Volume 259,
Issue 10,
2016
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【12月第1土曜特集】 病態栄養学UPDATE
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医学のあゆみ 259巻10号, 969-969 (2016);
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総論
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医学のあゆみ 259巻10号, 973-976 (2016);
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◎病態栄養学は幅広い領域の疾患を対象としており,近年その重要性はますます大きくなりつつある.しかし,古くから臨床医学や臨床予防医学の重要な領域に位置づけられてきた欧米とは異なり,わが国ではきわめて立ち遅れていた.その結果,臨床医学において病態を理解する管理栄養士は少なく,また病態栄養学を専門とする医師は少なかった.患者を対象とした代謝栄養学の情報交換のため,臨床医,栄養学研究者,管理栄養士が一堂に参加して疾患の病態研究を行い,効率のよい栄養療法の実践とあらたな治療法の開発をめざし,日本病態栄養学会が1998 年に発足した.その後,日本医学会にも加盟するなど,わが国の臨床医学の一翼を担いながら発展し,最近では病態栄養専門医や病態栄養専門管理栄養士の制度を開始し,病態栄養学のプロフェッショナルである医師や管理栄養士の育成を行っている.
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疾患別診療
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医学のあゆみ 259巻10号, 979-985 (2016);
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◎糖尿病の栄養療法にはまず総摂取エネルギーを設定する.便宜的に標準体重当り生活活動度に応じて25~35 kcal/kg をかけて算出するが,目標とする体重(肥満あるいはやせの存在,インスリン分泌能,骨格筋量などを勘案して)を設定し,基礎代謝量推定値,あるいは現在の摂取エネルギーをもとに,体重変化に応じて摂取エネルギー量を評価し,適宜総摂取エネルギー指示量を調整する.各栄養素の摂取比率の適切な配分について確立したエビデンスはいまだ存在しないが,一般に炭水化物50~60%,蛋白質15~20%,脂質20~25%とされている.最近の健康志向から炭水化物量に注目が集まっているが,低炭水化物食と低脂質食のいずれが減量により有効かは,そのエネルギー比率や栄養をおもに摂取する食品によっても異なってくる.また,腎障害合併症例や高齢者では総摂取エネルギーのみならず蛋白質摂取量の設定をとくに注意深く設定する必要がある.同じ総摂取エネルギー,栄養素比率であっても食べる順番によって食後血糖は変わることから,食べる順番や食事時間などにも配慮した栄養指導が求められる.
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医学のあゆみ 259巻10号, 986-993 (2016);
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◎動脈硬化性疾患の発症予防において脂質異常症の治療・管理は重要な位置を占める.日本古来からの伝統的な日本食に減塩を加えたものは,動脈硬化性疾患の発症予防,脂質異常症の治療には推奨すべき食事様式であった.近年,食の欧米化が進み,総エネルギーに対する脂質カロリーの占める割合が増加している.LDL コレステロール(LDL-C)を低下させるためには,コレステロール,飽和脂肪酸,トランス不飽和脂肪酸の過剰摂取を控え,そのぶんをn-3 多価不飽和脂肪をはじめとする不飽和脂肪酸に置き換える必要がある.高超低比重リポ蛋白(VLDL)トリグリセリド(TG)血症に対しては,アルコール,糖質,脂質の過剰摂取を是正すべきである.高カイロミクロン(CM)血症は急性膵炎のリスクになるが,これに対してはより厳しい脂質摂取量の制限,中鎖脂肪酸の利用などが必要である.
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医学のあゆみ 259巻10号, 994-1000 (2016);
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◎慢性腎臓病(CKD)における栄養療法は保存期と透析期で異なる.保存期では十分なエネルギー摂取と蛋白質を制限することによる腎機能低下の抑制,尿毒症回避が目的となる.一方,透析期ではアミノ酸除去・異化亢進に対して十分な蛋白質の摂取が行われる.しかし,CKD 患者では低栄養関連病態のリスクが高く,低蛋白質食の効果も一定しないことなどから,とくに保存期CKD に対する食事療法については議論が分かれる.日本腎臓学会では2014 年に最新版の食事療法基準を公表した.このなかでも低栄養に関連する病態に注意が払われている.海外のガイドラインでも,とくに保存期に関してはこうしたリスク・ベネフィットを考慮し,ガイドラインにより異なった立ち位置をとっている.低栄養に関しては経腸栄養剤のほか,血液透析回路からの経静脈栄養も選択される.腎疾患に対する栄養療法は専門性を要するため,多職種の連携が必須である.
