Volume 271,
Issue 2,
2019
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特集 腫瘍免疫研究の最近の進歩
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医学のあゆみ 271巻2号, 157-158 (2019);
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医学のあゆみ 271巻2号, 159-162 (2019);
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生体が持つ免疫の働きを積極的にがん治療に結びつけようとする試みが,“がん免疫療法”である.“チェックポイント阻害薬”は,さまざまなメカニズムによって抑制されている抗腫瘍免疫応答をその免疫抑制メカニズムから解き放ち再活性化し増強することで,従来の抗がん剤に対して抵抗性を示した非小細胞肺がんやメラノーマ患者の一部に奏効した.これにより,生体における抗腫瘍免疫応答は腫瘍の増殖を制御できることを広く認識させた.一方で,単剤での奏効率はまだけっして高いとはいえず,効果は限定的である.原因となるがん免疫治療に対する抵抗性には,①がん細胞そのものによる内因性の要因と,②免疫系を含めた外因性の要因,が存在する.がん細胞は生物進化に似たメカニズムにより発生し多様性に富むため,がん組織は不均質である.他方で,免疫細胞にも多様な細胞が含まれ,それぞれに機能と分化が異なるサブポピュレーションが存在する.この複雑な“がんと免疫の相互作用”に基づくがん免疫応答を単一の因子で評価するのは困難であり,総合的・多角的に評価することが必要である.
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医学のあゆみ 271巻2号, 163-168 (2019);
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がん細胞特異的な遺伝子変異に由来するネオアンチゲンが,特異的がん免疫療法の標的抗原として注目されている.ネオアンチゲンは正常細胞には存在しない腫瘍特異抗原であり,免疫系からは“非自己”として認識される.したがって,ネオアンチゲンの刺激により誘導される特異的T 細胞は高反応性を有し,抗腫瘍免疫応答の主役を担う.なかでも,細胞のがん化に直接関与しないパッセンジャー変異はその多様性からネオアンチゲンの豊富なソースとなりうるが,そのほとんどが患者間で共有されないため,患者ごとにネオアンチゲンを同定し個別化する必要がある.次世代シーケンサーの実用化により,比較的容易にがん細胞特異的遺伝子変異が同定できるようになってきたが,遺伝子変異配列から実際に抗原性を持つネオアンチゲンを効率よく特定することが次の課題となっている.
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医学のあゆみ 271巻2号, 169-172 (2019);
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抗PD-1/PD-L1 抗体による免疫チェックポイント阻害療法はがん医療に革新をもたらしているが,いまだ治療効果は十分ではなく,高額な治療費や副作用を考慮すると事前に有効性を予測できることが重要である.現状でも,腫瘍微小環境内のPD-L1 発現やT 細胞浸潤がバイオマーカーとして用いられているが,それらの予測精度は十分ではない.従来,体細胞変異がネオアンチゲンとしてT 細胞活性化をもたらすおもな要因であり,変異負荷が免疫チェックポイント阻害薬の有効性と関連することが示唆されてきた.しかし,それ以外にも最近,HLA やβ2 ミクログロブリン,JAK1/2 などの抗原提示機構に関わる遺伝子やPD-L1/PD-L2 自体などのゲノム異常が免疫回避に影響を与え,このような阻害薬の有効性・抵抗性と関連することが報告されている.そのため,従来のバイオマーカーに加えてゲノム異常を検索し,それらを組み合わせた治療戦略を検討する重要であると考えられる.
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医学のあゆみ 271巻2号, 173-179 (2019);
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免疫チェックポイント阻害薬が種々の固形腫瘍において臨床適応拡大されるなか,その作用機序の研究がさまざまな手法により展開されている.また,免疫チェックポイント阻害薬に抵抗性を示す症例も知られてきており,その治療抵抗性機構に関する解明が望まれている.従来のマルチオミックス的な解析法の重要性はいうまでもないが,近年著しく発展しているシングルセルレベルでの解析手法は,これまで明らかではなかった免疫細胞および腫瘍免疫微小環境の,より精緻な動態の解明に貢献している.これらの解析により得られる知見は,免疫チェックポイント阻害薬に有効性を示す患者同定のためのバイオマーカー開発や,免疫逃避機構の解明に基づく新たな創薬標的の同定につながる可能性が高い.本稿では,シングルセルRNA シークエンス(scRNA-seq)法やマスサイトメトリーを中心としたシングルセル解析法を概説するとともに,腫瘍免疫分野における当該技術の今後の展望に言及する.
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医学のあゆみ 271巻2号, 181-185 (2019);
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PD-1 抗体を中心とした免疫チェックポイント阻害薬によるがん免疫治療が高い臨床効果を示している.免疫チェックポイント阻害薬はおもにT 細胞の免疫抑制状態を解除することで,がんを排除すると考えられているが,高い奏効率を示すがん種でも不応答性の患者が存在する.今後,有効な併用療法を含む治療戦略を考えるうえで,がん特異的T 細胞の機能維持や長期生存こそが重要な鍵となる.近年,T 細胞の分化や機能制御に,細胞内での代謝が重要な役割を担うことがわかってきた.本稿では,T 細胞の機能維持や分化の過程における代謝プログラムとその制御機構について,著者らの研究結果を交えて解説する.
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医学のあゆみ 271巻2号, 187-191 (2019);
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腸内細菌叢は免疫系に働きかけ,非自己に対する免疫監視と自己に対する免疫寛容の調節において重要な役割を果たす.一方で,特定の腸内細菌叢は大腸がんの発生や炎症性腸疾患などの自己免疫疾患にも影響することが示されてきた.また,腸管以外の臓器のさまざまながんの腫瘍内の炎症細胞や免疫細胞へも作用し,免疫チェックポイント阻害薬を含むがん薬物療法の効果に影響を与えることも明らかになってきた.測定方法の違いや地域差などデータを解釈するうえで課題はあるものの,腸内細菌叢の解析は複雑ながん免疫応答の一端を担っていることが示唆されている.
