医学のあゆみ
Volume 251, Issue 11, 2014
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あゆみ 二光子・非線形顕微鏡によるバイオイメージング
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多光子励起顕微鏡の技術と製品
251巻11号(2014);View Description Hide Description◎1931年アメリカの物理学者マリア・ゲッパート・メイヤーが予言した二光子吸収過程は,1990年にDenk,Webb らのグループがはじめて現象を示した.1996年に市場に製品が投入されたものの,その後,わずか数年前まで多光子励起顕微鏡の国内年間出荷台数はせいぜい10数台で,ごく限られた研究者にしか使われていなかった.それだけでなく,導入したものの調整方法が難しく有効に使われていないというケースも多かった.しかし近年,顕微鏡各社より新製品が発売され,赤外超短パルスレーザーの使い勝手の向上も相まって性能が安定し操作性が向上する一方,脳神経科学だけでなく癌,免疫分野への応用も広まり,2013年度の国内出荷台数は40台程度まで増えている.本稿では,多光子励起顕微鏡の原理や技術,ならびに具体的製品について考察する. -
In vivoイメージングの原理と実践
251巻11号(2014);View Description Hide Description◎近年の“螢光イメージング技術”の進歩により,個体・組織を生かしたままで,生きた細胞の動態を観察することが可能となってきた.螢光イメージングを活用することによって細胞の“形態情報”だけでなく,時間軸をもった“動態情報”を解析することができる.新しい螢光蛋白質や螢光プローブの開発,顕微鏡・レーザー技術の飛躍的向上などにより,in vivoイメージングは急速に進歩している.著者らは組織深部を低侵襲で観察することが可能な“二光子励起顕微鏡”を駆使し,マウスを生かしたまま,骨髄内の細胞動態をリアルタイムで観察するイメージング方法を確立した.本稿では実際の画像を紹介しながら,ライブイメージングに必要な材料・機器・手技について概説する. -
多光子顕微鏡を用いた皮膚のライブイメージング
251巻11号(2014);View Description Hide Description◎多光子励起顕微鏡は,“多光子励起”とよばれる特殊な螢光励起現象を利用した螢光顕微鏡の一種である.通常の顕微鏡に比べ,高い組織透過性や低侵襲性といった特性をもつため,ライブイメージングにきわめて有用なツールである.従来,組織学的解析や細胞培養系からの想像にとどまっていた細胞動態が,多光子励起顕微鏡をつかったライブイメージングにより直接的に把握され,多くの新知見が得られている.本稿では,多光子励起顕微鏡を使った皮膚構造や免疫細胞の可視化例,およびそれらのライブイメージングにより明らかとなった皮膚免疫現象について,著者らの研究を含めた最近の知見を紹介する. -
多様な目で観る:非線形光学顕微鏡
251巻11号(2014);View Description Hide Description◎光学顕微鏡は手軽に生物試料を生きたまま観察できるため,生体を取り扱う多くの研究で活用されている.また,螢光染色や螢光蛋白質を利用すれば,生体現象を可視化する強力なツールとなる.しかし,光学顕微鏡の魅力はこれだけではない.光を使うもうひとつの魅力は,さまざまな光学効果を利用し,多彩な情報を試料から引き出せることにある.光学効果には光散乱,光吸収,発光などがあり,それぞれ線形な効果,また非線形な効果と非常に多くの効果がある(図1).ひとえに光学効果といっても,それぞれは異なる物理現象であるため,光を照射する分子の構造や配向などに依存して発生する.そのなかでも非線形光学効果に分類される効果は,近年のレーザー技術,光検出技術の発展により容易に活用できるようになり,多くの場面で利用されている.本稿では,これら非線形光学効果を利用した光学顕微鏡技術を紹介する. -
二光子バイオイメージングと生活習慣病
251巻11号(2014);View Description Hide Description◎心筋梗塞や脳卒中など動脈硬化性疾患といった生活習慣病の重大なリスク要因として,慢性炎症を基盤とする生体反応が注目されている.著者らは“生体分子イメージング手法”を代謝臓器・血管に適応し,メタボリックシンドローム(MetS)などの基礎病態にアプローチを行ってきた.二光子顕微鏡を使ったイメージングは,従来の手法ではアプローチできなかった細胞間相互作用を生体内で直接可視化するものであり,多くの研究領域において今後重要な役割を果たすと考えられる. -
非線形光学を駆使した生体螢光癌イメージング
251巻11号(2014);View Description Hide Description◎螢光イメージング技術を駆使して,生きている動物のなかで細胞のダイナミックな動態や機能を画像化・解析する生体螢光イメージング技術に注目が集まっている.この手法を癌研究に応用すると,生体内で癌細胞が転移する様子,細胞内シグナル伝達や細胞周期,さらに癌細胞と微小環境の相互作用などをリアルタイムで解析することが可能で,これまでは知りえなかった細胞の性質と周囲環境との相互作用が手に取るようにわかる.とくに,多光子励起顕微鏡を用いた非線形光学を応用すると,生体深部で高時間・空間分解能でのイメージングが可能で,実際の癌細胞やその周囲の免疫細胞などの挙動や変化を目の当たりにする.その結果,生命現象や病態の理解が深まり,新しい癌診断・治療開発につながると考えられる.本稿では,癌研究分野における生体螢光イメージングについて,とくに非線形光学に焦点を絞って実例を紹介し,その現状と今後について議論したい.
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連載
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- iPS細胞研究最前線-疾患モデルから臓器再生まで 9
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iPS細胞を用いた視床下部・下垂体の再生に向けて
251巻11号(2014);View Description Hide Description◎視床下部-脳下垂体系は多くの内分泌機能を制御することで生体の恒常性を維持し,生体機能の調節に必須であり,ひとたび機能が障害されると重篤な結果をもたらす.ES細胞やiPS細胞に代表される多能性幹細胞は無限の自己複製能と全種類の体細胞へ分化する能力とを有している.それゆえ,医学的に有用な細胞を試験管内で産生する材料としても注目されている.たとえば,変性疾患などの疾病に対し,ヒトES細胞・iPS細胞から分化させた細胞・組織を移植する治療法は難病克服の切り札として期待が寄せられている.本稿では,著者らを含む名古屋大学と理化学研究所との共同研究グループで,マウスES細胞を三次元培養することにより下垂体発生を試験管内で再現することに成功した研究成果を概説し,今後の医学応用の可能性を考察する.
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輝く 日本人による発見と新規開発 11
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フォーラム
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- ノーベル医学・生理学賞2014
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- パリから見えるこの世界 35
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TOPICS
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- 免疫学
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- 癌・腫瘍学
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- 環境衛生
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