Volume 271,
Issue 11,
2019
-
特集 薬物乱用のトレンド:大麻をめぐる諸問題
-
-
Source:
医学のあゆみ 271巻11号, 1185-1185 (2019);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 271巻11号, 1187-1191 (2019);
View Description
Hide Description
日本国内で大麻はどのくらい広まっているのか.本稿では,全国規模で実施された複数の疫学調査の結果をもとに,大麻使用の最新動向について概観した.一般住民を対象とした調査では,大麻使用の生涯経験率は男性2.4%,女性0.6%,全体1.4%であり,大麻使用者人口は全国で約130 万人に達すると推計された.中高生においても0.3%に大麻使用経験が認められ,青少年においても大麻使用が広がっていることが示された.大麻使用が拡大する背景として,大麻使用に誘われる機会の増加,大麻使用を肯定する考えの広まり,危険ドラッグからの転向といった複数の可能性が考えられた.薬物乱用開始の好発時期である中高生に対して,大麻使用に関する予防教育を充実させていくことが求められる.
-
Source:
医学のあゆみ 271巻11号, 1193-1199 (2019);
View Description
Hide Description
本稿では,2018 年の“全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患実態調査”のデータに基づいて大麻関連精神疾患症例の臨床的特徴を概説した.同調査から明らかにされたのは,大麻関連精神疾患症例の臨床的特徴は依存症の重症度は低く,就労などの社会参加も維持されていること,それにもかかわらず,幻覚・妄想などの精神病症状の発現を契機に精神科治療にアクセスする者は少なくなく,一部では大麻使用を長期間中止していても精神病症状に対する精神科治療の継続を要する一群が存在するということであった.しかし,その精神病症状が大麻誘発性の精神病なのか,併存精神障害で多くみられた統合失調症の悪化あるいは誘発なのかについては,今後より精緻な情報収集による研究が必要と考えられた.
-
Source:
医学のあゆみ 271巻11号, 1201-1206 (2019);
View Description
Hide Description
大麻は国際条約である“麻薬に関する単一条約”に基づき,違法薬物として世界的に規制されている.わが国では大麻取扱法によって大麻の規制を行っている.一方,2018 年にカナダが国として大麻の合法化に踏みきり,EU 諸国においても医療目的に限っての議論が進みつつあり,世界的に大麻規制のあり方を見直す流れになりつつある.このような大麻規制状況の変化は,わが国における大麻の規制に影響を与える可能性がある.アメリカは連邦法で大麻を禁止しているが,州に限っては状況が異なっている.1996 年にカリフォルニア州で医療用大麻の使用が認められて以来,その後過半数の州で大麻規制の見直しが行われ,一定の規制の下に医療または嗜好品としての大麻使用が州単位で認められている.本稿では,歴史的にも古くから大麻規制の見直しを行い情報が充実しているアメリカにフォーカスを当て,その状況を報告する.
-
Source:
医学のあゆみ 271巻11号, 1207-1213 (2019);
View Description
Hide Description
大麻(cannabis,marijuana)は世界で最も乱用されている薬物で,700 種類以上のカンナビノイド類,テルペン類,フラボノイド類などの成分が含まれている.そのなかで,Δ9-tetrahydrocannabino(l THC)と cannabidio(l CBD)が中心的な活性物質である.CBDはTHCとは異なりTHCの酩酊作用などの精神作用を示さず,抗てんかん作用,抗炎症作用,鎮痛作用,抗がん作用などを有する.2018 年,大麻草抽出製剤で,高純度の98%CBD である抗てんかん薬Epidiolex® がDravet 症候群,Lennox-Gastaut 症候群に対する難治性てんかんの治療薬としてアメリカ食品医薬品局(FDA)から認可され,同年11 月に販売開始となった.さらに2019 年4 月,わが国でもEpidiolex® の臨床試験が申請された.このように,大麻成分関連薬物を用いた治療や創薬活動が活発になってきている.ここでは,CBDの臨床応用の可能性について最近の知見を紹介する.
-
Source:
医学のあゆみ 271巻11号, 1215-1219 (2019);
View Description
Hide Description
大麻に含まれる代表的な精神活性物質として,Δ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)が同定されている.数年前,危険ドラッグの蔓延が社会問題となったが,そのなかでも合成カンナビノイドは最も多くの化合物が流通し,乱用に基づく健康被害が多発した.Δ9-THC および合成カンナビノイドはカンナビノイド受容体を介して薬理作用を示すことから,類似の精神作用を有することが知られている.カンナビノイド受容体については,CB1受容体およびCB2受容体の存在が確認されており,中枢作用の発現においてはCB1受容体が関与しているとされる.一方,CB2受容体は白血球系細胞に多く発現していることから,免疫機能調節および炎症反応に関与すると考えられている.大麻および合成カンナビノイド乱用による有害作用については,動物実験ならびに培養細胞を利用した基礎研究により評価が進んでいる.本稿では,Δ9-THC および合成カンナビノイドによる精神依存性および細胞毒性の発現についてカンナビノイドCB1受容体の役割を中心に解説し,大麻乱用による生体への危険性について考察する.
