Volume 252,
Issue 2,
2015
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あゆみ ゲノム編集−基礎から応用へ
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医学のあゆみ 252巻2号, 145-145 (2015);
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医学のあゆみ 252巻2号, 147-151 (2015);
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◎30億塩基対にも及ぶヒトゲノムDNA の特定の1箇所だけを改変するための材料を,たった数日のうちに作製でき,それを培養細胞に導入するだけで,いとも簡単に改変細胞を得ることができる−そんな時代がこんなにも早く訪れようとは10年前,いや5年前ですら,だれも想像していなかったのではないであろうか.ゲノム編集の技術進展の速度はそれほどまでに急速で,劇的である.ゲノム編集が知る人ぞ知るマニアックな手法で,作製に多くのノウハウを必要とする“専門的技術”であったのもいまは昔,現在は基本的な分子生物学の素地があれば,だれもが導入可能な技術になったといってよい.本稿では,ゲノム編集のいろはを伝えるべく,ゲノム編集の歴史と原理,および各種ゲノム編集ツールの概要について平易かつ俯瞰的に解説する.
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医学のあゆみ 252巻2号, 153-158 (2015);
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◎染色分体早期解離/多彩異数性モザイク(PCS/MVA)症候群は,染色体異数性と高発癌性を特徴とする希少な常染色体劣性遺伝病である.本疾患の原因のひとつは,BUBR1蛋白質の機能低下である.著者らは,日本人PCS/MVA 患者家系において本疾患発症ときわめて相関の高い一塩基置換(ss802470619 G>A)を,BUBR1 をコードするBUB1B 遺伝子上流44 kbの位置に見出した.本塩基置換が疾患の原因か否かを調べるために,transcription activator-like effector nucleaseを利用した一塩基置換法を考案し,ヒト培養細胞に本塩基置換を両アレル的に導入した.一塩基置換導入細胞において,BUBR1 mRNA発現量の低下および異数性などのPCS/MVA症候群患者細胞に特有な形質が認められたことから,本置換が疾患の原因変異であることが強く示唆された.
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医学のあゆみ 252巻2号, 159-163 (2015);
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◎遺伝子機能と形質との関係を個体レベルで研究するうえで,ゲノム改変マウスは非常に有用なツールであるが,その作製にはコストや労力を要することから,幅広く利用されているとはいい難いのが現状であった.近年,従来の作製法に代わるあらたな方法として,ZFN やCRISPR/Cas システムなどの人工ヌクレアーゼを利用した方法が注目を集めている.著者らは任意のZFN コンストラクトを短期間で作製可能な“OLTA 法”を開発し,わずか1 カ月でのノックアウトマウスの作製を可能とした.また,CRISPR/Cas システムによる高効率ノックアウトマウス作製法を開発し,大規模ゲノム領域欠失マウスの作製法を確立した.さらに本稿では,人工ヌクレアーゼ特有の問題である“オフターゲット効果”に対してオーソログCAS9やCAS9ニッカーゼを利用した回避法を提案する.人工ヌクレアーゼを利用したゲノム改変マウス作製法によって安価に効率よく複雑なゲノム改変を施したマウスが作製可能となった.
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医学のあゆみ 252巻2号, 165-169 (2015);
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◎生命科学研究において,遺伝子組換え動物が果たしてきた役割は非常に大きい.そのなかでも特定の遺伝子を欠損させることでその機能を知ることができるノックアウト(KO)マウス誕生から四半世紀が過ぎた現在,ゲノム編集ツールCRISPR/Cas システムの登場により遺伝子改変技術の転換期を迎えた.約一年を要するES細胞を介した従来法に比べ,CRISPR/Cas システムを利用すれば最短1 カ月でKO マウスの作製が可能である.著者らも培養細胞を用いたヌクレアーゼ活性評価系の構築やCRISPR/Cas9発現プラスミドDNA を環状のまま受精卵へ注入することで,簡便かつ効率のよい遺伝子改変マウス作製法を開発してきた.本稿では,CRISPR/Cas システムについて著者らのデータを交えながら最新の知見を紹介する.
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医学のあゆみ 252巻2号, 171-176 (2015);
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◎ ZFN/TALEN/CRISPR などゲノム編集技術は,従来のES 細胞による遺伝子改変技術よりも迅速かつ簡便に遺伝子改変動物を作製することができる.著者らは,これまで遺伝子改変技術がなかった実験用ラットにおいて,CRISPR/Cas9 を用いることでノックアウトラットの作製,一本鎖オリゴヌクレオチド(ssODN)によるSNP 置換,数十塩基挿入,レトロトランスポゾンなどの数kb 欠失といったさまざまなノックインラットの作製に成功している18).また,gRNA の認識配列特異性を利用して遺伝子の片側アリルだけを改変する“アレル特異的ゲノム編集”にも成功している.このような正確かつ効率的なゲノム編集技術は,ヒト疾患で同定されたSNP などの遺伝子変異反映したヒト疾患モデルラットの作製を可能にする.また,ヒト変異を正常配列に修復するといった遺伝子治療への利用も期待されている.