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医学のあゆみ 259巻10号, 1001-1005 (2016);
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◎生物は外界から食物として栄養を摂取し,生体の構築や生命活動のエネルギー源として利用する.このため,エネルギー摂取・利用の不均衡は肥満や“るいそう”をきたす.慢性呼吸器疾患の代表格である慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者では,閉塞性換気障害やそれに基づく肺過膨張などにより呼吸負荷の増大があり,呼吸に要するエネルギー消費が著しく亢進している.他方,COPD 患者では肺過膨張による横隔膜平低化による腹部臓器への圧迫や呼吸困難などから食思低下をきたし,エネルギー摂取不足に陥ることがある.このため,負の栄養バランスをきたして“るいそう”を認めることがある.“るいそう”はCOPD 患者の予後と相関があり,適切な栄養管理を主体とする呼吸リハビリテーション,運動療法を含めた包括的管理が望まれる.
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医学のあゆみ 259巻10号, 1006-1012 (2016);
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◎肝は吸収した栄養素が最初に流れ込む臓器であり,体内における代謝の中心的な役割を果たす.そのため肝が機能不全に陥ると代謝異常を発症し,全身の臓器に影響を及ぼす.一方,進行した肝疾患患者はエネルギー消費量が亢進し,グリコーゲンの貯蔵量が低下するため糖質の燃焼比率が減り蛋白質や脂質の異化が増加し,低栄養状態となっている.そのため,これらの患者では栄養アセスメントを行い,栄養設定をして適切な栄養療法を行うことが求められている.また,分岐鎖アミノ酸(BCAA)やカルニチンなどの栄養素の投与や,就寝前エネルギー投与(LES)などの工夫により,栄養療法の効果を高めることができる.近年,生活習慣の欧米化や人口の高齢化により肥満やサルコペニアを合併した肝硬変患者が増加しており,それぞれの病態に応じた栄養療法が求められている.
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医学のあゆみ 259巻10号, 1013-1017 (2016);
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◎心不全は単なる心機能の低下だけでなく,神経体液系の異常を伴い,それにより多彩な病態を示す.これらの因子は栄養状態にも大きく影響し,重症例では心臓悪液質という極端な栄養不良にまで陥る.心不全患者では食事療法のなかでも塩分制限が重要であるが,食事摂取の少ない患者では塩分制限食を外し,摂取量を確保することも必要になることがある.高齢者の心不全患者が増え,フレイルにも考慮し治療を行う.また,蛋白質を十分投与し,エネルギー不足を起こさないようにするだけでなく,微量栄養素の不足にも注意が必要である.また,虚血性心疾患では再発例が多く,再発を予防する食事,運動を中心とした生活習慣の改善が必要である.心不全では薬物の使用が多く,これらの薬物の作用を知り,それに合わせた栄養療法も今後必要になってくる.
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医学のあゆみ 259巻10号, 1018-1022 (2016);
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◎Crohn 病では経口摂取不良に加えて消化吸収障害,蛋白漏出も合併し,必要量との不均衡から蛋白・エネルギー低栄養状態を呈する.抗TNF-α製剤などの薬物療法にはめざましい進歩がみられ,経腸栄養や静脈栄養の栄養療法の意義も変わりつつあるが,栄養療法が重要であることに変わりはない.栄養療法は単独でも寛解導入・寛解維持効果に優れ,安全性の高い治療法である.さらに,抗TNF-α製剤との併用効果もメタ解析で確認され,栄養療法の意義が再認識されているところである.Crohn 病では,炎症性サイトカインによりエネルギー代謝が亢進する.したがって,栄養療法を施行するにあたってはエネルギー必要量を適切に算出し,必要量を充足するように心がける.また,体重や体組成,血液生化学検査値などをモニタリングし,栄養状態を評価しながら効果的な栄養療法を実施することが重要である.