-
Source:
医学のあゆみ 271巻11号, 1221-1225 (2019);
View Description
Hide Description
薬物依存症の治療は心理社会的治療が主であり,①治療関係づくり,②治療の動機づけ,③精神症状に対する薬物療法,④解毒・中毒性精神病の治療,⑤疾病教育・情報提供,⑥行動修正プログラム,⑦自助グループ・リハビリテーション(以下,リハビリ)施設へのつなぎ,⑧生活上の問題の整理と解決援助,⑨家族支援・家族教育,からなる.これまで自助グループやリハビリ施設に繋ぐことを目的に治療が試みられてきたが,新たに認知行動療法的アプローチが加わった.認知行動療法的スキルトレーニング,動機づけ面接法,随伴性マネジメントなどが広がりつつある.具体的には,マトリックスモデルをもとに開発されたSMARPP が普及している.依存症の背景には対人関係の問題があり,幼少時からの虐待,いじめ,性被害など,心に深い傷を負っていることが多い.そのため,人と信頼関係を持てず助けを求められない.依存症患者の薬物使用は,“人に癒やされず生きにくさを抱えた人の孤独な自己治療”であり,“信頼できる人間関係”と“安心できる居場所”が依存症からの回復には必要である.
-
Source:
医学のあゆみ 271巻11号, 1227-1230 (2019);
View Description
Hide Description
薬物関連問題に巻き込まれて疲弊する家族の生活を取り戻すために,また,薬物使用者を早期に治療や回復支援につなげるために,家族支援は重要である.わが国においても,その重要性に対する認識は徐々に高まりつつあるものの,まだ十分な家族支援体制が整備されているとはいいがたい.著者らは,未整備な状況が続く家族支援体制の改善に資することを目的に,“薬物依存症者をもつ家族を対象とした心理教育プログラム”や“薬物依存症者をもつ家族を対象とした個別面接の進め方”などのツールを開発し,普及に努めてきた.本稿ではこれらの概要を解説するとともに,ツールを用いて行う家族支援の実際を大麻使用者の事例に沿って紹介する.また,家族の精神的健康状態,家族と本人との関係性などの観点から,家族支援の有効性について述べる.
-
連載
-
-
地域医療の将来展望 11
-
Source:
医学のあゆみ 271巻11号, 1236-1241 (2019);
View Description
Hide Description
2025 年問題に直面している今,効率的・効果的な医療を運営するために地域での総合診療医の活躍が期待されている.今回,総合診療医が勤務し,他の医療機関へのアクセスが制限された中山間地域に位置する診療所において,1 カ月間の新規受診患者の受診後半年間の経過を追跡し,約90%は自己完結的(自施設のみの受療により,治癒・死亡・継続治療に至った例)に診療が行われていることがわかった.また,新規に総合診療医による入院・外来診療がはじまった2 次医療機関がある町で,その前後の医療費を比較したところ,町外入院の減少による医療費の漸減傾向が認められた.これらにより,わが国の中山間地域に総合診療医を配置することは,受診する患者側の利便性の向上と医療費の削減が見込まれる.地域で活躍する総合診療医の育成が望まれる.
-
診療ガイドラインの作成方法と活用方法 6
-
Source:
医学のあゆみ 271巻11号, 1243-1250 (2019);
View Description
Hide Description
医療的介入を比較する際には,ひとつのアウトカムだけではなく,複数の益と害のアウトカムに対する効果を明らかにする必要がある.効果を表すリスク差や平均値差などのグラフを提示することは,協働意思決定において有用であるが,アウトカムの間でトレードオフがある場合には,最善の選択肢の決定は複雑で困難になる.益の大きさと害の大きさ,それらのバランスあるいは正味の益の解析には,多基準決断分析を適用することができる.この方法では,効果推定値のスコア化とアウトカムの重要度の設定が行われる.個人の価値観・選好によってアウトカムの重要度を設定し,それらで各アウトカムに対するスコアを重みづけして総計を求めることで,各介入の総スコアを算出し,それらの比較によって,最善の介入を知ることができる.今後,推奨作成には,マイクロシミュレーションなども含めさまざまな決断分析の手法が活用されると考えられる.
-
TOPICS
-
-
内分泌・代謝学
-
Source:
医学のあゆみ 271巻11号, 1231-1232 (2019);
View Description
Hide Description
-
神経精神医学
-
Source:
医学のあゆみ 271巻11号, 1232-1233 (2019);
View Description
Hide Description
-
腎臓内科学
-
Source:
医学のあゆみ 271巻11号, 1234-1235 (2019);
View Description
Hide Description
-
FORUM
-
-
ノーベル生理学・医学賞2019
-
Source:
医学のあゆみ 271巻11号, 1251-1253 (2019);
View Description
Hide Description
-
パリから見えるこの世界 86
-
Source:
医学のあゆみ 271巻11号, 1255-1258 (2019);
View Description
Hide Description