医学のあゆみ
Volume 254, Issue 9, 2015
Volumes & issues:
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【8月第5土曜特集】 日本のがん診療UPDATE─連携拠点病院と最新トピックス
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- がん診療トピックス
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日本におけるがん検診の現状
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎胃がん・肺がん・大腸がん・乳がん・子宮頸がん検診の有効性は科学的に証明されているが,日本におけるこれらのがん死亡率は減少していない.理由はがん検診の現状に問題があるからである.がん検診の実施形態には対策型検診,職域検診,任意型検診があるが,職域検診と任意型検診に報告義務はなく,正確な受診率は不明である.これら3 つを合わせた受診率をおおまかに知る手段としては国民生活基礎調査があり,受診率は5 がんともがん対策推進基本計画に謳っている50%には達していない.しかも福井県での地域・職域全数調査が正しいならば,国民生活基礎調査による受診率は肺がんを除いて過大評価である.職域検診や人間ドックでは精度管理が不良な点も問題である.がん死亡を減らすには,就労者を含めて対象年齢の全員にがん検診を案内し(call),未受診者に対しては再受診勧奨(recall)によって受診率を高め,職域でも地域と同様の精度管理を行うことが重要である.しかし,がん検診の不利益も十分に認識すべきである. -
がん登録資料の利活用―多岐にわたるがん対策での活用事例
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎医療機関で実施されている院内がん登録の推進に伴い,その情報を重要な資料源のひとつとしている地域がん登録資料の精度は向上しつつある.そして,①がん対策の企画と評価における利活用,②がん検診の精度管理における利活用,③医療機関別診療実績に関する利活用,④患者目線の情報発信に向けた利活用,など地域がん登録資料の利活用が進められている.2016 年1 月より「がん登録等の推進に関する法律」に基づいて全国がん登録が開始され,地域がん登録は全国がん登録へと移行する.同法では国および都道府県,市町村,医療機関などによるがん登録資料の利活用に重きをおいていることから,多岐にわたりがん登録資料の利活用が進むことを期待する. -
安全対策とキャンサーボード―徳島赤十字病院の場合
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎がんは昭和56 年(1981)より日本人の死因の第1 位で,現在では年間約30 万人以上の国民ががんで亡くなっている.また,男性の2 人に1 人,女性の3 人に1 人ががんにかかる可能性があると推測されている.抗がん薬による医療事故は重篤な結果となることが多く,その予防や対策はがん薬物療法の安全確保としてもっとも重要な課題である.平成18 年(2006)2 月1 日付の厚生労働省健康局長通知では,各学会の診療ガイドラインに準ずる標準的治療,集学的治療の重要性が示された.また,平成20(2008)年3 月1 日の通達では,キャンサーボードや化学療法のレジメン審査についての要件が追加・変更された.地域がん診療連携拠点病院として,がん薬物療法を安全かつ適正に提供できるよう,レジメン審査の精度を高め,医薬品の安全管理を行っていきたい.また多職種で症例を検討することにより,その患者にとってもっともよい治療を提供できるよう,薬剤師としてもサポートしていきたい. -
希少がん―その臨床像と課題
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎がん診療連携拠点病院の整備など五大がんを中心としたがん医療の均てん化が進められた結果,わが国のがんの年齢調整死亡率は減少傾向で推移するなど着実な成果が得られている.しかし,メジャーがんの治療成績が改善する一方で,まれながん,いわゆる希少がんに関してはその治療実態の把握も十分ではなく,生存率もその他のがんに比べて劣るなど,がん全体の治療成績向上の恩恵を受けられていないことも明らかになってきた.希少がんにおいては,医療の質の担保・向上,治療開発などのために,均てん化とは逆のベクトルが必要ではないかとも考えられるようになっている.医療者が自律的に“希少がん患者のために最適な診療のあり方”を議論し,患者,行政とともにそれぞれの希少がんの実態にあった集約化,ネットワークを構築していくことが重要と考えられる. -
GIST に対する術前補助療法の臨床試験
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎分子標的薬であるイマチニブの登場により切除不能・再発消化管間質腫瘍(GIST)の治療成績が画期的に向上して以来,切除可能GIST に対してイマチニブを術後補助療法として用いる臨床試験が盛んに行われてきた.しかし,術後補助療法を行った場合でもhigh リスク患者の再発率はいぜんとして高いため,術後再発率の低下および臓器温存による術後QOL の向上のため,術前補助療法が試みられつつある.しかし,アメリカで実施された第Ⅱ相試験(RTOG0132)では,術前投与期間が8~12 週間と短かったこともあり,期待された有効性を示すことができなかった.腫瘍径10 cm 以上の胃GIST に対して術前に6~9 カ月間イマチニブを投与する第Ⅱ相試験が日韓共同で開始され,2014 年9 月をもって55 例(日本:33 例,韓国:22 例)の登録が完了となった.現在追跡期間中であり,その結果がまたれる. -
