Volume 259,
Issue 3,
2016
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あゆみ ナノトキシコロジー
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医学のあゆみ 259巻3号, 215-215 (2016);
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医学のあゆみ 259巻3号, 217-222 (2016);
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◎ナノマテリアルは,その粒子の縦・横・高さのどれか一辺が100 ナノメートル(nm)以下である物質と定義される多種多様な粒子の総称であり,それぞれに発揮される新しい物理化学的特性は,一方であらたな毒性が危惧される原因でもある.従来から粒子状物質毒性学(particulate matter toxicology)があるが,有名なものにアスベストに代表される繊維状粒子による肺腺癌や中皮腫の発がんがある.ナノマテリアルのひとつであるカーボンナノチューブのなかには,これに類似した形状・サイズの粒子を含むものがあることから,まず,この繊維発がん問題が検討されることとなった.これ自体も難しい問題ではあるが,しかし,これはナノマテリアル全般からみるとごく一部であり,全容はさらに複雑で未解明のままである.一般論として,難分解性・不溶性の粒子状物質(PM)は“急性毒性”は弱く“慢性毒性”が問題となることが多い.これに加え,粒子表面の活性(ζ電位,酸化還元電位など)と毒性の関係,および,粒子の大きさによって到達する部位が異なるという問題がかかわってくる.異物除去の主役であるマクロファージの機能からの考察も重要であり,frustratedphagocytosis,肉芽腫および瘢痕形成,粒子の体内再分布(血行性全身播種を含む),凝集体の形成と分解,粒子の生体成分によるコーティングなどが論議される.また,細胞外基質への沈着による間葉系細胞との相互作用も重要である.ナノマテリアル全体からみると,その毒性情報はほとんどないに等しい状況にある.製品化により大量生産されるナノマテリアルを中心に,毒性研究を急ぐ必要がある.また,少量の新規ナノマテリアルを扱う研究開発者は早期から毒性学者との情報交換を進め毒性発現パターンを推定し,必要な防護策や汚染対策を講じることが肝要となろう.産業育成と安全確保を並行して進めるために,このような活動が重要となっている.
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医学のあゆみ 259巻3号, 223-227 (2016);
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◎多層カーボンナノチューブ(MWCNT)は人工的に合成された炭素原子からなる繊維である.アルミニウムより軽く,鋼鉄より強靱で柔軟性にも富み,優れた導電性を示すことから,低炭素社会を拓く夢の素材として多方面に用いられつつある.しかし,MWCNT はその形態と物性においてアスベストと類似性があり,生体内では分解されることはなく異物として組織・細胞内に沈着して持続的な組織・細胞障害と修復作用を誘発することから,発がん性が疑われていた.事実,いくつかのMWCNT は実験動物に腹腔内投与で腹膜悪性中皮腫を発生させる.MWCNT への曝露は製造現場,あるいは将来には消費者における経気道曝露が想定され,動物を用いた吸入試験は喫緊の課題であるが,高額な実施コストが障害となっていまだ遅々としている.著者らが実施した短期試験の結果に基づいて開発した気管内噴霧投与試験法は,専用設備を用いずに安価に実施できることから,長期毒性・発がん性試験の迅速な実施に貢献できる.
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医学のあゆみ 259巻3号, 228-233 (2016);
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◎ストレートタイプの多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の実際のヒトへの曝露経路を考慮して,雌雄ラットを用いて2 年間にわたるMWCNT の全身曝露による吸入発がん性試験を行った.被験物質はストレートタイプのMWCNT(保土谷化学工業社製のMWNT-7)を使用した.投与は0,0.02,0.2 および2 mg/m3の濃度のMWNT-7 エアロゾルを1 日6 時間,週5 日間,104 週間(2 年間),F344/DuCrlCrlj ラットの雌雄に全身曝露することで行った.その結果,雄は0.2 mg/m3以上の群,雌では2 mg/m3群で肺の腫瘍,とくに肺がんの発生増加が認められた.病理組織観察では肺胞内のMWNT-7 の沈着が低濃度から,曝露濃度に相関して認められた.そのほとんどが肺胞マクロファージに貪食されており,まゆ状の凝集塊を形成した.詳細なMWNT-7 による肺がんの発生機序はいまだ不明であるが,本研究からは,MWNT-7 の肺発がんには十分な長さおよび大量のMWNT-7,2 年間という長い時間が必要であることが推察された.
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医学のあゆみ 259巻3号, 234-240 (2016);
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◎ナノマテリアルがヒトの体に侵入する経路には,経口,経皮,および経気道吸入があげられる.難分解性の粒子であることが多いナノマテリアルは,経口的に摂取しても消化管での吸収は限定的であることが想定される.経皮的にも粒子である以上,扁平上皮のバリアを越えて体内に侵入することはほとんどないと想定される.しかし,吸入されれば,粒子の直径によっては盲端である肺胞まで到達し,そこに沈着することがいままでの吸入事故事例,たとえば各種塵肺症,アスベストによる肺腺癌や中皮腫の誘発などから容易に想定される.そこで著者らは,“吸入”がナノマテリアルの毒性評価においてもっとも重要な侵入経路であると考え,小規模全身吸入曝露装置の開発を進めてきた.その際,検体の分散の問題を解決する必要があった.そこで,MWCNT の凝集体を除去したうえで,気相への分散性を高める検体調製方法(Taquann 法)および,カートリッジ直噴式ダスト発生装置を独自に開発した.本法で吸入曝露したマウスの肺では単離繊維が肺胞内にまで到達し,細気管支から肺胞レベルの病変を誘発した.一部は胸腔に達し,壁側胸膜面に中皮腫発癌を示唆する顕微鏡的病変を誘発することを確認した.Taquann 法とカートリッジ直噴式ダスト発生装置の組合せは汎用性が高く,少量の検体で実験が可能であるため,ナノマテリアルの吸入毒性評価の迅速化・効率化に貢献することが期待される.
