Volume 261,
Issue 1,
2017
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【4月第1土曜特集】 胆膵疾患診療の進歩
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医学のあゆみ 261巻1号, 1-1 (2017);
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画像・内視鏡の進歩
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医学のあゆみ 261巻1号, 5-10 (2017);
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現代医療において,画像診断は診断や治療方針決定に欠かせないものとなっているが,さまざまな新技術により日々役に立つ情報が得られるようになっており,その変化もめまぐるしい.本稿では,膵・胆道領域においておもに使用される機器・画像診断の進歩として,elastography,MDCT の最近の技術,3 TMRI や軀幹部拡散強調画像(DWI)など,また核医学において比較的新しく承認された核種のオクトレオスキャンなどについて述べる.いずれも21 世紀になってから有用性が示された技術であり,あらたな知見やさらなる進歩がみられている.
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医学のあゆみ 261巻1号, 11-16 (2017);
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超音波内視鏡(EUS)は,消化管内腔より胆膵領域へ近接し高周波を用いたリアルタイムの観察が可能となり,ほかの画像診断法と比較して高い空間分解能および時間分解能を有している.このため,胆膵疾患における存在診断に非常に有用な検査法である.超音波内視鏡下穿刺吸引術(EUS-FNA)の登場により,EUS は画像診断から組織診断まで行うことが可能となった.また,画像診断の進歩により組織弾性を映像化するエラストグラフィや造影超音波検査もEUS 下に施行可能となり,胆膵疾患の質的診断においても必要不可欠なモダリティとなっている.
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医学のあゆみ 261巻1号, 17-23 (2017);
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術後再建腸管(BillrothⅠ法を除く)を有する胆膵疾患における内視鏡的アプローチは,従来の内視鏡では困難とされており,経皮的治療や外科的治療など侵襲的な治療を選択せざるをえなかった.しかし,バルーン式内視鏡(BAE)の登場により術後再建腸管を有する胆膵疾患に対する内視鏡的アプローチが一気に現実的なものとなり,より安全で確実に処置を完遂できるようになってきた.とくにshort type のダブルバルーン内視鏡(DBE)を用いることで,使用できるデバイスの種類が多くなり,その有効性が報告されるようになってきた.本稿では,short type DBE を用いたERCP(DB-ERCP)について,盲端部への深部挿入およびERCP 関連手技の実際とコツについて概説する.
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炎症性疾患
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医学のあゆみ 261巻1号, 27-31 (2017);
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壊死性急性膵炎後に伴う滲出液や壊死物質の貯留が,発症4 週以上経過して液状化が進み被包化された病態は,walled-off necrosis とよばれる.このwalled-off necrosis の感染例や有症状例は侵襲的ドレナージが必要となる.近年,超音波内視鏡下ドレナージと内視鏡的ネクロセクトミーによる経消化管的治療が開発され,普及してきている.さらに,専用の大口径メタルステントを用いた治療や追加内視鏡ドレナージテクニックにより,多くは内視鏡治療単独で治癒可能となってきた.内視鏡技術や処置具のさらなる進歩,標準化により,安全かつ根治性の高い低侵襲治療が確立されることが望まれる.
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医学のあゆみ 261巻1号, 32-35 (2017);
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膵炎に対する外科治療は,その治療の歴史とともに大きな変遷を遂げてきた.さまざまな術式が開発・応用されてきたが,治療の目的が感染制御に変化するに合わせて,さらに変化してきた.とくに大きな変化がみられたのは,2012 年にアトランタ分類が改訂され,急性膵炎の局所合併症の概念が変化した時期からである.それに伴い,2015 年にわが国でも急性膵炎診療ガイドラインが改訂された.そして保存的集中加療を十分に行ったうえで,不応例は外科的加療を追加するというstep-up approach が主体となった.そのため外科的治療へと移行する例は減少しているが,その治療成績は格段に改善されている.膵炎に対する治療の歴史も含めながら,外科治療の進歩について述べる.
