Volume 259,
Issue 8,
2016
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あゆみ インタラクトーム医科学
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医学のあゆみ 259巻8号, 817-817 (2016);
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医学のあゆみ 259巻8号, 819-824 (2016);
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◎生体内での薬剤の作用はきわめて複雑であり,その作用機序解明には困難な点が多い.その理由のひとつが,多くの薬剤は低分子化合物である点にある.とくに,低分子化合物の標的タンパク質や標的経路の探索は技術的に難しいため,多くの手法が開発利用されている.近年のDNA シーケンス技術の発展,いわゆる次世代シーケンサーの発展によって低分子化合物の標的タンパク質の同定手法も変化し,数百という単位の標的タンパク質を一度に同定することが可能となった.すなわちこれまでの,低分子化合物と標的タンパク質との1 対1 の作用機序解明だけではなく,標的タンパク質群とのかかわり合いを考察する必要がある.本稿では低分子化合物標的タンパク質同定手法を簡単に紹介し,標的タンパク質群と低分子化合物との相互作用,すなわち低分子化合物-標的タンパク質インタラクトームについて考察する.
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医学のあゆみ 259巻8号, 825-831 (2016);
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◎2003 年にアメリカ国立ヒトゲノム研究所が発表した“1,000 ドルゲノムプロジェクト”が現実のものとなったいま,臨床現場においてもパーソナル医療として,次世代シーケンサーを用いた個人の遺伝子解析などが行われるようになっている.著者らは,インタラクトーム解析の可能性のひとつとして,ゲノム解析データやトランスクリプトーム解析データなどのマルチオミクスデータを統合し,相互作用情報を介した生体内分子の働きの全体像を描き上げることで,医療ビッグデータを有効に活用できるものと考えている.著者らが独自に開発したインタラクトーム解析技術をはじめ,パーソナル医療へ向けたインタラクトーム解析分野のこれまでの展開や,今後の方向性を紹介する.
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医学のあゆみ 259巻8号, 832-838 (2016);
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◎タンパク質インタラクトーム情報が遺伝子変異と疾患の複雑な関係を解明する鍵となることが明らかになりつつあり,世界的にヒトの全インタラクトームを計測する取組みが進められている.しかし,ヒトの遺伝子は約2 万あり,それらすべての組合せは約2 億ペアとなる.このため,タンパク質ペアすべての組合せそれぞれが,さまざまな環境下において直接的なタンパク質間相互作用をもつかを高速に計測できるテクノロジーの開発が求められている.超並列DNA シーケンサーと“DNA バーコード”という概念はさまざまな生物学スクリーニングを高速化したが,このような“組合せ爆発問題”に対応することは困難であった.著者らは,細胞内で異なるDNA バーコードを連結することでさまざまな因子の組合せが細胞形質に及ぼす影響を一斉計測するバーコードフュージョン遺伝学(barcode fusion genetics)を確立した.また,タンパク質間相互作用を試験する酵母ツーハイブリッド(Y2H)法にこれを持ち込むことによって,インタラクトームスクリーニングを高速化するBFG-Y2H 法を開発した.BFG-Y2H 法によって,すくなくとも約250 万ペアのタンパク質間におけるインタラクトームを,1 人の研究者が2~3 週間程度でスクリーニングできるようになった.
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医学のあゆみ 259巻8号, 839-842 (2016);
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◎自己免疫疾患の発症はさまざまな機構により抑制されている.そのひとつが胸腺の髄質領域に局在する上皮細胞(胸腺髄質上皮細胞)の機能による自己免疫応答性T 細胞の除去機構である.胸腺髄質上皮細胞は,組織特異的に発現するタンパク質を含めて非常に多種類の自己抗原を発現する特性をもち,それら自己抗原を認識するT 細胞は胸腺内で除去されることで,胸腺外への流出は未然に防がれる.TNF ファミリーサイトカインであるreceptor activator of NF-κB(RANK)リガンドは胸腺髄質上皮細胞の分化を誘導する.本稿では,ネガティブフィードバックによりRANK リガンドからのシグナルを調整し,胸腺髄質上皮細胞の分化を制御する分子機構について述べ,システム生物学的な観点からのネガティブフィードバックの意義,ついで胸腺髄質上皮細胞におけるネガティブフィードバックの癌免疫制御における役割について解説する.
