Volume 259,
Issue 7,
2016
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あゆみ 医療ビッグデータをいかに解析するか
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医学のあゆみ 259巻7号, 743-743 (2016);
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医学のあゆみ 259巻7号, 745-748 (2016);
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◎ヒトの定常小集団としての長い進化の歴史は,ヒト疾患の遺伝的構成について高頻度の多型の重要性を示唆するが,一方で,過去数百年の爆発的な人口増加からは複数のレアな突然変異の寄与が重視されるようになっている.さらに,遺伝子間相互作用や遺伝子・環境相互作用も疾患負荷に一定の寄与を行うと予想される.見逃された遺伝因子や環境要因も含めて,これらの多くの仮説を検証できるように大規模ゲノムコホート研究がデザインされている.しかし,大規模ゲノムコホートが排出するビッグデータには,いくつかの本質的問題点の存在が明らかである.ひとつは比較的少数の標本に対してゲノムバリアントのような多数のデータが取得されすぎる小標本高次元問題であり,もうひとつは同じく多くの異質な表現型が取得されすぎる問題である.古典的な遺伝学に立脚したうえで,これらの難問に対して統計的機械学習・深層学習のような最新の人工知能技術を適用することで,あらたな展開が期待される.
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医学のあゆみ 259巻7号, 749-754 (2016);
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◎ビッグデータは2011 年ごろより急速に注目されるようになり,医療においても急速に“医療ビッグデータ”が蓄積されている.医療におけるビッグデータはこれまでの“蓄積する時代”から“活用する時代”へと変化している.国は臨床データベースの充実を積極的に支援する方針を示した“保健医療2035 提言書”を2015 年に発表し,そのなかでNCD が注目されている.NCD は悉皆性と正確性が担保された質の高いデータベースのひとつである.これら質の高いデータから創出されるエビデンスは臨床の実態を表すことが可能である.分析手法のひとつとしてGIS があり,結果を視覚的にとらえることのできる方法として有効である.GIS では位置関係の把握や移動時間解析といった分析が可能である.従来の集計結果に加えGIS による分析を行うことで,よりいっそうインパクトのある結果を示すことが期待できる.
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医学のあゆみ 259巻7号, 755-759 (2016);
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◎レセプト情報・特定健診等情報データベース〔通称,ナショナルデータベース(NDB)〕は,日本の保険診療における診療報酬請求情報を網羅した大規模なデータベースである.そのため,日本における各疾病に対する治療実態を把握するために有用な情報源としてとらえられており,行政機関や研究者などに対してデータの提供が行われている.著者らの研究チームも,2014 年より胃癌に関連するレセプト情報の提供を受けてレセプト情報の解析を行っている.しかし,厚生労働省が2020 年の本格運用をめざしている「医療連携や研究に利用可能な番号」がないことに起因する個人単位での情報の追跡の困難さや,大規模なデータゆえの取扱いの困難さがある.2014 年の厚生労働省の報告によると,収納されているレセプトの件数は約83 億4,800 万件に上る.本稿では,上記の問題にどのように対処してきたのか,著者らの経験をもとに解説を行う.
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医学のあゆみ 259巻7号, 760-766 (2016);
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◎DPC 制度維持のために作成・収集されているDPC データは,診療録要約情報と診療行為明細情報を合わせもつ電子データセットで,定型的業務データであるため,それを収集することによって低コストで大規模な医療データベースを構築できる.DPC データは,制度の維持,改善に用いられるのみならず,さまざまな医療評価への応用が進められている.クオリティインディケーター(QI)を用いた医療の質評価では,早期リハビリテーション推進や抗菌薬適正使用などのガイドライン適合性を評価する多くのQI が利用されている.地域医療評価では,地域医療機関の機能集約と連携の実態評価や,将来の傷病構造の変化に沿った医療提供体制の適正化のあり方などの分析が進められている.臨床疫学研究では,治療手技選択,治療ボリューム効果,地域格差などの分析成果が多数の国際的学術専門誌に発表されている.
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医学のあゆみ 259巻7号, 767-772 (2016);
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◎EPOCH-JAPAN は保健予防政策に資する科学的なエビデンスを迅速に提供するシンクタンク的な役割を果たすことを目的として,厚生労働科学研究の一環として開始された.わが国を代表する17 のコホート研究のデータが集積され,20 万人,250 万人年の統合データが構築された.本研究の成立には各コホートの研究代表者間相互の信頼と尊敬が背景にあり,これによりたいへんな労力をかけて収集した貴重なデータを他機関に預託するという研究が長期間続いている.本研究からは,単独のコホートでは検討困難な年齢層別や危険因子の組合せ別の脳・心血管疾患のリスクなど,貴重な知見が多く報告されている.また,2012 年に制定された厚生労働省の健康日本21(第二次)では,高血圧や脂質異常症と脳・心血管疾患の関連についての基礎資料として本研究の解析結果が使用されており,行政貢献という意味でも大きな役割を果たしてきた.