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医学のあゆみ 261巻1号, 36-40 (2017);
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2016 年に公表された慢性膵炎のnew mechanistic definition では,「慢性膵炎とは遺伝的要因,環境要因あるいは他の危険因子を有する患者が,膵実質障害やストレスに対して持続的な病的反応を起こすことによって生じる,膵線維化を伴う炎症性症候群」と定義された.また,この定義に基づいた概念的疾患モデルにおいては,“早期慢性膵炎(early CP)”は“再発性急性膵炎(AP-RAP)”から“確実な慢性膵炎(established CP)”に至る過程に位置づけられ,可逆的な病態と考えられる.慢性膵炎患者の生命予後を改善するためには,早期診断と早期介入による病態の進行阻止をめざした診療体系を確立することが重要である.日本消化器病学会が編集した『慢性膵炎診療ガイドライン2015(改訂第2 版)』は,そのような目標をもって作成された世界的にも特異な診療ガイドラインである.
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医学のあゆみ 261巻1号, 41-45 (2017);
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2009 年に世界初の早期慢性膵炎診断基準が策定された.非可逆性の慢性膵炎しか診断できないという従来の診断基準の問題点を克服し,早期診断・早期医療介入へ道を開くものであった.わが国における実態を明らかにするために,厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班では全国調査を行った.二次調査で報告された151 例の男女比は1.32:1,成因では特発性が47.7%,アルコール性が45%であり,男性とアルコール性が圧倒的に多い慢性膵炎確診例とは患者像が異なっていた.平均発症年齢は確診例と比べて早期慢性膵炎症例で高齢であり,確診・準確診に進行する真の早期慢性膵炎を適切に診断していない可能性が示唆された.一方,超音波内視鏡検査で蜂巣状分葉エコー所見や急性膵炎の既往がある患者像は確診例と類似していた.1 日当りエタノール換算で80 g という飲酒歴の妥当性など,全国調査で明らかとなった課題を踏まえた診断基準の改訂により,真の早期慢性膵炎を,より的確に診断することが期待される.
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医学のあゆみ 261巻1号, 47-55 (2017);
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慢性膵炎の多くは進行性かつ非可逆性の臨床的経過をたどるが,その治療に際しては成因,活動性,重症度,病期および合併症の総合的評価に基づく個別化治療が望まれる.薬物療法は成因対策を含めた生活指導,食事療法とともに重要な内科的保存治療のひとつであり,内視鏡的治療や外科的治療の実施時の併用を含めて薬物治療は広く普及している.慢性膵炎は経過の長い疾患であるが,すべての病期において薬物療法は治療的選択肢のひとつで,ある種の薬剤は患者のQOL を改善し有用性も高く,腹痛を有する早期からの治療により一部は可逆的に,あるいはその後の進展を抑制する可能性もある.しかし,薬物治療単独で慢性膵炎の治癒を期待しうる薬物はなく,また長期展望の観点から薬物治療による進展阻止あるいは再発防止に対する有効性について質の高いエビデンスはない.
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医学のあゆみ 261巻1号, 56-59 (2017);
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膵石症に対する内視鏡治療の有用性について解説する.適応は,膵管内の膵石によって疼痛がある慢性膵炎か,膵機能の温存が期待される症例である.内視鏡的膵管口切開術(EPST)および内視鏡的副乳頭切開術(EMPST)は,乳頭に対して12 時~1 時方向に乳頭隆起上縁までを目安に約5 mm 程度切開する.内視鏡的膵石除去術は切開後にガイドワイヤー誘導下にバスケットカテーテルを膵管内に挿入し,膵石除去を行う.結石消失率は42~89%,疼痛緩和率は48~91.9%と報告されており,治療成績は良好で,多くの症例で疼痛が改善し,鎮痛薬が不要になる.膵石治療を行うことで,外分泌機能は63~81%の症例で機能が温存される.再発率は17.8~40%と高率であるが,ナイチノール製バスケットカテーテルの登場で,再発率の低下が期待される.偶発症は6~25%と比較的少なく,重篤例は報告されていない.膵石に対する内視鏡治療は治療成績が良好で偶発症も少なく,安全に行える手技である.