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医学のあゆみ 259巻10号, 1023-1028 (2016);
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◎BMI 25 kg/m2以上の“肥満”を認め健康障害を合併するか,将来の合併が予想される内臓脂肪型肥満は“肥満症”として,医学的に減量が必要な疾患ととらえられている.肥満症治療の基本は食事療法であり,その原則は摂取エネルギーの制限である.エネルギーバランスとしては,糖質50~60%,蛋白質15~20%,脂質20~25%が推奨されており,微量栄養素の摂取についても配慮が必要である.糖質制限については短期間での体重減少には有用であるという報告が複数みられるが,長期データに乏しく現時点で6 カ月以上実施することの有用性は未確立であり,今後の検討が期待される.栄養指導の実際においてはエビデンスを踏まえた摂取エネルギーと栄養素の配分を設定するが,偏った食生活の背景因子を患者ごとに把握し,その是正のための支援を行うことも重要である.また,連回栄養指導によって,そのプロセスの再確認や検査値異常の改善を患者とともに実感し,食事療法の継続を促すことが重要である.
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医学のあゆみ 259巻10号, 1029-1034 (2016);
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◎周術期管理としては,早期経口摂取開始および絶食期間の短縮,サルコペニアに対する対応,シンバイオティクスの実施,摂食嚥下機能評価と訓練,口腔ケアの実施,理学療法としての早期離床や呼吸リハビリ,これらを実施するための周術期管理チームの設立などの進歩がみられる.しかし,低栄養状態に陥った症例や大侵襲手術に対する静脈栄養および経腸栄養を駆使した栄養管理については,その重要性に対する認識が甘くなり,臨床栄養に関する知識レベルが低くなるという傾向がみられている.周術期管理レベルが上がっても,すべての患者が順調に経過するのではない.低栄養状態に陥った症例や経口摂取が進まない症例,術後合併症に対する対応として静脈栄養・経腸栄養を駆使した栄養管理の重要性を再認識しなければならない.
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医学のあゆみ 259巻10号, 1035-1044 (2016);
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◎生命体は進化の過程において,飢餓との戦いにつねに直面してきた結果,飢餓を原動力としてストレス応答能を高め洗練化することで生存競争に打ち勝ってきた.この事実を鑑みると,生体が侵襲に曝された場合,絶食によるストレス耐性の誘導が優れた治療戦略になりうることは想像に難くない.実をいえば近年,高度侵襲急性期の栄養管理においてカロリーと蛋白質投与の増量はまったくの逆効果であり,摂取の減量さらには絶食(飢餓)のほうが生体に有利に作用することが明らかにされ,既成概念の瓦解がはじまった.化学療法も生体にとって侵襲となることから,このパラダイムシフトに連動して抗がん剤投与前後の短期絶食(STF)によって副作用の軽減化をはかる試みが注目を集めるようになった.本稿ではSTF の理論的背景を解説し,効果に関する探索的な臨床研究の現況と今後の展開について論説を加える.
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医学のあゆみ 259巻10号, 1045-1049 (2016);
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◎食物アレルギーとは,食物が免疫学的機序を介し生体に不利益を起こす反応である.その有病率は増加傾向にあり,ときに重篤な症状を呈するため,社会的な関心を集めている.近年,食物アレルギーの診療は発症機序に関する知見の集積によって,従来からある除去一辺倒の患者管理に大きな変化が起こっている.また診断においては,食物抗原特異的IgE 値に対する症状誘発確率を示したプロバビリティーカーブが多くの食物で利用できるようになり,さらにアレルゲンコンポーネントに対する特異的IgE 測定も可能となり,より有用性が向上した.治療においては重症患者に対して経口免疫療法というあらたな治療手段が登場し,注目されている.一方で,こうしたあらたな変化にはいまだ注意すべき点も多く,食物アレルギーに精通した医師のもとで行われることが望ましい.
