医学のあゆみ
Volume 259, Issue 1, 2016
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【10月第1土曜特集】 筋ジストロフィー・筋疾患─最近の進歩
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- 筋ジストロフィーの根本治療をめざして:治験中や承認段階にある治療
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Duchenne 型筋ジストロフィーに対するエクソン51および53 スキップ薬開発の現状
259巻1号(2016);View Description Hide Description◎Duchenne 型筋ジストロフィー(DMD)は,DMD 遺伝子の変異が原因で生じる難治性の遺伝性筋疾患である.1987 年にポジショナルクローニングによりDMD 遺伝子が同定されたことを契機に,アンチセンス核酸を用いてDMD の分子病態に直接介入する“エクソンスキップ”治療の開発が試みられている.現在までに,2′O-メチルとモルフォリノアンチセンス核酸を用いたエクソン51 スキップ薬の開発が欧米で先行したが,主として前者は尿細管障害などの安全性の懸念から,後者は不十分な治療用量設定のために,十分な治療効果を示すことができず,新薬承認には至っていない.一方,著者らの研究グループは同疾患のマウスおよびイヌモデルを対象に,エクソンスキップの基盤的研究を実施し,モルフォリノ核酸の用量依存的な効果と高い安全性を実証してきた.こうした成果を受けて,DMD 治療薬NS-065/NCNP-01(エクソン53 スキップ薬)は厚生労働省の先駆け審査指定制度の対象に初指定され,現在,国内第Ⅰ/Ⅱ相試験およびアメリカ第Ⅱ相試験が同時進行中である.本稿ではアンチセンス核酸を用いたエクソン51 スキップとエクソン53 スキップ治療について,最近の進歩と海外における開発状況を中心に述べたい. -
Duchenne 型筋ジストロフィーに対するエクソン45 スキッピング誘導治療
259巻1号(2016);View Description Hide Description◎Duchenne 型筋ジストロフィー(DMD)に対する治療法として,アンチセンスオリゴヌクレオチド(AO)を用いたエクソンスキッピング誘導治療を世界ではじめて実施したペイシャントゼロを紹介する.このエクソンスキッピングの標的となるエクソンは,DMD 患者が有するエクソン欠失パターンにより異なる.本稿では,DMD の約1 割が治療対象となるエクソン45 のスキッピング誘導について紹介するとともに,あらたな修飾核酸であるENA を用いたAO を中心にエクソン45 のスキッピング誘導について解説する.本治療は重症のDMD を軽症のBMD へと変換させるもので,エクソン45 スキッピング誘導治療結果で得られるのと同じエクソン欠失パターンを有する症例をもとに,本治療による効果を議論する. -
Duchenne 型筋ジストロフィーに対するナンセンス変異リードスルー誘導治療
259巻1号(2016);View Description Hide Description◎Duchenne 型筋ジストロフィー(DMD)の責任遺伝子であるジストロフィンがクローニングされて四半世紀が過ぎた.ジストロフィンが同定された当時はすぐにでも遺伝子治療が実現するものと期待されたが,残念ながらいまだ臨床に応用されてはいない.一方,変異ジストロフィン遺伝子からの遺伝情報を修飾することによる分子治療の開発が進み,現在多くの治験が行われている.このような治療法のひとつが“ナンセンス変異リードスルー誘導治療”である.本治療はDMD の19%を占めるナンセンス変異による症例を対象とするものであり,蛋白の翻訳過程においてナンセンス変異を読み飛ばし,機能を有するジストロフィン蛋白の発現を誘導するものである.いままでに,DMD に対するゲンタマイシンおよびアタルレン(PTC124)による本治療の有効性が報告されている.著者らはゲンタマイシンより副作用の少ないアルベカシンに着目し,本薬剤によるナンセンス変異リードスルー誘導治療の医師主導治験を開始した.根治療法のないDMD に対する有効な治療法となることが期待される. -
抗マイオスタチン療法
