Volume 258,
Issue 2,
2016
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あゆみ パピローマウイルス最前線
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医学のあゆみ 258巻2号, 127-127 (2016);
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医学のあゆみ 258巻2号, 129-132 (2016);
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◎子宮頸癌はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を端緒として発症する.HPV は現在150 種以上が登録され,このうち発癌に関与するハイリスクHPV(HR-HPV)として15 種類が知られている.子宮頸癌で検出されるHPV 型別の検出頻度は地域によって異なっており,わが国ではHPV 型は16,18,52,58,33 型の順で検出率が高く,海外の報告と比べ16 型の割合が低い一方で,52 型および58 型の検出率が高いことが特徴である.HR-HPV 型のなかでも型によって発癌リスクが異なることが知られており,前癌病変であるCIN でHPV16,18,31,33,35,45,52,58 型に感染していた場合,とくに癌に進展しやすい.このためCIN 病変の管理についてHPV タイピングによるトリアージの有用性が指摘されている.近年ではHPV16/18 型の感染予防を目的とした子宮頸癌ワクチンが開発され,将来的に子宮頸癌の減少に寄与すると期待されている.
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医学のあゆみ 258巻2号, 133-138 (2016);
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◎ヒトパピローマウイルス(HPV)生活環は宿主細胞である角化細胞の分化と連動しており,ウイルスゲノム複製様式の違いにより3 段階に分けることができる.HPV ゲノムは幹細胞を含む基底細胞への感染直後に一過的に複製し,100 コピー程度の核内エピソームとして定着する(初期複製).基底細胞ではコピー数が一定に保たれ,子孫ウイルス粒子産生のない潜伏持続感染状態になる(維持複製).感染細胞の分化に応じてウイルスゲノムが大量に増幅し(後期複製),子孫ウイルス粒子が産生される.ウイルスDNA ヘリカーゼであるE1 は初期・後期複製には必須であるが,維持複製には必要ないことが明らかになった.さらに,E1 はNF-κB を活性化し,この活性化はE1 の蛋白分解を促進することが示された.これらの結果から,HPV 生活環の基盤であるウイルスゲノム複製の切り替えに,E1-NF-κB 間のフィードバックによるE1 の発現調節が関与する可能性が高い.
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医学のあゆみ 258巻2号, 139-143 (2016);
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◎高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染は子宮頸癌や頭頸部癌の原因となる.高リスク型HPV がコードする癌蛋白質E6 とE7 はそれぞれ細胞のp53 とpRb を不活化することによりアポトーシスを抑制し,DNA 合成を促進する.HPV ゲノムの細胞染色体への組込みなどによりE6/E7 が高発現すると細胞は不死化するが,悪性形質の獲得(癌化)にまでは至らない.癌化にはE6/E7 の発現に加えて細胞ゲノムでの変異蓄積が必要であり,子宮頸癌ゲノムでは染色体異常や遺伝子変異が高頻度に認められる.HPV ゲノムの組込みが染色体を不安定化し,E6/E7 がDNA 損傷や塩基変異を誘導することから,HPV がもつ“変異原性”が発癌に重要な役割を果たしていると考えられる.最近,細胞の遺伝子改編酵素であるAPOBEC を介してHPV が癌化につながる変異を誘発している可能性が示唆された.
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医学のあゆみ 258巻2号, 145-149 (2016);
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◎著者らが独自に開発したCDK9 阻害剤FIT039 は,ヒトヘルペスウイルス(HSV)やヒトアデノウイルス(HAdV)など広範なDNA ウイルスの遺伝子発現を抑制するが,ヒトパピローマウイルス(HPV)に対しても強力な増殖抑制効果を有し,HPV 感染症に対する新しい治療薬として有望である.FIT039 は,子宮頸がん由来細胞においてHPV E6,E7 遺伝子発現を抑制し,かつ,p53 を安定化させることも明らかとなっており,HPVに起因する疣贅や子宮頸がんに対する治療薬になりうると期待される.FIT039 に関して,手足の疣贅を対象疾患とした医師主導治験(第Ⅰ/Ⅱ相試験)の実施が京大病院で準備されており,尖圭コンジローマや子宮頸がんなどへの適用拡大も視野に入れ,アカデミア創薬の嚆矢として開発が進展している.