肉腫治療の将来展望―サルコーマセンターの必要性
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎肉腫は代表的な希少がんのひとつである.肉腫は組織型や発生部位そして発生年齢がさまざまであり,現在の各科縦割りの診療システムでは,対応が困難な疾患である.わが国では肉腫の全領域に及ぶ登録システムが完備されておらず,治療施設も分散されており,標準治療すら行えていない場合がある.ヨーロッパでは肉腫診療施設の集約化により,医療費削減や新規治療の開発が進んでいる.最近の分子標的薬をはじめとする新規薬剤の開発は,肉腫の治療においても劇的な変化をもたらす可能性がある.サルコーマセンターは,共同で手術を行うための外科系各科や新規薬物治療を担う腫瘍内科医のほかに放射線科医,病理診断医,基礎研究医をつなぐ横糸の役割をするシステムである.サルコーマセンターが機能している施設に肉腫を集約化することにより,わが国の肉腫治療は飛躍的に向上し,世界に向けての情報発信が可能になると思われる. -
二次がんと重複がんの診療
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎二次発がんは,①骨髄異形成症候群(MDS)および急性骨髄性白血病(AML)を含む造血器腫瘍と,②固形腫瘍の2 種類に分類できる.治療関連による二次がんの要因と考えられているTP53 変異には初診時から0.003~0.7%の頻度に認められるケースもある.この異常細胞は化学療法抵抗性であり,クローン選択されて発病する.さらにTP53 の変異は正常末梢血にも生じており,化学療法が直接TP53 を生じさせているのではないとも考えられた.また,遺伝子の変異は加齢に伴って蓄積し,血液がんの発症を増加させるクローナルヘマトポイエーシスが生じる.悪性腫瘍の治療生存者が増加するにつれ,今後は二次がんや重複がんも増加していくことが予想される.理想的には最初の悪性腫瘍の治療が終了した時点から長期的な包括的フォローアップ体制が構築されることが望ましい. -
がんの遺伝医療と遺伝カウンセリング
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎遺伝性腫瘍に関する医療者の関心が高まり,遺伝性腫瘍の診療体制はここ数年各医療機関で整備されつつある.遺伝性腫瘍の診断が手術術式やその後のマネジメントに重要な情報となり,さらに抗癌剤のコンパニオン診断に用いられる可能性もある.本稿では遺伝性乳癌卵巣癌を中心に遺伝性腫瘍の診断にかかわるコンパニオン診断について,最近の知見を述べる.遺伝性乳癌卵巣癌は,BRCA1/2 の生殖細胞系列の病的変異による乳癌卵巣癌の易罹患性腫瘍症候群である.大規模な国際登録事業によりBRCA1/2 遺伝子変異のgenotypephenotypeの相関の報告がみられ,わが国でもようやく登録事業がはじまろうとしている.乳癌診療ガイドラインが改訂となり,今回からHBOC は推奨グレードで記載されることになった.リスク低減卵巣卵管切除術(RRSO;推奨グレードB)や乳癌発症と反対側のリスク低減乳房切除術(CRRM;推奨グレードC1)は癌の発症リスクを減少させるだけでなく,生命予後を改善することは複数の報告で示されている.また,欧米ではHBOC に発症した再発卵巣癌に対してPARP 阻害剤が承認された.ヨーロッパでは腫瘍自体にBRCA 変異を有している場合も承認されており,体細胞先行のBRCA1/2 遺伝子検査の流れも提唱されている.抗PD‒1 抗体薬の治療効果とMSI 陽性腫瘍の関連も指摘されている.このように癌にかかわる医療者すべてが癌の遺伝医療について基本的な知識が必要とされる時代となった. -
がんにおける腹腔鏡手術の進歩
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎がんにおける腹腔鏡手術は普及の一途をたどっている.腹腔鏡手術は低侵襲であるのみならず拡大視効果などのメリットがあり,リンパ節廓清の際には有効であると考えられる.当院では腹腔鏡による低侵襲アプローチで幽門保存胃切除,噴門側胃切除,腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除術を行うことでできるだけ胃の機能を温存し,術後のQOL を重視した手術を行っている.これらの機能温存手術の概念および適応について紹介する. -
がん患者の栄養代謝とマネージメント
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎がん患者の栄養代謝は異化亢進で,骨格筋蛋白質の異化亢進に伴う筋減少症や脂質異化亢進により体脂肪の減少を示す.これらの代謝異常は悪液質とよばれる.がん患者の三大栄養素代謝の特徴は,糖質ではブドウ糖代謝が亢進し筋肉量の減少をきたす.脂質では合成の抑制,分解の亢進により全身の脂肪量が減少する.蛋白質も分解が亢進し,合成は抑制され除脂肪体重が減少する.これらの栄養代謝異常をきたすがん患者に対する栄養評価はがんのマネージメントの第一歩となる.がん患者に栄養療法を行い,がんが異常増殖を起こし全身状態を悪化させたというデータはないことから,栄養療法は躊躇することなく実施すべきである.近年,がん患者に対する化学療法が積極的に行われており,副作用としての食欲不振や嘔吐など消化器症状の頻度が高く,副作用により体重が減少し栄養状態は悪化すると化学療法の効果は低下することから,その対策は重要である. - 化学療法・腫瘍内科の現状