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医学のあゆみ 271巻2号, 193-197 (2019);
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CD19 をターゲットとしたキメラ抗原受容体(CAR)T 細胞療法が,2019 年3 月に再発・難治性B 細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)およびびまん性大細胞型B 細胞リンパ腫(DLBCL)に対して承認され,本邦において保険診療のもとで遺伝子改変技術を用いた養子免疫療法が行われる時代がついに到来した.CAR-T細胞療法は従来治療法のなかった一部の造血器腫瘍においてきわめて高い寛解導入率をもたらしたが,一定の再発が生じることや固形がんへの抗腫瘍効果が乏しいことなど克服すべき課題は多い.一方,T 細胞受容体遺伝子導入T 細胞療法においても一部の臨床試験で良好な結果が報告されているものの,有害事象のリスクなど臨床応用へ向けたハードルも明らかとなっている.現在,これらの課題を解決すべくさまざまな技術開発が世界中で進展しており,マウスモデルや早期臨床試験において有望なデータが報告されつつある.
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連載
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医学・医療におけるシミュレータの進歩と普及 32(最終回)
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医学のあゆみ 271巻2号, 205-209 (2019);
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◎医学教育において手術手技修練は,長らく手術書と手術室における実習・実践から成り立っていたが,1990 年台の内視鏡下手術の導入後,その様相は大きく変革した.開腹手術では術野の細部にまで及ぶ記録が難しいことが多く,実際の術野がどうなっているかが手術に携わる者にしかわからない,いわばブラックボックスの要素が少なからず存在していたものが,内視鏡下手術の導入により,術野のすべての情報が術者と共有できるようになったのである.これは手術教育の変革に大きな影響を与え,画像・情報処理技術の向上とともに,術野を再現し,教育効率を著しく進化させたシミュレータが開発された.本稿においては,内視鏡外科手術シミュレータを用いた内視手術教育システムの世界における動向と今後の展望について述べたい.
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健康寿命延伸に寄与する体力医学 20(最終回)
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医学のあゆみ 271巻2号, 211-216 (2019);
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適度な身体活動は健康の維持・増進に重要であるが,日本人の歩数はいまだ低下傾向にあり,十分に対策が進んでいるとは言いがたい.地域・国レベルで身体活動を促進するためには,エビデンスに基づく効果的な普及戦略が必要となる.これまでに世界で行われてきたポピュレーション介入研究の知見を統合すると,いくつかのポイントが浮かび上がる.すなわち,ソーシャル・マーケティングなどの理論的枠組みに基づき,①知識の普及にとどまらず,行動の普及につなげられるか,②1 年間では短すぎる,③単一事業で同時に多くの行動を普及させることは困難,④社会的インパクトをもたらす“ゆ・か・い”な事業か?(RE-AIM モデル),⑤多分野連携と核になる“普及の専門家”の必要性,といった観点である.これらを踏まえ,国や地方自治体などの公共部門での取り組みに加えて身体活動を促進するビジネスの活性化も必須となるであろう.
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地域医療の将来展望 5
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医学のあゆみ 271巻2号, 217-222 (2019);
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◎わが国は超高齢社会,人口の減少と偏在,地域社会の縮小という課題に直面しており,医療ニーズは急激に変化している.これらを背景とし,高齢患者,医療システムの再構築に対応できる医師育成が望まれる.地域医療の現場における多様なニーズに対応するため,知識の運用が早い段階からできるよう意識しつつ,理論的知識および実習・研修において修得する実践知を指導しなくてはならない.医療システムにおける機能分化が進む中,実習・研修の手法と行う場を考慮し,地域医療への動機づけ,将来の自己像を明確化できるとよい.システムの再構築に加え,人・モノ・予算が希薄になるなか,他者を大切にする心,地域医療における間隙をどう補完するか,柔軟に対応する姿勢が不可欠である.多様なニーズに応じることのできる柔軟性,キャリアに応じて意識と診療姿勢を変化させられる可塑性を有する医師が,これからの地域医療においてはより必要と考えられる.
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TOPICS
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腎臓内科学
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医学のあゆみ 271巻2号, 199-200 (2019);
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免疫学
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医学のあゆみ 271巻2号, 200-201 (2019);
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神経内科学
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医学のあゆみ 271巻2号, 202-203 (2019);
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FORUM
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医学のあゆみ 271巻2号, 223-225 (2019);
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後期高齢者医療制度が2008 年4 月に開始されてから,10 年以上が経った.「高齢者の医療の確保に関する法律」の第125 条1 項に「後期高齢者医療広域連合は,高齢者の心身の特性に応じ,健康教育,健康相談,健康診査及び保健指導並びに健康管理及び疾病の予防に係る被保険者の自助努力についての支援その他の被保険者の健康の保持増進のために必要な事業を行うように努めなければならない.」と規定され,健康診査を含めてさまざまな保健事業が行われてきた.S 県では,後期高齢者医療制度開始時より,前期高齢者からシームレスな後期高齢者の保健事業をめざしてきた.S 県の後期高齢者医療広域連合は2018 年度の後期高齢者医療における保険者インセンティブ制度において,加入者の健康づくりや医療費の適正化に向けた取り組みの実施状況について,最も高い評価を受けた.健康診査事業でみると,S 県の受診率の向上はやや向上したものの,いまだ十分とはいえない.S 県後期高齢者医療広域連合の健康診査への取り組みを振り返った.
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パリから見えるこの世界 84
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医学のあゆみ 271巻2号, 226-230 (2019);
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