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医学のあゆみ 259巻10号, 1050-1058 (2016);
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◎“こども”と“おとな”の違いは“こどもは成長・発達する”ことである.さらに,もうひとつの違いはこどもは受動的な状態にあることで,出生後1~2 年という長い授乳期・離乳期をもっており,その間は親(保護者)から食物を与えられなければ生存できない.その後も食べ物の入手や調理などを自分で行えるようになるまで,10 年以上にわたって保護者からの“受動的”な養育期間をもつ.小児の発育に影響する因子として栄養,生活リズム,内分泌ホルモン,精神的ストレス,社会的環境,疾病などがあげられるが,なかでも栄養の質と量は成長発達に大きく影響する.成長発育段階から新生児期,乳児期,幼児期,学童期,思春期に大別され,それぞれの時期の栄養法と注意すべき病態がある.成長曲線を活用し,成長の評価をすることは栄養評価の基本でもあり,成長の軌道を見守り軌道修正をかけることはこどもにかかわる医療者の役割である.最近の動きとしてビタミンD 欠乏症,セレン欠乏症の診療指針が発表され,診断に必須の血清25 水酸化ビタミンD およびセレン濃度の測定法が保険収載された.実臨床にきわめて有用である.
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医学のあゆみ 259巻10号, 1059-1063 (2016);
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◎創傷治癒遅延の一因として除脂肪体重(LBM)の減少が栄養学的に重要であることが明らかとされ,LBM 維持向上を念頭に栄養治療戦略を練る必要がある.LBM は加齢や侵襲によって減少するため,褥瘡予防と治療においては褥瘡発生の危険因子となる根拠に基づいた栄養指標を有効に活用した早期からの栄養介入が要である.とくに単一の指標ではなく,いくつかの因子を組み合わせた栄養評価ツールが有用と考えられる.栄養補給では十分なエネルギーと適切な蛋白質量により創傷治癒が促進され,さらに創傷治癒に効果を示す特定の栄養素の研究が進んでおり,今後もこの勢いが加速するものと考えられる.わが国は高齢社会を迎え,併存疾患を有する患者が増し,病態が複雑化して一疾患のガイドラインでは対応が困難である背景から,各学会連携による栄養療法の標準化に向けた取組みが進んでいる.
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最新のトピックス
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医学のあゆみ 259巻10号, 1067-1071 (2016);
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◎骨格筋の量と機能の維持において外界から摂取する栄養素,およびその同化に寄与するインスリンとIGF-Ⅰはそれぞれ大きな役割を果たしている.インスリンはおもに栄養素の同化作用を示し,IGF-Ⅰは蛋白合成や細胞増殖作用を示すが,両者のシグナル伝達分子には共通点も多い.その下流分子のひとつであるmTORC1 は,分枝鎖アミノ酸をはじめとする栄養素によっても活性化し,骨格筋においては筋量や筋線維の調節に関与していることが示唆されている.一方,サルコペニアは加齢によって筋肉の量の減少と機能の低下を呈する,骨格筋における老化現象のひとつである.その病態形成には低栄養やインスリン抵抗性が寄与するものと考えられており,その治療としてIGF-Ⅰ自体の補充や,分枝鎖アミノ酸の摂取に期待がかけられている.今後,より詳細な分子機序の解明と治療法の開発が期待される.
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医学のあゆみ 259巻10号, 1072-1076 (2016);
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◎時間栄養学とは,食事や栄養の内容や量だけではなく,“いつ”食べるかに着目した学問である.時間栄養学を検討するうえでは,生体内に周期をもたらす体内時計と,栄養学の相互の調節機構の解明が重要となる.また,時間栄養学は,①体内時計を調節する食事・栄養内容の検討や体内時計を調節する食品成分の探索などを行う“体内時計作用栄養学”と,②体内時計が制御する日内変動を考慮し食事内容やタイミングの違いを検討する“時間栄養学”,に大別される.近年ではカフェインやノビレチンなど多くの食品成分が体内時計を調節することが明らかとなっている.体内時計の乱れは肥満,糖尿病,循環器系疾患など多くの生活習慣病の発症リスクとなることから,体内時計を食事・栄養により正常に保つことは重要である.本稿では,これまでの時間栄養学的視点に基づく先行研究,ならびに当研究室の研究紹介と今後のヒトへの応用研究の可能性について概説する.