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医学のあゆみ 259巻8号, 843-848 (2016);
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◎生命現象のすべては,DNA,RNA,蛋白質,代謝物といった“階層”にまたがるネットワーク(相互作用)によって制御されている.近年の技術の進歩により,各階層の精度のよい網羅的なデータが取得できるようになり,これらのオームデータから多くの知見が得られている.つぎのステップとして,各階層の網羅的データから多階層にまたがるネットワークを再構築するトランスオミクス解析というアプローチが可能になってきた.生命現象全体を俯瞰できるトランスオミクス解析を行う大きな利点のひとつとして,“森を見て全体を理解し,重要な木々を同定する”というアプローチが可能になることがあげられる.このように,トランスオミクス解析は今後の生命科学研究を一変させるポテンシャルをもっている.そこで本稿では,トランスオミクス解析の考え方や実例,問題点,そして医学研究への応用などについて概説する.
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医学のあゆみ 259巻8号, 849-852 (2016);
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◎ヒトをはじめとする哺乳動物は,200 種を超えるさまざまな細胞によって構成されている.各細胞種はその機能発現に必要な遺伝子の発現のタイミングと発現量を正確に制御している.遺伝子の発現は単純にいえば,転写因子とよばれる機能タンパク質がゲノムDNA 上の標的遺伝子直上流に存在するプロモーターとよばれる転写制御領域に結合して,RNA ポリメラーゼを中心とする転写複合体を活性化することによって達成される.このとき,転写因子と標的遺伝子をノードとして,それを矢印(エッジ)で結んだネットワークを転写制御ネットワークとよぶ.転写制御のような複雑な生命現象は多くの分子が相互作用することによって営まれており,そのインタラクトームを解析することはたいへん重要である.本稿では,著者らがFANTOM で行ってきた転写制御研究のエッセンスを紹介するとともに,転写制御にかかわるインタラクトーム解析の一端を紹介したい.
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医学のあゆみ 259巻8号, 853-858 (2016);
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◎疾病原因や発症機序を分子レベルで理解し,きめ細やかな患者の分類とそれに基づく創薬を実現するには,生命を構成する複数階層にわたる大量データ(マルチオミクス)を多元的に用いて各層システムの動的挙動を理解する必要がある.近年,次世代シーケンサー(NGS)や質量分析器技術の革新を背景に,患者のオミクスデータのプロファイリングから疾病の分子機構の手がかりを得ようとする潮流がある.しかし,急速に蓄積する臨床データの解析現場では,データ解析分野において日々更新されている手法や膨大なツールが十分に活用されていない現状がある.さらに,装着型デバイスに代表されるように,解析対象の臨床情報リソースは着実に多様化しており,臨床医学と基礎生物学,さらには人工知能(AI)など,あらゆる分野の垣根を取払った横断的なデータの取扱いが求められている.このなかにあって,簡便に,最新かつ多様なデータ解析ワークフローにアクセス,理解,編集できるプラットフォームの開発は,生命科学分野共通の急務である.本稿ではGaruda プラットフォームを中心に,“データと解析ツールのインタラクトーム”が担う役割と課題を議論する.
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医学のあゆみ 259巻8号, 859-863 (2016);
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◎遺伝子発現量を網羅的に解析するがんのトランスクリプトーム解析が注目を集めている.トランスクリプトーム解析は,ゲノム解析では行うことができない遺伝子発現量の直接的な定量を行うことができる.すなわち,腫瘍内における遺伝子発現変化を同定することが可能である.近年用いられている手法が次世代シークエンサーを用いたRNA-Seq である.RNA-Seq は非常にスループットが大きいことから,網羅的に転写産物の発現量を検出することができる.また,マッピングされたリード配列の本数を用いて定量するため,そのダイナミックレンジは非常に大きいといえる.加えて近年,肺がんにおいて同定されたEML4-ALK 融合遺伝子をはじめとする融合遺伝子や,新規遺伝子,新規スプライシングバリアントなどの探索にも有用である.本稿では,RNA-Seq を用いたがんトランスクリプトーム解析に用いられるバイオインフォマティクスの基本的手法とその現状について解説する.
