Volume 257,
Issue 12,
2016
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あゆみ がん転移のプラットフォーム
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医学のあゆみ 257巻12号, 1201-1201 (2016);
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医学のあゆみ 257巻12号, 1203-1209 (2016);
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◎生体膜を構成しているリン脂質は,細胞を仕切る膜としてだけでなく,さまざまな生理機能をもつことが知られるようになってきた.細胞内シグナル伝達物質としての機能や脂質メディエーターの供給源としての機能がその代表的なもので,癌においては,リン脂質のひとつであるホスファチジルイノシトールのリン酸化からはじまるphosphatidylinositol-3-kinase 経路や,リン脂質からの脂肪酸の切り出しからはじまるプロスタグランジン合成経路などが治療標的として注目を集めている.さらに,近年のイメージング質量分析をはじめとする脂質分析技術の進歩から,単一のリン脂質ではなく多様なリン脂質の組成そのものが,癌の悪性度や転移状態などの特性解析に応用できる可能性が明らかになってきた.癌の病態特異的なリン脂質組成解析は,転移診断や治療効果予測を可能にするあらたな分子診断技術としての応用が期待されている.
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医学のあゆみ 257巻12号, 1211-1215 (2016);
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◎イノシトールリン脂質は細胞形質膜の内層に存在し,親水基のイノシトール環にリン酸基が0~3 個結合した分子構造をもつ.リン酸基の数・位置は複数のキナーゼ,ホスファターゼにより相互に制御されている.これらイノシトールリン脂質のうち,P(I 3,4)P2およびP(I 4,5)P2はinvadopodia(浸潤突起)形成にかかわることが報告され,そのメカニズムが明らかにされつつある.invadopodia はがん細胞が転移する際に形成される突起であり,高悪性がんと関連のある形質変化である上皮間葉転換(EMT)にもかかわっているとされる.イノシトールリン脂質キナーゼ,ホスファターゼの機能解明が進み,脂肪酸鎖長や不飽和度の違いも含めると数百分子に及ぶイノシトールリン脂質の選択的な制御が可能になることで,invadopodia を特異的に制御できる薬剤の創出が期待されている.
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医学のあゆみ 257巻12号, 1217-1222 (2016);
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◎細胞のゴミ処理機構と思われていたものがあらたな細胞間コミュニケーションツールとして再認識されたエクソソームは,がん細胞を含めたすべての細胞から産生される小胞である.近年,がん細胞の産生するエクソソームが正常細胞へ取り込まれ,それを“教育”することでがん進展を促進していることがわかってきた.著者らは,がん細胞が産生するエクソソームががん細胞の未来転移先へ分布することを発見し,その分布はエクソソームに発現する接着分子であるインテグリンの“郵便番号”のような役割によって規定されていることを解明した.さらに,がん細胞由来エクソソームが“郵便番号”を元に未来転移先臓器へ取り込まれることで,その臓器を転移しやすい場へと変化させていることを証明した.この機構により,120 年以上がん転移の最大の謎とされてきた“なぜがんは特定の臓器へ転移するのか”を一部解明することができた.また,血中内エクソソームの“郵便番号”を調べることで未来転移先を予測するバイオマーカーの可能性や,転移が起こる前に転移を抑制する治療の可能性が示唆された.
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医学のあゆみ 257巻12号, 1223-1227 (2016);
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◎がん細胞の組織内浸潤,転移といった動態における金属要求性蛋白分解酵素の一群であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の重要性が提唱されて以来,半世紀近くが過ぎた.近年の研究で,MMP は直接的な細胞外マトリックスの分解以外にも,多くの生体因子の細胞外ドメイン分泌を制御することによる造血系または炎症性細胞の動態に関与し,当初予想されていたよりはるかに多面的に,がんをはじめとする多くの疾患,そして生体恒常性の維持に寄与していることが判明してきた.また最近のがん研究では,酵素活性を起点としたがん細胞のみならず,がん微小環境構成細胞群の動態解析も進んでおり,これら各種細胞間の相互作用ががん病態の全体像と密接に関与していることも明らかになりつつある.本稿では,MMP を中心とした酵素活性によるがん転移制御機構に関する著者らの業績を含めた最近の知見について概説する.
