Volume 271,
Issue 4,
2019
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特集 肉腫治療の最前線
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医学のあゆみ 271巻4号, 309-309 (2019);
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医学のあゆみ 271巻4号, 311-315 (2019);
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肉腫はさまざまな間葉系組織への分化を示す悪性腫瘍であり,軟部組織や骨など全身が広く起源となるが,腫瘍全体としては罹患率が非常に低い希少がんである.軟部肉腫の病理診断は難渋することが多く,その理由は希少性に背反する組織型の多さとともに,近年の急速な遺伝子解析手法の進歩がもたらす疾患概念の継続的変化である.現行の『WHO Classification of Tumours of Soft Tissue and Bone』では用語の変遷のみならず,近年明らかになった腫瘍遺伝学的プロフィールが組織型分類の根幹となりつつあり,その適用には腫瘍特異的な遺伝子の検索が日常診断レベルで求められる時代になりつつある.今後のがんゲノム診療を実現するには,腫瘍検体の採取直後から適切に標本管理し,遺伝子診断の欠点や限界をも理解したうえで,形態所見と遺伝子形質データを統合しうる分子病理診断医の活躍が期待される.
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医学のあゆみ 271巻4号, 317-320 (2019);
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がんゲノム医療に向けた取り組みが進むなか,2019 年5 月,がん遺伝子パネル検査の保険収載が決定された.しかし,現状のがん遺伝子パネル検査ではその解析結果が治療に結びつく事例はけっして多くはないことが報告されている.骨軟部腫瘍の網羅的ゲノム解析はこれまでもさまざまな組織型で実施され,その成果の一部は臨床にも還元されてきた.しかし,がん遺伝子パネル検査をより効果的なものとするためには,限られた遺伝子のみの解析ではなく,網羅的ゲノム解析を行うことで骨軟部腫瘍ゲノムデータベース構築をさらに進め,その結果を遺伝子パネルに反映することが必要である.またコピー数異常,構造異常を多く認める骨軟部腫瘍においては,ゲノム解析のみならずトランスクリプトーム,プロテオーム,メタボロームといったマルチオミックス解析の重要性も高い.こうした網羅的解析を通じて治療につながる分子生物学的特徴をひとつでも多く見出すことが,がんゲノム医療時代の骨軟部腫瘍がんゲノム研究に求められている使命であると考える.
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医学のあゆみ 271巻4号, 321-326 (2019);
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次世代シークエンサー(NGS)の開発・発達により,がんクリニカルシークエンスに基づいたプレシジョンメディシン(精密医療)が欧米では注目されている.とくに“正確な診断,正確な分類,治療法の選定”に紐づくコンパニオン診断や癌種にとらわれない遺伝子変化に基づいた新しい“治療法の選定”に紐づくバスケットトライアルも発展をみせており,個別化医療が大きく進んでいる.著者らのグループでは,2016 年よりアメリカMemorial Sloan Kettering Cancer Center が開発したMSK-IMPACT を国内導入し,実際の臨床に使用し,かつ新規治療法開発のために共同研究を進めてきた.その過程において軟部肉腫にNTRK1 融合遺伝子を同定し,その阻害薬を用いたFDA single patient protocol への参加を経験,骨肉腫において新規治療法になりうる新規標的を発見した.その経験について解説する.
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医学のあゆみ 271巻4号, 327-333 (2019);
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骨軟部肉腫は間葉系細胞から発生する腫瘍である.間葉系細胞は骨,軟骨,筋肉,脂肪,血管などの構成要素として体のあらゆる部分に存在する.骨軟部肉腫の発生頻度は,上皮系の癌や血液腫瘍に比べてきわめて低い.しかしながら,その発生部位,臨床像,病理所見は多彩でサブタイプも多く,治療方針を決定するうえで正確な診断を行うことが重要である.さらに小児や若年成人に発生するケースや,発生早期から周囲組織へ浸潤して根治手術が困難になるケースもしばしばみられ,有効な化学療法も乏しいことから,肉腫の革新的な治療法の開発と,発がんの分子基盤を明らかにするための基礎研究が求められている1).このような状況のなかでヒト骨軟部肉腫を再現する動物モデルを確立することは,肉腫本態の解明や発症予防,分子標的治療薬の開発につながると期待される.近年,さまざまな動物モデル〔遺伝子改変マウス(GEMM),遺伝子改変マウス由来同種移植(GDA),患者由来異種移植(PDX)〕が作製されるようになり,長い間謎であった肉腫の発生起源や成り立ちに対する答えが導かれつつある.本稿では,肉腫のGEMM とGDA モデルについて現状と展望を交えて概説する.
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医学のあゆみ 271巻4号, 335-339 (2019);
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各種がん細胞株の樹立により,がんの基礎研究は長足の進歩を遂げてきた.培養したがん細胞株や,がん細胞株を免疫不全マウスに移植した担がん細胞株動物モデルを用いた研究は,現在もがん基礎研究の中核を担っている.しかし,細胞株として単層培養される過程で腫瘍細胞に形質転換が生じ,とくに抗腫瘍薬の創薬研究において,細胞株に対する薬効が実際の臨床像とは乖離することが明らかになってきた.近年,なるべく生体内での環境を維持しているin vitro あるいはin vivo の研究モデルとして,腫瘍細胞を含む細胞集団の塊として培養するがん組織由来培養細胞(塊)(PDO)モデルや,腫瘍組織をそのまま重症免疫不全マウスに移植して樹立するPDX モデルが樹立されている.本稿では,従来の肉腫細胞株と担肉腫細胞株動物モデル,そして最近の肉腫PDX モデルの現況について概説するとともに,著者所属施設における肉腫を含むPDO モデルやPDX モデルの樹立について紹介する.