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医学のあゆみ 261巻1号, 60-64 (2017);
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近年,さまざまな疾患において自然免疫反応がかかわっていることが報告されている.現在ではIgG4関連疾患(IgG4-RD)の膵病変ととらえられている1 型自己免疫性膵炎(AIP)の病因・病態にはまだ多くの不明な点が残されているが,本疾患においても自然免疫反応のかかわりについて報告がなされはじめている.本稿ではIgG4-RD とくに1 型AIP における自然免疫反応の役割について,著者らのデータを含めて今までの報告をもとに概説する.
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医学のあゆみ 261巻1号, 65-68 (2017);
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IgG4 関連疾患の病因を成す自己抗原はいまだ不明である.著者らは,自己免疫性膵炎(AIP)患者のIgGをマウスに投与することにより,患者IgG のマウス膵への病原性を示し,自己抗体の存在を明らかにしてきた.今回,患者血清中の自己抗体が認識する自己抗原を同定するため,患者IgG が反応するマウス膵蛋白質を免疫沈降法によりスクリーニングし,質量分析(mass spectrometry)を用いたアミノ酸配列の同定を試みた.検出された自己抗原候補については,患者血清を用いたELISA 法による自己抗体の検出,あるいは同自己抗原のマウスへの免疫による病態の再現により検証した.その結果,マウス膵蛋白質のスクリーニングにより自己抗原候補X が検出された.また,ヒト自己抗原X をマウスに免疫することにより,AIP の病理像に合致する膵病変が形成された.さらに,ELISA 法による検証においても,AIP 患者9 例中7 例(78%)で抗原X に対する自己抗体を認めるのに対し,コントロール10 例ではすべて陰性であった.このように,著者らの検討によりAIP の自己抗原候補が同定されている.本蛋白質が真の自己抗原であるかどうか,さらなる研究が必要である.
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医学のあゆみ 261巻1号, 69-73 (2017);
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自己免疫性膵炎では経口プレドニゾロンによるステロイド治療が標準治療法であり,その適応は原則として有症状例である.治療開始前に,可能なかぎり組織学的アプローチを行って膵癌を否定し,黄疸例では胆道ドレナージを,糖尿病例では血糖コントロールを行う.プレドニゾロンを0.6 mg/体重kg/日から投与開始し,2~4 週間の継続投与後,5 mg/1~2 週ずつ2~3 カ月を目安に維持量まで漸減する.わが国では再燃を予防するために,少量(5 mg/日)プレドニゾロンによる維持療法が行われることが多い.再燃例の治療には,ステロイドの増量や再投与が有効であるが,欧米では免疫抑制剤やリツキシマブの有用性が報告されている.最近報告された国際コンセンサスでは自己免疫性膵炎に対するリツキシマブの使用が推奨された.
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腫瘍性疾患
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医学のあゆみ 261巻1号, 77-81 (2017);
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膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は画像診断でよく見つかり,膵癌の前駆病変であるのみならず,併存する膵癌の診断の契機となることがある.3 型に分類され,主膵管型および混合型は悪性の頻度が高いが分枝型は低い.悪性予測は,悪性がほぼ確実な“高リスク指標”(HRS)と,EUS による精査を推奨する“懸念所見”(WF)による.IPMN 上皮には胃型,腸型,胆膵型,好酸性細胞型という組織学的亜分類があり,癌化傾向や癌化した場合の悪性度と関係する.IPMN 併存膵癌は年率0.72~0.95%,5 年間累積発生率8.8%ほどで出現し,高齢者,女性,主膵管非拡張例,囊胞の小さい例,胃型に多い.診断には糖尿病の出現や増悪,CA19-9 の上昇に注意する.IPMN 切除後も併存膵癌には注意すべきである.IPMN に変化がないときの検査間隔の延長,または中止についてはデータがないが,5 年変化がなければ経過観察を中止すべきとするアメリカ消化器病学会ガイドラインが議論の的になっている.