259巻1号(2016);View Description Hide Description◎マイオスタチンはTGF-βファミリーに属する骨格筋形成抑制因子で,個体の骨格筋量を負に調節している.この遺伝子に変異をもつ家畜やヒト,遺伝子ノックアウトマウスではこの抑制が解除されるため骨格筋量が著明に増大する.筋ジストロフィーモデルmdx マウスに中和抗体を投与したところ,ジストロフィー病理変化と筋力が改善したことから,抗マイオスタチン療法は新規治療法として注目されてきた.現在,ヒト化抗マイオスタチン抗体,阻害結合蛋白であるフォリスタチンの遺伝子導入,マイオスタチン受容体抗体医薬などの開発治験が行われている.また,抗マイオスタチン療法は筋ジストロフィー治療以外にもステロイドミオパチーや高齢者のサルコペニアなどに対しても有効性が期待される. -
GNE ミオパチー(縁どり空胞を伴う遠位型ミオパチー)のシアル酸治療
259巻1号(2016);View Description Hide Description◎GNE ミオパチー(縁どり空胞を伴う遠位型ミオパチー)は,GNE 遺伝子変異を原因とする成人発症の遠位型ミオパチーである.若年成人で発症し,緩徐進行性の経過をとり,重症例では四肢麻痺と呼吸障害を呈する常染色体劣性遺伝疾患である.GNE 遺伝子変異がシアル酸生合成低下を生じ,結果として筋萎縮や筋線維変性を引き起こす.わが国での患者数300 名程度と想定される希少疾病であり,治療研究促進ツールとしての患者登録が活用されている.シアル酸補充療法がモデルマウスで治療効果を示したため,創薬に結びついた.希少疾患ならではの困難にも遭遇したが,最近海外の国際共同第Ⅱ相試験が終了し,国内でも第Ⅱ/Ⅲ相試験の開始にこぎ着けることができた.本稿では,GNE ミオパチーの病態解明と治療法開発について述べる. -
造血器型プロスタグランジンD 合成酵素阻害薬によるDuchenne 型筋ジストロフィーに対する進行軽減療法
259巻1号(2016);View Description Hide Description◎Duchenne 型筋ジストロフィー(DMD)の骨格筋では,造血器型プロスタグランジン(PG)D 合成酵素(hematopoieticPGD synthase:H-PGDS)によりPGD2が活発に産生され,DP1 あるいはDP2 受容体を介した二次的炎症により筋壊死が拡大し,集団的筋壊死が起こる.著者らが創製したH-PGDS 阻害薬(TFC-007,TAS-204,TAS-205)は,DMD モデル動物(mdx マウスと筋ジストロフィーイヌ)の筋肉炎症を抑制し,筋壊死容積を減少して筋力や行動量を増加させる.そしてDMD 患者での第Ⅰ相臨床試験を経てTAS-205 の有効性を探索的に検証する前期第Ⅱ相試験が2016 年5 月に開始された. - ミオパチーの臨床と研究の最新トピックス
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次世代シークエンサーによる筋疾患の診断
259巻1号(2016);View Description Hide Description◎次世代シークエンサーの普及により,比較的安価で手軽に大量のDNA 塩基配列データが得られるようになった.これにより遺伝性疾患の診断技術の向上が期待される一方で,病的意義のある変異の同定など,配列データの解釈にはまだまだ課題も多い.本稿では,次世代シークエンサーを用いた筋疾患の診断について,最近の研究結果も交えつつ解説する. -
福山型筋ジストロフィーと類縁疾患:リビトールリン酸とアンチセンス核酸
259巻1号(2016);View Description Hide Description◎福山型筋ジストロフィー,muscle-eye-brain 病,Walker-Warburg 症候群は,先天性筋ジストロフィー,丸石様滑脳症,眼奇形,の3 症状を示す代表的な常染色体劣性神経筋疾患であり,いまだ治療法はない.患者骨格筋において細胞膜と基底膜をつなぐαジストログリカンのO-マンノース型糖鎖修飾に異常があり,総称としてαジストログリカノパチーという新しい疾患概念が確立され,現在までに18 個の原因遺伝子が同定されている.最近著者らは,未知であった糖鎖構造を決定し,あらたな翻訳後修飾であるリビトールリン酸修飾を発見した.さらに,機能未知であったフクチンをはじめとするいくつかのαジストログリカノパチー原因遺伝子が,リビトールリン酸修飾にかかわる酵素であることを見出した.この修飾を標的にした治療法開発の可能性があり,福山型ではアンチセンス核酸治療と合わせたミックス治療法も期待できるかもしれない. -