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医学のあゆみ 271巻4号, 341-345 (2019);
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化学療法の導入や画像診断の進歩によって,悪性骨腫瘍の手術は切断術から患肢温存手術が一般的となっている.腫瘍を切除した後の欠損部の再建には腫瘍用人工関節が最も普及しているが,感染,破損,緩みなどの合併症が問題となる.処理骨移植術とは切除した腫瘍を含む骨を殺細胞処理し,移植骨として使用する方法である.殺細胞処理の方法には熱処理(オートクレーブ処理,パスツール処理),放射線処理,液体窒素処理があり,同種骨の入手が困難なわが国では広く普及している.処理骨移植術は種々の利点(同種骨移植術のような感染や免疫反応の問題がない,人工関節よりも骨の温存量が多く,骨癒合が得られれば生物学的に安定する,自家骨移植のようなdonor site を要しないなど)を有しているが,感染,骨折,骨癒合不全などの合併症や初期固定強度が弱いなど問題点もある.本稿では,これらの各処理骨の歴史と手技,治療成績について紹介し,さらに当科で開発した液体窒素処理骨について詳細に述べる.
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医学のあゆみ 271巻4号, 347-352 (2019);
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肉腫は希少疾患であるとともに組織型が多彩であり,薬物療法への反応性も異なるため,一般臨床医が薬物療法を行うにあたり治療選択に悩むことが少なくない.本稿では,化学療法が治療方針のなかで重要なパートを占める骨腫瘍(骨肉腫,Ewing 肉腫),円形細胞肉腫(横紋筋肉種)について,現在の標準療法と最近の臨床研究の動向を概説する.また,成人の軟部肉腫の大部分を占める非円形細胞肉腫については,補助化学療法の意義と近年使用可能となった二次化学療法薬剤(パゾパニブ,トラベクテジン,エリブリン)について述べる.また,発生頻度はさらに少数になるが,特定の分子標的薬剤や化学療法を考慮すべき特殊な組織型の肉腫についても紹介する.一般的に,肉腫は上皮性腫瘍と比較して化学療法の効果が少ないと考えられているが,免疫染色や遺伝子診断を駆使した正確な組織診断が治療選択の枠を広げることにつながる.
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医学のあゆみ 271巻4号, 353-358 (2019);
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重粒子線(炭素イオン線)や陽子線といった粒子線はその優れた物理特性により,周囲の正常組織への線量は低く保ったまま腫瘍へ高線量を照射することができる.また,従来から生物効果が高いことが知られていた重粒子線に加え,陽子線についても,近年の再検証にてX 線よりも生物効果が高いことがわかってきた.粒子線治療の骨軟部肉腫に対する有用性はこれまで多数報告されてきたが,わが国の全粒子線治療施設が参加した多施設共同後ろ向き研究の結果が先進医療会議で報告され,その結果,2016 年4 月に重粒子線治療が,2018 年4 月に陽子線治療が保険適用となった.消化管が近接する腫瘍を根治的に治療するためにはスペーサー留置が必要だが,従来のスペーサーの問題点を解決した吸収性スペーサーが開発され,治験を経て2019 年6 月に上市された.2019 年12 月にスペーサー留置術とともに保険収載の予定である.骨軟部肉腫に対する粒子線治療は医療技術・医療制度の両面で進歩を続けており,多くの患者がそのメリットを享受できる時代がきたといえる.
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連載
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地域医療の将来展望 7
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医学のあゆみ 271巻4号, 366-373 (2019);
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◎日本においては,少子化,高齢化,人口減少が進むなか,人口の大都市部への集中と非都市部などでの人口の大幅な減少が続いている.このことの大きな要因は人口移動であるが,近年においては,移動における東京圏のウェイトが一層大きくなるとともに,東京圏などにおける若年女性の転入超過の増大もみられるようになってきている.また,人口流出地域では若年女性の割合が低くなるが,このことは出生率を押し下げ,それらの地域における人口減少要因ともなっている.これらのことはまた人口高齢化要因として作用し,多くの地域での著しい高齢化につながっている.一方,近年は外国人人口が顕著に増加しており,外国人の転出入がきわめて少なかった過去と異なって,多くの地域の人口動向において,外国人人口の要素は無視できなくなってきている.
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診療ガイドラインの作成方法と活用方法 2
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医学のあゆみ 271巻4号, 375-379 (2019);
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診療ガイドラインを医療訴訟で用いることは,診療ガイドラインの作成目的とは異なる.しかし,わが国の民事訴訟法において採用されている自由心証主義の下ではこれを妨げることはできない.もっとも,診療ガイドラインの不遵守があったとしても過失があると判断されることもあれば,過失がないと判断されることもある.こうした場合で過失がないと判断されるのは,医療現場の実情,当該患者の症状,当該施設の特性等がある場合である.他方,診療ガイドラインの不遵守がなかった場合には過失があると判断されることはほとんどない.そこで,診療方針等について決定する際,診療ガイドラインに合致しているか,合致していない場合,それでも,こうした診療方針等を選択する理由はあるかを意識しておくとよい.このことは患者に説明をする場合などにおいても同様である.また,診療ガイドラインを作成するにあたっては,序文の記述を工夫するとともに,推奨を記述する場合に項目によっては施設基準を記述することが望ましい.
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TOPICS
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遺伝・ゲノム学
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医学のあゆみ 271巻4号, 359-362 (2019);
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血液内科学
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医学のあゆみ 271巻4号, 362-363 (2019);
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細胞生物学
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医学のあゆみ 271巻4号, 364-365 (2019);
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FORUM
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対話―ダイアローグのはじめかた 2
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医学のあゆみ 271巻4号, 381-384 (2019);
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医学のあゆみ 271巻4号, 385-386 (2019);
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医学のあゆみ 271巻4号, 387-391 (2019);
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