Volume 261,
Issue 8,
2017
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特集 食塩感受性高血圧UPDATE
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医学のあゆみ 261巻8号, 785-786 (2017);
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医学のあゆみ 261巻8号, 787-791 (2017);
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塩分感受性高血圧を呈する遺伝性疾患である偽性低アルドステロン症Ⅱ型(PHAⅡ)の原因遺伝子としてWNK1 とWNK4 が同定され,WNK キナーゼが形成するシグナルに注目が集まっている.著者らは,WNKキナーゼがNa 再吸収を制御するというWNK-OSR1/SPAK-NCC リン酸化カスケードを発見した.さらにkelch-like family member 3(KLHL3)とcullin 3(CUL3)がPHAⅡの原因遺伝子と報告し,CUL3/KLHL3 ユビキチンリガーゼ複合体がWNK キナーゼを捕捉してユビキチン化し,蛋白分解系により発現量を調節することを明らかにした.結果,PHAⅡはWNK キナーゼ分解などの異常によって,WNK キナーゼの発現が亢進し,WNK シグナルが過剰に亢進して腎での塩分再吸収が増加するために発症するという共通の病態であることが明らかになった.これらのWNK シグナルとKLHL3/CUL3 によるWNK 蛋白分解系は,さまざまな生理的制御を受けてNa 出納と血圧を制御することが明らかになりつつある.さらにWNK4 が脂肪組織における脂肪細胞分化の制御因子でもあることが報告され,インスリンによるWNK シグナルを介した塩分感受性高血圧のメカニズムも合わせて,メタボリック症候群における鍵分子となる可能性が示唆されている.本稿では,新しい創薬ターゲット候補としても期待されるWNK シグナルの最近の知見について概説する.
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医学のあゆみ 261巻8号, 792-796 (2017);
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高血圧は食生活と密接な関連があり,食塩摂取が多くカリウム(K)摂取が少ないほど血圧が高くなり,食塩摂取が少なくK 摂取が多いほど血圧は低くなる.これは,K 摂取により尿中ナトリウム(Na)排泄が増えるためと考えられており,このメカニズムには腎の遠位曲尿細管に存在するNa-クロライド共輸送体(NCC)が重要な働きをしている.通常,食塩摂取過多の場合はNCC の活性化は抑制され,尿からのNa 排泄が亢進するが,K によるNCC の制御はNa よりも優先されるため,高食塩低K 食ではNCC は活性化しNa を再吸収し高血圧が起こる.K 摂取が少ない時は,細胞内クロライド濃度の低下を介してWNK キナーゼ,SPAK キナーゼが活性化し,NCC が活性化する.一方,K 摂取が多い時は,脱リン酸化酵素であるカルシニューリンが活性化しNCC の脱リン酸化が起こる.このように,K によるNCC の制御には2 つの独立した経路が働いていると考えられる.
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医学のあゆみ 261巻8号, 797-801 (2017);
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上皮型ナトリウム(Na)チャネル(ENaC)はおもに集合尿細管管腔側に存在し,生体内のNa バランスを調整している.その活性はアルドステロンやバソプレシンなどのホルモンにより厳密にコントロールされている.1997 年に,ENaC がセリンプロテアーゼにより活性化されることが報告されて以降,その機序と各種病態への関係が研究されてきた.これまでにアルドステロンによるENaC の活性化にセリンプロテアーゼ・プロスタシンが重要な役割を果たすことが明らかとなった.さらに近年,ネフローゼ症候群のように高度蛋白尿を呈する状態では,血液中のセリンプロテアーゼが糸球体から漏出し,集合尿細管でENaC を活性化することが報告されている.著者らはアルドステロン負荷ラットや高度蛋白尿を呈する食塩感受性高血圧モデルラットにおいて,合成セリンプロテアーゼ阻害薬がセリンプロテアーゼによるENaC の活性化を抑制し,降圧効果を持つことを報告している.本稿では,食塩感受性高血圧発症におけるセリンプロテアーゼの役割と,セリンプロテアーゼを標的としたあらたな降圧療法の可能性について概説する.
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医学のあゆみ 261巻8号, 803-806 (2017);
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食塩感受性高血圧では食塩過剰による体液貯留が生じる.そのため,腎糸球体傍細胞からのレニンの分泌が低下して,循環血漿中のレニン-アンジオテンシン系(RAS)は抑制された状態にある.しかし,腎内には独自のRAS 制御機構が存在し,かならずしも血漿中と同様ではない.とくに慢性腎臓病(CKD)を生じている病態では,体液の貯留によってレニン産生は減少するが,集合管などのプロレニン産生はむしろ増加することが知られている.また,CKD では腎内局所アンジオテンシノーゲン(AGT)の発現が異常に増加し,これが腎内RAS の活性化を伴って食塩感受性高血圧の病態に直結する.一方,CKD を合併する食塩感受性高血圧患者に対してアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬を投与すると,腎内AGT 発現を低下させることにより,腎内RAS を抑制して血圧の食塩感受性を低下させる.このように,CKD に起因する食塩感受性高血圧に対しては,腎内局所RAS の制御機構を考え,治療展開をはかることが重要である.