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医学のあゆみ 259巻7号, 773-777 (2016);
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◎医療ビッグデータの利活用が期待されているが,看護のビッグデータとしては取組みがはじまったばかりである.日本看護協会では労働環境の整備と看護の質向上をめざし,2012 年度より“労働と看護の質向上のためのデータベース(Database for improvement of Nursing Quality and Labor:DiNQL ディンクル)事業”に取り組んでいる.本事業は看護の質ベンチマーク評価を通じて看護管理者のデータマネジメントを支援するもので,2016 年度は583 病院4,964 病棟が参加している.看護に関するデータが月単位かつ病棟単位で組織横断的に集約されているデータベースとしては国内最大規模である.組織横断的なDiNQL データを活用し,意味のある情報を抽出することは,看護の質改善,病院経営の方針や看護政策上の意思決定において重要な手がかりとなるであろう.本稿では,DiNQL 事業の取組みと意義を紹介し,今後の課題についても述べる.
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医学のあゆみ 259巻7号, 778-782 (2016);
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◎近年,医療分野においてもビッグデータ解析について関心が高まっている.大規模病院などの医療現場ではほぼすべての記録が電子化されており,日々大量の診療データが蓄積する状況となっている.これにより患者ごとのカルテ情報の共有は病院内では著しく進歩したが,蓄積した診療データをビッグデータとして患者横断的に活用していくことは今後の課題である.慶應義塾大学では,富士通株式会社とともに文部科学省センターオブイノベーションプログラムにおいて診療ビッグデータを簡便に検索・閲覧するための情報基盤技術として,全文検索技術を活用したアプリケーション・システムを開発した.本稿では,著者らが開発したSSMIX2全文検索エンジン・ビューア(開発コードiDOC,アイドック)について解説することで,今後の診療ビッグデータ解析を視野にいれた情報基盤システムの一例を紹介する.
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医学のあゆみ 259巻7号, 783-786 (2016);
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◎現代の医療にはアートとしての側面があり,経験の豊かな医師はさまざまなパラメータや制約条件を考慮し最適解と思われる判断を下している.これらのパラメータを数値化し診断プロセスを数式化することができれば,わが国全体の診療精度の向上に直接に寄与できる.究極の目標は過去の症例と電子カルテの情報から病名を自動診断する人工知能の実現である.そのパイロット研究として本稿では,医師国家試験を自動解答するプログラムの構築とその現状について解説する.医師国家試験自動解答プログラムの開発は単にそれだけをめざしたものではなく,医療診断システムを構築するうえで必要となるすべてのエッセンスを含んでいる.
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医学のあゆみ 259巻7号, 787-791 (2016);
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◎医療・健康分野における情報は個人の身体や健康状態と密接にかかわる情報であるため,情報の性質が非常に機微性が高いという特徴がある.そのため,機微性が高い情報の取扱いによる個人のプライバシーへの影響などの懸念事項が多く“利活用”に躊躇する傾向がある.一方で,医療費の増加や健康意識の高まりなどに伴い,それらの情報を活用し医療費の適正化を推進したり個人の健康増進に資するサービスの提供に活用するなど,その重要性が高まっている.医療分野におけるビッグデータの活用にあたっては個人情報の取扱いに関する制度を把握し,パーソナルデータの利活用促進をめぐる取組みの現状を確認することが不可欠であるため,本稿では,医療・健康分野における情報の利活用を推進するために必要な個人情報の保護に関する法制度について改正個人情報保護法を中心に解説する.
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連載
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グローバル感染症最前線―NTDs の先へ 11
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医学のあゆみ 259巻7号, 799-806 (2016);
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◎顧みられない熱帯病(NTDs)は,先進国や製薬企業などによる対策支援が進み,感染蔓延地域でのMDA(集団薬剤投与)による対策が進みつつある.その一方で,ほとんどのNTDs はその感染状況を地理的・経時的に把握する仕組みが存在しない.その実態は不明な点も多く,MDA による集団治療も正確な情報に基づき,企画・実施,さらにはその評価がなされているわけではない.多くのNTDs は,無症状,あるいは軽い症状で慢性的かつ潜在的に地域に広がっており長い潜伏期間の後に発症することから,NTDs の実態を時間を追って監視(モニタリング)するためには病院ではなく,“地域”を単位とした感染状況を把握できる仕組み,いわゆる“地域診断”システムの構築が必要となる.さらに,問題となる地域では複数のNTDs が平行して蔓延していることや,財政的・人材的資源も限られている状況を考慮すると同時に複数のNTDs を監視できる仕組みを構築することが望ましい.そのような観点から,複数のNTDs を含めた感染症を地域において監視するための一括同時抗体価測定技術と地域診断システムの開発・研究を現在,進めている.本稿では,その研究開発事業を紹介しつつ,今後の展望について述べる.
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フォーラム
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医療機関のダイバーシティ 9
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医学のあゆみ 259巻7号, 807-810 (2016);
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パリから見えるこの世界 50
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医学のあゆみ 259巻7号, 811-815 (2016);
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TOPICS
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麻酔科学
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医学のあゆみ 259巻7号, 793-794 (2016);
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加齢医学
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医学のあゆみ 259巻7号, 794-796 (2016);
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腎臓内科学
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医学のあゆみ 259巻7号, 796-797 (2016);
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