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医学のあゆみ 259巻10号, 1077-1081 (2016);
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◎飽食の現代,摂取カロリーの増加と運動不足による肥満を背景にして,メタボリックシンドローム(MetS)の病態を呈する患者が増加して久しい.その病態は遺伝・環境因子,心理的因子などさまざまな複合的要因に基づいており,発症基盤につながるメカニズムを解明することは重要である.生体内には,脳を中心とした自律神経で構築された臓器間神経ネットワークが存在することが提唱されてきた.また,臓器から発せられるさまざまなシグナルがこのネットワークを介することで,糖・脂質・エネルギー代謝の恒常性維持とともに病態生理に及ぼす役割を担うと考えられる.最近著者らは,肝でのアミノ酸代謝に由来した神経シグナルが肥満に伴う脂質代謝異常に寄与するという新しい機構を解明した.これは臓器間ネットワークが栄養素間の代謝連携に介在し制御するというあらたな栄養学的フィールドを展開し,MetS に対するあらたな治療戦略のひとつになる可能性が期待される.
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医学のあゆみ 259巻10号, 1083-1090 (2016);
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◎摂食行動は,生体のエネルギーバランス,体調,食事の美味しさや楽しさなどの多数のシグナルによって調節を受ける.生体のエネルギーレベルを維持する制御機構は恒常的(homeostatic)調節とよばれ,視床下部弓状核のNPY/AgRP 産生ニューロンとα-MSH 産生ニューロンによる制御が重要である.他方,美味な食事によって多食を引き起こす快楽的(hedonic)調節機構は,報酬系をつかさどる中脳腹側被蓋野および黒質ドパミンニューロンが中心的な役割を担う.これらの調節には,味覚とともに消化管も重要である.消化管ではおもに栄養素としての情報が脳に送られ,恒常的調節機構だけでなく報酬系にも調節作用を及ぼす.摂食の調節には総摂取エネルギー量だけでなく,食物嗜好性の調節も関与する.食物嗜好性の調節機構は現在もほとんどわかっていないが,恒常的調節機構と快楽的調節機構の両方がその調節に関与すると考えられる.
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医学のあゆみ 259巻10号, 1091-1098 (2016);
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◎ヒトの腸内には100 兆以上の細菌が生息しており,腸内細菌叢を構築している.腸内細菌は,ヒトと共生しながらエネルギー代謝,感染や免疫の制御,発がん,動脈硬化の進展など密接にヒトの健康に関与している.近年,腸内細菌叢の研究は16 s リボゾームRNA 遺伝子の解析やメタゲノム解析により飛躍的な進歩を遂げ,ヒトの健康や疾患との関連について多くの知見が得られるようになり,注目を浴びている.この腸内細菌叢の構成にもっとも影響を与える因子はヒトが日々摂取する食事であり,その構成成分である栄養素である.とくに高脂肪食は腸内細菌叢の環境を悪化させるとの報告も多い.最近は腸内細菌叢をさまざまなタイプで分類していく試みもなされており,タイプによって日々摂取する栄養素に対しての反応も異なってくるとされている.本稿では,腸内細菌叢と栄養の関連について概説する.
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医学のあゆみ 259巻10号, 1099-1103 (2016);
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◎一般に,多疾患併発状態にある高齢者の治療を行う場合には総合的な管理が必要となる.ADL 自立を継続し,健康寿命を延伸することが治療の目的と考えられるが,その際に栄養状態,身体機能状態の維持は重要である.日本人の食事摂取基準(2015 年版)において,70 歳以上では目標とするBMI の下限設定が上方(21.5~24.9 kg/m2)に変更となり,低栄養にならないようにすることが強く求められている.高齢者の栄養状態で問題となりやすいのは,低栄養,とくにたんぱく質・エネルギー低栄養状態(protein energy malnutrition:PEM)である.栄養摂取量が減少することから,骨格筋量が減少し,呼吸障害,免疫能低下,創傷治癒遅延などにつながりADL やQOL の低下をきたす.高齢者の栄養管理において骨格筋の維持はとくに重要な意味をもつ.骨格筋の減少は,あらたな疾病のリスクとなる.低栄養の原因となる栄養摂取量不足の原因はさまざまであり,単に身体的な問題のみではなく環境的要因もあり個人差も大きい.医師,看護師をはじめ,多職種がそれぞれの視点で評価・サポートし,疾患の治療継続につなげていくことが求められる.高齢者の疾病治療において栄養管理は基本である.