Volume 259,
Issue 12,
2016
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あゆみ 病原体媒介節足動物のバイオロジー
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医学のあゆみ 259巻12・13号, 1173-1174 (2016);
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医学のあゆみ 259巻12・13号, 1175-1180 (2016);
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◎蚊はわれわれの血を吸い,かゆみを残していくのみならず,マラリア,日本脳炎,デング熱,黄熱,フィラリア病などを媒介するたいへん危険な昆虫である.吸血する際には,末梢血管を探り当てるために幾度となくプロービングとよばれる針の抜き差し行動を繰り返す.同時に唾液を分泌し,この唾液中に含まれる抗血小板凝集阻害因子,血液凝固阻害因子などで血液が凝固することなく吸血できるようにしている.これらの因子は吸血時に注入される唾液1μL 中に微量にしか含まれていないが,蚊の吸血を十分に助けていることから非常に強い生理活性作用を有していると予想され,創薬研究が行われてきた.しかし現在までには,薬に応用できる分子の同定には至っていない.本稿では,著者らがハマダラカから発見した新規分子anopheles anti-plateletprotein(AAPP)の血小板凝集阻害メカニズム解明と,今後の新規抗血小板薬開発に向けての可能性について述べる.
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医学のあゆみ 259巻12・13号, 1181-1185 (2016);
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◎マラリアは感染経路がハマダラ蚊というベクター(運び手)に限定されるので,このベクターをコントロールすることがマラリア撲滅の有用な戦略になりうる.そこで著者を含むMarcelo Jacobs-Lorena のグループは2001 年に,マラリア非(低)媒介のtransgenic mosquito(トランスジェニックモスキート)を作製した.トランスジェニックモスキート作製の原理はショウジョウバエにおけるP 因子形質転換法と同様に,transposon(トランスポゾン)を用いたカットアンドペースト方式である.Salivary gland and midgut peptide 1(SM1)はファージディスプレイライブラリーを用いて発見した中腸と唾液腺の上皮に特異的に結合してマラリアの通過を阻害するペプチドである.SM1 を中腸の内腔側に発現させたトランスジェニックモスキートはオーシスト形成が抑制され,マラリア媒介能が著しく障害された.
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医学のあゆみ 259巻12・13号, 1187-1192 (2016);
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◎致死性の感染症を運ぶ殺人ダニとして,一躍“時の虫”となったマダニ.以前から蚊と並んで,ヒト・動物の病原体を媒介するベクターとして知られていたが,重症熱性血小板減少症候群(SFTS)や脳炎ウイルスを媒介することで,わが国でも認知度が増している.著者らはマダニ生物学を中心として基盤研究に取り組み,疾病制御の方策を見出す研究開発に着手している.マダニが病原体を媒介する際に,マクロで確認できる吸血プロセスの背後には,生き血確保に向けて宿主動物との間に分子間でのダイナミックなせめぎ合いがあることがわかってきた.本稿ではマダニの吸血生理について概説し,あらたに見出されたマダニ唾液腺物質,ロンギスタチンによる吸血戦略について解説したい.
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医学のあゆみ 259巻12・13号, 1193-1198 (2016);
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◎吸血性節足動物は哺乳類の生体防御機構をかいくぐって吸血を行うため,長い進化・適応の過程で唾液にさまざまな生理活性物質を発達させてきており,それは血小板凝集阻害,血液凝固阻害,血管拡張,抗炎症などの作用をあわせもつ“生理活性物質のカクテル“ともいえるものである.サシチョウバエはリーシュマニア原虫を媒介する微小な吸血昆虫で,近年,その唾液に含まれるユニークな生理活性が明らかにされつつある.また,サシチョウバエの唾液は宿主免疫やリーシュマニア感染にも影響を及ぼすことが報告されており,あるときはわれわれにとって“敵”ともいえるリーシュマニア原虫の感染病態を悪化させる働きをし,またあるときは“味方”となって宿主にリーシュマニア感染に対する防御免疫を付与する.本稿ではサシチョウバエ唾液がもつ二面性について概説し,また,これまで明らかにされている唾液の生理活性物質について解説する.
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医学のあゆみ 259巻12・13号, 1199-1204 (2016);
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◎著者らは,マダニの一種であるOrnithodoros moubata の唾液より,強力な血管拡張活性をもつアドレノメデュリン(ADM)様分子(tick adrenomedullin:TAM)を発見した.興味深いことにADM 様分子はOrnithodoros属マダニと脊椎動物のみに保存され,その他の無脊椎動物には存在していなかった.また,TAM と脊椎動物のADM のゲノム配列解析と系統樹解析は両者の進化的近縁性を支持した.以上の結果は,Ornithodoros 属マダニが進化の過程で脊椎動物のADM 遺伝子を水平伝播で獲得したことを示すものであった.さらに,TAM の獲得は吸血行動の変化による宿主域の拡大につながると推定され,最終的にOrnithodoros 属マダニの進化に影響を及ぼしたと考えられた.この発見は多細胞生物間で遺伝子水平伝播が起こることを示す例であり,生物進化を考えるうえで貴重な知見であった.
