Volume 261,
Issue 9,
2017
-
特集 がんの予防は可能か
-
-
Source:
医学のあゆみ 261巻9号, 849-849 (2017);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 261巻9号, 851-855 (2017);
View Description
Hide Description
がんの統計データである罹患率と死亡率のトレンドを組み合わせることで,人口集団全体においてがんの予防危険因子と早期発見(検診)などがどう動いているかをおおまかに推察することができる.日本では胃,大腸,肝,男性肺,および子宮頸・体がんなど,一次予防(予防危険因子)の寄与が大きいと思われる部位が多い.二次予防(検診)の寄与が想定される部位として,大腸がんは2005 年前後から上皮内がんを含めた罹患率が増加しているが,死亡率は2009 年以降横ばいにとどまっている.女性乳がんは2003 年前後から上皮内を含めた罹患率の増加がやや加速し,2010 年前後から死亡率が横ばいに転じており,検診の効果が現れていると解釈することが可能であるが,アメリカのように死亡率の減少にまでは至っていない.前立腺および女性肺がんは,罹患率の増加が顕著であるのに対して死亡率の変化に乏しく,過剰診断が含まれている可能性に留意が必要である.
-
Source:
医学のあゆみ 261巻9号, 857-862 (2017);
View Description
Hide Description
がんの原因は遺伝か,環境か,という問いに対してヒントを与えてくれるのが,移民研究や双生児研究である.ブラジルやアメリカの日系移民のがんの動向をみると,日本人に多い胃がんや少ない前立腺がんや乳がんなどの罹患率は,移住先の国の値に近づくように変化していた.日本人に比べサンパウロの日系人では牛肉,乳製品などの摂取頻度が高く,逆に漬物,魚,みそ汁などの摂取頻度が低い傾向がみられ,このような食習慣の変化をはじめとする生活環境の変化が罹患率に影響したものと推察される.また双生児研究においても,がんの発生においては遺伝要因よりも環境要因の寄与が大きいことが示されている.とくに遺伝要因の影響が比較的強い大腸がん・乳がん・前立腺がんであっても,一卵性双生児における同一部位のがん罹患の一致率は1~2 割程度であった.これらの知見は,生活習慣や環境を変えることによりこれらのがんの予防が可能であることを示している.
-
Source:
医学のあゆみ 261巻9号, 863-867 (2017);
View Description
Hide Description
わが国での職業がんとしては,歴史的にはアスベストと中皮腫,クロムと肺がん,染料と膀胱がんが有名であり,直近では印刷工場での胆管がん,化学工場での膀胱がんが記憶に新しい.アメリカの研究報告では,全がんのなかで職業関連がんの割合は4%程度と試算されている.いわゆる職業がんは,化学物質などの高濃度曝露が原因であり,化学性発がんがヒトで実証された典型的な例である.本特集の“がんの予防は可能か”との命題としては,発がん物質の曝露を防げばがんは予防できるという実に明確な実例といえよう.しかし,現実的にみると生産現場において曝露をいかにコントロールするか,あるいは発がん物質を含まない代替品に替えるという点はそれほど簡単ではない.工業界や国の対応はいつも動きが遅い.また,低濃度複合曝露に関してはほとんど知見がない.さらに,職業関連がんには交代制勤務などの“働き方”も加わっている.実は労働が寄与するがんの割合は試算されているものよりも多く,労働環境を改善できればさらにがん予防は可能なのかもしれない.本稿では,職業がんと職業関連がんに関する予防のエビデンスに焦点を当てて論じてみたい.
-
Source:
医学のあゆみ 261巻9号, 869-873 (2017);
View Description
Hide Description
コホート研究とは,疫学研究のうちの観察研究のひとつであるが,原因(生活習慣などの曝露要因)に関する情報の収集が,研究目的としている疾病の発生よりも前になされる点が特徴的であり,観察研究のなかでもエビデンスレベルは高い.がん予防を目的とした大規模コホート研究は,1950 年代から1960 年代に,広島・長崎原爆被曝者コホートである寿命調査,平山らによる計画調査が開始され,1980 年代から1990 年代には,当時の環境庁助成による3 府県コホート,文部省助成によるJACC Study,厚労省助成による多目的コホート研究,宮城県コホート,大崎国保コホート,高山コホートといった大規模コホート研究が開始された.現在ではそれらのコホート研究から,喫煙や飲酒など生活習慣とがんとの関連が報告され,多くのエビデンスの蓄積により,がん予防法の確立が行われている.近年,体質・遺伝子型などの個人差を考慮した予防法(個別化予防)の開発のためのエビデンスの重要性が注目されているなかで,2000 年代に入り,日本多施設共同研究コホート,次世代多目的コホート研究,東北メディカルメガバンク事業などの分子疫学コホート研究が構築されている.今後はわが国においても,がんなどの生活習慣病の個別化予防のためのエビデンスを創出できる可能性が期待される.