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医学のあゆみ 252巻2号, 177-181 (2015);
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◎ゲノム編集技術は特定の遺伝子を破壊して表現型を調べる“逆遺伝学”だけでなく,多数の変異を導入した集団のなかから目的の表現型をもつ変異体をスクリーニングする“順遺伝学”の分野においても劇的な変化をもたらしつつある.とくにCRISPR/Cas システムはガイド配列と標的が1 対1 の関係にあるシンプルさゆえに,ゲノムワイドな変異導入ライブラリの作製を可能にした.ガイド配列のライブラリはレンチウイルスベクターを介して細胞のゲノムに取り込まれ,標的遺伝子を破壊するとともに,それ自体が変異体の標識(DNAバーコード)として機能する.また,標的遺伝子を両アレルとも破壊することができるため,ヒトやマウスのような二倍体の培養細胞においても従来は困難であった劣性遺伝スクリーニングが可能になった.本システムの登場により,ヒトを含む哺乳類の遺伝学はあらたな発展段階に入ったといえるであろう.
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医学のあゆみ 252巻2号, 183-188 (2015);
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◎ゲノム配列の狙った部位を特異的に入れ替えるゲノム編集技術の発達により,これまで困難であったヒト細胞でのゲノム改変が可能となってきた.とくに,さまざまな細胞種へ分化できるES/iPS細胞への応用も目覚ましく,レポーター細胞の作成や細胞のマーキング,遺伝子破壊や変異修復などさまざまな応用例が報告されている.iPS細胞の臨床応用を後天性疾患のみならず先天性の遺伝子変異疾患にまで広げるためにも,効率的かつ精密な遺伝子編集技術の確立が必須である.本稿では,これまでのヒトES/iPS細胞におけるゲノム編集研究例を示しつつ,今後の研究展望について概説する.
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医学のあゆみ 252巻2号, 189-193 (2015);
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◎かつてはAIDS という死の病であったhuman immunodeficiency virus(HIV)感染症も,抗HIV 剤の併用療法(ART)の進歩によりその発症がコントロール可能な慢性疾患となった.しかし,いまだにAIDS からの完全治癒(完治)を誘導する治療法は確立されていない.これまでその完治例はひとつの症例のみである.それはHIV感染抵抗性を示すCCR5 変異体(CCR5-Δ32)ホモ接合体ドナーの骨髄移植により成功した.しかし,少数の白人のみにみつかるCCR5-Δ32 ホモ接合体ドナーとレシピエント間のHLA 型の一致率は少なく,この治療法は一般化できない.本稿では,近年大きく進歩したAIDS 治療の問題点とその技術手法が急展開したゲノム編集法を利用するAIDSからの完治を目的とした治療法の今後の展望について,著者らの結果も含め紹介する.
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連載
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iPS細胞研究最前線−疾患モデルから臓器再生まで 11
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医学のあゆみ 252巻2号, 201-207 (2015);
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◎末期慢性腎不全はその有効な治療法が少ないこと,およびわが国においても医療経済を圧迫していることなどからiPS細胞(induced pluripotent stem cell;人工多能性幹細胞)を用いた腎疾患に対する再生医療開発が解決策のひとつとして期待されている.実験動物を用いた腎臓発生機構や腎構成細胞に分化しうる前駆細胞の解明が徐々に進展し,それらの知見に基づいてヒト多能性幹細胞から腎系譜細胞を分化誘導する多くの試みもなされてきた.また,遺伝子導入によりネフロン前駆細胞を直接誘導する試みや,キメラ動物体内で三次元の腎臓全体を再生する試みも行われている.さらに,ヒト胎児ネフロン前駆細胞を用いた慢性腎不全治療の研究もはじまっている.今後,これまでに蓄積された経験と腎臓発生機構のさらなる解明によってヒトiPS細胞から高効率に特定の腎構成細胞を分化誘導する方法が開発され,疾患モデル作製や治療薬探索などの臨床応用をめざした研究の発展が期待される.
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フォーラム
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パリから見えるこの世界 36
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医学のあゆみ 252巻2号, 209-213 (2015);
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TOPICS
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再生医学
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医学のあゆみ 252巻2号, 195-196 (2015);
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放射線医学
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医学のあゆみ 252巻2号, 196-197 (2015);
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呼吸器内科学
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医学のあゆみ 252巻2号, 197-199 (2015);
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