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腫瘍内科の現状とこれから
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎腫瘍内科学とはがんの薬物療法を中心とした学問で,“medical oncology”の日本語訳である.がん治療の中心を外科医が担うことが多かった日本では,その発展が欧米に比べて遅れていたが,2002 年の日本臨床腫瘍学会の発足を皮切りに,日本の腫瘍内科学は順調な発展を遂げている.しかしがん薬物療法専門医の不足やその専門性の偏りなど,問題点も多い.さらに,予後の改善に伴う患者数増加によるマンパワー不足や高血圧,高脂血症,慢性閉塞性肺疾患といった併存慢性疾患の管理の重要性の増加,さらにはつぎつぎと新規の分子標的治療が開発されていくなかでの薬価の高騰などのあらたな問題も生じている.日本のがん最盛の時代に立ち向かっていくため,腫瘍内科の専門科としての進歩だけではなく,その他各診療科,コメディカル,あるいは国・地方自治体とのさらなる連携の強化が望まれる. -
日本におけるがん化学療法に伴う悪心・嘔吐の予防的制吐療法に関する研究の紹介
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎がん化学療法は全身的にがん細胞増殖を阻止することでその有効性を発揮するが,その一方で消化器症状をはじめ多様な副作用が生じることが知られている.その副作用のなかでも化学療法誘発悪心・嘔吐(chemotherapy-induced nausea and vomiting:CINV)は患者がもっとも不快に感じる副作用のひとつであり,食欲不振,脱水,低栄養,電解質異常などを伴い,QOL(quality of life)を著しく低下させるだけでなく,がん化学療法の継続を困難にする場合もある.がん化学療法の効果を最大限に発揮するためには,これらの副作用を予防・制御することも重要である.欧米ではCINV への関心は高く,海外のCINV に関する研究と制吐療法ガイドラインの実用化は,日本に比べ早くから行われた.近年,日本における高度および中等度催吐性抗悪性腫瘍薬投与に伴う急性期と遅発期の消化器症状(悪心・嘔吐,食欲不振)の発現状況や,予防的制吐療法の実態が明らかになりつつある.日本初の全国規模で実施されたCINV 研究では,海外の傾向とは反して日本の医療従事者によるCINV(とくに急性期)の予測は過大評価である一方で,遅発期悪心の制御は不十分であることが改めて明らかとなった.さらに,日本人の遅発期悪心・嘔吐に対し,NK1 受容体拮抗薬の未使用と女性がリスク因子として強く関与することを確認した.海外事情と同様,今後の日本においても治療の個別化,そしてCINV予防の向上にはさらなる研究が必要である. -
抗がん剤の晩期毒性―不妊とその対策
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎抗がん剤による性腺機能障害は不可逆な場合も多く,生殖年齢にあるがん患者が不妊となった場合にはがん治療後の生活の質に大きく影響する可能性があるため,治療前に十分な情報提供と意思決定の支援を行うことが推奨される.女性がん患者の場合,凍結胚保存,あるいは卵子保存が標準的な妊孕性保持の方法である.女性患者の妊孕性保持に関する意思決定の支援にあたっては,エビデンスについて熟知するともに,がん患者それぞれの病状や予後,ニーズに応じた個別のきめ細やかな対応が必要となる.また,がん治療後にも患者のニーズが変化する可能性も踏まえ,治療前だけでなく治療中,治療後を通じて患者との対話の門戸を開き,フォローしていく必要がある. -
発熱性好中球減少症の予防と治療
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎がん化学療法において,発熱性好中球減少症(FN)は患者の死亡や入院期間延長の要因となる重篤な有害事象である.FN 発症率が20%以上ある化学療法レジメンでは,予防的G-CSF 投与が推奨される.10~20%のレジメンであっても,65 歳以上の高齢者,performance status(PS)不良,臓器障害を有するなどの患者はFN 発症の高リスク群であり,予防的G-CSF 投与が推奨される.2014 年,わが国ではペグG-CSF ががん化学療法におけるFN 発症抑制に対して保険適応となり,より簡便に予防的G-CSF が使用可能となった.FN治療として,低リスク群の場合はシプロフロキサシンとアモキシシリン/クラブラン酸の併用が,高リスク群の場合は入院のうえ,セフェピム,メロペネム,イミペネム/シラスタチン,タゾバクタム/ピペラシリンのうちいずれか1 剤が推奨される. - 東京都がん診療連携協議会の活動
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評価改善部会
