Volume 258,
Issue 7,
2016
-
あゆみ 心臓突然死の先制医療
-
-
Source:
医学のあゆみ 258巻7・8号, 751-751 (2016);
View Description
Hide Description
-
【心臓突然死の実態を知る:疫学】
-
Source:
医学のあゆみ 258巻7・8号, 753-759 (2016);
View Description
Hide Description
◎消防庁の発表によると日本では2014 年に125,951 件の突然死があり,このうち76,141 件(60%)が心臓性突然死とされた.2005 年以降の調査によると,心臓性突然死は増加傾向にあり,とくに80 歳以上の高齢者において顕著である.日本の心臓性突然死の発生率は欧米に比べ低いものの,おもな原因は欧米と同様に急性冠症候群である.このため,心停止時の初期調律はshockable rhythm である心室頻拍(VT)や心室細動(VF)が多いが,蘇生率は除細動が1 分遅れるごとに7~10%ずつ低下する.日本では冠攣縮性狭心症が多く,このなかに心臓突然死に至る例がある.このような症例は比較的若年で日中労作時に発生する特徴がある.さらに,入浴中の突然死が多いのも日本の特徴である.脱衣所と浴室の室温差による“ヒートショック”に加えて,浴槽につかることによる急激な血圧上昇の結果,心血管系に破綻が生じるとされる.日本における心臓性突然死の実態や特徴を知ることは,心臓性突然死の予防と予測の向上につながると考える.
-
Source:
医学のあゆみ 258巻7・8号, 761-766 (2016);
View Description
Hide Description
◎わが国の心肺蘇生(CPR),とくに院外救急システムは2000 年代に入りその質が著明に改善し,現在世界的にみても非常に高いレベルにある.現場に居合わせた市民(バイスタンダー)によってCPR が行われる割合は約50%まで増加し,心停止から救急隊員による除細動までに要する時間は約10 分へと短縮した.また,AEDは全国で約50 万台が設置されるまでになり,AED 数の増加に伴い,院外で目撃された心原性心室細動患者のうち,AED による市民除細動を受けたものの割合は10%を超えるまでに増加している.さらに,手技が簡単で覚えやすい胸骨圧迫のみのCPR が普及したこともあり,わが国における院外心停止後の社会復帰数は増加している.今後は,胸骨圧迫のみのCPR を活用したバイスタンダーCPR のさらなる普及や,救急隊員が行うCPR の“質”を評価し,客観的データに基づく改善の取組みを継続していくことが,院外心停止の救命率向上につながると期待される.
-
【心臓突然死をいかに予知予測するか?】
-
Source:
医学のあゆみ 258巻7・8号, 767-772 (2016);
View Description
Hide Description
◎心筋梗塞後や心筋症などの器質的心疾患患者で,心臓突然死の予知のために活用される指標にはさまざまのものがある(表1).心エコーで計測される左室駆出率(LVEF),Holter 心電図で検出される非持続性心室頻拍(NSVT),加算平均心電図(SAECG)で測定される心室レイトポテンシャル(LP),運動負荷法を用いて評価されるT 波オルタナンス(TWA)などがそれに相当する.LVEF は心機能の程度を反映する指標,NSVT は致死性不整脈のトリガーをとらえる指標,LP は心臓の脱分極異常を反映する指標,TWA は心臓の再分極異常を反映する指標として知られる.いずれもが致死性となる心室性不整脈の発現と密接に関連することが多くの基礎あるいは臨床試験で示されている.このようにこれらの予知指標は,その意味合いのみならず,検査の進め方や測定方法も個々で異なるため,理解して活用する必要がある.
-
Source:
医学のあゆみ 258巻7・8号, 773-777 (2016);
View Description
Hide Description
◎遺伝性不整脈はその発症に遺伝子変異の関与が疑われ,同一家族や親族の間で同様の症状を呈する症例がいる不整脈疾患である.その種類により幼少時から中年まで,さまざまな時期に不整脈発作を起こしうるが,もっとも重篤な結果は心室細動による心臓突然死(SCD)である.近年,遺伝性不整脈の病態は徐々に明らかになってきたものの,いつどのような症例が突然死をきたすのかを予測するのは容易ではない.既知の危険因子として,①QT 延長症候群ではQTc 間隔,年齢,性別,病歴,薬効の有無,遺伝子変異の部位など,②Brugada 症候群では不整脈の既往とその重症度,QRS 中のスパイク,心室有効不応期など,③カテコラミン誘発多形性心室頻拍では診断年齢,心停止既往の有無,投薬内容,遺伝子変異部位,運動負荷試験の結果などが報告されている.これらを勘案したうえで,症例ごとに慎重に治療内容を決定し,不幸な突然死を起こさぬようにすることが大切である.本稿では,これら遺伝性不整脈の危険因子および最新のガイドラインに則った治療法を解説する.