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医学のあゆみ 257巻12号, 1229-1233 (2016);
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◎癌の転移のステップとしておおまかに,①原発の癌の種類や性質と,②癌が発生して増殖した宿主側の因子,の2 つの要因を考える必要がある.癌にとっては発生した場所(原発巣)が生存に適しているはずであるが,原発巣から離れて他の組織へ転移する特徴があり,これが癌治療を難しくしている.一方,宿主側は転移してくる癌を防ぐ機能があるが,攻防のバランスが崩れると癌細胞の転移が成立する.癌細胞が転移するにあたって,転移しやすい臓器があることは古くから知られた現象である.この転移は癌細胞そのものの影響か,あるいは転移する臓器の問題か,はっきりとはわかっていない.近年,癌が転移する前に,すでに遠隔の臓器に転移に有利な土壌を作成することが明らかになってきた.原発癌より分泌される蛋白質,脂質,核酸,小分子によって肺,肝,脾,骨髄,リンパ節などにおいて炎症類似反応が引き起こされ,この転移前土壌が形成される.これらの因子のなかで,比較的解明の進んでいる蛋白質であるサイトカインの知見を中心に,マウスにおける転移前の宿主側の反応と,ヒトにおける転移前土壌の可能性について考察する.
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医学のあゆみ 257巻12号, 1235-1238 (2016);
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◎マイクロRNA(miRNA)は,哺乳類では2000 年にその存在が明らかになった約20 塩基ほどの機能性小分子RNA である.遺伝子をコードしないゲノム領域から転写される非コードRNA の機能的な重要性は近年続々と明らかになっているが,そのなかにおいても,もっとも研究が進み,その高い生物学的な意義はすでに多くの報告によって確立された概念となっている.がん転移においてもその機能は多種多彩である.そのなかから本稿では,転移におけるエクソソーム,上皮間葉移行(EMT)によるがん転移促進,低酸素環境が制御するがん転移・骨転移における機能的なmiRNA について,さらには脳転移巣におけるアストロサイト由来のmiR-19aによるPTEN 発現抑制について,最新の知見を紹介する.
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医学のあゆみ 257巻12号, 1239-1243 (2016);
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◎長鎖非コードRNA(lncRNA)の細胞・生命活動における重要性がここ数年でつぎつぎと明らかになってきた.“RNA 新大陸の発見”から10 年が経過し,新大陸の様子がすこしずつではあるがみえてきた.これまでのがん研究では機能分子である蛋白質とそれをコードするゲノム領域にフォーカスが当てられてきたが,ここにきてlncRNA という10,000 種類を超える新規のプレーヤーの存在が明らかとなり,大きな注目を集めている.この未開拓な領域を探索することで,がんの診断や治療におけるあらたな突破口を見出すことができるかもしれない.本稿では,がんにおけるlncRNA 研究の最近の知見について概説したい.
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医学のあゆみ 257巻12号, 1245-1250 (2016);
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◎肥満は糖尿病や動脈硬化などのメタボリック症候群・生活習慣病のみならず,多様な癌のリスクファクターであることが報告されている.世界規模での肥満人口の増加により,肥満が誘発する癌の発症率も増えているが,肥満と癌発症・進行に関する機構については不明な点が多い.肥満時にはさまざまは組織において炎症性反応が誘導され,生活習慣病発症の一因になる.一方,癌発症機構においても,肥満における炎症性反応がかかわっている可能性が示唆されている.近年著者らは,内在性の二重鎖RNA(dsRNA)経路が肥満における炎症性反応の誘導や代謝異常にかかわっていることを明らかにしている.本来,dsRNA を認識する蛋白質群には炎症促進性のものが多数存在する.本稿では肥満におけるこれらの因子の役割についてご紹介し,肥満における癌化プロセスへの影響について議論したい.