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎平成26 年(2014)1 月10 日に,がん診療連携拠点病院の認定に関する新指針が公表された.新指針にはそれまでにないあらたな必須要件が追加されたが,そのひとつが“PDCA サイクルの確保”である.各施設においてがん患者の療養の質の向上をめざし,いくつかの指標を選んで目標設定し,この手法に準じて改善活動を継続することが求められた.その実績は毎年の現況報告書において報告されることになった.また,都道府県がん診療連携拠点病院ではそれらの活動を主導し,情報共有と相互評価を行い,この全過程を地域に対してわかりやすく公表することが求められた.これらの各拠点病院における活動を推進・調整するために,東京都がん診療連携協議会の傘下に設置されたのが評価改善部会である.本稿では,その胎動期から初期の活動,今後の展望についてまとめてみる. -
クリティカルパス部会
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎クリティカルパス部会(パス部会)は東京都がん診療連携協議会に属する専門部会のひとつで,下部組織として連携促進委員会を有する.パス部会は拠点病院,東京都医師会の医師により構成されており,そのミッションは地域連携クリティカルパス(連携手帳)の作成,導入手順の作成・普及・啓発である.連携促進委員会は連携手帳の普及,診療体制の構築,各施設の事務局機能の充実を目的とする委員会で実務担当者により構成されている.これまでに肺がん,胃がん,大腸がん,肝がん,乳がん,前立腺がんの連携手帳,東京都PSA手帳,東京都緩和ケア連携手帳を作成し運用しているが,その実績は十分とはいえない.今後,PDCA サイクルの手法を用いて連携の効率や質の改善に努める予定である. -
東京都におけるがん登録体制の樹立―東京都がん診療連携協議会がん登録部会の活動
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎2002 年以降,全国ではがん医療の均てん化をめざしてがん診療(連携)拠点病院が整備された.東京都では2008 年に24 施設が指定され,東京都がん診療連携協議会がはじまった.その専門部会のひとつにがん登録部会が設置され,院内がん登録精度向上やデータ利活用に関する検討が行われている.さらに,その下部組織の実務者連絡会では実務者研修を進めている.がん登録は協議会発足時の重要テーマであり,2009 年の初回の院内がん登録全国集計提出を後押しし,地域がん登録実施の具体的な検討が行われた.2012 年に東京都の地域がん登録事業が開始され,さらに2013 年末にはがん登録推進法が成立したが,地域がん登録届出における拠点病院の比率は9 割近くを占めており,拠点病院の比率は高い.2014 年のがん診療連携拠点病院の整備に関する新指針により,拠点病院の整備とともにがん登録精度向上が図られている.2016 年1 月施行のがん登録推進法施行を契機に,協議会や拠点病院にはがん登録事業に関しても先導的な活動が期待される. -
東京都がん相談員の現状と課題―相談・情報部会担当者連絡会の活動を通して
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎東京都は1,300 万人超と全国一人口が多く,他の道府県と比べ医療機関数も多い.都心への交通網の発達もあり,周辺県からの中間流入人口も多いという環境にある.都道府県がん診療連携拠点病院も2 施設あり,平成20 年(2008)に東京都がん診療連携協議会を設置,平成22 年(2010)にはがん診療の連携協力体制および相談支援の提供体制,その他がん医療の情報交換に関することを協議し,連携を図ることを目的として,相談・情報部会のなかに担当者連絡会を設置した.現在は担当者連絡会に相談支援検討チームと研修企画・運営チームをおき,それぞれ,東京都のがん相談支援センターのあり方の検討,東京都がん相談員研修による相談の質の向上と連携を図っている.“東京都がん対策推進計画第一次改定”,平成26 年(2014)1 月厚生労働省の“がん診療連携拠点病院などの整備に関する指針”などを受け,がん相談支援センターのあり方を検討し,都道府県の枠を超えたネットワーク構築の課題に取り組んでいる. -
研修部会の活動
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎研修部会とは,東京都がん診療連携協議会に設置された5 つの専門部会のうちのひとつであり,各部会において専門的事項の検討を行うために組織されている.本部会は東京都内におけるがん診療連携拠点病院(都道府県がん診療連携拠点病院,地域がん診療連携拠点病院:いずれも国指定)および東京都がん診療連携拠点病院(東京都認定)において,専門的ながん医療を担う医師,薬剤師,看護師,放射線治療技師を対象とした研修や,がん医療に携わる医師を対象とした緩和ケアに関する研修の円滑な実施に向けた検討を行っている.また,本部会の下部組織として医師,薬剤師,看護師,診療放射線技師の4 職種と緩和ケア研修を検討する小委員会を設置し,各小委員会で研修内容や研修テーマなどの計画作成をし,意見交換などを行っている. - 施設での連携体制の紹介
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胃がん・大腸がん術後患者に対する地域連携パス―地域連携パスの活用