-
Source:
医学のあゆみ 258巻7・8号, 779-783 (2016);
View Description
Hide Description
◎特発性心筋症のなかでも肥大型心筋症(HCM)および不整脈原性右室心筋症(ARVC)は,心室不整脈に由来する突然死リスクが高い.いずれの疾患でも,突然死のリスク因子として心停止やVF/VT の既往例があげられる.またHCM では,家族の突然死や左室壁厚30 mm 以上も突然死リスクとされている.HCM の心臓突然死の可能性は,これまでの研究で明らかになったリスク因子から予測値を計算することができる.一方,ARVC では遺伝子変異(おもにPKP2)変異キャリアのほうが非キャリアより症状出現のリスクが高いことが報告されている.突然死リスクの的確な評価は植込み型除細動器(ICD)植込みを含めた治療方針決定に不可欠なものであり,今後もさらに研究が進められるであろう.
-
【心臓突然死の治療法は?】
-
Source:
医学のあゆみ 258巻7・8号, 785-788 (2016);
View Description
Hide Description
◎植込み型除細動器(ICD)は心室頻拍・心室細動から蘇生した患者の二次予防のみならず,ハイリスク患者の一次予防においても生命予後改善効果が証明されており,循環器診療に不可欠な治療となっている.一方,急性心筋梗塞後など将来心機能が改善しICD 植込み適応基準から外れる可能性が見込まれる症例,ICD 植込みについて慎重な判断を要する症例,心内膜への癒着や感染・リード断線などのICD リードを心内に挿入することにより生じる問題,などもあり,その解決が模索されてきた.近年,わが国においてあらたな着用型自動除細動器(WCD)および完全皮下植込み型除細動器(S-ICD)が使用可能になり,課題の解決が期待されている.本稿では,あらたな除細動器の特徴と適応・使用上の注意点などについて概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 258巻7・8号, 789-794 (2016);
View Description
Hide Description
◎心臓突然死の多くは頻脈性の心室性不整脈によるものである.抗不整脈薬に関しては,かつてはアミオダロン内服が器質的心疾患を有する低心機能患者に対する突然死予防に有用であるとされていたが,近年の前向き研究ではその効果は認められていない.現在では二次予防のみならず一次予防としての植込み型除細動器(ICD)の有用性が確立しており,薬物療法はICD を植え込んだうえでの補助的なものとなっている.薬物療法としてβ遮断薬が器質的心疾患に伴う突然死予防や除細動器の作動減少ならびに心不全治療薬として有用であるが,同時に遺伝性疾患であるQT 延長症候群(LQT)やカテコールアミン依存性多型性心室頻拍などでは積極的に使用すべき薬物であり,一次予防としてのfirst choice である.本稿では,種々の心疾患に対する抗不整脈薬の効果について概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 258巻7・8号, 795-798 (2016);
View Description
Hide Description
◎心臓リハビリテーションはかならずしも運動療法のみを意味せず,行動変容,危険因子の管理,あるいは教育を含めた総合的な治療である.しかし,運動そのものは虚血誘発における重要な因子であり,このことを踏まえて運動療法を治療の一環と考えて処方することで突然死対策になる可能性が十分に考えられる.処方は運動強度,時間,頻度,期間,種類を適切に考えて行う.運動療法を適切に施行することで虚血予防,心機能悪化の抑制,さらには交感神経抑制と副交感神経活性亢進が期待できる.このことで,悪性不整脈に至る電気生理学的なメカニズムが抑制され,悪性不整脈発症を予防することが可能となる.本稿では,運動療法が虚血性心疾患誘発性の突然死そのものを抑制する可能性について述べる.
-
連載
-
-
グローバル感染症最前線―NTDs の先へ 3
-
Source:
医学のあゆみ 258巻7・8号, 803-810 (2016);
View Description
Hide Description
◎エボラウイルスは,ヒトを含む霊長動物に重篤な出血熱(エボラ出血熱またはエボラウイルス病)を引き起こす病原体として知られている.エボラウイルスに対して効果的なワクチンおよび抗ウイルス薬は実用化されていない.エボラ出血熱の発生は,散発的でアフリカに限局しているが,2000 年以降発生頻度が増加している.とくに,2013 年12 月にギニアで発生したエボラ出血熱は過去に類をみない大規模な流行となり,西アフリカ諸国のみならず欧米でも感染者を出し,世界的な問題となった.この流行を契機に,エボラ出血熱の予防・治療・診断法の研究開発が加速し,未承認のワクチンおよび治療薬が試されるとともに,実用化に向け臨床試験も盛んに進められている.本稿では,エボラ出血熱の研究の現状と最新の知見を紹介する.
-
フォーラム
-
-
医療機関のダイバーシティ 1
-
Source:
医学のあゆみ 258巻7・8号, 811-813 (2016);
View Description
Hide Description
-
パリから見えるこの世界 47
-
Source:
医学のあゆみ 258巻7・8号, 815-819 (2016);
View Description
Hide Description
-
TOPICS
-
-
再生医学
-
Source:
医学のあゆみ 258巻7・8号, 799-800 (2016);
View Description
Hide Description
-
生理学
-
Source:
医学のあゆみ 258巻7・8号, 800-801 (2016);
View Description
Hide Description
-
加齢医学
-
Source:
医学のあゆみ 258巻7・8号, 801-802 (2016);
View Description
Hide Description