筋強直性ジストロフィーの治療戦略
259巻1号(2016);View Description Hide Description◎筋強直性ジストロフィー(DM)は骨格筋のみならず,心筋,平滑筋や脳,眼,内分泌器官,性腺など,さまざまな臓器を侵す疾患である.CTG あるいはCCTG といったDNA 繰返し配列の異常伸長が原因であり,これら変異遺伝子から転写された異常なRNA が選択的スプライシング制御因子を障害する.この結果,広範なスプライシング異常が引き起こされ,多彩な全身症状につながるとされている.これまでDM の根本的治療法はなかったが,近年,DM の治療戦略として,異常RNA を核酸医薬により分解する方法や,スプライシング制御因子の障害を低分子化合物により阻止する方法が試みられている.一部はすでに治験も開始されており,臨床応用が目前に迫っている. -
ストレッチ感受性Ca2+ 透過チャネルTRPV2 を標的とした筋変性治療薬の開発
259巻1号(2016);View Description Hide Description◎筋ジストロフィー,拡張型心筋症など筋変性難病の根本的治療法はない.筋変性疾患に共通する病態的特徴である持続的な細胞内Ca2+濃度上昇を起こす有力な候補蛋白質として,ストレッチ感受性Ca2+透過チャネル(TRPV2)を同定し,その膜発現様式と筋変性病態には密接な関係があることを報告してきた.すなわち,TRPV2 の形質膜発現とそれに伴う活性化が筋変性疾患の発症と悪化にかかわっていることを明らかにしてきた.続いて,さまざまなTRPV2 阻害の方法でTRPV2 活性の抑制を試みたところ,筋変性疾患が改善することを見出すことができた.また,TRPV2 発現細胞を用いたTRPV2 活性化条件とアッセイ法を確立し,それを用いたスクリーニングにより,抗アレルギー薬トラニラストがTRPV2 阻害作用を有することが明らかになった.TRPV2 阻害薬を用いたヒト筋変性疾患治療をめざして,さらに低濃度でも作用するTRPV2 阻害薬を探索している. -
Duchenne 型筋ジストロフィーに対するゲノム編集戦略
259巻1号(2016);View Description Hide Description◎Duchenne 型筋ジストロフィー(DMD)はジストロフィン遺伝子に生じた配列異常が原因で引き起こされる遺伝子変異疾患であり,いかに機能性のジストロフィン蛋白質を回復させるかが治療を目指すうえでの鍵となる.一方,ゲノム編集技術はここ10 年で劇的な進歩を見せ,とくにCRISPR-Cas9 の登場以降,さまざまな分野での応用が広がっている.ゲノム編集技術を用いたさまざまなジストロフィン修復戦略が,DMD 患者由来の筋芽細胞やiPS 細胞のほか,mdx モデルマウスで報告されている.その反面,細菌由来のCRISPRCas9蛋白質に対する抗原性やオフターゲット変異のリスクのほか,どのように効率よく患部へ届けるかなど,解決すべき課題がまだまだ累積している.本稿ではDMD に対する最先端のゲノム編集技術の動向を紹介する. -
先天性筋無力症候群
259巻1号(2016);View Description Hide Description◎先天性筋無力症候群(CMS)は,神経筋接合部(NMJ)に発現する遺伝子の先天的な遺伝子変異によってNMJ信号伝達が障害される疾患群であり,25 種類の遺伝子における変異が同定されてきた.スローチャネル症候群(SCCMS),SYT2-CMS,SNAP25B-CMS の3 型が常染色体優性遺伝形式であり,他のCMS はいずれも常染色体劣性遺伝形式を示す.CMS ではNMJ 信号伝達の障害がかならず認められ,反復神経刺激検査が必須である.CMS の臨床症状は重症筋無力症と同様の筋の易疲労性に加えて,持続的な筋力低下,筋萎縮,筋低形成を呈することが多く,さらに耳介低位,高口蓋,篩骨形成不全などの顔面小奇形がときに認められる.自己免疫機序による重症筋無力症と異なり日内変動や易疲労性が明らかでなく,日差変動を呈する症例がある.CMS は重症筋無力症とのみ鑑別される疾患ではなく,先天性筋症を含む筋力低下を主徴とする幅広い疾患との鑑別が重要である. -