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎倉敷中央病院では2009 年4 月から胃がん・大腸がん患者に対する地域連携クリニカルパス(連携パス)を導入している.連携パスは患者満足度を上げるツールのひとつとなるが,適用する患者の選択には注意を要する.高血圧,高脂血症,糖尿病などの持病で手術を受ける前からかかりつけ医のある患者は連携パスのよい適応となる.パスの導入は患者説明,かかりつけ医への連絡,予定どおり通院されているかの確認,バリアンスへの対応,達成終了時の対応,主治医交代の連絡など業務量が増えるので,医師だけでなく看護師・事務など他職種の協力が不可欠であり,それぞれの拠点病院で実行可能なシステムを構築する必要がある. -
乳がん術後内分泌療法の地域連携クリティカルパス
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎がん診療連携拠点病院制度では,拠点病院の役割として専門的ながん医療の提供に加え,地域のがん診療の連携協力体制の構築をあげている.がん治療は集学的治療の必要な初期治療から緩和ケアまで,地域で連携協力して行う.拠点病院の指定要件である診療機能のひとつに地域におけるクリティカルパス(以下,パス)の整備がある.パスを地域で共同して作成・実施することは,治療の標準化,安全管理の向上につながる.拠点病院において専門的な治療の方針決定・導入を受け,自宅に近い地域のかかりつけの医療機関において,標準化した治療と副作用対策がなされる.乳がんの治療はほとんどの場合,外来通院で可能なため,地域における早い段階からの病病・病診連携は比較的容易な領域であろう.著者らは,乳がんの標準的薬物療法のうち,まずはリスクの比較的少ない術後内分泌療法にあたって地域連携パスモデルを作成し,地域ネットワークの構築を試みている.がん治療の連携にあたり,患者への説明や薬剤個々の副作用などに注意を要するため,その画一化は容易ではないとされるが,パスを用いることで,より標準化した安全な医療が期待できる.本稿ではその紹介と背景,利点,問題点と対策などについて述べる. - 緩和医療
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緩和医療と専門的がん疼痛治療
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎緩和医療は全人的な症状緩和を求める領域としてあらたに発展してきた.早期から緩和医療を導入せよといわれるが,現場はまだまだ末期の患者の症状マネジメントをどうするかで手一杯である.医師,看護師,薬剤師がそれぞれ啓発を進めているが,医師の領域では,すべての医師が備えるべき基本的な症状マネジメントの方法,全人的考え方の啓発に重きがおかれている.患者が求めるのは適正な症状マネジメント,とくにがんの痛みについてはオピオイドの適正使用や専門的がん疼痛治療法であろう.そのなかで,研修会などでは触れられることの少ないペインクリニック的治療法として,オピオイド注射薬の使用法,脊髄鎮痛法,神経ブロック療法を紹介する.本稿では,専門的ながん疼痛治療法について紹介し,緩和医療の看板をかかげる医師,そしてがん治療を実施する主治医に“こういった治療法があるのだ”ということを知っていただきたいと考えて執筆した. -
緩和ケアセンターの紹介
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎厚生労働省は都道府県がん診療連携拠点病院の指定要件として,2016 年3 月までに緩和ケアセンターを設置することを義務づけた.将来的に,その他のがん診療連携拠点病院にも緩和ケアセンターの設置が求められることが予測される.がん医療において緩和ケアの重要性はいうまでもなく,緩和ケアの均てん化と普及・推進をめざす緩和ケアセンターに期待される役割は大きい.しかし,人員の確保など課題も大きい.がん研有明病院で緩和ケアセンターを組織化したプロセスと,苦痛スクリーニングを含めたその取組みを紹介する. -
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- 各学会のめざす方向
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日本臨床腫瘍学会“がん薬物療法専門医”制度がめざすもの
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎がん薬物療法は高度に専門化した.分子標的薬の登場により治療成績も向上したが,毒性も多彩化し,その管理には専門性を要するようになった.従来,わが国のがん薬物療法は臓器別診療体系のなかで行われてきたために,多くの弊害を招いてきた.臓器・領域横断的にがんの薬物療法を担当できる専門家が求められ,日本臨床腫瘍学会ではそのようなmedical oncologist を“がん薬物療法専門医”として認定している.この専門医はがんの薬物療法の専門家として特定の臓器・領域に限定することなく横断的に診療にあたれる医師である.臓器横断的にがん薬物療法を学ぶことにより合理的な治療が可能となり,原発不明がんなど従来は担当診療科が明瞭でなく“がん難民”となっていた患者を救済でき,重複がんや転移性腫瘍にも適切に対応できるようになる.臓器別の専門性を高める場合には,幅広いがんの薬物療法を修得した後にすべきである.がんの基礎医学を理解し,臨床試験の成績を適切に診療に反映する能力,緩和医療にも対応し外科医・放射線治療医と連携できるがん診療のコーディネーターとしての役割も求められる. -
