行い,血清亜鉛値の低下を認める場合には亜鉛製剤の投与を行う.
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医学のあゆみ 251巻9号, 901-907 (2014);
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◎治療のために投与された医薬品が血管内に病的血栓を形成したり,それが遊離して“塞栓症”を引き起こすことがある.薬剤により“血管”“血流”“血液”の異常のいずれか,あるいは複数の状態が惹起され,血栓形成に至る.頻度の高い薬剤として性ホルモン,副腎皮質ステロイド薬,抗線溶薬,向凝固薬,ワルファリン,ヘパリン,チエノビリジン系抗血小板薬,抗癌剤,トレチノイン,向精神薬などがあり,これらの薬剤を処方するときには血栓塞栓症合併の可能性を想起し,患者,家族に説明しておくとよい.薬剤惹起性血栓塞栓症の症状自体は非薬剤性のものと差異はなく,それぞれの部位に特有な症状を突然発症する.検査,診断もそれぞれの部位に応じて異なるが,血栓を検出する画像診断が不可欠である.とくに深部静脈血栓症では超音波エコー検査が確定診断に,D-dimer 検査が除外診断に有用である.治療は当該薬剤の中止が第一義であり,同時に抗血栓療法開始が必要である.重症度によっては外科的血栓除去術が救命に不可欠である.