変貌する筋炎の疾患概念
259巻1号(2016);View Description Hide Description◎炎症性筋疾患(筋炎)の代表的な臨床病型は多発筋炎(PM)と皮膚筋炎(DM)であり,両者は密接な関連があることからPM/DM として扱われてきた.しかし筋病理では,PM とDM は別々の病態機序を背景とした異なる疾患と定義されている.炎症細胞浸潤をほとんど認めず,筋線維の壊死が特徴的な筋病理所見に基づいた壊死性ミオパチー(IMNM)が炎症性筋疾患のあらたな病型として加わった.INMN の診断では,抗signal recognitionparticle(SRP)抗体と抗3-hydroxy-3-methylglutary-coenzyme A reductase(HMGCR)抗体の測定が重要である.近年,複数の自己抗体があらたに同定され,筋炎の疾患概念は大きく変化している. - 筋ジストロフィーの診療・マネジメント・基盤
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筋ジストロフィーや筋疾患に対する非侵襲的陽圧換気療法の動向
259巻1号(2016);View Description Hide Description◎アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が作成を推進した筋ジストロフィーのケアの国際ガイドラインにおいて,気管切開を回避できる非侵襲的陽圧換気療法(NPPV またはNIV)が推奨されている.喉頭咽頭機能低下が重症でなければ,ほとんどの場合はNPPV により換気の維持が可能である.咳機能が低下した場合は,気道クリアランスを維持してNPPV 効果を保つために,徒手や機械による咳介助を適応する.近年,先進国でも筋疾患に対するNPPV による生命予後の改善効果や専門医療体制に差があることが指摘されるようになり,改善への対策が模索されている.根本治療のスタートラインである“自然歴”または“現在可能な治療による予後”を最適なレベルに維持しながら根本治療を迎える準備を整えたい. -
ステロイド治療―有効性,投与法,副作用
259巻1号(2016);View Description Hide Description◎Duchenne 型筋ジストロフィー(DMD)の進行抑制効果を期待してさまざまな薬物療法がこれまでに試みられてきたが,有効性が客観的に証明されているのはステロイド治療のみである.ステロイド治療を適切に行っていくことによりDMD の予後の改善が期待できる.筋力,運動機能に対する短期的効果に加えて,歩行期間の延長,側彎の進行抑制,ならびに心肺機能といった長期的効果についても認められている.日本では2013年に公知申請を経たうえで薬事承認となり,2015 年にDMD 診療ガイドラインにおけるステロイド治療について取りあげられるなどによって本治療が普及している途上と推察される.本稿では,DMD に対するステロイド治療の有効性の根拠,投与法,副作用などについて解説する.DMD 以外の他のタイプの筋ジストロフィーに対するステロイド治療は客観的な評価が得られていないのが現状である. -
筋ジストロフィーの診療ガイドライン
259巻1号(2016);View Description Hide Description◎筋ジストロフィー医療は専門病棟と研究班を中心としたシステムで発展してきた.その成果は大幅な生命予後改善をもたらし,社会環境の変化も相まって,患者の療養場所は施設から地域へ移行した.このため患者の受診先は多様化し,地域を単位とした医療連携システムの構築が課題となっている.筋ジストロフィーが抱える医療課題は多岐にわたり臨床経過とともに変化するため,問題を予見して対応することが重要であるが,希少疾病である筋ジストロフィーに一般医が習熟することは困難である.このため,標準的医療を実践していくためのツールとして診療ガイドラインの意義が大きいと考え,“Duchenne 型筋ジストロフィー診療ガイドライン2014”を作成した.標準的医療の実践に活用されることを期待するとともに,作成過程で明らかとなった未解決課題への臨床研究,ガイドライン前後の診療実態調査などを踏まえ定期的な更新を実施する予定である. -
筋ジストロフィー臨床試験ネットワークとアウトカムメジャー研究