日本緩和医療学会がめざすがん診療
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎日本緩和医療学会は「よりよい緩和ケアを必要とする患者とその家族に,よりよい緩和ケアを提供する」ことを目的に,各種関連団体と協力してさまざまな活動を行っている.一般市民への緩和ケアの普及啓発,すべてのメディカルスタッフへの緩和ケア教育,緩和ケアに関連したガイドラインの作成などを行い,緩和ケアの供給体制の強化と患者の緩和ケアへのアクセスの改善を推進している.また,厚生労働省が第2 期“がん対策推進基本計画”で掲げる「がん患者とその家族に,がんと診断された時から,もれなく,切れ目なく,必要な場所で緩和ケアが実施される」ことを実現するため,がん診療連携拠点病院の機能強化,地域の一般医療機関との連携強化,さらに一般医療機関のがん診療,緩和ケアのレベルアップを支援する活動を行っている. -
日本医療薬学会がん専門薬剤師認定制度―がん専門薬剤師,がん指導薬剤師
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎抗がん薬は多くの新薬の登場により治療成績が向上してきているが,一方で投与スケジュールなどが複雑化しており,臨床現場では専門性の高い薬剤師の役割が重要となってきている.日本医療薬学会では,がん薬物療法などについて高度な知識や技術と臨床経験を備える薬剤師を養成し,国民の医療や健康に貢献することを目的として,2009 年にがん専門薬剤師制度を発足した.2015 年1 月現在,437 名のがん専門薬剤師を輩出している.がん専門薬剤師制度では,保険調剤薬局や大学に勤務する薬剤師にも門戸を開いており,がん指導薬剤師による指導により資格を取得できる制度設計となっている.また,薬剤師の認定・専門資格はさまざまな領域であるが,医療薬学会認定のがん専門薬剤師は唯一医療法上広告可能な専門資格である.がん専門薬剤師の資格取得者は全国のがん専門薬剤師と連携を取り,高質な臨床業務を行えるよう努力している.専門資格取得自体がゴールではなく,今後はより質の高い臨床業務を実践し患者へ貢献できるかが問われている. - 日本から研究がはじまって承認された抗がん剤:開発の経緯から現状まで
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抗PD-1 抗体ニボルマブの基礎と臨床効果
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎がんは,生体のホメオスタシス維持に必須である免疫抑制機構を巧妙に用いて,がん免疫応答を不活化している.CTLA-4 やPD-1 などの免疫抑制シグナル(免疫チェックポイント)を抗体薬で阻害するとがん免疫応答が再活性化され,治療効果が得られることがわかってきた.わが国で開発が進められた抗PD-1 抗体のニボルマブは,しばしば治療終了後も継続する持続的な抗腫瘍効果と優れた安全性を有し,固形癌のみならず血液悪性腫瘍などの幅広いがん治療を変えようとしている.とりわけ悪性黒色腫,肺癌では標準治療に比べ生存期間の延長が示され,腎癌での有効性も明らかになりつつある.また,がん細胞のゲノム不安定により生じた変異部(neo-antigen)に対するT 細胞応答が治療奏効の鍵であることが明らかとなり,腫瘍におけるPD-1 リガンドの発現やミスマッチ修復状態がバイオマーカーの候補として報告されている.ニボルマブが適切に使用され多くの患者の福音となるとともに,今後もわが国発の新規治療が発信されることを期待している. -
エリブリンに関する臨床試験
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎エリブリンメシル酸塩は海綿動物Halichondria okadai から単離されたハリコンドリンB の合成誘導体で,2011 年にわが国で“手術不能または再発乳がん”の適応で承認された.この薬剤は抗腫瘍効果,安全性,投与の簡便性が種々の臨床試験から示されている.とくにその単剤使用により大規模第Ⅲ相試験(EMBRACE 試験)で全生存期間の延長という有用性が示されたのは,臨床的なインパクトが強かった.他領域がんでもエリブリンの有用性が示されつつある現在,抗腫瘍効果規定因子の基礎的な検討とともに,エリブリンのより有効な治療法を探索する意味で,他剤との併用療法や早い使用ラインなどの探索を,今後臨床試験を通じてしていくべきと思われる. -
TAS-102
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎ TAS-102 は,トリフルリジン(FTD)とチピラシル塩酸塩(TPI)を1:0.5 のモル比で配合した経口ヌクレオシド系抗がん剤である.FTD は1964 年にアメリカで合成された抗腫瘍活性を有するチミジンアナログであるが,血中半減期が短く抗がん剤としての開発は中止された.ふたたび抗がん剤としての開発に乗り出したのは大鵬薬品工業で,FTD の分解酵素であるチミジンホスフォリラーゼを阻害するTPI を配合したTAS-102を創薬した.第Ⅰ相試験で用法・用量が決定された後,日本において第Ⅱ相試験が行われた.標準治療に不応・不耐となった切除不能進行・再発大腸がんを対象としたプラセボとの比較試験においてTAS-102 は有意に生存期間を延長し,大腸がんに対する治療薬として世界に先がけて日本で承認された.欧米と日本の国際共同試験として行われた第Ⅲ相試験においてもその有効性は証明され,現在,欧米での承認審査が進められている.本稿では,TAS-102 の開発経緯から世界的標準治療薬となるまでの道のりについて述べる. -