-
Source:
医学のあゆみ 261巻9号, 875-878 (2017);
View Description
Hide Description
がん分子疫学は,基礎実験で認められた発がん現象を,分子生物学的な指標を導入することによりヒト集団で検証する,という意図を持って発明された.その基本的な概念のひとつに“遺伝子環境要因交互作用”がある.この概念の典型例としてあげられるのが,食道がんリスクに対するアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)と,飲酒の遺伝子環境要因交互作用である.ALDH2 酵素活性が著しく低い遺伝子型を持つヒトにおいては飲酒の影響が大きくなる.この現象は,ALDH2 遺伝子型に基づく飲酒行動への介入という,常にわかりやすい予防につながりうる.一方で,全ゲノム関連解析から数多くの遺伝子環境要因交互作用を認めない,単なる易罹患性マーカーが数多く報告されている.このがん予防への影響はまだ模索段階である.本稿では,乳がんにおける易罹患性マーカーの予防への応用の可能性に関して自験例を紹介する.予防への応用の成否は,リスク層別に使えるかどうかが決め手であろう.今後の検証が期待される.
-
Source:
医学のあゆみ 261巻9号, 879-882 (2017);
View Description
Hide Description
アメリカの大腸がんのがん死亡率が著明に減少した.これは,がん予防介入試験のエビデンスを利用した行政の成功例として注目される.大腸前がん病変と考えられる大腸腺腫に対し内視鏡的摘除を行うと,大腸がんの発生率と死亡率が減少するというがん予防介入試験のエビデンスを事業にまで持っていき,国レベルで推進した結果と考えられる.一方,わが国においても家族性大腸腺腫症(FAP)の大腸ポリープを内視鏡的に徹底的に摘除する手技の有効性と安全性の試験や,離島をモデルに大腸内視鏡を取り入れた対策型大腸がん検診は可能かどうかの検討が行われている.大腸内視鏡のためのマンパワー不足や医療費不足に関しては,廉価なアスピリンやメトホルミンの利用により補う方策も考えられる.大腸腺腫を母地として発がんする経路を遮断することにより,わが国の大腸がん死亡率も著明に減少することが期待される.
-
Source:
医学のあゆみ 261巻9号, 883-886 (2017);
View Description
Hide Description
日本人に適したがん予防法を見極めるためには,海外のエビデンスだけでなく,日本人を対象とした研究の評価結果を基盤とする必要がある.がんの部位別に,各種要因との因果関係評価を実施した.海外での代表的な評価報告のひとつであるInternational Agency for Research on Cancer(IARC)のモノグラフシリーズの評価方法に準拠し,“確実”,“ほぼ確実”,“可能性あり”,“データ不十分”の4 段階で評価している.そのなかから重要なもの:喫煙,飲酒,食事要因・運動・BMI・感染などについて,がん予防ガイドライン「日本人のためのがん予防法」を提言している.感染以外の5 つの健康習慣について,実施している数に応じたその後のがんの罹患リスクをコホート研究のなかで検討すると,数が多いほど,がんのリスクが低減していることが確認された.エビデンスに基づくがん予防の実践により,一人一人のがんリスクの低下が期待される.
-
Source:
医学のあゆみ 261巻9号, 887-890 (2017);
View Description
Hide Description
がんの多くは,予防可能な生活習慣や環境要因を原因とする生活習慣病であることが知られている.喫煙,食事・栄養や肥満・運動不足,感染症,職業や環境汚染,生殖要因やホルモン関連要因などが,がんの原因として代表的なものである.一方,健康施策として,リスク要因の影響とその寄与の度合いに即したがん予防戦略を効果的に行うことためには,国レベルでがんの要因の負担(burden)を知ること,すなわち要因をなくした場合,起こっているがんの何%を減らすことができるかを数値化した人口寄与割合(PAF)を推計しておくことが重要である.わが国では2005 年における推計の結果,日本では喫煙と感染ががん罹患への寄与の大きい主要な要因であり,これらの要因に対する対策をいっそう進めることが,現在の日本におけるがん減少に大きく貢献すると示唆された.本稿では,国レベルでがんの原因と,その予防可能性を考えるうえで不可欠なわが国のがんの要因の人口寄与割合について,他国の結果も交えながら紹介する.
-
連載
-
-
性差医学・医療の進歩と臨床展開 15
-
Source:
医学のあゆみ 261巻9号, 896-902 (2017);
View Description
Hide Description
◎脳の性差は,発達段階に存在する臨界期にアンドロゲンの作用を受けるか否かで,それぞれ男性(雄)型あるいは女性(雌)型に恒久的に構築される.ヒトでは精巣から分泌されるアンドロゲンが直接,マウス・ラットではエストロゲンに代謝された後,性ステロイドホルモン受容体に結合することで,脳の雄性化が引き起こされる.受容体の活性化にともない,プロスタグランジンシグナル系や細胞の生存・死のシグナル系が下流で機能し,脳の性分化を制御することが知られている.さらに最近,いわゆるエピジェネティック機構が脳の性分化において重要な役割を果たしていることが明らかになった.臨界期のアンドロゲンに応答し,クロマチンにおけるヒストンアセチル化やDNA メチル化に性差が生じることで,性特異的な遺伝子発現が実現され,脳の形態的・機能的性差が形成されると考えられる.
-
TOPICS
-
-
腎臓内科学
-
Source:
医学のあゆみ 261巻9号, 891-892 (2017);
View Description
Hide Description
-
循環器内科学
-
Source:
医学のあゆみ 261巻9号, 892-894 (2017);
View Description
Hide Description
-
神経内科学
-
Source:
医学のあゆみ 261巻9号, 894-895 (2017);
View Description
Hide Description
-
FORUM
-
-
研究医育成の現状と課題 5
-
Source:
医学のあゆみ 261巻9号, 903-905 (2017);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 261巻9号, 906-907 (2017);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 261巻9号, 908-910 (2017);
View Description
Hide Description