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医学のあゆみ 261巻1号, 83-88 (2017);
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『膵消化管神経内分泌腫瘍診療ガイドライン』は2015 年に発刊された.神経内分泌腫瘍(NET)は内分泌細胞や神経細胞から発症する腫瘍の総称である.膵消化管NET に対する診断治療においては,WHO 分類2010 によるgrading および正確な組織診断が重要である.最近は膵NET に対してEUS-FNA がその威力を発揮している.さらに腫瘍の機能性の有無,進達度,転移の有無を正確に評価し,腫瘍の分化度および悪性度に合わせた治療が必要である.これらを踏まえて,わが国での診療ガイドラインの必要性が高まり,2010 年より画策し『膵消化管NET 診療ガイドライン』が作成された.本診療ガイドラインは,膵NET の診療に一定の指針を与え,臨床上の実用性を重視した内容をめざし,臨床上有用と思われる論文を優先的に採用し,ガイドラインとして集約されている.
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医学のあゆみ 261巻1号, 89-94 (2017);
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膵癌の前癌病変には,膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)と膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)がある.PanIN は膵管内に生じる円柱上皮性の上皮増殖病変で,種々の程度の細胞異型や構造異形を呈する.PanIN はその異型度によりlow-grade PanIN とhigh-grade PanIN に分けられる.通常型の膵癌とされる浸潤性膵管癌の発生過程においては,膵管上皮にinitiator に相当する分子に異常が起こることでlow-grade PanIN が発生し,そこにpromotion に働く分子に異常が段階的に蓄積することによりhigh-grade PanIN に変化し,やがて浸潤癌に移行すると仮定されている.この段階的な膵癌発癌仮説はProgression model として知られる.それに対し最近の分子異常の知見から,ある時点で分子異常が一気に爆発的に進み浸潤癌が発生するとするCatastrophic model が注目されている.IPMN は拡張膵管内に種々の構造と異型を呈する粘液性の上皮増生をみる腫瘍で,多様な構造は胃型,腸型,膵胆道型,好酸性細胞型の4 種の亜型に分けられ,亜型によって浸潤癌も多様な形をとる.IPMN においてはGNAS 変異が特異的に認められ,GNAS 変異がIPMN 発生及びその表現型を担う分子であることが示されている.
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医学のあゆみ 261巻1号, 95-99 (2017);
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膵癌は早期診断が困難とされてきたが近年,Stage 0,あるいは腫瘍径1 cm 以下で診断された早期診断症例の報告が増加しており,画像の特徴が明らかになりつつある.膵癌は大半が膵管癌であり,径数mm の膵管に腫瘍が発生した場合,腫瘍の直接描出がみられる前段階で,膵液の滞留による軽微な膵管拡張,膵囊胞性病変が間接所見として認められることが多く,これらにMR 胆管膵管造影(MRCP)または超音波内視鏡(EUS)を介入し,膵管の限局的な狭窄や拡張を確認することが重要である.また,長期予後が期待される腫瘍径1 cm 以下の膵癌では,腫瘍の直接描出にはEUS がきわめて有用である.腫瘍がみられた場合はEUS ガイド下の穿刺吸引法(EUS-FNA)が,膵管の異常を認めた場合は内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)を併用した複数回の膵液細胞診が,確定診断に有用であり,2016 年に改訂された膵癌診療ガイドラインでも以上の戦略が提案されている.