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医学のあゆみ 261巻8号, 807-812 (2017);
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従来ヒトの体は,健康な状態であれば「体内のナトリウムイオン(Na+)・体液量バランスはほぼ一定に保たれている」,「おもに腎が体内のNa+・体液量の恒常性を調節している」,「塩分摂取量が増加すると口渇が生じ,飲水量と尿量が増加する」と,教科書レベルで考えられてきた.しかし,健常人であっても,「体内のNa+・体液量は常に一定ではなく,組織局所にNa+が蓄積すること」,「腎のみならず皮膚の免疫細胞も生体のNa+・体液量を調節していること」,「塩分摂取量が増大するとむしろ飲水量の減少がみられること」など,これまでの常識を覆す知見が,最近の臨床および基礎研究でつぎつぎと明らかになってきている.生体のNa+・体液バランスと血圧には密接な関連性があることから,これら最新のコンセプトをもとに,これまで想定されていなかった食塩感受性高血圧のまったく新しい発症機序の解明や治療法の開発につながることが期待される.
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医学のあゆみ 261巻8号, 813-817 (2017);
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高血圧・血圧関連遺伝子について,2009 年ごろからゲノムワイド関連解析(GWAS)が本格的に開始され,人種ごと,および人種横断的なGWAS メタ分析が実施されてきた.その結果,これまでに,200 を超す高血圧・血圧関連遺伝子座がみつかっている.それらの遺伝的効果は,対立遺伝子当り,平均して収縮期血圧で1mmHg,拡張期血圧で0.5 mmHg 程度と一般的に小さいが,この遺伝情報を関連する医療・健康情報と組み合わせることによって,高リスク群を同定しやすくなると期待される.高血圧・血圧関連遺伝子はおもに血管の遺伝素因を規定している可能性があり,エピジェネティクス制御のひとつであるDNA メチル化が,すくなくとも一部分,遺伝的に規定されている可能性があることなども,GWAS データをもとに示唆されている.今後,さらに多くの関連遺伝子の同定とともに,人種差や遺伝子間相互作用,遺伝-環境相互作用の検討が期待される.
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医学のあゆみ 261巻8号, 818-823 (2017);
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脂質シャペロンファミリーのひとつである脂肪酸結合蛋白FABP4(A-FABP/aP2)は,おもに脂肪細胞とマクロファージに存在し,細胞内の代謝および炎症反応の両側面からメタボリックシンドロームの成因に深くかかわる.著者らは以前,糖尿病および動脈硬化に対してFABP4 が新規の薬物治療ターゲットになりうることを示した.最近,FABP4 はシグナルペプチドを有さないものの脂肪細胞から脂肪分解とともに分泌され,アディポカインとして生理活性を有することが示されている.また,血中FABP4 濃度は肥満,糖尿病,脂質異常症,高血圧,動脈硬化,心血管死と関連する.さらに近年,血管内皮細胞の障害や老化によりFABP4 が異所性に発現することが報告され,あらたな治療ターゲットとしての可能性が示唆されている.
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医学のあゆみ 261巻8号, 824-828 (2017);
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妊娠高血圧腎症(PE)は浮腫を伴うことが多く,その高血圧の病態は容量依存的と思われがちである.しかし,PE の病態における高血圧の本体は,血管作動性物質アンジオテンシン(AT)Ⅱに対する昇圧感受性亢進であることが知られている.最近の著者らの検討で,妊娠末期に増加するエストロゲン代謝産物によるPPARγ活性を介したATⅡ 1 型受容体の発現抑制により正常妊娠ではAT に対する昇圧感受性が抑制されており,PEでは,このエストロゲン代謝産物の欠乏により昇圧感受性が亢進する可能性が明らかとなってきた.
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連載
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性差医学・医療の進歩と臨床展開 14
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医学のあゆみ 261巻8号, 834-838 (2017);
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◎生殖器のがん以外の固形がんでは,一般に男性が女性に比べて罹患数・死亡数が多い.ただし,胆囊癌や甲状腺癌のように女性のほうが多いがんもある.血液悪性腫瘍に大きな性差は認めない.治療薬の選択に性差はほとんど影響しないが,肺癌治療薬のゲフィチニブは日本人・女性・非喫煙者・腺癌・上皮増殖因子受容体遺伝子変異という5 つの要素を満たす症例で奏効しやすい特徴がある.副作用では悪心・嘔吐は若年女性に強い傾向があるので,予測性嘔吐の予防のためにもシスプラチンなどの高度催吐性の抗がん剤使用時は第1 サイクルで十分な制吐剤を使用する.血液毒性としては,プラチナ製剤とゲムシタビンの併用,ゲムシタビンやアムルビシンの単剤投与による好中球減少は女性で有意に多いことが報告されている.そのほか,一部の薬剤において女性のほうがクリアランスの低い薬剤があり,副作用に注意する必要がある.
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TOPICS
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消化器内科学
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医学のあゆみ 261巻8号, 829-830 (2017);
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細菌学・ウイルス学
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医学のあゆみ 261巻8号, 830-831 (2017);
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脳神経外科学
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医学のあゆみ 261巻8号, 832-833 (2017);
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FORUM
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ゲノム医療時代の遺伝子関連検査の現状と展望 14
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医学のあゆみ 261巻8号, 839-844 (2017);
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研究医育成の現状と課題 4
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医学のあゆみ 261巻8号, 845-847 (2017);
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