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医学のあゆみ 259巻3号, 241-246 (2016);
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◎われわれの身のまわりにはさまざまな物質が氾濫している.ナノマテリアルと考えられる物質も種々の経路で生体内に曝露される可能性がある.免疫システムには外来から侵入してきた異物を排除する仕組みが備わっており,効率よく免疫担当細胞が作動することによってわれわれの体を守ってくれている.しかし,ナノマテリアルに対して適切な免疫反応が作動できない可能性がある.自然免疫あるいは獲得免疫に及ぼすナノマテリアルの影響についてはいまだ全容は明らかにされていない.また,さまざまな免疫疾患に対するナノマテリアルの影響に関して不明な点が多い.本稿では,カーボンナノチューブ(CNT)を中心に免疫システムに対する影響に関して解説するとともに,著者らが実施した研究を踏まえ,免疫疾患とナノマテリアルの関係について概説する.
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医学のあゆみ 259巻3号, 247-253 (2016);
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◎ナノマテリアルはナノテクノロジーの第1 段階を支える基盤であるが,それらのヒトへの健康影響は十分に明らかにされていない.著者らは,高濃度の酸化チタン粒子に曝露されたヒトにおける呼吸器,循環器への影響を調べた.胸部X 線写真およびスパイロメトリーでは酸化チタン曝露と関係する明らかな所見は見出されなかった.一方,さまざまなサイズの酸化チタン粒子数と心拍変異度をリアルタイムで調べることにより,300 ナノメートル(nm)未満の酸化チタン粒子への曝露が自律神経系へ影響を与えるという仮説が立てられた.ヒトにおけるナノマテリアル曝露による健康影響評価をさらに行うとともに,実験動物などを用いた作用機序の解明が必要である.
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医学のあゆみ 259巻3号, 255-260 (2016);
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◎ナノテクノロジーは原子・分子レベルで物質を制御する,21 世紀のもっとも重要な技術のひとつである.ナノマテリアルはナノテクノロジーのひとつに含まれ,サイズをナノレベルにすることで,物理的・化学的そして生物学的にユニークな特性を示し,新規物質・材料としての応用展開が期待されている.ナノマテリアルの社会的受容の実現には十分なリスク評価が必要である.ナノマテリアルのリスク評価のなかで,動物実験は主要な役割を果たすが,対象ナノマテリアルの多様性,コスト,時間,動物愛護などの観点から,その有害性の確認のためにin vitro 毒性評価系も重要な役割を果たす.一方ではナノマテリアルの特性のため,従来のinvitro 毒性評価法では難しい面も報告されている.本稿では,著者らが行っている例を含めて,in vitro 毒性評価系の現状と将来像について紹介する.
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連載
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グローバル感染症最前線―NTDs の先へ 9
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医学のあゆみ 259巻3号, 265-270 (2016);
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◎肺炎は,高齢者にとって死につながる重要な疾患である.さまざまなウイルスや細菌が原因となる感染性肺炎のなかでも,肺炎球菌は高齢者のみならず,乳幼児においても髄膜炎や菌血症などの侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease:IPD)を引き起こし,臨床上からも重要度が高い.これまでに開発されてきた現行肺炎球菌ワクチンは,菌体の血清型を規定する莢膜ポリサッカライド抗原をベースにしたワクチンである.93 種類以上も存在する莢膜の,ヒトの原因菌になる頻度の高い血清型由来抗原を混合したワクチンである.高い有効性が認められているワクチンであるが,すべての血清型を網羅したワクチンとするのには限界がある.実際,近年,血清型置換の問題が指摘されはじめ,広域性のワクチン開発が望まれるようになった.一方,菌体表層に存在する蛋白質のひとつ,Pneumococcal surface protein A(PspA)はすべての血清型の肺炎球菌にも存在することから,広域性にワクチン効果が認められる可能性を秘めている.本稿では,著者らが進めているPspA を標的としたユニバーサル肺炎球菌ワクチンの開発も含め,肺炎球菌ワクチンの現状について紹介する.
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フォーラム
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医療機関のダイバーシティ 7
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医学のあゆみ 259巻3号, 271-273 (2016);
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医学のあゆみ 259巻3号, 275-276 (2016);
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TOPICS
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免疫学
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医学のあゆみ 259巻3号, 261-262 (2016);
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神経内科学
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医学のあゆみ 259巻3号, 262-263 (2016);
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脳神経外科学
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医学のあゆみ 259巻3号, 263-264 (2016);
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