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医学のあゆみ 261巻1号, 100-104 (2017);
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膵癌に対する集学的治療の進歩に伴い,NCCN ガイドライン2015 年版からは膵頭部領域と膵体尾部領域に細分された定義が用いられるなど,膵癌診療においてborderline resectable(BR)膵癌が注目されている.集学的治療を行うことで予後向上が期待できると考えられているが,その中心にあるのが外科的切除術である.膵切除における上腸間膜静脈・門脈浸潤合併切除術は,近年安全な術式として確立されている.さらに,膵癌に対する主要動脈合併切除も,手術手技の向上により近年報告が増加している.しかし,BR 膵癌の治療において,術前・術後補助療法のレジメンや高難度,高侵襲手術のclinical benefit は,いまだ明らかになっていない.そのため,今後さらにBR 膵癌の治療成績を検討し,日本から新しいエビデンスを発信していく必要がある.
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医学のあゆみ 261巻1号, 105-110 (2017);
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膵癌診療ガイドライン2016 はGRADE システムに準じて作成され,CQ に対しステートメント,その推奨の強さ,エビデンスレベル,合意率で推奨が示されている.従来の診断・治療のアルゴリズムに,化学療法のアルゴリズムが追加され,UR-LA とUR-M に分けて一次・二次化学療法が記載された.診断のアルゴリズムではEUS の重要性が増し,診断確定に細胞診・組織診による病理診断を可能なかぎり行うことが加えられた.治療のアルゴリズムではcStage 分類が膵癌取扱い規約第7 版によってなされ,Stage分類の下にResectability による分類[切除可能(R),切除可能境界(BR),切除不能〔局所進行(UR-LA),遠隔転移あり(UR-M)〕]が挿入された.このresecatbility 分類にしたがい,治療法が示されている.外科的療法の前に点線枠ではあるが補助療法が挿入された.支持療法に緩和療法が新設して加えられ,精神心理的苦痛,がん性疼痛,成分栄養についてそれぞれ推奨や提案がなされた.
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希少疾患
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医学のあゆみ 261巻1号, 113-118 (2017);
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硬化性胆管炎は肝内・外の胆管にびまん性に胆管狭窄を生じる疾患の総称であり,①原発性硬化性胆管炎(PSC)と②IgG4 関連硬化性胆管炎(IgG4-SC),さらに③他の成因による二次性硬化性,に分類される.いずれも慢性胆汁うっ滞を呈し,血液検査ではALP など胆道系酵素が慢性に上昇することが特徴である.PSC では特徴的な診断マーカーが存在せず,胆道造影で特徴的な所見をとらえることが重要である.IgG4-SC では血清IgG4 上昇,他臓器におけるIgG4 関連疾患の存在,胆道生検によるIgG4 陽性形質細胞浸潤が診断の決め手となる.PSC には確立された内科的治療がなく,移植後の経過もかならずしも良好ではないため,いぜんとして予後不良の疾患であり,今後新規薬剤の開発が待望されている.これに対しIgG4-SC は,副腎皮質ステロイド薬が奏効し,予後は良好であり,PSC あるいは悪性腫瘍と適切に鑑別することがきわめて重要である.
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医学のあゆみ 261巻1号, 119-126 (2017);
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Intraductal papaillary neoplasm of bile duc(t IPNB)は,胆道系腫瘍の前浸潤性病変のひとつとして提唱された.拡張した胆管内で主として増殖する,肉眼的に同定できる乳頭状の腫瘍であり,高分化型の腫瘍性上皮で覆われ,狭い線維性血管芯からなる.被覆上皮は高異型度~中・低異型度のデスプラジア病変よりなり,しばしば混在してみられ,多くの症例で高異型度デスプラジアス病変が内在し,これらの症例は高異型度デスプラジア(上皮内癌)と考えられる.軽度~中等度異型のデスプラジアの症例も存在する.また,浸潤性病変を伴うIPNB(IPNB associated with an invasive carcinoma;膵型IPNB)も多く,浸潤性胆管癌に進展する.IPNB は,①膵のIPMN に類似し,肝内胆管にしばしばみられるⅠ型と,②異型度が高く,肝外胆管に多くみられ,従来,胆管内乳頭状腺癌と呼称されてきたⅡ型(非膵型IPNB)に分類される.