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医学のあゆみ 259巻12・13号, 1205-1210 (2016);
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◎ハマダラカは吸血によってマラリアを媒介する害虫(ベクター)である.ハマダラカにおける遺伝子改変技術は,吸血行動や病気を媒介するメカニズムの解明に加えて,新しいマラリアベクターコントロール対策として注目されている.ハマダラカの唾液腺は吸血やマラリア媒介に重要な器官であり,遺伝子改変の絶好のターゲットである.著者らは唾液腺の機能を調べる目的で,唾液腺特異的に細胞死を誘導し,唾液をほとんど有しない遺伝子組換えハマダラカを作製した.解析の結果,唾液は吸血に加えてハマダラカ体内でのマラリア原虫の増殖にも重要であった.ハマダラカ唾液腺の機能解明および制御は,新しいマラリアコントロール法の開発につながると期待される.
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医学のあゆみ 259巻12・13号, 1211-1216 (2016);
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◎マラリアという病気が蚊によって伝わることは周知である.それはときによって,吸血時の物理的な接触によって病原体が伝播すると誤解されていることが多い.マラリア原虫などの病原体はそれを運ぶ節足動物の体内における固有の生活環をもっており,その体内での増殖・分化の過程を経て,つぎの宿主へと媒介される.興味深いことに,蚊やマダニなどの節足動物自身は病気になることはなく,病原体を運搬するカーゴとしてのみ機能している.一見静的にみえるこの節足動物と病原体の関係において,数多くの相互作用,とくに免疫などの防御システムが存在することが最近の研究から判明してきた.本稿では蚊が体内から病原体を排除する仕組みについて,急速に集積された分子生物学的知見を中心に概説する.
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医学のあゆみ 259巻12・13号, 1217-1222 (2016);
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◎近年,蚊媒介感染症の新興・再興とともに,蚊を対象としたサーベイランスの重要性がますます高まっている.蚊のサーベイランスでは野生の蚊を採取して生息種および数を調べ,さらにそれらの蚊が体内にもつ病原体の有無を明らかにする.蚊が体内に保有している病原体の検出法では,古くから顕微鏡観察や培養がゴールドスタンダードとされてきた.近年では科学技術の発展に伴い,PCR などを含む分子生物学的手法を用いる機会が増加している.さらに,途上国での実用をめざした新しい手法の開発も進められており,実際のサーベイランスへの展開も期待されている.本稿では蚊からの病原体検出と調査への応用に焦点を当て,その歴史や新しい手法について概説する.
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連載
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グローバル感染症最前線―NTDs の先へ 15
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医学のあゆみ 259巻12・13号, 1229-1240 (2016);
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◎マラリアは貧困の病である.過去15 年間,ミレニアム開発目標下の世界において流行国におけるマラリア対策法への資金調達が進み,マラリア流行は縮小してきた.しかし,いまなおアフリカの5 歳以下小児を中心に年間約45 万人がマラリアで死亡している.死を阻止するための流行地末端における早期診断治療体制の確立に重点がおかれるが,無症候性かつ顕微鏡検出閾値以下の感染者が多数存在し,伝播に寄与する.この感染源対策として,発症の有無にかかわらず全住民を対象とする集団投薬(MDA)をあげる.著者らは,1991 年以来,オセアニア・ヴァヌアツ島嶼において住民主導の短期的MDA と長期的媒介蚊対策とサーベイランスによりマラリアを撲滅し維持することが可能であることを示してきた.ケニア・ビクトリア湖地域では今般の対策強化後も高度流行が続き,あらたにMDA を含むマラリア撲滅パッケージ導入が計画される.島嶼撲滅モデルを検証しながら大陸への戦略的適応をはかることにより,熱帯アフリカにおけるマラリア撲滅戦略を開発し,持続可能な開発目標の下にある世界へと提唱したい.
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フォーラム
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ノーベル生理学・医学賞2016
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医学のあゆみ 259巻12・13号, 1241-1242 (2016);
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医学のあゆみ 259巻12・13号, 1243-1244 (2016);
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医学のあゆみ 259巻12・13号, 1245-1248 (2016);
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◎本シリーズでは,医療者であり,建築学を経て病院建築のしくみつくりを研究する著者が,病院建築に携わる建築家へのインタビューを通じて,医療者と病院建築のかかわりについて考察していきます.
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医学のあゆみ 259巻12・13号, 1249-1250 (2016);
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医学のあゆみ 259巻12・13号, 1251-1254 (2016);
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TOPICS
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生理学
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医学のあゆみ 259巻12・13号, 1223-1224 (2016);
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形成外科学
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医学のあゆみ 259巻12・13号, 1224-1225 (2016);
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糖尿病・内分泌代謝学
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医学のあゆみ 259巻12・13号, 1226-1227 (2016);
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