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医学のあゆみ 258巻2号, 150-154 (2016);
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◎ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは,HPV 関連癌としてもっとも多い子宮頸癌の予防のために開発された.現在,日本で使用できる2 つのワクチンは,臨床試験において世界でも国内でも有効性・安全性ともに高い評価が得られた.そして,海外では実際にいわゆる定期接種として使用されてから約8 年を経過して,国民を対象にした検診での成績(population-based study)で子宮頸部上皮内病変(CIN)3 などの予防効果が明らかになってきており,ワクチン開発前に描かれた子宮頸癌予防のシナリオが着々と現実のものになっている.HPV ワクチンは,コンジローマなどのHPV 関連疾患や肛門癌,陰茎癌,中咽頭癌などにも効果が期待され,男女への接種も広がっている.
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医学のあゆみ 258巻2号, 155-158 (2016);
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◎公的な資金を財源とする予防や医療などの取組みについては,限られた財源を有効に用いるために,介入技術の費用対効果の評価が重要である.予防は多くの対象者に実施されるため費用が多くかかる場合もあるが,この場合でも追加的にかかる費用が追加的に得られる効果にみあうかどうかを検討する増分費用効果比が重要となる.評価にあたっては分析方法をある程度統一することが必要であり,諸外国においてはアメリカACIP やイギリスJCVI などがこのような取組みを行っている.日本でも厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会のワクチン評価に関する小委員会において分析方法を統一したうえでHPV ワクチンを含む個別ワクチンの評価を行っている.このような評価に基づき合理的な判断をしていくことが重要である.
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医学のあゆみ 258巻2号, 159-163 (2016);
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◎ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは世界100 カ国以上で認可され,60 カ国以上の主として先進国のワクチンプログラムに組み入れられている.わが国でも2013 年4 月から定期予防接種となり,小学6 年生~高校1 年生に相当する年齢の女子が対象となった.しかし,慢性疼痛と運動障害を中心とする有害事象に関する多くの報道の後,定期接種開始後わずか2 カ月後の2013 年6 月に厚生労働省は本ワクチンの積極的な接種勧奨を一時中止し,専門家からなる研究班による調査・検討を行うことを決定した.その後も現在に至るまで接種勧奨中止が続き,わが国では本ワクチンの接種率が対象年齢で著しく低い状況が続いている.専門学術団体からは早期の勧奨再開の要望が出されているが,事態の解決の兆しはみえていない.今後,真の副反応と紛れ込みの可能性が高い有害事象を明確に区別した科学的エビデンスに基づく説明が国民になされるとともに,ワクチン接種後の有害事象に対するリスクコミュニケーションをはかりつつ適切な対応をとることが,わが国のHPV ワクチン問題解決に必須である.
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医学のあゆみ 258巻2号, 165-169 (2016);
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◎ヒトパピローマウイルス(HPV)感染に対する治療方法の考え方として,予防ワクチンや抗ウイルス剤の開発があげられる一方で,すでに感染が成立してしまっている子宮頸部に対しての別のアプローチとして,自己免疫賦活を伴う免疫療法の可能性が考えられている.つまりターゲットをウイルスそのものではなく感染細胞に設定した治療戦略の構築である.すでに多くの報告にあるように,HPV 感染をした子宮頸部がすべて子宮頸部上皮内病変(CIN)へ移行するわけではなく,ごくわずかな例を除けば自己の免疫機構により自然に駆逐される.そこにはT 細胞など多種の免疫細胞が関与していることが示唆されるが,著者らは子宮頸部局所の細胞傷害性T 細胞の活性化が有用だと考えている.著者らは死菌処理された乳酸菌表面にHPV E7 蛋白を提示した経口治療薬を用い,子宮頸部局所の免疫賦活化をもたらす内服治療薬の安全性確認である第Ⅰ/Ⅱa 相試験を終了し,現在は第Ⅱb 相試験に準じる探索的臨床試験を行っている.本稿では著者らの臨床試験とともに,最近の知見について概説する.
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連載
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NEW グローバル感染症最前線―NTDs の先へ
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医学のあゆみ 258巻2号, 177-178 (2016);
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輝く 日本人による発見と新規開発 32
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医学のあゆみ 258巻2号, 179-183 (2016);
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フォーラム
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パリから見えるこの世界 46
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医学のあゆみ 258巻2号, 185-189 (2016);
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外国人にやさしい医療―言葉の壁をこえて 9
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医学のあゆみ 258巻2号, 190-192 (2016);
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TOPICS
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神経内科学
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医学のあゆみ 258巻2号, 171-172 (2016);
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遺伝・ゲノム学
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医学のあゆみ 258巻2号, 172-174 (2016);
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消化器内科学
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医学のあゆみ 258巻2号, 174-175 (2016);
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