trametinib
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎癌の薬物療法に関しては長年にわたり膨大な努力がなされてきたものの,その進展に関しては期待したほどの成果が得られない時代が長く続いた.しかし,一方では数多くの癌遺伝子や癌抑制遺伝子の発見により,発癌機構はかなりの部分まで解明されてきた.当初はその研究成果を臨床成績に簡単に結びつけることが困難であったが,その後,慢性骨髄性白血病の原因分子Bcr-Abl に対する分子標的薬imatinib の成功に代表されるように,著効を示す癌分子標的薬が登場してきた.BRAF 変異メラノーマ患者に対する治療法に関しても,従来の抗癌剤の奏効率は約5%程度であったが,著者らがJT 医薬総合研究所と見出したfirst-in-class のMEK 阻害剤trametinib とBRAF 阻害剤dabrafenib との併用により,奏効率は約75%まで劇的に改善された.今回はtrametinib の今後の展望も含めて述べてみたい. - 背景・周辺領域トピックス
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環境発がん―人工がん創生100 周年
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎日本国内では2005 年のクボタショックを機に,アスベスト曝露による発がんの危険性が一気に認知された.現在,アスベストの製造などは原則禁止されているものの,曝露から発症まで20~40 年の期間を必要とする中皮腫の患者数は増加傾向にある.著者らは,2005 年8 月から順天堂大学に早期発見・治療をめざした“アスベスト・中皮腫外来”を開設し,週1 回の外来は現在も続けられている.また,企業との連携により“中皮腫診断キット”および“総合的中皮腫早期診断システム”を確立し,日本国内の難治性中皮腫の総合的治療戦略を推進している.さらに,グローバルな視点をもった共同研究のための支援体制を整備し,アジア地域との研究交流活動を行うことできちんとした知識をもち,化学発がん創始国としてアジア地域の環境発がん研究に貢献していきたいと考えている. -
腫瘍・循環器病学―抗腫瘍薬の心毒性をマネジメントする新しいsub-specialty
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎がん治療の飛躍的な進歩により多くの患者の命が救われるようになったが,これは同時にcancer survivorsの加速度的な増加につながった.これを受けて抗腫瘍薬の心毒性をマネジメントする新しいsub-specialty として,腫瘍・循環器病学(Onco-Cardiology)という分野が誕生し,多くの知見が得られている.本稿では,わが国ではまだ馴染みの少ないこの分野について,著者らの経験も含めて紹介する.心毒性の定義,分類,治療法,そして早期発見の重要性について概説し,新しい心エコー指標である心筋ストレイン法の有用性を紹介する.がん治療の発展によりますます増加するこのあらたな患者群を背景に,このsub-specialty も今後の発展が予想される. -
がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎“がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン(以下,がんプロ推進プラン)”は文部科学省の大学における医療人の養成(医学・歯学・看護学など)の取組みのひとつである.専門家や有識者による審査の結果,15 グループが選定され,平成24 年度(2012)から5 年間の予定で開始されている.各グループはそれぞれの特徴を生かした教育カリキュラムを組んでいるが,“研究者育成”“地域貢献”“教育改革”が共通するキーワードである.とくに“地域医療貢献”重視型では,教育活動自体に“がん診療連携拠点病院(がん拠点病院)”との連携が必要であり,がんプロ推進プランによって育成された人材(がん専門医療人)の,がん拠点病院への還元も可能となる.このように,“がんプロ推進プラン”と“がん拠点病院”は相互補完的な存在であり,両者がうまく協力することでわが国のがん医療の改善・発展につながるものと期待される. -
がんサバイバーの就労支援
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎日本人の2 人に1 人は生涯のうちに何らかのがんに罹患し,そのうちの3 人に1 人は就労可能年齢である.働く世代のがんサバイバーにとってがんと付き合いながらの就労は重要課題のひとつである.第2 期がん対策推進基本計画では全体目標に“がんになっても安心して暮らせる社会の構築”が加えられ,重点課題として“働く世代へのがん対策の充実”が位置づけられた.がんサバイバーの復職,就労継続,新規就労の実現は,がんサバイバー自身,医療者,企業,ハローワークなどが協働して取り組むべき課題である.医療者としてできること・すべきことは,①がん診断などに伴う衝撃や混乱のなかで「いますぐに仕事を辞める必要はない」ことを伝える,②治療や副作用の見通しや対応などについて説明し,患者・家族が仕事と治療の調和・両立について考え,必要時には職場に説明できるように支援する,③がん相談支援センターにおいて就労に関する相談ができることを伝える,などであると考える. -