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医学のあゆみ 259巻8号, 865-869 (2016);
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◎生体内では,多種多様な生体分子が複雑に相互作用を行うことで,広範な生命現象を精緻に制御している.そのなかで遺伝子発現ネットワークはとくに大きな役割を果たしており,その構造やふるまいの詳細な解析はさまざまな疾患のメカニズムを解明していくうえでも重要な基盤を与える.遺伝子発現ネットワークを解明するうえで,近年とりわけ重要性が高まりつつあるのが,いわゆる次世代シーケンサー(NGS)を活用することによって得られる膨大な配列データのバイオインフォマティクス解析である.すでに一般的な実験系の研究室でも大規模な配列データを取得し解析することが可能になったほか,だれもがアクセスできる公共データベース上にも膨大なデータが蓄積されつづけている.本稿では,比較的多くの研究プロジェクトで行うことが多いRNA-Seq データ解析,ChIP-Seq データ解析を例に,遺伝子発現ネットワーク解析に必要なNGSデータ解析とバイオインフォマティクスについて概説する.
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医学のあゆみ 259巻8号, 870-874 (2016);
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◎2003 年に発表されたヒトゲノムの完全長配列決定をひとつのスタート地点として,これまでに69 種の多細胞生物の全ゲノム配列が決定されている.また次世代シーケンサーの登場により,一人分の全ゲノム配列が24 時間で決定できる時代となっている.こうして,それぞれの生物種で複数のゲノムセットが公開されており,公共データベースを活用した実験データの収集がますます容易になっている.また,後述するDNA マイクロアレイ技術で顕著なように,分析機器のスモール化に伴い,少ないサンプルでも短期間でより多くのデータを得られる可能性が高まっている.しかし一方で,こうした大量のデータをまとめて使いやすくするデータベース管理システムや計算機の処理能力に寄与する革新的な技術改良が起こっているわけではない.したがって,利用者の利便性を向上するには,大量のデータからその利用者が必要とする質の高いデータを抽出する手法を習得することが重要である.また,データのとりまとめに使われるプログラムはブラックボックス化しており,出力結果を鵜呑みにすることなく,質の検証を行う技術を習得することもきわめて重要であると考えられる.本稿では,インターネットで公開されているゲノムデータに関する代表的なデータベースとデータ取得について紹介した後,ゲノム配列データを活用した基盤技術となる次世代シーケンサーのデータおよびDNA マイクロアレイデータを解析する際のインフォマティクスの留意点について概説する.また,著者が所属する大学で開発中のアカデミックdetaiing project を紹介したい.
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連載
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グローバル感染症最前線―NTDs の先へ 12
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医学のあゆみ 259巻8号, 881-887 (2016);
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◎エキノコックス症は,動物間で流行が維持されている寄生虫が偶発的にヒトに感染して重篤な症状を引き起こす動物主体の典型的な人獣共通寄生虫症である.エキノコックス症を引き起こすエキノコックス属の寄生虫は複数の種が報告されているが,わが国において感染のリスクがあるのは多包条虫(Echinococcus multilocularis)である.多包条虫はヒトに感染した場合,主として肝に寄生し増殖することで肝機能不全などの症状(多包虫症)を引き起こす.発症後,適切な処置をしなければ90%以上が致死的な経過をたどる1)こと,また本症を根治する薬剤がなく,外科的な切除のみ有効な治療方法であることから,わが国で発生がみられる人獣共通感染症のなかでは重要度が高い2).動物間の流行は北海道でのみ確認されているが,近年本州への流行の拡大が強く懸念されている.北海道のキツネの感染率が30~40%に維持されているにもかかわらず,毎年の新規患者は20 人前後にとどまる.このことは感染予防の対策(衛生教育や上水道の整備)が有効に機能していると考えられる一方,ヒトへ感染成立にはさまざまな条件が必要であることを推測させる.ヒトへの感染要因の解析と治療薬の開発が強く求められており,得られる成果はわが国の多包虫症のみならず,世界的に広く流行している単包条虫によるエキノコックス症対策に大きな貢献を果たすであろう.
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フォーラム
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医療機関のダイバーシティ 10
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医学のあゆみ 259巻8号, 889-891 (2016);
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TOPICS
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免疫学
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医学のあゆみ 259巻8号, 875-878 (2016);
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 259巻8号, 878-879 (2016);
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臨床検査医学
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医学のあゆみ 259巻8号, 879-880 (2016);
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