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医学のあゆみ 257巻12号, 1251-1254 (2016);
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◎活性酸素は放射線・低酸素など外部刺激のほか,RAS やMYC などがん遺伝子によって細胞内で産生が亢進する.活性酸素の大部分はミトコンドリアの呼吸鎖で生成されるほか,NOX(NADPH oxidase)などの酵素によっても産生される.エネルギー産生など細胞の基本的な活動が活性酸素を産生することから,細胞は活性酸素の消去システムを備えており,活性酸素の産生と消去のバランスで細胞内のレドックス状態が決定されている.活性酸素は細胞に損傷をもたらす一方で,細胞内シグナルを活性化し,増殖や生存に寄与する.活性酸素はがんの増殖,生存,運動,細胞内シグナルなどに広く関与し,転移にも関与している.とくに上皮間葉転換(EMT)や腫瘍微小環境でのがんの悪性化において活性酸素は重要な役割を果たす.活性酸素を標的とした治療法の開発は容量,タイミングなど複雑な要因を考慮に入れなければならない.
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注目の領域
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医学のあゆみ 257巻12号, 1261-1263 (2016);
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◎アルキル水銀中毒の症状に対して広く用いられているHunter-Russel 症候群という言葉が定義された経緯を検討した.その結果,この言葉は水俣病(メチル水銀中毒症)の症状を幅広くとらえているとはいい難いだけでなく,1959 年の熊大研究班による定義以前,1954 年にPentschew により病理組織所見(死後の状態)について定義さていることが判明した.しかし,このHunter-Russel 症候群という言葉が症状に対して定義されたと誤解して紹介され,症状について広く使用されるようになった.すなわち,現在症状に対し使用されているHunter-Russel 症候群という言葉は,St Barholomew 症候群またはEdwards 症候群と改める必要があると考える.
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輝く 日本人による発見と新規開発 30
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医学のあゆみ 257巻12号, 1265-1271 (2016);
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フォーラム
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近代医学を築いた人々 53
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医学のあゆみ 257巻12号, 1272-1272 (2016);
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外国人にやさしい医療―言葉の壁をこえて 7
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医学のあゆみ 257巻12号, 1273-1276 (2016);
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第80 回日本循環器学会学術集会レポート 4
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医学のあゆみ 257巻12号, 1277-1278 (2016);
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循環器疾患の診断において画像情報の占める割合は年々格段に増加している.その背景には,IT 革新に支えられたCT,MRI,positron emissiontomography(PET),optical coherene tomography(OCT),共焦点顕微鏡などのモダリティー開発と新規トレーサーの発明がある.一方,われわれ循環器医が何をみたいのかについての要求にも飛躍的な高まりがある.そちらを推進しているものは循環器領域における疾患概念の転換や分子・細胞レベルでの病態把握の進歩であろう.近未来においてわれわれは,疾患臓器のなかで集簇したり遊走したりする炎症細胞や免疫細胞の姿をみることができるかもしれないし,adenosine triphosphate(ATP)産生能や細胞の生死についての局所信号を得られるかもしれない.そして,そのような機能的・統合的画像情報は従来鑑別困難であった疾患を再分類したり,あらたな疾患群を提唱したりする契機にもなるであろう.本プレナリーセッションでは,心血管領域における臓器と病態生理の画像化について世界レベルの進歩を把握するとともに,わが国における循環器イメージング研究の到達点を確認することを目的とし,6 名のエキスパートに講演をいただいた.
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TOPICS
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消化器内科学
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医学のあゆみ 257巻12号, 1255-1256 (2016);
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内分泌・代謝学
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医学のあゆみ 257巻12号, 1256-1258 (2016);
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臨床検査医学
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医学のあゆみ 257巻12号, 1258-1260 (2016);
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