化学療法・放射線療法中の副作用に対する患者への栄養サポート
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎化学療法・放射線療法中には悪心,嘔吐,口内炎,味覚異常,便秘,下痢,骨髄抑制など食事に影響を与える副作用がしばしばみられる.これらの副作用に対し栄養サポートを行うことで,栄養障害や体重減少が抑えられることが報告されている.栄養状態の維持は治療の完遂率を高め,ひいてはよりよい治療効果が得られると期待される.副作用への対策としては,嘔気・嘔吐,下痢,便秘などには薬剤の効果が期待できるが,食べることを妨げる味覚異常,嗅覚障害,口内炎については効果的な薬剤がない.これらに対しては食事の工夫のほか,経口摂取以外の栄養方法を検討する必要がある.最良の栄養サポートを実践するためには医師・歯科医師,薬剤師,看護師と連携し,チームとして栄養サポートに取り組むことが不可欠である. - 地域におけるがん診療連携拠点病院の現在
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青森県立中央病院
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎青森県立中央病院がん診療センターの活動を中心に,地域におけるがん診療拠点病院の現状と課題について述べる.当院のような総合病院の枠組みのなかでがん診療を展開しようとする場合,センター化は有用な手法であり,センター会議(および企画室)の存在は円滑な運営と,各診療科を越えた各種委員会のactivity を支え,診療実績の質と量の向上に大きく寄与することができる.しかし,全国的な傾向とはいえ,地方における放射線科医や病理医の激減は目を覆うばかりであり,多忙のため必要最小限の日常業務にしか貢献できていない.情報通信技術(ICT)を活用したtelepathology やteleradiology の積極的な導入が,国のがん対策事業の課題として積極的に取り上げられるべきと思われる.なお,診療連携パスなどこれまでの受療行動(習慣)の変化を伴う課題については,患者の広い理解が求められることから,時間的な猶予も必要と思われる. -
茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンターの現状と役割
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンターは茨城県内の新規年間発生の約6.8%の診療を担い,常勤医師数118 名で病床数500,平成26 年度(2014)の1 日平均外来数955,年間入院患者数10,146 であり,そのうちのがん患者数は4,043 である総合病院である.当院はがん診療の強化をめざし,平成2 年(1990)に地域がんセンターの指定を受け,さらに平成4 年(1992)には全国がん成人病センター協議会に加盟した.続いて平成19 年(2007)には,都道府県がん診療連携拠点病院の指定を受けて茨城県のがん診療連携協議会を平成20 年(2008)に発足させ,茨城県のがん医療のまとめ役となっている.当院の院内がん登録は年々増加を示し,平成24 年度(2012)の院内がん登録件数は1,702 件であった.院内にはがん関連の4 センター(化学療法,放射線治療,緩和ケア,相談支援)を設けて,がん医療の質と数の向上を図っている.また,平成24 年(2011)より筑波大学附属病院茨城県地域医療教育センターの院内設置に伴って筑波大学から教員(常勤)の派遣を受け,がん診療のみならず臨床教育や研究の充実に向けて間断なく体制整備を行っている. -
山梨県立中央病院がんセンター局で取り組むがん医療の推進
254巻9号(2015);View Description Hide Description◎当院は平成19 年(2007),都道府県がん診療拠点病院の指定を受け,平成22 年(2010)地方独立法人となり,がん診療体制の強化がはかられた.現在,次世代のがん医療を先導するがん診療拠点病院に発展の途上である.当院のがん医療成長の大きなステップは平成25 年(2013),通院加療がんセンター(Ambulatory TherapeuticCancer Center:ATCC)とゲノム解析センターの開設,そして平成26 年(2014),がんセンター局の配置,にある.9 階東側にATCC(外来化学療法センター,がん相談,がん登録,ゲノム解析センターを含む)と,西側に緩和ケア病棟を配置している.がんセンター局は,さらなる予後の改善をめざし研究・診療に情熱を傾けるスタッフと,患者一人ひとりに向き合い,その苦痛の緩和を使命とするスタッフが両輪となり,がん患者を支える当院の姿を象徴している.未曽有の高齢社会を迎え,高血圧や糖尿病などさまざまな基礎疾患をもつがん患者が増加するなかで,当院のような総合病院ががんセンター機能を充実させることが近未来に必要と考える.
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