259巻1号(2016);View Description Hide Description◎神経筋疾患を対象とした治験・臨床研究ネットワークである筋ジストロフィー臨床試験ネットワーク(MDCTN)は2016 年末で4 年を迎える.現在,多施設共同研究を2 本実施しているが,両研究ともに研究参加施設との連携体制を構築し,MDCTN 事務局が研究事務局の役割を担い,研究で得られたデータの品質管理体制も整備したうえで実施している.患者登録システムと連携した治験の実施可能性調査や患者リクルートも実施している.本稿ではMDCTN の概要を提示するとともに,現在筋ジストロフィーの臨床試験を進めるうえで課題となっているアウトカムメジャーをめぐる話題についても触れる. -
患者登録Remudy:Registry of Muscular Dystrophy
259巻1号(2016);View Description Hide Description◎国際協調に基づく遺伝性神経・筋疾患の臨床研究開発の推進を目的に,神経筋疾患患者情報登録Remudyは,ジストロフィーノパチー,GNE ミオパチー,筋強直性ジストロフィーのレジストリーを運用している.目的は,①臨床研究の計画および実施の際に対象となる疾患の疫学を明らかにし,②臨床試験・治験の参加条件に合致する登録者へ可能なかぎり正確な情報を公平かつ速やかに届け,効率的にリクルートを行うことである.筋ジストロフィー臨床試験ネットワーク(MDCTN)の始動によってリクルートフローも準備された.課題として,新薬の申請の際に対照群として活用あるいは参照することができる自然歴データの収集,承認後の市販後調査に資するデータベース構築があげられ,クリニカルイノベーションネットワークの一環として検討が進められている.希少疾患の治療開発の促進には,国際的にも患者,支援団体,医療者,研究者,開発企業,規制当局などの関係者の協調が重要であり,重要なモデルを提示している. -
PMDA とレギュラトリーサイエンス,希少疾病用医薬品―医療者・研究者のためのレギュラトリーサイエンスに関する基礎知識
259巻1号(2016);View Description Hide Description◎医薬品医療機器総合機構(PMDA)は,セイフティトライアングルとよばれる①健康被害救済,②審査,③安全対策の3 つの業務を通して,国民の健康の命を守るという役割を担っている.加えて,PMDA はレギュラトリーサイエンス推進に向けた取組みとして,革新的な医薬品などの候補選定から臨床開発の段階までに必要な指導・助言を行う薬事戦略相談,医療イノベーションの推進のために必要な議論を行う科学委員会,およびアカデミアとの相互交流・相互理解をはかり共同研究や人材育成を行う包括的連携協定などを進めている.また,希少疾病用医薬品と難病対策に関しては平成27 年(2015)1 月に難病法が施行されたことにより,“指定難病”が希少疾病用医薬品などの指定要件で考慮されることとなった.レギュラトリーサイエンスに関連する知識は医薬品開発の土台となるものであり,多くの医療関係者および研究者に正しく理解しておいてもらいたい. - 代謝性ミオパチーの治療:現状と未来
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筋型糖原病の治療戦略―病態からみた治療の進歩
259巻1号(2016);View Description Hide Description◎筋型糖原病は先天的なグリコーゲン代謝の異常により筋症状をきたす疾患である.解糖段階で産生されるはずのATP 産生が障害され,筋細胞へのATP 供給が障害されると,筋収縮(運動)における障害をきたす.解糖酵素が筋以外の臓器にも発現している場合は当然,筋のみならず他臓器の障害も併存する.なかでもとくに心筋障害が生命予後を左右する.筋型糖原病に対する根本的な治療法はないが,病態を考慮した治療が開発され,成果を上げている.本稿では近年行われている治療について,4 つの筋型糖原病の病型,つまり,①糖原病Ⅱ型の酵素補充療法,②糖原病Ⅲa 型に対する修正Atkins 食事療法,③糖原病Ⅴ型に対するビタミンB6療法,④糖原病 型に随伴する糖鎖修飾異常(グリコシル化障害)に対するガラクトース・乳糖補充療法,について解説する.
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